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2018年10月12日(金)更新

育児休業

男女雇用機会均等法や、育児・介護休業法、女性活躍推進法の新設によって女性の社会進出は当たり前となってきましたが、今なお、女性であるがゆえにキャリア形成を中断されてしまうのが、出産・育児だといわれています。出産・育児による離職・キャリアの中断によって、能力のある女性労働者を失ってしまわないよう、家庭生活と職業生活の両立を実現する制度をご紹介します。

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育児休業とは

「育児休業」は平成3年に制定された「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」)によって定められた「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業」をいいます。

●男性の育児休業について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【関連】男性の育児休業取得による企業メリットとは?支援制度・助成金についても紹介/BizHint HR

育児休暇との違い

育児休業については、「育休」や「育児休暇」と呼ばれることもあります。育児のために休職する期間という意味で同じ意味の言葉として使われていることが多いですが、「育児休業」については、上記で説明した通り法によって定められた休業で、一定の条件を満たせば育児休業給付金が支給されます。

一方「育児休暇」については、法で定められた制度ではありません。育児休業が取得できない労働者や、育児休業と合わせて利用できるものとして、企業ごとで「育児休暇」を定めています。

育児休業をとりまく背景

かつては、「寿退社」という言葉があったように、女性労働者は結婚と同時に退職して家庭に入るケースが多く、結婚という「永久就職」は女性の憧れとされた時代もありました。

しかし、バブルの崩壊とともに日本経済は低迷し、夫の収入だけでは生活が成り立たないという事情や、女性の社会進出、女性管理職の増加等によって、育児・介護休業法の成立とともに、結婚・出産により退職を希望する労働者は減少し、育児休業を取得して仕事を継続したいという労働者が増えてきました。

【出典】厚生労働省 平成28年度雇用均等基本調査

人口減少時代の到来

政府が主体となって育児休業の取得率の向上をめざし、育児や介護を行いながらでも働ける環境を作ろうとしている背景には、人口減少に伴う労働力不足への懸念があります。

平成28年10月1日時点の人口推計では、総人口は1億2693万3千人で前年比16万2千人の減少となり6年連続で減少を記録しています。

【出典】総務省統計局 人口推計(平成28年10月1日現在)

少子高齢化が進み、人口減少に伴う労働力不足への懸念から、これまで育児や介護などの事情で働いていなかった女性や、高齢者、外国人労働者などの労働力に期待が寄せられています。

育児との両立を妨げる社内環境

育児・介護休業法や男女雇用機会均等法が整備される以前には、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントが問題となっていました。マタニティハラスメントと呼ばれる妊娠等を理由としての解雇、降格、配置転換などの不利益取扱いが行われ、女性労働者が会社を訴える事例も発生していました。妊娠したことで会社での居場所がなくなった女性労働者が退職せざるをえない状況を作られることもあり、急を要する法整備が求められました。

待機児童問題

また、会社の理解を得て、育児休業を取得できた労働者にも問題は訪れます。共働き世帯の増加に伴い、子どもを保育所に預けて働きたいという需要が高まることで、保育所に入りたくても入ることができない待機児童が社会問題となっています。

平成29年4月1日時点での保育所等の定員や待機児童の状況によると、保育所等定員は274万人となり、前年から10万人増加していますが、待機児童数は26,081人で前年から2,528人の増加となり、未だ待機児童問題は解消されていません。

待機児童は、下図のように東京・大阪・その周辺都道府県などの人口の集中する都市圏に集中しており、人口増加が著しい地域は、労働人口も増加しており、働きたいのに保育所に預けることができず、待機児童を抱えながら離職せざるを得ない労働者が後を絶ちません。

【出典】厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成29年4月1日)」

厚生労働省による指針

出産・育児休業による離職が相次ぐ中、厚生労働省では、「子の養育または家族の介護を行い、または行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成 21 年厚生労働省告示第 509 号)」を策定し、育児や家族介護を行いながら仕事を行う労働者を保護するため、雇用管理上必要な措置を講ずるよう求めています。

ワーク・ライフ・バランスの実現

政府は、国民一人一人がやりがい持ち働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、健康で豊かな生活を実現できるよう、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求してゆくべきだと訴えています。

