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2019年9月2日(月)更新

36協定

残業時間に関わる「36(サブロク)協定」についてきちんと理解していますか?36協定とは、労働者に残業や休日労働をさせる場合に届出が必要な書類・労使協定のことです。2019年4月に施行された働き方改革関連法にも大きく関連しています。本記事では、36協定が必要になるケースの紹介をはじめ、残業の上限(限度時間)や特別条項、36協定の書き方、注意点や違反事例まで徹底解説いたします。

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36協定とは

36協定とは、 従業員に残業や休日労働を行わせる際に必ず締結しておかなくてはいけない協定 のことです。

この協定が労働基準法36条に定められていることから、通称「36協定」と呼ぶようになりました。 正式名称は「 時間外・休日労働に関する協定届 」 といいます。

労働基準法では、労働時間について、「 1週間40時間 」「 1日8時間 」を超える労働をさせてはいけないという「法定労働時間」が定められています。しかし、日常的に業務を行っていると、8時間を超える労働は多くの企業で発生します。そこで、労働基準法第36条では、法定労働時間の例外として、あらかじめ 労働組合等と使用者が書面による協定を締結し届け出ることによって、法定労働時間を超えた時間外労働や休日労働をさせることができる としています。

これまでは、この協定を結び労働基準監督署に届け出ることで、実質上限なく時間外労働に従事させることができていましたが、働き方改革関連法の施行により罰則付きの上限規定が法律化され、昨今注目を浴びることになりました。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法36条

36協定の届出が必要となる2つのケース

36協定の作成・届出は、以下の2つのケースで必要となります。

時間外労働を行わせる場合

労働基準法に定める 「1日8時間」「1週40時間」の法定労働時間を超える労働に従事させる場合 には、36協定を締結する必要があります。

「うちは残業がない会社だから36協定は必要ない」と思われる経営者の方もいるかもしれませんが、いわゆる「残業」がない会社であっても、1日8時間、週6日勤務の場合には、1週48時間となり、「1週40時間」までという週単位での時間外労働違反となるため、36協定を締結・届け出ていない場合には、労働基準法違反となってしまいます。

完全週休2日制でない会社の場合は注意が必要です。

【関連】労働時間とは?休憩時間の定義や上限、国際比較や計算法をご紹介 / BizHint

法定休日労働を行わせる場合

法定休日労働を行わせる場合にも36協定の締結・届け出が必要です。労働基準法では、休日についても「 毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない 」と定められています。これを「法定休日」といいます。

従業員を週に1度の休みなく働かせる場合には、事前に36協定を締結・届出をする必要があります。

完全週休二日制(土日)の会社で法定休日を日曜としている企業の場合、土曜日に休日出勤があったとしても、土曜日は会社が定めた所定休日になるため、36協定を締結していなくとも法律違反にあたりません。

【関連】法定休日とは?所定休日との違い、振替休日と代休の関係、規定例まで解説 / BizHint

36協定届出の義務がある事業所

法定労働時間を超えて働く労働者が一人でもいる会社は、36協定を作成する義務が生じます

なお、この場合の労働者とは、正社員・契約社員・パートタイム労働者・アルバイト・嘱託社員など、 雇用形態は問いません 。たとえ法定労働時間を超える可能性がある労働者がアルバイト1人だとしても、作成をする義務があります。

ただし、法定労働時間を超える労働を行うのが派遣労働者であった場合は、36協定の作成義務が生じるのは派遣元となるため、派遣先における作成は必要ありません。

36協定で定められている限度時間

36協定を締結すれば、無制限に時間外労働を行わせて良いわけではありません。法定労働時間を超えて労働させる時間は、 「1週間15時間」、「1カ月45時間」、「1年360時間」 など、期間に応じて限度時間が定められています。(対象期間が3月を超える1年変形労働時間制の場合は別途指定あり)

ただし、臨時の特別な事情がある場合には、「 特別条項 」を設けることでこの時間を超えて労働させることも可能です。

36協定の届出を行わなかった場合は

もし、36協定を締結せずに時間外労働・休日労働を行わせた場合には、労働基準法違反となり、 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金 という非常に厳しい罰が科せられることになります。締結だけを行い、労働基準監督所に届け出ていない場合にも同様の罰則があります。

法律を今一度確認し、ルールに基づいて適切な締結・届出を行うようにしましょう。

働き方改革関連法の施行による時間外労働の上限規制

2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)により、労働基準法が改正されました。36協定については次の見直しが行われています。

