はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2019年1月9日(水)更新

変形労働時間制

変形労働時間制とは、長時間労働を削減することを目的に、事業所の繁閑期に沿った形で労働時間を設定する制度で、1ヶ月や1年単位など4種に分類されます。今回は、変形労働時間制の種類やメリット・デメリット、労使協定や就業規則の届出義務についてあますことなく紹介します。その他、残業代計算方法も種類ごとに順を追って紹介していきます。

変形労働時間制 に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、労働者がその会社で働くトータルの勤務時間を、より短縮できるように柔軟性をもたせた労働時間を設定することです。

変形労働時間制の目的

変形労働時間制は、労働者が負担のないような形で労働時間の配分を行うことで、長時間労働への対策を取ることが目的の制度となっています。たとえば、週休二日制を普及させる方法や年間の休日日数を増やす方法、会社の業務の忙しさに対応した労働時間の割り振りを行う方法などで、労働者が無駄に働く時間を減らすことをねらいとしています。

変形労働時間制を導入した場合、一定期間内の週あたりの労働時間が法定労働時間をオーバーしない状態であれば、定められた特定日に一日の法定労働時間をオーバーする状況や、特定週に週あたりの法定労働時間をオーバーする状況になったとしても「法定労働時間内である」とみなすことができます。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限のことをいいます。具体的には、【一日に8時間、一週間で40時間】が限度とされています。これは、休憩時間を除いた数値であることに注意が必要です。

《労働基準法32条》
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

変形労働時間制の種類

変形労働時間制には、次の4種類の制度が設けられています。

  1. 1ヶ月単位の変形労働時間制
  2. フレックスタイム制
  3. 1年単位の変形労働時間制
  4. 1週間単位の非定型的変形労働時間制

変形労働時間制にまつわる書類

変形労働時間制を導入するには、使用者と労働者の間で「この働き方でOKです」という取り決めを行う必要があります。そのために必要となる書類について、ここからは説明をしていきましょう。

労使協定

労使協定とは、事業場内で働く労働者の過半数で構成された労働組合または労働者の過半数の代表者と使用者との間で交わされる、書面の協定のことです。

労使協定は、法律で定められた義務を免除することや、免除による刑罰を免れる効果がある書類ですが、労使協定単体で労働契約を成立させることはできません。契約を成立させるためには、必ず労働協約や就業規則などでその旨を規定する必要性が生じます。

【関連】労使協定とは?労働協約との違いや効力、種類や届出・有効期間などもご紹介/ BizHint HR

就業規則に準ずるもの

就業規則に準ずるものとは、従業員数が常時10人未満である会社が作成する、就業規則に相当する内容が定められた書面のことです。

労働基準法では、常時10人以上の従業員を抱える会社は、同法律の定めに沿った内容で就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出を行わなければならない、と定めています。

《労働基準法89条》
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

上記の法律によれば、従業員数が10人に満たない会社の場合は、就業規則の作成や届け出の義務は設けられていません。ただし、変形労働時間制などの制度を導入する場合などは、労使協定とともに就業規則の整備を行う必要があります。

このような場合に作成する社内ルールに関した書類のことを「就業規則に準ずるもの」といいます。

変形労働時間制と36協定

変形労働時間制と36協定は、ともに労使協定が必要となる、労働者の働く時間に関する制度です。しかし、その内容は全く異なる制度であることを理解しておきましょう。

変形労働時間制は前述の通り、一定期間内の労働時間が法定労働時間をオーバーしない状況であれば、定められた特定日や特定週に法定労働時間をオーバーしても法違反とならない制度です。一方36協定は、法定労働時間を超えて働く、つまり残業や休日労働を行う労働者が1人以上存在する会社は、必ず協定届を提出しなければならない、という制度です。

変形労働時間制を導入する際にも、時間外労働や休日労働が生じる状況であるならば、36協定の締結・届出が必要となります。

【関連】36協定とは?残業時間のしくみや特別条項・届出・違反まで徹底解説/ BizHint HR

変形労働時間制導入のメリット・デメリット

変形労働時間制は、会社の状況に沿った形で労働者に勤務をさせることが可能な制度であるため、導入することでさまざまな効果が生じます。ここからは、変形労働時間制におけるメリットやデメリットについて紹介していきます。

変形労働時間制のメリット

変形労働時間制の一番のメリットとしては、やはり業務の忙しさに合わせた働き方をさせることができる点です。

どのような会社にも、多少なりとも忙しい繁忙期や比較的余裕がある閑散期があるものです。通常の場合、繁忙期に残業をする労働者が多くいれば、その分の割増賃金を支払う必要があります。一方、それほど立て込んでいない状況でも、労働者と契約した労働時間分の賃金を支払わなければなりません。