社内でおこるマタニティハラスメントは上司や同僚による悪意を持たずに発する言動の中にも含まれていることもあり、職業生活と家庭生活の両立を行う労働者からすると、出産を控えたり、職業生活を諦めたりする要因となり、政府が推進するワーク・ライフ・バランスの実現とかけ離れてしまいます。

育児休業法の整備

そこで政府は、ワーク・ライフ・バランスを実現するために、育児休業法の改正をくり返し、仕事と生活の調和が保てるような労働環境を作り上げようとしています。平成 29 年 1 月には男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が改正され、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)」を発表し、新たに妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて相談窓口を設置し、相談に応じることのできる体制を整備することも事業主に義務付けました。 このように、育児を行う労働者がより働きやすい環境にするため、現在も育児休業に関する法整備が続けられています。

【参考】子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が 図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針

【関連】ワーク・ライフ・バランスとは?メリットや推進ポイント・問題点や取組事例もご紹介 / BizHint HR

育児休業制度とは

ここからは、育児・介護休業法に定められている育児休業制度についてご紹介してゆきます。

育児休業制度の対象者

育児・介護休業法の中で、育児休業を取得することができる人は、原則「1歳に満たない子を養育する労働者」です。男性労働者も含まれます。

有期契約従業員の対象要件

有期契約の労働者は次の条件に該当する場合には、育児休業を取得することができます。

  1. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
  2. 子が1歳6ヵ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

上記の条件に該当している場合には、パートやアルバイトであっても育児休業を取得できます。

対象除外者

育児休業を取得できない人もいます。日雇い労働者や、申し出時点に同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の有期契約労働者、育児休業終了後に引き続き雇用される見込みがない有期契約労働者などは対象外とされています。

労使協定締結による除外者

事業主と労働者の間で労使協定を締結することで、以下の労働者を適用除外とすることができます。

  • 雇用された期間が1年未満の労働者
  • 1年(1歳以降の休業の場合は、6ヵ月)以内に雇用関係が終了する労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者

育児休業期間

育児休業の期間は、産前産後休業に引き続いて取得する女性の場合は、出産日から起算して58日目(産後休業終了日の翌日)から子どもが1歳の誕生日の前日までです。男性労働者の場合は、配偶者の出産日当日が育児休業開始日となります。

育児休業の延長要件

一定の事情がある場合には、育児休業を延長することもできます。

認可保育園への入所申し込みを行ったにもかかわらず、入所できなかった場合には、入所不承諾通知書等を提出することで1年6ヵ月まで延長することができます。1年6ヵ月の時点でも、入所できなかった場合には、最長2年まで延長が可能です。

また、対象となる子の養育を行っている配偶者が負傷・疾病・障害・死亡などの事情によって子どもの養育が困難になった場合や、離婚などの事情によって配偶者が子どもと同居しなくなった場合にも、住民票や診断書を提出することで延長申請が可能です。

パパママ育休プラス制度

育児休業の制度には、夫婦揃って取得できる制度もあります。通常、育児休業の取得は原則1回までですが、子の出生後、父親が8週間以内に育児休業を取得した場合には、もう1度、時期をずらして育児休業が取得できる上、育児休業の対象となる子の年齢について、原則1歳のところ1歳2ヵ月までに延長されます。

男性の育児休業の取得促進を図る観点から、平成22年に設けられた特例で「両親ともに育児休業をする場合の特例」、通称「パパママ育休プラス」と呼ばれています。

【出典】厚生労働省 両親で育児休業をしましょう

育児・介護休業法 改正ポイント

平成29年10月1日には近年社会問題となっている待機児童問題を理由に労働者が離職したり、職場復帰を諦める必要がないように、大幅な育休延長などの改正が行われました。

育児休業期間が最大2年に延長

今回の改正の1番の大きなポイントは、「緊急的なセーフティネット」として育児休業が最大2年まで延長できるようになったことです。

育児休業は、原則として子が1歳に達するまでの間ですが、1歳に到達した時点で保育所等に入れないなどの事情がある場合には、1歳6ヵ月まで育児休業を延長することができます。しかし、保育所の入所は年度初めの4月であるため、1歳6ヵ月から年度末の3月までの期間は保育所に預けることができず、育児休業も終了してしまったため、やむを得ず、離職してゆく労働者もいました。

