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2018年7月10日(火)更新

裁量労働制

裁量労働制とは、労働者が自由な時間に働くことができ、企業としても生産性の向上や残業代の削減が期待できる制度です。政府の働き方改革の一環としてもその活用が期待されていたものですが、運用を誤ると、長時間労働につながりやすい制度でもあるため、導入を検討する経営者、担当者は、制度の趣旨や要件などを十分に理解することが求められます。

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裁量労働制とは

裁量労働制とは、一定範囲の専門的な業務に従事する労働者について、業務遂行の手段や時間配分の決定などを労働者の裁量に委ね、成果をより重視することで業務効率や生産性の向上を図る制度です。

裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つからなり、対象となる業務も導入手続きも異なりますが、ともに実労働時間にかかわらず、労使間で定めた時間を労働時間とみなす制度であるため、労使間で定める時間を1日8時間以内とする限り、使用者は残業代の支払いが不要になり、労働者は自由に働くことができるなどのメリットがあります。

1日8時間、1週間40時間(一定の業種の場合は44時間)の法定労働時間の例外を認める制度はほかにもありますが、裁量労働制は対象となる業務が限定されているため、導入できる企業も限られています。

他の労働時間制度との違い

法定労働時間について例外的な取り扱いが認められている労働時間制度には次のようなものがあります。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、労働時間の算定が難しい外回りの営業職や、労働時間の管理を労働者に委ねた方がより業務効率の向上を図ることができる専門業務などについて、実労働時間ではなく、あらかじめ労使間で定めた時間の労働があったとみなす制度です。

裁量労働制もこの制度に含まれ、対象となる業務などの違いにより、以下の制度に分けられます。

  • 事業場外みなし労働時間制
  • 裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制)

裁量労働制と事業外みなし労働時間制との違いは、対象となる業務が、裁量労働制はこのあと説明する一定の専門的業務であるのに対し、事業外みなし労働時間制は労働時間の算定が難しい外回りの営業職などの業務であることが挙げられます。

また制度の趣旨にも違いがあります。裁量労働制は労働者に業務遂行の手段や時間配分の決定などを委ねることで業務効率や生産性の向上を図ることを目的としているのに対し、事業外みなし労働時間制は労働時間の算定が難しい業務について労働時間の基準を定めることを目的としています。

【関連】みなし労働時間制とは?時間外・休日・深夜労働の取り扱いや、判例も合わせてご紹介/BizHint HR

変形労働時間制

変形労働時間制とは、あらかじめ定めた一定期間を平均して、1週あたりの労働時間が40時間(一定の業種の場合は44時間)以内になっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることが認められる制度です。

あらかじめ定める一定期間などの違いにより、以下の制度に分けられます。

  • 1か月単位の変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制
  • フレックスタイム制

裁量労働制との違いは、対象となる業務が限定されていないため、繁忙期や閑散期がはっきりしている業種やシフト制勤務の職種ということが挙げられます。またフレックスタイム制については、ワークライフバランスを重視する会社などで広く導入できることや、労働時間については、裁量労働制ほど労働者に裁量がなく一定の制限があることなどが挙げられます。

【関連】変形労働時間制とは?残業や休日の取り扱い、届出について詳しく解説/BizHint HR

導入企業の割合

裁量労働制を含むみなし労働時間制や変形労働時間制が実際にどれくらいの企業で導入されているのかについてみてみましょう。

平成29年に厚生労働省が発表した下記のデータによると、みなし労働時間制はすべての企業規模において変形労働時間制よりも導入割合が低くなっています。さらにみなし労働時間制の中でも、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制は、事業外みなし労働時間制と比べてもかなり低い導入割合になっており、制度的に導入できる企業が限定されているものであることがわかります。

【各労働時間制度の導入企業の割合】

【厚生労働省】平成29年就労条件総合調査 結果の概要の情報を元に作成

裁量労働制の対象業務・導入方法

専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制のそれぞれについて、労働基準法などで対象となる業務、導入方法が定められていますが、導入方法については大きく異なりますので注意が必要です。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制の対象となる業務や導入方法は次のとおりです。

対象業務

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して使用者が具体的な指示をすることが困難な業務」とされており、次の19種の業務が対象とされています。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析または設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画などの制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

導入方法

専門業務型裁量労働制を導入するためには、次の事項を定めた労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

  1. 対象業務
  2. 対象業務の遂行手段や方法、時間配分などに関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています)
  7. 上記、4および5などに関する記録を、6の期間およびその後3年間保存すること

また、上記の労使協定の締結内容は就業規則にも規定しなければなりません。

【関連】専門業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、残業代などの注意点まで詳しく解説/BizHint HR
【関連】労使協定とは?労働協約との違いや効力、種類や届出・有効期間などもご紹介/BizHint HR

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制の対象となる業務や導入方法は次のとおりです。

対象業務

企画業務型裁量労働制の対象となる業務は、次の要件に該当するものであることとされています。

  1. 事業の運営に関する事項についての業務であること。
  2. 企画、立案、調査および分析の業務であること。
  3. 当該業務の性質上、これを適切に遂行するためには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること。
  4. 当該業務の遂行手段および時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること。

