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2019年6月18日(火)更新

裁量労働制

裁量労働制とは、労働者が自由な時間に働くことができ、企業としても生産性の向上や残業代の削減が期待できる労働時間制度です。裁量労働制は以前からある制度ですが、多様な働き方が求められる中、いま再び注目を集めています。今回は、この裁量労働制のメリット・デメリットや労働時間・残業代の扱い、また、対象となる職種などについて解説します。

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裁量労働制とは

裁量労働制とは、1日8時間、1週間40時間(一定の業種の場合は44時間)の 法定労働時間の例外を認める労働時間制度 のひとつです。

1987年の労働基準法の改正により導入され、その後、対象職種が拡大され、2000年までにいまのような形になりました。

まずは、この制度の仕組み、また、他の労働時間制度との違いなどをみていきます。

裁量労働制の仕組み

裁量労働制は、 労働時間を労働者個人の裁量に委ねる制度 です。対象となる労働者は、あらかじめ定めた時間の労働があったものとみなされるため、業務の進捗に応じて、日々の労働時間を調整していかなければなりません。

大きな3つの特徴を解説します。

対象となる職種・業務が限定されている

裁量労働制には、 専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制 の2つがあり、それぞれ業務が限定されています。

  • 専門業務型裁量労働制
    新聞の編集者やデザイナー、また、放送局のディレクターなど、専門性が高い職種
  • 企画業務型裁量労働制
    本社や本店などで各部署が担当する業務について、調査や分析を行い、企業全体にかかわる計画を策定するような業務

詳しくは後述しますが、どのような労働者にも適用できる労働時間制度ではありません。

労働時間を個人の裁量に委ねる

裁量労働制は、労働時間を労働者個人の裁量に委ねることで、より 生産性の向上を図る制度 です。そのため、対象となる労働者は労働時間を自分自身で決定することができ、通常の労働者のように、一定の始業・終業時刻に出社・退社する必要はなくなります。

ただし、より成果を求められる制度でもあるため、業務の進捗などを労働者自身が計算しながら労働時間を判断していかなければなりません。このため、結果として長時間労働を許容しなければならないこともあります。

実労働時間ではなく「みなし労働時間」を適用

裁量労働制は、先に述べたとおり法定労働時間の例外を認める労働時間制度のひとつです。実労働時間にかかわらず、労使間で定めた1日あたり働いたとする時間、つまり、「 みなし労働時間 」の労働があったものとみなすことになります。

例えば、「みなし労働時間」を1日8時間と定めれば、この制度が適用となる労働者の実労働時間が8時間より少なくても多くても、8時間の労働があったものとみなすことになります。

【関連】みなし労働時間制とは?時間外・休日・深夜労働の取り扱いや、判例も合わせてご紹介/BizHint

他の労働時間制度との違い

法定労働時間について例外的な取り扱いが認められている労働時間制度には次のようなものがあります。

事業場外みなし労働時間制

労働時間の算定が難しい外回りの営業職など、会社側の指揮や監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務に適用される制度です。

【裁量労働制との違い】

  • 一定の専門的業務ではなく、労働時間の算定が困難な業務が対象であること
  • 労働時間の算定が困難である業務の労働時間の基準を定めることを目的としている など

【関連】みなし労働時間制とは?時間外・休日・深夜労働の取り扱いや、判例も合わせてご紹介/BizHint

フレックスタイム制

あらかじめ定めた一定期間(最長3か月)を平均して、1週あたりの労働時間が40時間(一定の業種の場合は44時間)以内になっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることが認められる変形労働時間制度のひとつ。一般的には、必ず出勤していなければならない「コアタイム」と、必ずしも出勤していなくてもよい「フレキシブルタイム」を設けて運用します。

【裁量労働制との違い】

  • 対象となる業務が限定されていないため、ワークライフバランスを重視する会社などで広く導入できる
  • 裁量労働制ほど労働者に労働時間の裁量がない など

【関連】フレックスタイム制とは?導入ポイントやメリット・デメリットまで徹底解説/BizHint

みなし残業(固定残業代)制度

あらかじめ一定の時間外労働や深夜労働等を想定し、その労働に対する割増賃金を毎月固定の額で支払う制度です。
※一例:毎月の給与に月20時間の固定残業代を含めた場合、20時間を下回る残業時間であっても20時間分の残業代を支払う