時間外労働の上限規制

昨今の過労死問題などを受けて、「特別条項」を設定する場合でも、時間外労働は年720時間(月平均60時間)まで とされ、その枠内でも次の上限が設けられることになります。

  • 休日労働を含めて、2~6か月平均で80時間以内とすること
  • 休日労働を含めて、1月で100時間未満とすること
  • 原則としての延長時間の限度である月45時間(または42時間)を超える回数は年6回までとすること

延長が可能な限度時間の期間変更

改正前は、「1日」「1日を超え3か月以内の期間」「1年間」という対象期間に対して、それぞれ延長できる労働時間の限度基準が定められていましたが、改正後はこれまで自由に定めることができていた対象期間における設定期間が、 「1か月」または「1年間」 に限られることになりました。

罰則の適用

罰則については最後に詳しくご紹介しますが、これまでも時間外労働や休日労働があるにもかかわらず、36協定を締結していない場合や36協定の届け出を行っていない場合には罰則の適用がありました。しかしながら、 あくまでも告示であり、法律的な上限はなく、特別条項を設けることでその上限も見逃されてしまい、実態は無法地帯と化していました

そこで、 これまでの告示から正式に法律に格上げ し、上限に違反した場合には、 罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金) が科せられることになり、その実行性の確保が図られています。

36協定の経過措置

これらの改正について、大企業は「 2019年4月1日 」から、中小企業は1年間の猶予期間があり、「 2020年4月1日 」から適用とされています。しかし、各企業が締結する36協定は、必ずしも4月からはじまる年度単位の有効期間ではありません。

このため、これらの改正は施行日以後の期間のみを定めた36協定に対して適用されることになっています。

【出典】【厚生労働省】時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 6P

上記の図の「36協定の始期が2018/10/1の場合」のように、上限規制の施行日より前の期間を含む36協定を締結している場合には、その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。次に締結する36協定から上限規制に対応することになります。


詳細はこちらの記事をご覧ください。
【関連】「時間外労働の上限規制」をわかりやすく解説!罰則や施行開始時期は?/BizHint


36協定で定められた時間外労働の上限

36協定では、時間外・休日労働として残業や休日出勤をさせる延長時間の限度が定められています。したがって、この基準内の数値で残業時間を設定する必要があります。

一般労働者と変形時間労働制で働く労働者では、上限の時間が異なります。 1日の延長時間の限度については、どちらも原則設けられていません 。

詳細について確認していきましょう。

一般労働者の限度時間

期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1ヶ月 45時間
2ヶ月 81時間
3ヶ月 120時間
1年間 360時間

変形労働時間制の対象労働者における限度時間

対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制とは、季節などによって業務の繁閑に差のある事業において、その業務の繁閑に合わせてあらかじめ労働時間を配分し、全体として労働時間を短縮することを目的とした制度です。

期間 限度時間
1週間 14時間
2週間 25時間
4週間 40時間
1ヶ月 42時間
2ヶ月 75時間
3ヶ月 110時間
1年間 320時間

【関連】変形労働時間制とは?残業や休日の取り扱い、届出について詳しく解説 / BizHint

上限の例外

上記のような運用で時間外労働・休日労働を行わせることができる労働者と異なり、例外や特別な制限がある労働者もいます。

36協定適用除外の職種

次に述べる業務に携わる労働者の場合は、上記の限度時間が適用されず、対象外となっています。

  • 工作物の建設などの事業
  • 自動車の運転業務
  • 新技術・新商品の研究開発業務
  • 造船事業の船舶改造・修繕業務、郵政事業の年末年始業務など、厚生労働省労働基準局が指定する業務

【参考】時間外労働の限度に関する基準/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

改正後は、除外となる対象業種がやや変更されます。

以下の業種は、改正後限度時間が適用されることになりますが、改正法の施工後5年間(2024年3月31日を含む期間を対象に締結した36協定までが対象)は上限規制の適用を猶予されることになっています。

  • 工作物の建設などの事業
  • 自動車の運転業務
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県・沖縄県における砂糖を製造する事業

「技術・新商品の研究開発業務」については、医師の面接指導、有給休暇(年次有給休暇を除く)の付与等の健康確保措置を設けた場合には、これまでと同様に限度時間については適用除外とされることになりました。

