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2018年1月16日(火)更新

残業時間

政府の働き方改革などの推進もあり、多くの企業が残業時間の削減に取り組んでいます。この取り組みは、36協定や割増賃金の計算の仕組み、また、様々な労働時間制度を知っておくことで、より効果的に進めることができます。各企業においては、これらについて十分理解したうえ、業務効率化、コスト削減を図っていくことが求められます。

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残業時間とは

残業時間には、法定労働時間の上限を超える法定時間外のものと、会社で決めている労働時間を超える所定時間外のものがあります。

例えば、1日の労働時間(休憩時間を除く)が7時間である会社で、1時間残業した場合には、その1時間を含めても法定労働時間の上限である1日8時間の労働になるため、法定時間外とはならず、所定時間外の残業ということになります。

法定労働時間については次のとおりです。

労働基準法上の残業時間

労働基準法において、「残業時間」という言葉は出てきませんので、割増賃金が支払われるかどうかで言えば、法定労働時間を超える労働時間、休日労働時間、深夜労働時間がこれにあたります。

法定労働時間とは

労働基準法では、労働時間について、原則として《1日8時間かつ週40時間》を上限としています。この上限時間を法定労働時間と言います。

特例措置対象事業場

法定労働時間の原則は上記のとおりですが、以下の業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場(企業全体ではなく店舗などの単位)については、《1日8時間かつ週44時間》が上限になります。これらの事業場のことを特例措置対象事業場と言います。

  • 商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業)
  • 映画・演劇業(映画の映写、演劇、その他興業の事業)
  • 保健衛生業(病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業)
  • 接客娯楽業(旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業)

なお、上記に該当する事業場でも、後述する1年単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制を採用する場合には、原則の週40時間にしなければなりません。

法定休日とは

労働基準法では、休日について毎週少なくとも1回、または4週を通じて4日以上与えなければならないとしています。これにより、会社で決めている休日が法定休日になります。

多くの会社では、週休2日制を採用していますが、どちらが法定休日なのかについては就業規則で特定していることが一般的です。

変形週休制とは

変形休日制とも言いますが、休日を「4週を通じて4日以上」にすることです。これを採用するためには、4週の起算日を就業規則などに定めておかなければなりません。

法定労働時間を超える残業をさせる場合

労働者に法定労働時間を超える残業をさせる場合には、36(サブロク)協定という労使協定の締結が必要になります。通常の労働時間制においては、この36協定の締結のみで、法定時間外労働をさせることになりますが、あわせて、通常とは異なる労働時間制を採用することで、より業務態様に応じた労働が可能になります。

36(サブロク)協定の締結

使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合(無い場合は労働者の過半数を代表する者)との間で、時間外労働、休日労働に関する労使協定(いわゆる、36協定)を締結することにより、法定労働時間を超える労働が可能になるものです。

【関連】36協定とは?時間外労働の基礎知識から記載内容、届出のポイントをご紹介/BizHint HR

変形労働時間制

変形労働時間制とは、1日8時間、週40時間または44時間(特例措置対象事業場の場合)の法定労働時間の規制について、1日および週単位ではなく、一定単位期間の1週間あたりの平均労働時間によって判断される制度です。閑散期がはっきりしている業種、職種においては、残業時間の削減が期待できる制度となっています。

1箇月単位の変形労働時間制

労働時間が1か月以内の一定の期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間または44時間以下(特例措置対象事業場の場合)になっていれば、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させても時間外労働にならない制度です。設定する対象期間は1か月以内になりますので、1か月単位のほか、4週間単位、20日単位などにすることも可能です。

この制度を採用するためには、労使協定または就業規則などにより、以下の事項を定めておく必要があります。(労使協定で定めれば労働基準監督署への届け出が必要ですが、就業規則などで規定すれば労使協定は必須ではありません。)

  1. 対象労働者の範囲
  2. 対象期間および起算日
  3. 労働日および労働日ごとの労働時間
  4. 労使協定の有効期間(労使協定を定める場合には、有効期間は3年以内が望ましいとされています。)