そこで、平成29年の改正では、1歳6ヵ月に達した時点で、保育所に入れない等の事情がある場合は再度申出することにより、子が2歳に達するまで育児休業を再延長できることとなりました。

【出典】厚生労働省 改正内容の詳細(平成29年10月1日施行)

育児休業等制度の個別周知

2つ目の改正は、事業主に対して、育児をしながら働く労働者が、育児休業などを取得しやすい就業環境の整備等を行う努力を求めるものです。

育児休業を取得しなかった労働者に対し取得しなかった理由を調査したところ、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」という回答が複数存在したため、育児休業を取得しやすい雰囲気を作るために育児・介護休業法に追加されました。

労働者やその配偶者が妊娠、または対象家族の介護を行っていると知った事業主は、その労働者に対して計画的に育児休業・介護休業を取得できるよう、個別に育児・介護休業法などの制度の周知を行うように努力することとされました。

育児目的休暇制度の新設

3つ目も、今回新たに追加された「育児目的休暇」の新設を求めるものです。

子ども育てる上で活用できる休暇制度では、現状1年に5回まで利用できる「子の看護休暇」がありますが、負傷・疾病など看護の必要がない場合には使用することができません。そこで、新たに定められたのが「育児目的休暇」です。

育児目的休暇は、「休暇制度を設けるよう努めること」という努力義務とされ、例としては、配偶者の出産に伴い取得することができる「配偶者出産休暇」、入園式や運動会などの行事の参加に使用できる「多目的休暇」などがあげられています。

育児休業給付金とは

雇用保険法では、雇用継続給付として、高年齢雇用継続給付・介護休業給付とともに育児休業給付を設けています。育児休業給付では、一定の要件に該当する被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)が子を養育するための休業をした場合に、育児休業給付金を支給すると定めています。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕雇用保険法第61条の4

育児休業給付金の対象者

育児休業給付金の受給資格は以下の通りです。

  • 雇用保険の一般被保険者、または高年齢被保険者。
  • 育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヵ月以上あること。
  • 有期雇用契約の労働者は、休業開始時において以下のいずれにも該当していること。
    1.同一の事業主のもとで、1年以上雇用が継続していること。
    2.子が1歳6ヵ月までの間に、その労働契約が満了することが明らかでないこと。

育児休業給付金の支給要件

育児休業給付金を受給するためには、支給単位期間の初日から末日まで被保険者であることが必要です。また、各支給単位期間において就労日数が10日(10日を超える場合は、労働時間が80時間以下)以下であり、各支給単位期間において支払われた賃金がある場合は、休業開始前に受けていた平均賃金と比べて80%未満の賃金であることも要件とされています。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1ヵ月)あたり、休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業の開始から6ヵ月経過後は50%)相当額とされています。

賃金日額とは、原則、育児休業開始前6ヵ月の賃金を180で除した額をいいます。

【出典】ハローワークインターネットサービス

育休社員に対して企業が行うこと

育児休業を取得する従業員がでてきたときには、育児休業のスケジュール表を組み立てておきましょう。1人が育児休業することによって会社の行う手続きは膨大な数があります。その手続きの中には期限を超えると受理してもらえない給付金などもありますので、事前に把握して準備しておくことが必要です。

出産前から職場復帰までの流れ

妊娠が判明し安定期に入るのを待ってから従業員から上司への報告が行われるケースが多いですが、その時期には産前休業を取得することを考えると休業開始まで3ヵ月程度しかない場合もあります。

1年に渡る長期の休暇を取得することになると、業務の引き継ぎ、担当者の変更、代わりの人員配置の手配など、対象労働者の抱える業務内容によっては、会社側は休業をさせるための準備に追われることになります。会社内には安定期になってから周知するとしても、直属の上司にはなるべく早く伝えるような体制も整えておきましょう。

1.産前休業

労働基準法第65条において、6週間(多事妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者が休業したいと申し出た場合には、就業させてはいけないと定められています。この期間を産前休業といいます。産前休業は、本人の申し出によって休業が開始するため、本人の申し出がない場合には、出産まで働くことも可能です。

産前産後休業期間には、健康保険から標準報酬日額の3分の2相当額の「出産手当金」が支給されます。対象労働者が産前産後休業(出産予定日前42日(多胎妊娠の場合は98日)、出産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)を取得する際には、「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出しましょう。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕労働基準法第65条