【裁量労働制との違い】

  • 労働したとみなす時間は残業代の発生する時間外労働部分のみ

【関連】固定残業代(みなし残業)とは?企業メリットや導入方法、違法となるケースも紹介/BizHint

高度プロフェッショナル制度

高収入(年収1,075万円以上を想定)かつ、金融ディーラーやコンサルタント、研究開発職などの高度の専門知識を持った労働者を対象とした、労使間での決議や本人の同意などを条件として、労働基準法上の労働時間に関する規定が適用されなくなる制度です。
※2018年6月29日の働き方改革関連法の成立により法制化され、各企業においては2019年4月1日から導入可能

【裁量労働制との違い】

  • 対象となる職種がより限定されている
  • 時間外労働に加え、休日、深夜労働にかかるすべての割増賃金の概念がなくなる

【関連】高度プロフェッショナル制度とは?対象職種やメリット・デメリットを解説 / BizHint

裁量労働制の対象業務と導入方法

裁量労働制は、先述した通り「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つに分かれており、対象となる業務や導入方法が労働基準法などでそれぞれ定められています。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制の対象となる業務や導入方法は次のとおりです。

【専門業務型裁量労働制の対象業務・労使協定で定めるべき事項】

【出典】【東京労働局】労働基準法のあらまし

対象業務

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して使用者が具体的な指示をすることが困難な業務」とされております。

具体的には、次の19種の業務が対象となります。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析または設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画などの制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

導入方法

専門業務型裁量労働制を導入するためには 労使協定の締結が必要 です。

具体的には次の事項を定め、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

  1. 対象業務
  2. 対象業務の遂行手段や方法、時間配分などに関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています)
  7. 上記、4および5などに関する記録を、6の期間およびその後3年間保存すること

また、上記の労使協定の締結内容は就業規則にも規定しなければなりません。


「専門業務型裁量労働制」の詳細は、以下の記事でご確認ください。
【関連】専門業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、残業代などの注意点まで詳しく解説/BizHint


企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制の対象となる業務や導入方法は次のとおりです。

【企画業務型裁量労働制の対象業務・労使委員会で決議すべき事項】

【出典】【東京労働局】労働基準法のあらまし

対象業務

企画業務型裁量労働制の対象となる業務は、次の要件に該当するものであることとされています。

  1. 事業の運営に関する事項についての業務であること
  2. 企画、立案、調査および分析の業務であること
  3. 当該業務の性質上、これを適切に遂行するためには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること
  4. 当該業務の遂行手段および時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

実際にどのような業務であるのかについては、主なものとして次のような業務が対象になり得るとしています。

  • 経営企画を担当する部署: 経営状態・経営環境などについて調査および分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
  • 人事・労務を担当する部署: 現行の人事制度の問題点やその在り方などについて調査および分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
  • 財務・経理を担当する部署: 財務状態などについて調査および分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
  • 広報を担当する部署: 効果的な広報手法などについて調査および分析を行い、広報を企画・立案する業務
  • 営業に関する企画を担当する部署: 営業成績や営業活動上の問題点などについて調査および分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
  • 生産に関する企画を担当する部署: 生産効率や原材料などに係る市場の動向などについて調査および分析を行い、原材料などの調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

基本的には、各部署が担当する業務について調査や分析を行い、企業全体にかかわる計画を策定するような業務が想定されているものであり、単なるルーティンワーク業務は対象とされていないことに注意が必要です。

対象にならない業務の例などについても、厚生労働省の指針で示されていますので、詳細については以下のリンクからご確認ください。

【参考】労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針(平成11年12月27日労働省告示第149号)/厚生労働省
【参考】労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針の一部を改正する告示(平成15年10月22日厚生労働省告示第353号)/全国労働安全衛生センター

導入方法

企画業務型裁量労働制を導入するためには、委員の半数が労働者であるなどの要件を満たす 「労使委員会」を設置して5分の4以上の多数決をとることが必要 です。

具体的には、次の事項についての決議を行い、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

  1. 対象業務の具体的範囲
  2. 対象労働者の具体的範囲
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者に適用する健康・福祉確保措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のための措置の具体的内容
  6. 本人の同意の取得・不同意者の不利益取扱いの禁止について
  7. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  8. 上記、4、5、6などに関する記録を7の期間およびその後3年間保存すること