【参考】「1箇月単位の変形労働時間制」導入の手引/東京労働局

1年単位の変形労働時間制

労働時間が1か月を超え1年以内の一定の期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間以下(特例措置対象事業場の場合でも40時間になります。)になっていれば、特定の期間に法定労働時間を超えて労働させても時間外労働にならない制度です。対象期間は1か月を超え1年以内になりますので、1年単位のほか、3か月単位、6か月単位などにすることも可能です。

この制度を採用するためには、就業規則への定め、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要になり、労使協定には以下の事項を定めておかなければなりません。

  1. 対象労働者の範囲
  2. 対象期間および起算日
  3. 特定期間(対象期間中、特に業務が繁忙期間)
  4. 対象期間における労働日および労働日ごとの労働時間
  5. 労使協定の有効期間(1年程度が望ましいとされています。)

【参考】1年単位の変形労働時間制導入の手引/東京労働局

フレックスタイム制

労働時間が1か月以内の一定期間(清算期間と言います。)の法定労働時間の総枠内になっていれば、任意の日または週に法定労働時間を超えて労働させても時間外労働にならない制度です。各日の始業及び終業時刻の選択などが労働者に委ねられている点において、他の変形労働時間制とは異なります。

この制度を採用するためには、就業規則などへの定め、労使協定の締結(労使協定は届け出不要)が必要になり、労使協定には以下の事項を定めておかなければなりません。

  1. 対象労働者の範囲
  2. 清算期間および起算日
  3. 清算期間における総労働時間
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイム、フレキシブルタイムの開始および終了の時刻(コアタイム、フレキシブルタイムを設ける場合)

なお、コアタイムとは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯のことで、フレキシブルタイムとは、労働者が自身の裁量で決められる時間帯のことです。この制度において必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、フレキシブルタイムが極端に短いような設定は認められないことがありますので注意が必要です。

【参考】フレックスタイム制の適正な導入のために/東京労働局

【関連】フレックスタイム制とは?メリット・デメリット~導入方法・残業代まで徹底解説/BizHint HR

1週間単位の非定型的変形労働時間制

適用される事業が限定されますが、労働者が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業については、労働時間が1週間を平均して、40時間以下(特例措置対象事業場の場合でも40時間になります。)になっていれば、特定の日に10時間までを上限として労働させても時間外労働にならない制度です。

この制度を採用するためには、就業規則への定め(常時10人未満の労働者である事業場を除く)、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要になり、労使協定には以下の事項を定めておかなければなりません。

  1. 1週間の労働時間が40時間以下になること
  2. 40時間を超えて労働させた場合には割増賃金を支払うこと

【参考】1週間単位の非定型的変形労働時間制/兵庫労働局

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、ある労働者について、出張や1日の大半が外回りであるなど、労働時間の算定が難しい場合に、あらかじめ定めておいた時間の労働があったとみなす制度です。みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制と、裁量労働制と言われる専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制があります。

事業場外みなし労働時間制

この制度は、営業職のような基本的に社外で業務を行う労働者のように、使用者の指揮が及ばず、労働時間の算定が困難である場合に、以下の取扱いにするものです。

  1. 原則として、その業務に要する労働時間を所定労働時間とみなす。
  2. その業務を遂行するために、通常、所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、その業務に通常必要となる時間、労働したものとみなす。

この制度を採用するためには、就業規則への定め、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要になり、労使協定には以下の事項を定めておかなければなりません。下記で定める、みなし労働時間が法定労働時間内である場合には労使協定の届け出は不要です。

  1. 対象とする業務
  2. みなし労働時間
  3. 有効期間(期間の幅については特に指定されていません。)

【参考】「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために/東京労働局

専門業務型裁量労働制

この制度は、デザイナーやシステムエンジニアなど、専門性が高く、業務の遂行手段や時間配分に関する具体的な指示をすることが難しい業務が対象になるもので、対象労働者は、実際の労働時間と関係なく、労使協定で定めた時間、労働したものとみなされます。