2.出産

健康保険法でいう「出産」は、妊娠85日(4ヵ月)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶を言います。

上記に該当する出産時には、健康保険から原則1児につき42万円(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は40.4万円)の「出産育児一時金、家族出産育児一時金」が支給されます。(双子以上の場合には、胎児数分だけ支給されます)

この手続きは、出産する病院などとご本人が直接手続きを行うケースが多いですが、労働者から質問を受けることもありますので、知識として確認しておきましょう。

3.産後休業

産前休業は労働者の申し出によって休業を与えるものでしたが、産後休業は、出産後の女性の母体保護の観点から、労働基準法上にて「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない」と就業禁止が定められています。労働者がどうしても働きたいという場合でも、産後6週間までは絶対就業禁止とされており、6週間以降については、医師の診断を受けて支障がないと認められた範囲でのみ就業させることができます。

もし、産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了した場合には、事業主は日本年金機構に「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出することが必要です。

4.育児休業

産後休業の翌日からは育児休業の開始です。育児休業は、社員が希望した場合には必ず取得させる必要があります。労働者が育児休業を申し出したことを理由として、労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをしてはいけない(育児・介護休業法10条)とされています。

育児休業期間中には、雇用保険の育児休業給付金を受給するため、支給単位期間ごとに2か月に1回公共職業安定所(ハローワーク)に支給申請を行う必要があります。

この手続きは、何度も繰り返し行う必要があるうえ、厳密な期限が設けられているため、急ぎの場合や会社で行うと手続きに時間がかかる場合には、労働者本人が手続きを行う場合もあります。会社によって事情は異なりますが、会社が手続きを行う場合には、対象労働者と会社の総務・人事担当者などの中から手続きの担当者を明確に定め、提出期限を常に意識しながら連携を取って行いましょう。

【参考】ハローワークインターネットサービス

支給申請の手順としては、まず支給対象期間の初日から4ヶ月に到達した日の属する月の末日までに「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を賃金台帳・出勤簿などの必要書類と一緒に提出し、初回の受給資格確認手続きを行います。

その後、2か月に1回育児休業が終了するまで「育児休業給付金支給申請書」の提出を繰り返してゆきます。支給決定された育児休業給付金は、約1週間後に労働者本人名義の金融機関口座に振り込まれます。

5.職場復帰

職場復帰の時期には、事前に対象労働者と職場復帰の具体的な日にち、業務内容などを面談する機会を設けておきましょう。長期の育児休業期間中には、労働者側・会社側ともに、休業前とは事情が異なっていることもあります。以前同様に働けると考えていると職場復帰当日に混乱を招いてしまいます。

どうしても面談の時間がとれず職場復帰当日に初めて出勤する場合には、電話などでも良いので打ち合わせを行いましょう。

育児休業期間の決定

育児休業の取得希望者は、休業開始予定日の1ヵ月前までに会社に申し出ることとされています。

取得期間については、原則1年とされていますが、親と同居しているかどうか、復帰後の職務内容など、個人が置かれている環境や状況によって大きく左右されます。短時間勤務制度、事業所内託児施設などがある場合には、短期間の育児休業で復職できる可能性もあります。よく相談をして決定しましょう。

育児休業を取得するかどうか

法整備が整ってきた現在では、育児休業を取得しないという選択肢もあります。短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差勤務制度、所定外労働をさせない制度、事業所内託児施設など産前産後の最小限の期間だけ休職して、産後8週後は育児休業を取得せずに働き始める女性も存在します。育児休業を取得するかどうかも個人別に確認しましょう。

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終了予定日の確認

あらかじめ、育休開始前に休業終了予定日を定めていた場合でも、産後の体調などによって復職時期が変動することがあります。保育所の空きがあるかによっても復帰時期は異なります。必ず出産後に改めて復帰の時期を話し合うことが必要です。

早期復帰の可能性

法改正によって、最長2歳まで育児休業を取得することができるようになりましたが、あまりにも長期の休職となると復帰を躊躇してしまうことも少なくありません。厚生労働省の指針では、労働者のキャリア形成の観点からも、本人にとってあまり望ましくないとされており、会社と労働者がよく話し合いをした上で、早期の職場復帰を促すことは「育児休業等に関するハラスメントに該当しない」とされています。

