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連載:第6回 進め方いろいろ「中小企業の働き方改革」

目標は「残業ゼロのみ」と腹を括った。売上度外視の中小企業が増収増益を続けられる理由

BizHint 編集部 2021年12月23日(木)掲載
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「働き方改革」が提唱され、残業を減らすことは中小企業の課題となっています。しかし、実際はまだまだハードルが高く、残業削減目標を達成できないと嘆いている経営者は多いのではないでしょうか。そんななか「残業ゼロ」をスピーディーに実現しながら、増収増益を続けていることで注目を集めているのが、新潟の建築金具メーカー・株式会社サカタ製作所です。残業ゼロをめざした経緯や成功の理由について、代表取締役社長の坂田匠さんに話を聞きました。

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株式会社サカタ製作所
代表取締役社長 坂田 匠さん

1960年新潟県生まれ。日本大学工学部機械工学科を経て、1983年に大道エンジニアリング入社。1985年サカタ製作所に入社、1995年常務取締役社長就任。社員が働きやすい会社づくりを推進しており、「ホワイト企業認定」「子育てサポート企業くるみん認定」など数々の功績を残している。


「こんなひどい会社は見たことがない」と言われ、“残業ゼロ”の達成を決意

――貴社は、一般財団法人日本次世代企業普及機構が主催している「ホワイト企業アワード」において、2018年・2019年と連続受賞されました。また、製造業では異例の「残業ゼロ」を掲げていらっしゃいます。今回は、これらを実現された背景や過程をお伺いできればと思います。

坂田 匠さん(以下:坂田): 我々はソーラーパネル取付金具や折板屋根用建築金具を製造するメーカー企業です。従業員数は現在186名(2021年10月時点)で、最も人数が多いのは製造部となっており、全体の約三分の一を占めています。本社は新潟県長岡市で、その他県内2カ所に工場をもち、東京と大阪にも事務所を置いています。


工場内の様子

――2015年から「残業ゼロ」の取り組みを始めたそうですね。相当な覚悟をもった決断だったのではないでしょうか。

坂田:実を言いますと、最初に定めた目標は「残業ゼロ」ではなく、「残業20%減」だったんです。 数年前までは36協定違反スレスレのレベルで残業させてしまっていた状態だったため、まずは20%削減しようと考えました。

当社では、毎年11月に社員全員が集まる全体集会で、取締役会で決定した次年度の経営方針を発表します。利益・品質・安全など複数の項目で目標を設定するのですが、2015年の目標のひとつとして「残業20%減」を掲げる予定でした。

しかし、ある出来事がきっかけで考えがガラリと変わることになり、「残業ゼロ」を目指すことにしたのです。

―― 何があったのでしょうか?

坂田: 2014年11月の全体集会で、株式会社ワーク・ライフバランスの代表取締役社長、小室淑恵さんによる「仕事と家庭の両立」についての講演が行われました。「仕事を優先することで実は生産性が落ちている。そして家庭も犠牲となる。結論として、残業はない方がいい」といった内容でした。

なるほど…と感心しながら聞いていたのですが、最後に小室さんが 「私はこれまで何百社という企業で講演をしてきましたが、こんなにひどい会社は見たことがありません!」 と、当社の労働環境を厳しく指摘されたんです。

いやぁ、正直悔しかったですよ。しかし同時に、この挑発ともとれる発言は「千載一遇のチャンス」とも思いましたね。

先ほど言った通り、「残業20%減」は既に方針のひとつとして決まっていましたが、この目標では全く足りないと強く感じました。そこで私は、講演前に決められていた目標はすべて白紙に戻し、 「2015年は残業ゼロを目標にします! 他の目標は一切ありません!」 と宣言したのです。

――社長の独断で決められたのですか? 役員の皆様はどんな反応でしたか…?

坂田: 監査役の方が、驚きすぎて盛大に椅子から転げ落ちていました(笑)。それほど役員にとっては、私の判断が衝撃的だったのだと思います。

しかし、 小室さんの講演を“全従業員”が聞いて、「残業は不要」とこの場にいる全員の意識が高まっているときに、今すぐ施策をスタートすることが重要 だと直感したんです。

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