この制度を採用するためには、就業規則への定め、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要になり、労使協定には以下の事項を定めておかなければなりません。

  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象となる業務の遂行手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 1日当たりのみなし労働時間数
  4. 対象労働者の健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(3年以内が望ましいとされています。)
  7. 4及び5に関する記録を協定の有効期間およびその後3年間保存すること

【参考】専門業務型裁量労働制の適正な導入のために/東京労働局

【関連】専門業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、残業代などの注意点まで詳しく解説/BizHint HR

企画業務型裁量労働制

この制度は、経営の中枢部門で、企画、立案、調査、分析といった、裁量性が高く、業務の遂行手段や時間配分に関する具体的な指示をすることが難しい業務が対象になるもので、対象労働者は、実際の労働時間と関係なく、労使委員会で定めた時間、労働したものとみなされます。

この制度を採用するためには、就業規則でこの制度について定めるとともに、次の事項について、労使委員会の委員の5分の4以上の多数により決議し、決議内容を労働基準監督署長に届け出る必要があります。

  1. 対象業務の範囲
  2. 対象労働者の具体的な範囲
  3. 1日当たりのみなし労働時間数
  4. 対象労働者の健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 本人の同意の取得、不同意者の不利益取扱いの禁止に関する措置
  7. 決議の有効期間の定め(3年以内が望ましいとされています。)
  8. 4、5、6などに関する記録を決議の有効期間およびその後3年間保存すること

基本的には、前述の専門業務型裁量労働制と同じような制度ですが、対象となる労働者の範囲の違いや労働者本人の同意も必要であること、また、労使協定の締結ではなく、労使委員会の決議が必要である点に注意が必要です。

【参考】「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために/東京労働局

日本の平均残業時間

長時間労働が問題になっている日本ですが、どのくらいの残業時間が平均的なものであるのかについて見ていきたいと思います。

厚生労働省の毎月勤労統計調査結果

厚生労働省が全国の無作為に選んだ事業所について、賃金、労働時間、雇用の変動などについて調査し、毎月公表している「毎月勤労統計調査」というものがあります。

以下図表1は、その「毎月勤労統計調査」の平成26年から平成28年までの年結果をまとめたものです。これによると、所定外労働時間の1か月平均は平成26年と平成27年が11.0時間、平成28年はやや減少して10.8時間となっています。すべての事業所の平均時間とはいえ、かなり少ない残業時間であるような印象を受けます。

【図表1】毎月勤労統計調査 平成26年~28年分結果確報

【厚生労働省】毎月勤労統計調査(平成26~平成28年分結果確報)の情報を元に作成

民間企業の残業時間調査結果

以下図表2は、民間企業による残業時間の調査結果ですが、厚生労働省の調査とは違い、事業所ではなく社員に対して調査を行ったものになります。これによると、2016年(平成28年)の平均残業時間は35時間となっており、厚生労働省の時間とは大きな開きがあります。

一概には言えませんが、厚生労働省の毎月勤労統計調査は事業所に対して行っているため、事業所の労務担当者が把握している数字で整理されていることを考えると、こちらの方がより実態に近い数字である可能性もあります。

【図表2】平均残業時間推移

【出典】【Vorkers(ヴォーカーズ)】月間平均残業時間は2015年から大幅減少

残業時間の上限

日本の平均残業時間は、おおよそ月10時間から30時間であることがわかりましたが、そもそも残業時間の上限はどのくらいなのかについて確認していきたいと思います。

前述のとおり、労働者に法定労働時間を超える残業をさせるためには、36協定の締結が必要になりますが、その際には、延長できる時間をあらかじめ決めておかなければなりません。具体的には、以下図表3の各期間における限度時間というものを上限として、次の3つの期間の延長できる時間を決めることになります。原則としては、これらが残業時間の上限ということになります。