育児休業中の給与支払い

育児休業期間中は、ノーワークノーペイの原則から給料は発生しません。ただし、育児休業期間中に、昇給・賞与の時期が訪れた場合には、その賞与の算定対象期間に勤務していた分の賞与を日割りして支払う必要があります。昇給も同様ですが、昇給については、復職後に昇給させてもかまいません。退職金・年次有給休暇の権利発生の出勤率については、育児休業していた期間は欠勤扱いではなく、通常の勤務をしていた期間とみなす必要があります。

【関連】ノーワーク・ノーペイの原則とは?遅刻時などの賃金控除計算法もご紹介 / BizHint HR

育児休業中の短期アルバイト

育児休業期間であっても、業務の都合上や、復帰前の引き継ぎ勤務のために臨時のアルバイトとして出勤することも可能です。ただし、育児休業給付金を受給している場合に、勤務日数が10日を超え、かつ労働時間が80時間を超えてしまうと育児休業給付金は支給されなくなってしまうので注意が必要です。

支給額の減額割合とは

原則、育児休業給付金は、支給対象期間(1ヵ月)あたり、休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業の開始から6ヵ月経過後は50%)相当額とされています。そこから、事業主から賃金が支払われた場合には、一定の割合を減額されることになります。

  • 賃金が賃金月額の13%(180日経過後は30%)以下 → 減額なしで満額支給
  • 賃金が賃金月額の13%(180日経過後は30%)を超えて80%未満の場合 → 超える分を減額
  • 賃金が賃金月額の80%以上の場合 → 支給されない

雇用保険の支払

育児休業期間中に数日だけ出勤するなど、短期的にでも勤務した場合には、その賃金に対して労働保険(労災保険料・雇用保険料)も発生します。雇用保険料には従業員負担がありますので給与計算の際には控除を忘れないようにしましょう。

注意点として、雇用保険料は支払いますが、育児休業給付金の支給を受けた期間については、基本手当の算定基礎期間から除外されます。従業員にも知らせておきましょう。

社会保険料の免除手続き

一方、産前産後休業期間・育児休業期間中には、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料)の徴収の特例が適用されます。 産前産後休業期間、育児休業期間ともに、事業主が申請することで事業主負担分・本人負担分ともに社会保険料が免除されます。 注意点としては、社会保険は免除になりますが、住民税を特別徴収にしている場合には、産休・育休期間中でも住民税は発生し続けます。会社が立て替えて復職後に清算するか、毎月本人から振り込んでもらうなど、あらかじめ本人と相談しておく必要があります。

免除期間

保険料の免除期間は、産前産後休業期間(出産予定日前42日(多胎妊娠の場合は98日)、出産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)及び育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

申請書類

産前産後休業期間は、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書」、育児休業期間は、「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。

育児休業終了時の手続き

育児休業終了の際には、育児休業給付金の最終申請手続きを行います。終了日までの端数日数での申請になりますので注意して申請しましょう。

育児休業等終了時報酬月額変更届

育児休業を無事に終え、職場復帰をした場合でも、小さな子どもを育てながら以前のように勤務することは困難です。労働時間を短縮したり、休みがちになったりと、様々な事情から以前よりも給料が下がることもあります。しかし、社会保険料が以前のままの保険料で控除されてしまうと労働者の収入が大きく減ってしまうことになります。

それを防ぐために、育児休業を終了後の3ヵ月間の報酬額をもとに、新しい標準報酬月額を決定し、その翌月から改定することができます。「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構に提出して適切な標準報酬月額に変更しましょう。

育休終了予定日前に復帰したとき

育児休業を取得している労働者が、予定より早く復職する場合や、次の子どもを妊娠して産前休業を取得する場合、養育していた子を養育しなくなった場合など、育児休業を予定より早く終了することもありますが、その際には手続きが必要です。

育児休業等取得者終了届の提出

「育児休業等取得者申出書」を提出し、育児休業中の社会保険料の免除を受けている労働者が、終了予定日前に育児休業等を終了した場合には、「育児休業等取得者終了届」を日本年金機構へ提出する必要があります。