1日の延長時間の限度が定められている労働者

1日の延長時間の限度については、先述した通り原則設けられていません 。ただし、次に述べるいわゆる「 危険有害業務 」に指定される業務に携わる労働者の場合は、限度時間が 1日2時間以内 と定められています。

  • 坑内労働
  • 多量の高熱物体を扱う・著しく暑い場所における業務
  • 多量の低温物体を扱う・著しく寒い場所における業務
  • ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線を扱う業務
  • 土石、獣毛等のじんあい、粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下での業務
  • 削岩機、鋲打機等の使用などで身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物取扱いなどの重激な業務
  • ボイラー製造などの強烈な騒音を発する場所における業務
  • 有害物(鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物)の粉じん、蒸気、ガスを発散する場所における業務

36協定の「特別条項」とは

先述している通り、繁忙期を迎え法律で定められた残業の延長時間限度を超えることが見込まれる場合のため、36協定の中に「特別条項」を設けてきました。ここからは、特別条項についての説明をしていきましょう。

どのような場合に利用できるのか

特別条項は、あくまでも特別に設けられた制度です。

改正前の特別条項は、「限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る)」とされていましたが、今回の改正により、「通常予見することができない業務量の大幅な増加などに伴い 臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合 」とやや厳しい言い回しに条文化されることになりました。

臨時的な事情とは

臨時的な事情については、ただ単に「都合上必要な場合」などと定めたのみでは足りません。たとえば「決算業務への対応」や「年に一度のボーナス商戦期における販売」「納期のひっ迫状況への対応」など、 具体的な状況説明が必要 となります。

具体的な許容時間

許容時間については、 労働基準法の改正により、2019年4月から明確な時間が設定されることになりました。

  • 休日労働を除き、1年720時間
  • 休日労働を含めて、1ヵ月100時間未満
  • 休日労働を含めて、2~6か月平均で80時間以内
  • 原則の月45時間(1年変形の場合は42時間)を超える回数は年6回まで

今回の改正では、労働者の健康確保を第一に考えての改正であるため、一部、 時間外労働に休日労働も含めることになったことに注意が必要です。

ただし、 中小企業については1年猶予があり、2020年4月からの適用 となります。

【中小企業の範囲】

36協定届の書き方

では、ここからは、36協定を作成するにあたり労使間で協定を結ばなければならない内容について、具体的に説明をしていきましょう。

【関連】労使協定とは?労働協約との違いや効力、種類や届出・有効期間などもご紹介 / BizHint

届出の様式

36協定こと「時間外・休日労働に関する協定届」は、様式第9号(特別条項を定める場合は様式第9号の2)として定められた様式における書類です。

厚生労働省や各都道府県労働局、労働基準監督署などのホームページでは、様式を無料でダウンロードすることが可能であるため、活用する方法が有効です。なお、あらかじめ登録済みの電子申請システムを利用すれば、オンラインで届け出を行うことが可能となります。

【参考】電子政府の総合窓口E-GOV〔イーガブ〕:時間外労働・休日労働に関する協定届(各事業場単位による届出)

記載が必要な情報

36協定の作成についての詳細を解説していきます。

1.会社情報

36協定の届け出には、労働時間や残業時間、延長時間などに加え、必要最低限の会社情報の記載欄があります。主な項目は次の通りです。

  • 事業の種類: 登記簿謄本などに記載した会社の業務内容を記載
  • 会社名・住所・電話番号: 法人の場合は法人名とその所在地を、支店の場合は支店名まで記載し、支店の所在地を記載
  • 使用者側の職名・氏名: 法人事業主の場合は代表社員を、個人事業主や代理人の場合は個人印を押印。自筆の場合は押印を省略可
  • 労働保険番号: 今回改正で追加された項目。労働保険の番号を記載
  • 法人番号: 今回改正で追加された項目。法人の場合は法人番号を記載

2.時間外労働の具体的事由

まず必要となるのが、労働者に時間外労働をさせる事由です。たとえば「臨時の受注への対応」「時間外の顧客対応」「納期変更による対応」などが挙げられます。ここで重要となるのが、事由は 「具体的なもの」かつ「やむを得ぬもの」でなければならない 、という点です。

3.時間外労働が必要な業務の種類

前述の「具体的事由」をより限定的なものとするため、次に時間外労働をさせる必要がある業務の種類を指定する必要があります。「社員」「パート社員」などの大きなくくりでまとめるのではなく、「営業」「機械組立」「スタイリスト」など、 必ず業務の詳細を記載しなければなりません