  1. 1日について延長することができる時間
  2. 1日を超え3か月以内の期間について延長できる時間
  3. 1年について延長できる時間

【図表3】延長時間の限度

【出典】【厚生労働省】時間外労働の限度に関する基準

なお、図表3の(2)については、前述の1年単位の変形労働制を採用している労働者に適用される限度時間になります。(次に説明する各期間における限度時間は、一般的な労働時間制に適用される図表3の(1)を基準にしています。)

1日の限度

1日の限度時間は定められていませんが、一般の労働者の場合は、1週間の限度時間が15時間であることを考えると、多めにみても5時間前後が妥当と考えられます。

1日超~3ヶ月以内の限度

この範囲の中では、1か月について延長できる時間を定めることが多いですが、そうするのであれば、一般の労働者の場合は、45時間が限度時間になります。

1年の限度

一般労働者の場合は、360時間が限度時間になります。

36協定における特別条項

36協定では、上記のように延長できる限度時間が決められてはいるものの、業務上の特別な事情があれば、特別条項付きの36協定とすることで、さらに労働時間を延長させることができます。その際の主な条件は以下のとおりです。

  1. 原則としての延長時間(限度時間以内)を定めておくこと
  2. 限度時間を超えなければならない特別な事情をできるだけ具体的に定めること
  3. 特別な事情は一時的、突発的なものであり、1年の半分は限度時間を超えないことが見込まれること
  4. 限度時間を超えることのできる回数を定めること
  5. 限度時間を超える一定の時間を定め、その時間はできる限り短くするよう努めること
  6. 限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定め、法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努めること
  7. 一定期間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間(限度時間以内)を延長する場合に労使が取る手続きを、協議、通告などで具体的に定めること

原則としての延長時間(限度時間以内)を超えるためには、あくまで、一時的、突発的なものとして、1年の半分は超えることができず、超えた労働時間にかかる割増賃金率も法定割増賃金率(2割5分以上)を上回る率とする努力義務があるなど、一定の条件があります。

認められる事情

厚生労働省は、特別条項を設けるうえでの要件である一時的、突発的な「特別な事情」とは、限度時間以内の時間外労働をさせる事由よりも限定的であることが必要とし、以下のような例を挙げています。

  • 臨時的と認められるもの 「予算、決算業務」、「ボーナス商戦に伴う業務の繁忙」、「納期のひっ迫」、「大規模なクレームへの対応」、「機械のトラブルへの対応」など
  • 臨時的と認められないもの 特に事由を限定しない「業務の都合上必要なとき」、「業務上やむを得ないとき」、「業務繁忙なとき」や「使用者が必要と認めるとき」、「年間を通して適用されることが明らかな事由」など

【参考】時間外労働の限度に関する基準/厚生労働省

許容時間

この特別条項で設定できる延長時間の上限は、労働基準法上、定められていないため、労使間の協議により決定することになります。

目安は月60時間

特別条項で設定する1か月の延長時間の目安としては、月60時間と言われることがありますが、これは、平成22年4月から、時間外労働が1か月60時間を超えたときの割増賃金率が50%以上になったことも一因であると考えられます。(この50%の適用については、現状においては大企業のみで、中小企業は猶予されています。)

残業時間の計算方法

残業時間などにかかる割増賃金は、原則として、1日8時間、週40時間(特例措置対象事業場については44時間)の法定労働時間を超えた時間や休日労働、深夜労働の時間について計算します。

最近では、給与ソフトに就業時間などを登録しておけば、あとは、給与計算の締め日の後に勤怠データを流し込むことで、自動的に給与計算が完了しますが、そもそもの登録方法を誤っていると、すべての計算が誤った整理になる可能性もあります。基本的な計算の仕組みはおさえておくことが必要です。

割増賃金の定義

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法律で定める割増賃金率以上の率で計算した賃金を支払わなければならないことになっています。この賃金を割増賃金と言います。給与明細などでは「時間外手当」となっていることが多いと思います。