このようなケースにおいて、変形労働時間制を導入した場合は閑散期の労働時間を繁忙期に充てることが可能となるため、労使ともに効率の良い働き方をすることが可能になります。これにより、労働者は忙しさに合わせた働き方をすることができ、使用者は残業代の削減を実現することができます。

変形労働時間制のデメリット

変形労働時間制の導入で懸念や心配点があるとすれば、まず導入するまでの煩雑さが挙げられるでしょう。

制度を活用するためには、初めに会社の実態を洗い出した上で、効率の良い労働時間の設定をする必要があります。その際には、一定期間内で法定労働時間を超えていないかどうか、チェックをしながら作業を進めなければなりません。その他、労使協定や就業規則の整備なども必要になるため、実際に制度を稼働させるまでには、一定期間を要することを覚えておきましょう。

また稼働後も、給与計算の担当者などは制度に沿った勤怠管理をしなければならないため、制度の適切な理解が必要となります。

1ヶ月単位の変形労働時間制

では、ここからは各々の制度ごとに具体的な内容を見ていきましょう。

まずは、「1ヶ月単位の変形労働時間制」についてです。

制度の概要

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内で定めた期間内の平均労働時間が、週あたりの法定労働時間(40時間)を超えなければ、特定週または特定日に法定労働時間をオーバーした状態で働かせることができる制度です。

ただし、特例措置対象事業場に該当する会社の場合は、週あたりの法定労働時間が44時間となる点に注意が必要です。

《労働基準法32条の2》
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

特例措置対象事業場とは

特例措置対象事業場とは、従業員が10人未満で、次の業種に相当する事業所のことです。これはあくまでも事業所単位であるため、下記業種に合致する会社全体での規模が10人を超える場合でも、事業所単位である支店や営業所、出張所などで10人未満であれば、該当する可能性があります。

  1. 商業:卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
  2. 映画・演劇業:映画の映写、演劇、その他興業の事業
  3. 保健衛生業:病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
  4. 接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

特例措置対象事業場に該当する場合、従業員に一日8時間、一週間で44時間まで業務をさせることが可能となります。

労使協定で定める事項

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定または就業規則、就業規則に準ずるものにその旨の規定をしなければなりません。

具体的に定める内容は次の通りです。

  1. 変形期間(1ヶ月以内で定める、変形労働時間制に対応する期間)
  2. 変形期間の起算日
  3. 変形期間内で、平均して週当たりの労働時間が法定労働時間を超えない旨の定め
  4. 変形期間内の日ごと、週ごとの労働時間
  5. 労使協定の有効期間(定めた書類が労使協定の場合のみ)

月ごとのシフト制を導入する場合

1ヶ月単位の変形労働時間制を活用する際には、会社の実態に沿った形で月ごとにシフトを組み、勤務させるケースがあります。このような場合は、就業規則でシフトの詳細を定める必要があります。具体的には、考えられるシフトの種類ごとに始業時刻・終業時刻を定め、組み合わせ方を記します。そして、シフト表の作成手順や手続き、周知の方法を定めなければなりません。

また、月ごとのシフト表は、その月が始まる前までに従業員へ周知させる必要があることも覚えておきましょう。

派遣労働者の場合

会社で派遣労働者を受け入れており、その派遣労働者にも変形労働時間制に沿った形で働いてもらいたい場合は、必ず派遣元の会社で労使協定または就業規則等(就業規則に準ずるものを含む)にその旨の定めを行う必要があります。

派遣労働者がいる会社で変形労働時間制を導入する際には、事前に派遣元へ確認をしておくことが重要です。

フレックスタイム制

次は、フレックスタイム制について説明をしていきます。「変形労働時間制」という名称がないものの、フレックスタイム制はれっきとした変形労働時間制における制度です。適切に理解をしておきましょう。

制度の概要

フレックスタイム制とは、定められた期間内の平均労働時間が週あたりの法定労働時間を超えなければ、週あたり・一日あたりの法定労働時間をオーバーした状態で働かせることができる制度です。

この制度が適用される労働者は、労働者自身が決めた始業・終業時刻で働くことができます。

《労働基準法32条の3》
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)
三 清算期間における総労働時間
四 その他厚生労働省令で定める事項
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

労使協定で定める事項

フレックスタイム制度を導入する場合、労使協定に次の内容を定める必要があります。

  1. フレックスタイム制を適用する労働者の範囲
  2. 1ヶ月以内の清算期間と、その起算日
  3. 清算期間中の総労働時間
  4. コアタイムの開始・終了時刻
  5. フレキシブルタイムの開始・終了時刻