4.時間外労働を行う労働者数

「具体的事由」限定した労働者数を、業務の種類ごとに記載します。労働者数は、雇用形態を問わず、あくまでも業務別にカウントした上で記入しましょう。

5.所定労働時間

会社の事業所ごとに定められた、本来所定労働時間数を記載します。法律で定められた法定労働時間ではない点に注意が必要です。

6.延長時間

時間外・休日労働として残業や休日出勤をさせる延長時間の限度数を記載します。 延長時間は、次の3つの期間に分けて記載をしなければなりません。

  • 1日
  • 1ヵ月
  • 1年間

改正前は、36協定の対象期間と有効期間が一致するものとされてきましたが、今回の改正で、対象期間が「1年間」に限定されたことで、それぞれの期間が一致しない可能性も出てきました。そこで、必ず起算日を定め、記入することでそこから1年間が時間外労働又は休日労働をさせることができる対象期間とされることになりました。

7.有効期間

36協定における有効期間は、最短で「1年」となります。1年を超える期間ならば特に制約はないものの、会社の事業は年度ごとに見直す可能性が高いことから、 時間外・休日労働の見直しも1年ごとに行うのが望ましい とされています。

ただし、1年以内に事業が完了する見込みがある場合は、終了までの期間にすることが認められています。

8.休日労働

法定休日に労働させる必要がある場合には、時間外労働の記入と同様に、

  • 休日労働をさせる必要がある具体的事由
  • 業務の種類
  • 労働者数
  • 労働させることができる法定休日の日数
  • 労働させる場合の法定休日における始業・終業の時刻

これらの項目を同じ様式内に協定します。

9.特別条項の制度を利用する場合、記載が必要となる事項

特別条項の制度を利用する場合、特別条項用の様式第9号の2の協定届の届出が必要です。改正前は、36協定の用紙の中に特別条項を設けていましたが、 改正後は従来の様式と異なり、一般条項の様式と、特別条項付きの様式が別々 になりました。

特別条項付きの様式(様式第9号の2)は、以下2枚の記載が必要です。

  • 限度時間内の時間外労働についての届出書(1枚目)
  • 限度時間を超える時間外労働についての届出書(2枚目)

具体的な記載内容は以下となります。

  1. 具体的事情の記載
    臨時的に限度時間を超えて労働させる内容を具体的に記載
  2. 労使手続きの内容
    特別の事情が発生したために延長時間の限度を超える状況となった際に、労使間で取った手順について具体的に記載
  3. 限度時間を超えて労働させることができる時間と回数
    特別の事情によって必要とされる、月の時間外労働の限度時間(月45時間又は42時間)を超えて労働させる時間と回数を定める
  4. 特別延長時間の割増賃金率
    特別延長時間に相当する労働時間に対して加算される割増賃金率を記載。なお、この割増賃金率は法定割増賃金率の下限となる2割5分を超えなければならない

10.労働者代表の氏名・選出方法

36協定の締結は労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には労働組合と締結します。労働組合がない場合には、投票・挙手等の方法で労働者の過半数代表者を選出し、協定を結びます。

なお、労働者側の代表は、労働基準法41条2項に規定される「管理監督者」以外の者より選出しなければなりません。また、選出方法についても、投票や挙手などの公平性を期した方法で行わなければならず、選出方法の記載も必要です。

【参考】政府の総合窓口E-GOV〔イーガブ〕:労働基準法第41条)

記入例(法改正後)

法改正後の36協定は従前のものと大きく変わっています。厚生労働省の記載例には書き方と注意書きもありますので参考にしながら作成しましょう。

【参考】36協定届の記載例/厚生労働省

特別条項の記載例は以下となります。

【参考】36協定届の記載例(特別条項)/厚生労働省

36協定の注意点

ここからは36協定を締結・運用するにあたり注意すべきことを紹介いたします。

36協定は届出が効力発生の条件

36協定は、締結し、かつ所轄労働基準監督署に届出ることではじめて、時間外労働・休日労働の免罰的効力が発生します。事後の届け出は認められていないため、必ず事前に届け出が必要です。

締結だけでは法律違反になってしまうので注意しましょう。

届出の単位は「事業所ごと」

1つの企業に2つ以上の事業場がある場合には、事業場ごとに提出しなくてはなりません。ただし、本社以外の事業場でも締結した協定が本社と全部または一部が同じ場合には本社所轄の労働基準監督署長を経由して全部または一部の本社以外の各事業場の所轄労働基準監督署長に一括して届け出ることが可能です。