労働基準法第37条

割増賃金については、労働基準法第37条において定められています。 内容を要約すると、以下のようになります。

  • 使用者が、労働時間を延長したり、休日に労働させた場合は、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の25%から50%の範囲内で、それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
  • 延長して労働させた時間が、1か月について60時間を超えた場合は、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

割増賃金は、「支払わなければならない」とされていますので、支払わない場合には、この労働基準法第37条違反となり、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。

【参考】労働基準法 - 法令データ提供システム - 電子政府の総合窓口e-Gov

1時間あたりの賃金

割増賃金を計算するにあたって、対象労働者が月給制などの場合には、1時間あたりの賃金の算出が必要になります。具体的な計算方法は以下、図表4のとおりになります。

【図表4】1時間あたりの賃金の計算方法(月給制の場合)

【出典】【東京労働局】しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編

計算上の「月給」の中に、家族手当や通勤手当などのように、労働者全員ではなく、個別に支給されるようなものは、原則として含むことはできませんので注意が必要です。

割増賃金率

上記、労働基準法第37条において、「25%から50%の範囲内で、それぞれ政令で定める率」を踏まえて、表にしたものが、下記、図表5になります。

【図表5】割増賃金率

【出典】【東京労働局】しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編

時間外労働の場合

例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の労働者が、平日、午前9時から午後6時まで(休憩時間1時間、所定労働時間8時間)の就業時間のところ、午後8時まで残業した場合の割増賃金の計算は次のとおりになります。

1時間あたりの賃金:1,000円×割増賃金率:1.25(25%増)×時間外労働時間:2時間=2,500円

また、1週40時間を超える場合については、例えば、週休2日(土曜日、日曜日が休みで法定休日は日曜日)の会社で、月曜日から金曜日までの合計労働時間が40時間を超えている労働者がいて、その労働者が土曜日に出勤した場合には、休憩時間を除く労働時間すべてを時間外労働(25%増)として計算することになります。

休日労働の場合

例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の労働者が、法定休日に午前9時から午後6時まで(休憩時間1時間)労働した場合の割増賃金の計算は次のとおりになります。

1時間あたりの賃金:1,000円×割増賃金率:1.35(35%増)×休日労働時間:8時間=10,800円

深夜労働の場合

深夜労働とは、午後10時から午前5時までの労働です。 例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の交替制労働者で、平日に、午後5時から深夜2時まで(休憩時間1時間)労働した場合の割増賃金の計算は次のとおりになります。

1時間あたりの賃金:1,000円×割増賃金率:1.25(25%増)×深夜労働時間:4時間=5,000円

割増率が併用される場合

深夜労働の割増賃金計算の例では、深夜労働者を挙げましたが、通常、午前9時から午後6時まで勤務している労働者が、午後10時を超えて労働した場合には、時間外労働の割増賃金率25%に加え、深夜労働の割増賃金率25%も適用されますので、合計50%の割増賃金率になります。 このほかには、休日労働の割増賃金率35%と深夜労働の割増賃金率25%の併用により、合計60%の割増賃金率になる場合があります。

なお、休日労働には時間外労働という概念がありませんので、8時間を超えて労働したとしても、休日労働の割増賃金率35%のみが適用になります。

残業時間の規制

残業が恒常化すると、労働者の健康障害などの問題も出てきます。政府としてもその規制を図るため、様々な対策を講じています。

過重労働とは

長時間労働など、労働者に身体的、精神的に過度な負荷を負わせる労働のことを過重労働と言います。

【関連】過重労働の定義とは?企業で行う対策~過重労働撲滅特別対策班や相談窓口もご紹介/BizHint HR

過重労働によるリスク

過重労働は、労働者の疲労を蓄積させ、回復させる時間も与えないため、様々な健康障害を引き起こす可能性を高めます。

健康障害

厚生労働省の機関である労働安全衛生総合研究所によると、過重労働は、労働負荷の増大とともに、睡眠や休養時間、余暇時間などを不足させ、結果的に、以下の健康問題につながる可能性を高めるとしています。