なお、上記の労使協定を締結する際には、就業規則または就業規則に準ずるものに「業務の始業・終業時刻は、労働者側の決定にゆだねる」という規定をしなければなりません。

清算期間とは

清算期間とは、フレックスタイム制において実際に労働者が働いた時間と、前もって定めた総労働時間とを照らし合わせ、清算をする期間のことです。

労使協定で清算期間を定める際には、「毎月○日~○日までの期間」などと、歴日数で設定する必要があります。一般には、その期間は賃金の計算期間に沿った形で定めるケースが多くみられます。

コアタイムとは

コアタイムとは、労働者が必ず働かなければならない時間帯のことをいいます。フレックスタイム制では、労働者自身が働く時間を決めることができますが、その際には必ずこのコアタイムを含んだ時間帯で設定をしなければなりません。

フレキシブルタイムとは

フレキシブルタイムとは、労働者が働くことを選択することが可能な時間帯のことです。 労働が義務づけられていない点が、前述のコアタイムとは異なります。

労働時間の繰越は可能か

フレックスタイム制では、労働者ごとに清算期間中の労働実態を洗い出し、総労働時間として決められた時間を超えた場合は、不足分の賃金を支払わなければなりません。この場合、超過分のみを翌月の給与額に含めるという「繰越行為」は認められていません。あくまでも、賃金期間に応じた支払日に、超過分の支払を行う必要があります。

ただし、逆のケースとなる総労働時間に満たなかった場合は事情が異なります。この場合は、満たなかった不足分を翌月に繰り越すことが認められている点に、注意が必要です。

【関連】フレックスタイム制とは?メリット・デメリットから残業代と労働時間の算出まで徹底解説/BizHint HR

1年単位の変形労働時間制

次は、1年単位の変形労働時間制について説明をします。変形労働時間を取る期間が長いこともあり、決められた事項が比較的多い制度となっておりますので、順を追って解説をしていきましょう。

制度の概要

1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月超~1年以内で定めた期間内の平均労働時間が、週あたりの法定労働時間を超えなければ、特定週または特定日に法定労働時間をオーバーした状態で働かせることができる制度です。

《労働基準法32条の4》
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
三 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)
四 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
五 その他厚生労働省令で定める事項
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

労使協定で定める事項

1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定に次の内容を定める必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 1ヶ月超~1年以内の対象期間と、その起算日
  3. 特定期間
  4. 対象期間の労働日・労働時間
  5. 労使協定の有効期間(定めた書類が労使協定の場合のみ)

特定期間とは

特定期間とは、変形労働時間制を設定した1ヶ月超~1年以内の対象期間の間で、特に業務が忙しい期間のことを指します。特定期間中は、連続労働日数の制限が最大12日間と、他の期間と比較すると緩くなっていることに特徴があります。

労働日の期間設定は可能か

労使協定で定める事項のうち「4. 対象期間の労働日」を設定する際に気をつけるべき点としては、労働者がいつ働き、いつ休むのかがはっきりと分かるよう、具体的な歴日や時間帯を表記することです。

たとえば、労使協定に「8月のうち、労働者が希望する5日間に休日を付与する」という期間設定による書き方をした場合は、労働日の具体的な表記とみなされないため、無効となります。

労働可能範囲の限度とは

1年単位の変形労働時間制では、労働日数や労働時間、連続労働日数に上限が設定されています。

労働日数の限度

対象期間の長さが3ヶ月を超える場合は、その期間中の労働日数は「1年につき280日」が限度になります。なお、対象期間が3ヶ月以下の場合は、280日の限度は設けられていません。

労働時間の限度

一般的な1年単位の変形労働時間制を導入する場合の労働時間限度額は、1日につき10時間、1週間あたり52時間です。なお、対象期間の長さが3ヶ月を超える場合は、次項目のどちらにも該当する労働時間の設定をしなければなりません。

  1. 対象期間中の労働時間が48時間を超える週数が連続して3つ以下である
  2. 対象期間の初日から3ヶ月ごとに分類し、週あたりの労働時間が48時間を超える週の初日の数が3つ以下である

上記の項目では、連続して48時間を超える長時間労働に携わる週が連続して3週を超えてはならない、という内容が設定されていることになります。なお、対象期間が3ヶ月以下の場合は、48時間を超える週の数に制限はありません。