提出が不要な場合

育児休業等終了予定年月日以前に産前産後休業を開始した場合には、「産前産後休業取得者申出書」を提出することで育児休業等取得者終了届の提出は不要となります。

両立支援等助成金について

仕事と家庭の両立支援に取り組む企業には、政府から助成金の支援があります。育児休業の取得に役立つ両立支援等助成金は6つありますが、ここでは、その内2つをご紹介してゆきます。

育児休業等支援コース

本コースは育児休業を支援してもらえる助成金です。以下の要件に該当した場合に支給されます。ここでは、育児休業取得時と、復帰時についてご紹介します。

  • 育休復帰支援プランに基づき育児休業を取得した場合
  • 育休復帰支援プランに基づき育児休業から復帰した場合
  • 育児休業期間中に、職場支援の取組をした場合
  • 育児休業取得者の代替要員を確保した場合

必要な要件

  1. 労働協約または就業規則に育児休業の制度及び所定労働時間の短縮措置等について規定する。
  2. 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表・周知を行う。
  3. 育児休業取得者の上司または人事労務担当者と育児休業取得者が面談を実施して「育休復帰支援プラン」を作成する。
  4. 「育休復帰支援プラン」に基づいて業務の引き継ぎを実施し、3ヵ月以上の育児休業を与える。

ここからは、育児休業を終えて、復帰する際の要件です。

【出典】両立支援等助成金のご案内

  1. 「育休復帰支援プラン」に基づき、育休中の労働者に職場の情報・資料の提供を行う。
  2. 育児休業終了前と終了後に、上司または人事労務担当者が面談を実施し、記録する。
  3. 原則として原職等に復帰させて6ヵ月以上継続雇用する。

受給できる額

  • 育児休業取得時:28.5万円(生産性要件を満たしている場合は36万円)
  • 職場復帰時:28.5万円(生産性要件を満たしている場合は36万円)
  • 職場支援加算:19万円(24万円)
  • 代替要員確保時:47.5万円(60万円)

注意点

この助成金は中小企業事業主のみを対象としており、1企業につき正社員1名、有期契約社員1名までとされています。

職場復帰する前の面談については、電話での打ち合わせは認められておりません。育児休業期間中ですが、直接本人と会社担当者が面談し、復帰後の打ち合わせをする必要があります。

【参考】厚生労働省 育児休業等支援コース

出生時両立支援コース

もう1つは、男性の育休に特化した助成金です。

政府は、2020年度までに男性の育休取得率を13%にする目標を掲げ、施策を講じていますが、2016年度の男性の育児休業取得率は3.16%となり、前年度より0.51ポイント増加し、比較可能な1996年度の調査以来過去最高となりましたが、目標の13%の達成はまだまだ程遠い状況です。そこで、男性の育休に特化した助成金を支給しています。

【出典】厚生労働省 平成28年度雇用均等基本調査

必要な要件

  1. 労働協約または就業規則に育児休業の制度及び所定労働時間の短縮措置等について規定する。
  2. 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表・周知を行う。
  3. 男性が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組む。
  4. 雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者に、連続した14日以上(中小企業事業主の場合は5日以上)の育児休業を与える。

受給できる額

受給できる金額については、事業主の規模、生産性要件を満たしているかどうかによって異なります。

【出典】出生時両立支援コース

生産性要件を満たしている場合には、< >内の金額となり増額されますが、まだ新しい会社や、生産性要件を満たしていない会社の場合は、基準額のままとなります。生産性要件を算定するための「生産性要件算定シート」は厚生労働省のホームページに掲載されています。ダウンロードして生産性要件に該当するかどうかをご確認ください。

【参考】厚生労働省 生産性要件算定シート

注意点

この助成金の対象となる育児休業は、子の出生後8週間以内に開始している必要があります。 支給申請手続きの期限は、育児休業の「開始日から」連続14日(中小企業事業主の場合は5日)を経過する日の翌日から2ヵ月間です。育児休業期間が3ヵ月など、長期になる場合には育児休業期間中に支給申請期間が終了する場合もあるので注意が必要です。 詳しくは、厚生労働省のパンフレットをご覧ください。

【参考】厚生労働省 出生時両立支援コース

まとめ

  • 平成29年10月、法改正が行われ、育児休業が最長2年に。
  • 育児休業を利用して、女性が育児や介護によって退職しなくても良い雇用環境を構築する。
  • 男性の育児休業は短期間であっても助成金の支援を受けるチャンスあり。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


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