  1. 脳・心臓疾患
  2. 精神障害・自殺
  3. その他の過労性の健康障害
  4. 事故・ケガ

特に、1、2については、社会問題にもなっているため、各企業での過重労働対策が求められています。

【参考】長時間労働者の健康ガイド/独立行政法人労働安全衛生総合研究所

過重労働の基準時間

過重労働による労働災害の適用に関する、厚生労働省の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」では、労働時間が1か月当たり80時間から100時間にもなると、業務と疾患の発症の関連性が強いとしています。これらの時間は「過労死ライン」と言われるもので、過重労働の限界時間とも言えます。

80時間

労働災害の認定基準では、脳・心臓疾患の発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があった場合には、業務と発症の関連性が強いとされています。

100時間

労働災害の認定基準では、脳・心臓疾患の発症前1カ月間におおむね100時間を超える時間外労働があった場合にも、業務と発症の関連性が強いとされています。

【参考】脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について/厚生労働省

残業時間の削減対策

残業時間の削減については、様々な方策が考えられますが、厚生労働省においてもいくつかのパンフレットや指針などを公開しています。

厚生労働省のアンケート調査結果

厚生労働省が平成24年に公開している「時間外労働削減の好事例集」というパンフレットでは、10,363の事業場に対する、時間外労働時間削減の取り組み状況のアンケート調査結果として、以下、図表6を紹介しています。

【図表6】時間外労働削減のために取り組み状況

【出典】【厚生労働省】時間外労働削減の好事例集

これによると、「従業員間の労働時間の平準化」、「残業を事前に承認する制度」、「従業員の能力開発の実施や自己啓発の支援」の3つについては、全事業場の約80%が実施していることがわかります。

残業時間削減の基本的な取り組み方法

基本的な取り組み方法としては、上記のアンケート結果に挙げられているものもありますが、厚生労働省のパンフレットや様々な資料から抜粋すると、次のようなものが有効であると考えられます。

経営トップによるメッセージの発信

残業時間の削減の取りかかりとしては、労務担当部門からの指示では、どうしても前に進まないことが多いものです。会社が本気で取り組んでいることを示すためにも、社長など経営トップからメッセージを発信することが効果的です。

朝方勤務やノー残業デーの導入

これらは、ともに業務効率化や生産性向上を狙うのですが、社員の健康問題の改善も期待できるものです。ただし、ノー残業デー(または、ノー残業ウィーク)は、仕事の持ち帰りや、前後の残業時間確認などのフォローも必要です。

【関連】「ノー残業デー」とは働き方改革の一つの手段?メリット・デメリットを合わせてご紹介 / BizHint HR

多様な働き方の導入

育児や家族の介護のほか、様々な事情を持つ社員については、テレワーク(在宅勤務)などの導入も効果的です。残業時間や様々な経費を削減することができるだけでなく、優秀な人材を有効に活用できます。

【関連】テレワークとは?意味やデメリット、導入企業事例、助成金制度を紹介 / BizHint HR

勤怠管理システムの導入

残業時間の「見える化」も重要です。ICカードや、パソコンの起動・シャットアウト時間を社内のデータに取り込み、リアルタイムで残業時間を管理できるようにすることで、残業時間の抑制が期待できます。

【関連】働き方改革でも注目される「勤怠管理システム」とは?役割と活用事例を解説/ BizHint HR

管理職の育成・評価基準の変更

管理職は部下の残業を指示あるいは許可する立場にあるため、その状況を把握しておかなければなりません。最近では、管理職に部下の残業時間や年次有給休暇の管理教育に力を入れたり、人事考課項目として含めている企業も増えてきています。