連続労働日数の限度

対象期間中の連続労働日数は最大6日で、特定期間中は「週に一度の休日を確保すること」という決まりがあることから、最大12日という限度日数を割り出すことができます。

1か月以上の期間区分時の特例

対象期間を1ヶ月以上の期間に分類する際に、スタートとなる期間の労働日・労働時間を定めた場合は、その後の期間分は総枠を設定するのみで足りる、という特例が認められています。この場合の総枠とは、各期間の労働日数と総労働時間のことです。

ただし、総枠さえ決めておけば良い、という訳ではなく、その後、総枠の範囲を超えないよう、各期間の労働日・労働時間を順に設定していきます。設定する期間は、期間のスタート日の30日前までです。その際の手順としては、労使協定ではなく、書面で労働組合または労働者代表の同意をもらえばOKです。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

最後は、1週間単位の非定型的変形労働時間制について説明をしていきましょう。

制度の概要

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、一日ごとに繁忙期・閑散期が異なる小規模の事業に携わる会社で、一日10時間まで働かせることができる制度です。

《労働基準法32条の5》
使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であって、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第三十二条第二項の規定にかかわらず、一日について十時間まで労働させることができる。
2 使用者は、前項の規定により労働者に労働させる場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働させる一週間の各日の労働時間を、あらかじめ、当該労働者に通知しなければならない。
3 第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

対象企業の要件

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、業種や規模、状況が次の要件すべてに該当する場合のみ、活用することができます。

  1. 毎日の業務に激しい繁忙・閑散の差があるケースが多発している
  2. 日ごとの労働時間を定めることが難しいと認められる
  3. 小売業、旅館、料理店、飲食店に携わっており、常時雇用の労働者数が30人未満である

労使協定で定める事項

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する場合、労使協定に次の内容を定める必要があります。

  1. 1週間・1日の所定労働時間
  2. 日ごとの始業・終業・休憩時刻の書面通知方法
  3. 休日の指定
  4. 割増賃金の支払
  5. 対象労働者の範囲

ここで覚えておくこととしては、1週間単位の非定型的変形労働時間制の場合は「労使協定の有効期間」の定めが必要ない、という点です。

労使協定の有効期間の定めが必要な変形労働時間制の制度としては、前述の1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制の2種類となります。

労働時間の通知方法

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、その名の通り「1週間ごと」に労働時間の設定が行われます。実施する際には、従業員に対して1週間の各日の労働時間をその都度知らせなければならないわけですが、これは対象となる1週間が開始する前に、書面で通知することが定められています。

なお、通知後に緊急の事由が発生し、労働時間の変更を余儀なくされる場合は、対象日の前日までに同じく書面で知らせなければなりません。

緊急の事由とは

緊急の事由とは、会社側が主体となった理由は含まれません。たとえば、台風や大雨などの天災事変や、業務の内容に大幅な修正が必要となった事態などが含まれます。

変形労働時間制の届出

ここまで、4種類の変形労働時間制の概要について、順を追って説明してきました。ここからは、実際に制度を導入する場合、守らなければならない「届出」の義務について解説を行います。

前述のように、変形労働時間制では、それぞれ制度の内容に沿った労使協定や就業規則を締結しますが、これらの書類を実際に届け出るかどうかについては、制度に応じて異なります。間違えないようにしましょう。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合は、締結した書面を労働基準監督署へ届け出ることが義務づけられています。この場合の書面とは「労使協定・就業規則・就業規則に準ずるもの」のいずれかとされています。前述のうち、労使で規定事項を交わした書面を届け出ます。

フレックスタイム制

フレックスタイム制を導入する場合は、労使協定と、就業規則(就業規則に準ずるもの)の双方を、労働基準監督署へ届け出なければなりません。フレックスタイム制は、労使協定・就業規則等が揃って初めて成立する制度です。届け出を忘れないようにしましょう。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制を導入する場合も労働基準監督署への届け出が必要となります。この場合に必要な書類は、労使協定のみとされています。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する場合も、前述の1年単位の変形労働時間制と同じく、労使協定を労働基準監督署へ届け出ることになります。

変形労働時間制における残業代の計算

変形労働時間制は、これまで説明したように、会社の状況に応じて労働者の働く時間に柔軟性をもたせ、臨機応変に労働時間を設定する手段のことです。

では、この変形労働時間制を導入した場合の残業代計算は、どのようになるのでしょうか。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合は、「1日」「1週間」「1ヶ月」ごとの区分で、残業代が発生するかを判断することになります。

1日あたりの要件

「1日」の要件を説明するにあたり、まずは1ヶ月単位の変形労働時間制の概要をおさらいしましょう。具体的には、1ヶ月以内の平均労働時間が40時間を超えなければ、特定週または特定日に8時間をオーバーさせることが認められる、という内容です。