実際にどのような業務であるのかについては、厚生労働省の指針「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」(平成11年12月27日労働省告示第149号、改正:平成15年10月22日厚生労働省告示第353号)において例示されており、主なものとしては次のような業務が対象になり得るとしています。

  • 経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境などについて調査および分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
  • 人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方などについて調査および分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
  • 財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態などについて調査および分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
  • 広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法などについて調査および分析を行い、広報を企画・立案する業務
  • 営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点などについて調査および分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
  • 生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料などに係る市場の動向などについて調査および分析を行い、原材料などの調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

基本的には、各部署が担当する業務について調査や分析を行い、企業全体にかかわる計画を策定するような業務が想定されているものであり、単なるルーティンワーク業務は対象とされていないことに注意が必要です。

対象にならない業務の例などについても、厚生労働省の指針で示されていますので、詳細については以下のリンクからご確認ください。

【参考】労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針/独立行政法人労働政策研究・研修機構

導入方法

企画業務型裁量労働制を導入するためには、委員の半数が労働者であるなどの要件を満たす「労使委員会」というものを設置し、その委員の5分の4以上の多数決により、次の事項について決議し、決議内容を所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

  1. 対象業務の具体的範囲
  2. 対象労働者の具体的範囲
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者に適用する健康・福祉確保措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のための措置の具体的内容
  6. 本人の同意の取得・不同意者の不利益取扱いの禁止について
  7. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  8. 上記、4、5、6などに関する記録を7の期間およびその後3年間保存すること

また、制度の実施にあたっては、対象となる労働者本人に同意を得なければならず、労使委員会で決議した内容は就業規則にも規定しなければなりません。

【関連】企画業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、注意点まで徹底解説 / BizHint HR

裁量労働制のメリット

裁量労働制を導入することによるメリットには次のようなものがあります。

業務効率・生産性の向上

専門的な業務に就いている従業員に、業務の進め方や労働時間の管理を任せることで、従業員はその業務に関する知識や経験から、自身の判断で効率的に業務を進めることができるため、会社全体としても業務効率や生産性の向上を図ることができます。

残業時間の削減

裁量労働制を含むみなし労働時間制においては、あらかじめ定めた労働時間(一般的に法定労働時間内)について労働があったものとみなすため、残業時間や残業代の支払いを削減することができ、労働時間の管理業務の負荷も下げることができます。

ワークライフバランスの実現

対象となる従業員は、一定の労働時間に縛られることなく自由に働くことができるため、自身で業務を調整することで、平日でもプライベートや家庭のための時間を確保することができます。

裁量労働制のデメリット・問題点

裁量労働制は、適切に導入、管理することができれば、業務効率や生産性の向上を図ることができるものですが、導入までに手間がかかることや、導入後も従業員の労働状況の管理が適切でなければ、逆効果になりかねないなど、デメリットや問題点などもあります。

導入手続きの煩雑さ

裁量労働制を導入するためには、専門業務型裁量労働制であれば、労使協定の締結や就業規則の変更などが必要であり、企画業務型裁量労働制にいたっては、労使委員会を設置して、導入について決議しなければならないなど、ある程度の労務知識があってもかなりの手間がかかります。

自社に労働関係法に精通した人事労務担当者がいない場合には、社会保険労務士などの専門家に依頼することが効率的です。

労働時間の管理・残業代の支払い

裁量労働制を導入することで、労働時間の管理や残業代の支払いが完全に不要になるわけではありません。

会社は従業員の健康を確保する義務があるため、労働時間は管理しなければなりませんし、残業代についても、みなし労働時間について8時間を超える時間に設定する場合や休日や深夜の労働があった場合には、必ず割増賃金を支払わなければなりません。これらの認識がないと、次で説明する長時間労働の常態化や残業代の未払いなど多くの問題を発生させることになりますので注意が必要です。

長時間労働の常態化

裁量労働制における実際の労働時間の状況については、平成25年に厚生労働省が発表した下記のデータによると、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制を導入している事業場とも、みなし労働時間の平均が8時間30分前後であるのに対し、「平均的な者」の実労働時間の平均は9時間を超え、「最長の者」にいたっては12時間前後という結果になっています。

【裁量労働制における1日のみなし労働時間と実労働時間(平均)】

【出典】【厚生労働省】平成25年度労働時間等総合実態調査(主な結果)

裁量労働制を含むみなし労働時間制では、従業員に労働時間の管理を任せることで、逆に長時間労働になる傾向があり、それを放置すると、従業員の健康に問題を生じさせ、社会的にもブラック企業のレッテルを貼られてしまう場合があります。

会社としては従業員の労働状況を常に把握し、健康の確保に努める必要があります。

まとめ

  • 裁量労働制は、労使間で定めた時間について労働があったものとみなす、みなし労働時間制のひとつであり、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制がある。
  • 裁量労働制を導入するためには、複雑な手続きが求められるため、自社で対応が難しい場合には、社会保険労務士などの専門家に依頼することが効率的である。
  • 裁量労働制においてもみなし労働時間の設定によっては残業代を支払わなければならない場合があり、休日、深夜の労働があった場合には必ず割増賃金を支払わなければならない。
  • 裁量労働制においても会社は従業員の健康を確保する義務を負っているため、長時間労働にならないように労働時間の状況を適切に管理しなければならない。

<執筆者>本田勝志 社会保険労務士

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