届出のあとには周知が必要

36協定に限らず、労使協定や就業規則は、備え付け、書面の交付等によって労働者に周知しなければなりません。労働者が必要な時に内容を常時確認できるようにしておきましょう。

36協定が適用されないケース

36協定を締結しても適用が除外される労働者もいます。以下の者は、36協定を締結していたとしても時間外労働・休日労働をさせることができません。

  • 18歳未満の労働者
  • 妊産婦である労働者から請求があった場合

また、育児・介護を行う労働者から請求があった場合には、「1ヵ月24時間かつ1年150時間」以上の時間外労働をさせることはできません。

残業代について

36協定を締結していたとしても、法定時間外労働をさせた場合には、もちろん残業代金は発生します。

基本的な時間外労働は 通常賃金の25%の割増賃金 が必要ですが、法定休日に労働させた場合には、 35%の割増賃金 が必要です。

また、特別条項付き36協定の場合には、割増賃金の率を別途定めなくてはなりません。

さらに、これまで中小企業については、月60時間以上の時間外労働の割増賃金率を50%以上としなければならないところ、25%以上でも良いという猶予措置が設けられていましたが、今回の改正でこの猶予措置が撤廃され、2023年4月1日からは大企業同様の割増賃金が求められることになりました。

【関連】残業時間の上限は?36協定や変形労働時間の概要、計算法や削減対策まで解説 / BizHint

36協定違反になるケース

36協定については、法律によりさまざまな定めが設けられていることが、ここまでの内容でお分かりいただけましたでしょうか。

ここからは、36協定違反と扱われるケースについて、順を追って述べていきます。社内での対応を徹底し、適切な手段を取るようにしましょう。

36協定を作成せず、労働者に対して時間外労働や休日労働をさせた場合<協定書の作成義務違反>

36協定を作成せずに労働者に対して時間外労働や休日労働をさせた場合は、許可なく法定労働時間を超える労働をさせたということで労働基準法32条または35条違反となり、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科せられる可能性があります。

《労働基準法32条(労働時間)》

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

《労働基準法35条(休日)》

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

労働基準監督署への届出をせず、労働者に残業をさせた場合<届出の義務違反>

36協定を作成していたものの労働基準監督署への届け出を怠り、労働者に残業をさせた場合には、前述の「協定書の作成義務違反」と同じく労働基準法32条または35条違反となり、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科せられる可能性があります。

36協定の届け出を行ったものの、定めた延長時間の限度を超えた場合

延長時間限度を超過する残業をさせた場合は、前述の内容と同じく労働基準法32条35条違反となり、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科せられる可能性があります。

これは、特別条項で定めた延長時間限度を超えた場合も同様であり、2019年4月から(中小企業は2020年4月から)は、導入される 上限時間を超えた場合にも違反 となりました。

適切な残業代を支払わなかった場合

36協定で定めた残業時間を超えて労働させた場合の罰則については前述の通りですが、残業代にまつわる違反行為の場合は内容が異なります。

法定労働時間や法定休日を超えた労働をさせたにもかかわらず、定められた割増賃金率に沿った賃金を支払わなかった場合は労働基準法37条違反となり、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科せられる可能性があります。また、適切に賃金の支払いが行われなかったことで、労働基準法24条違反として、 30万円以下の罰金 に処せられる場合もあります。

さらに、民事上の責任を取る必要があることから、未払いの残業代に対する延滞金や付加金を課せられるケースもみられるため、適切な残業代の算出は会社の経営にとって必要不可欠といえるでしょう。

《労働基準法24条(賃金)》

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で、厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので、厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

《労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)》

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で、それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

まとめ

  • 36協定は、労働者に法定労働時間を超える残業や休日労働をさせる場合に作成し、会社の所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出を行わなければならない。
  • 36協定には残業や休日出勤が必要となる理由や業務内容、労働者数、延長時間などを定め、延長時間限度を超える臨時的状況に対応する際には特別条項を活用する。
  • 特別条項を活用する場合には、2019年4月から(中小企業は2020年4月から)上限時間が設けられるため注意しなければならない。
  • 36協定違反となる行為には協定書の作成義務違反、届け出義務違反、法改正部分を含む延長時間限度の超過、残業代の支払などの内容が挙げられ、それぞれ罰則が設けられている。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


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