したがって、日によっては1日9時間労働などが設定されるケースもみられます。この場合に残業代支給の対象となる部分としては、設定した時間を超える部分となります。上記の例を取り上げると、1日9時間労働が設定されている日に労働者が10時間まで業務をした場合は、9時間を超える1時間分が割増賃金の対象です。

1週間あたりの要件

次に「1週間」の要件です。これは、就業規則などで週あたりの時間が40時間を超える週を定めた場合は、その週あたりの時間をオーバーした部分に残業代がかかります。一方、前述の定めがない場合は、法定労働時間である40時間をオーバーした部分が割増賃金の対象です。

1ヶ月あたりの要件

最後は「1ヶ月」あたりの要件です。これは、次のような具体的数値が設定されています。

  • 暦日が31日の月の場合:177.1時間を超えた分
  • 暦日が30日の月の場合:171.4時間を超えた分
  • 暦日が29日の月の場合:165.7時間を超えた分
  • 暦日が28日の月の場合:160.0時間を超えた分

フレックスタイム制

フレックスタイム制の場合は、法定労働時間となる8時間を超えた部分が残業代の支給対象です。したがって、1日6時間労働と定められている日に7時間労働をした労働者の場合は、働いた時間帯の賃金支払が必要ではあるものの、割増賃金はかからないことになります。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制の場合は、「1日」「1週間」「1年間」ごとの区分で、残業代が発生するかを判断することになります。

1日あたりの要件

「1日」あたりの要件は、

次の通りです。概念としては、前述の1ヶ月単位の変形労働時間制のケースと同様であるため、ここからは箇条書きで説明をしていきます。

  • 法定労働時間8時間を超える設定をした日:設定時間を超過した部分
  • 法定労働時間8時間を超えない設定をした日:8時間を超過した部分

1週間あたりの要件

「1週間」あたりの要件は、次の通りです。

  • 法定労働時間40時間を超える設定をした日:設定時間を超過した部分
  • 法定労働時間40時間を超えない設定をした日:40時間を超過した部分

1年間あたりの要件

最後は「1年間」あたりの要件です。これは、次のような具体的数値が設定されています。

  • 暦日が365日の年の場合:2085.7時間を超えた分
  • 暦日が366日の月の場合:2091.1時間を超えた分

賃金の清算

1年とは、会社にとってある程度の長さがある期間となり、その間には新たな採用者や異動者、退職者が発生するケースが多くみられます。

1年単位の変形労働時間制を採っている最中にこのような人の異動が発生した場合、当然ながら異動の対象となった労働者は、通常の労働者より対象期間が短くなることが常です。この場合は、労働者が在籍していた期間を平均し、週あたりの労働時間を割り出すことになります。

その結果、法定労働時間である40時間を超えた場合は、必ず「賃金の清算」行為として、割増賃金を支払われなければならない点に注意が必要です。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

1週間単位の非定型的変形労働時間制の場合は、「1日」「1週間」ごとの区分で、残業代が発生するかを判断することになります。

1日あたりの要件

「1日」あたりの要件は、次の通りです。

  • 法定労働時間8時間を超える設定をした日:設定時間を超過した部分
  • 法定労働時間8時間を超えない設定をした日:8時間を超過した部分

1週間あたりの要件

「1週間」あたりの要件は、40時間を超えた部分に残業代の加算が行われることになります。

休日労働の取扱い

休日労働における割増賃金は、法定休日を超えた部分「のみ」に加算されます。

したがって、まずは変形労働時間制で定められた休日が法定休日の要件に該当しているかを判断します。ここで法定休日が確保されていれば、設定した休日に出勤をさせた場合でも、休日労働手当はかからないことになります。

法定休日とは

法定休日とは、労働基準法で定められた最低限度として付与すべき休日のことです。具体的には、労働者に対して、週あたり1日以上の休日を与えなければなりません。

《労働基準法35条》
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

まとめ

  • 変形労働時間制には、1ヶ月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制の4種類の制度がある。
  • 変形労働時間制により繁閑期に応じた労働時間設定ができ、使用者には残業代削減のメリットがある。一方、導入手続きや給与担当者の管理の煩雑さなどのデメリットもある。
  • 変形労働時間制を導入する場合、労使協定や就業規則等の作成や届出が必要。労使協定の規定事項や届出の書類の内容、残業代の計算や休日の扱いは、制度の種類により異なる。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計180,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

変形労働時間制の関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

ビジネス事例や製品の情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次