【関連】人事考課の意味とは?評価との違いと、ポイントをわかりやすく解説/ BizHint HR

年次有給休暇の取得促進

年次有給休暇を労働者に取得させることは、心身の疲労を回復させるだけでなく、生産性の向上を図るためにも重要です。厚生労働省の「長時間労働の削減に向けて」というパンフレットでは、年次有給休暇の取得促進のための方法として、以下を挙げています。

  • 休暇取得計画の設定やその計画が実施されるようなフォロー(月1日以上の休暇、土日、祝日に休暇を組み合わせた連続休暇など)
  • 年次有給休暇の計画的付与制度の導入
  • 部下の休暇取得状況を管理職の人事評価項目に盛り込む

労働者は、周囲に迷惑がかかることや、後で多忙になることを心配して、年次有給休暇を取得することにためらいを感じている場合があります。より取得しやすい環境をトップダウン方式で整備することが重要になります。

【参考】長時間労働の削減に向けて/厚生労働省

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/ BizHint HR

労働時間の設定改善

労働者個人の抱える事情や、社内各部署の業務態様に応じた労働時間に見直すことで、残業を削減できることもあります。 厚生労働省が平成18年に制定し、その後も見直しが続いている「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)によると、労働者の多様な事情および業務態様に応じた労働時間の設定として、以下を挙げています。

  • 時季や日に応じて業務量に変動がある事業場については、変形労働時間制、フレックスタイム制を活用すること
  • 年間を通しての業務の繁閑が見通せる業務については、1年単位の変形労働時間制を活用して、労働時間の効率的な配分を行うこと
  • 労働者の創造性や主体性が必要な業務については、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の活用も検討すること
  • いわゆる短時間正社員のような柔軟な働き方の活用を図ること

【参考】労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)/厚生労働省

健康管理の促進

労働者の健康管理については、経営者もその重要性を感じつつ、一義的には利益を生み出さない活動であるとして、あまり積極的に取り組まない傾向があります。しかし、労働者の健康管理に投資することは、経営者としての責務であり、企業にとっても重要なことです。

健康管理の取り組み

企業としては、残業時間を削減していくとともに、労働者の健康管理も促進していかなければなりません。先の厚生労働省のパンフレット(長時間労働の削減に向けて)では、労働者の健康管理について、以下の取り組みの徹底を求めています。

  • 産業医や衛生管理者などの選任
  • 衛生委員会の設置
  • 健康診断や健康診断結果に基づく適切な事後措置の実施
  • 長時間にわたる時間外、休日労働を行った労働者に対する医師による面接指導の実施
  • ストレスチェックの実施

上記は、事業主の義務(一部、労働者が50人未満の事業場については、その他の方策であるか義務がない場合あり)であり、労働者の健康を管理するための基本になるものですので、適切に実施していく必要があります。

【関連】ストレスチェック義務化の対象者・スケジュールを徹底解説/ BizHint HR

経営面での健康管理

経済産業省が平成28年に公開している「企業の健康経営ガイドブック」によると、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性などを高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考えた「健康経営」を実施することが重要であるとしています。 これをイメージ化したものが、図表7になりますが、経営者はこのことを念頭に置いて、労働者の健康管理を組織戦略に進めていくことが求められています。

【図表7】健康投資のイメージ図

【出典】【経済産業省】企業の「健康経営」ガイドブック

【関連】健康経営とは?企業の取り組み事例を交えご紹介/ BizHint HR

まとめ

  • 企業は、36協定や割増賃金計算の仕組みを理解したうえ、労働者の働き方に合わせて労働時間の設定を見直すことで、残業時間を削減できる可能性がある。
  • 残業時間を削減するためには、業務態様に合わせて、変形労働時間制、みなし労働時間制などを採用することも有効。
  • 長時間労働が恒常化している企業においては、労働者の健康障害が予想されるため、労働災害被災者を出さないためにも、早期の残業時間の削減対策が必要。
  • 労働者の健康管理を促進することは、コストがかかるだけものではなく、業績や企業価値 の向上にもつながるものである。

<執筆者>本田勝志 社会保険労務士

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