また、制度の実施にあたっては、対象となる労働者本人に同意を得なければならず、労使委員会で決議した内容は就業規則にも規定しなければなりません。


「企画業務型裁量労働制」の詳細は、以下の記事でご確認ください。
【関連】企画業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、注意点まで徹底解説 / BizHint


裁量労働制における残業や休日・深夜労働の扱い

裁量労働制を導入しても、法定労働時間を超える時間をみなし労働時間として設定する場合には、 残業代の支払いが必要 になります。また、休日・深夜労働があった場合にも、通常の労働者と同様に割増賃金の支払いが必要です。

残業代の扱い

裁量労働制では、実労働時間にかかわらず、労使間で定めた1日あたり働いたとする「みなし労働時間」分の労働があったものとみなすことになります。このため、「みなし労働時間」を法定労働時間である8時間以内で設定した場合は、残業代の支払いは不要です。

「みなし労働時間」を8時間超とする場合には、超えた分の残業代の支払いが必要になります。 例えば、「みなし労働時間」を10時間とする場合には、毎日2時間分の残業代の支払いが必要になるということです。

休日労働の割増賃金

裁量労働制を適用した従業員に休日労働があった場合には、通常の従業員と同様に割増賃金の支払いが必要になります。

なお、ここで言う「休日労働」とは、労働基準法で定められているいわゆる「法定休日」の労働のことを指します。一般的な会社であれば、法定休日は日曜日になることが多いですが、各企業における就業規則での定めによります。

【関連】法定休日とは?所定休日との違い、振替休日と代休の関係、規定例まで解説/BizHint

深夜労働の割増賃金

裁量労働制を適用した従業員に深夜労働(22時~5時までの労働)があった場合には、通常の従業員と同様に割増賃金の支払いが必要になります。


残業代の計算方法などの詳細は、以下の記事にてご確認ください。
【関連】裁量労働制における残業代の考え方と計算方法を具体例を交えながら解説/BizHint


裁量労働制のメリット

上記で述べたとおり、裁量労働制を実際に導入できる企業はそれほど多くはありません。それでも一定数の企業が導入している理由は、様々なメリットを得られるからです。

この制度を導入することにより、企業、従業員のそれぞれにどのようなメリットがあるのかをみていきます。

企業にとってのメリット

企業にとってのメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

業務効率・生産性の向上

対象となる従業員に業務の進め方や労働時間の管理を任せることで、従業員は自身の判断で効率的に業務を進めることができるため、企業としても業務効率や生産性の向上を図ることができます。

残業代の削減

対象となる従業員の労働時間は、実際の労働時間数にかかわらず、あらかじめ労使間で定めた1日あたりのみなし労働時間とされます。

このため、みなし労働時間を8時間(法定労働時間)以内とする限り、残業代を支払う必要はなくなります。(ただし、みなし労働時間を9時間とした場合には、常に1時間分の残業代の支払いが必要になります。)

人件費の管理のしやすさ

企業にとって、1年間に必要となる人件費を把握することは、事業運営の観点からも非常に重要です。一般的に、残業代がどのくらい発生するのかは、これまでの傾向などを踏まえて予測するしかありませんが、裁量労働制を導入すれば、かなり現実に近い数字の人件費を想定できるようになります。

従業員にとってのメリット

従業員にとってのメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

工夫次第で労働時間を短縮可能

通常の従業員に適用される始業・終業時刻に縛られることはなくなるため、業務の進捗などには注意しながらも、工夫次第で労働時間を短縮することができます。

ワークライフバランスの実現

土日だけでなく、平日の昼間でもプライベートや家庭のための時間を確保することが可能になるため、いわゆる「ワークライフバランス」の実現を図ることができます。

裁量労働制のデメリット・問題点

裁量労働制は、導入に手間がかかることや、導入後も従業員の管理が適切でなければ逆効果になりかねないなど、デメリットや問題点もあります。

この制度のデメリットや問題点について、企業、従業員のそれぞれについてみていきます。

企業にとってのデメリット

企業にとってのデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

導入手続きが煩雑

裁量労働制を導入するためには、専門業務型裁量労働制であれば、労使協定(労働組合または労働者代表との書面による協定)の締結や就業規則の変更などが必要であり、企画業務型裁量労働制にいたっては、労使委員会を設置して、導入について決議しなければならないなど、労務担当者でも容易な手続きではありません。

時間をかければ、労働基準監督署などに確認しながら手続きはできますが、適切、かつ、効率的に導入するためには、社会保険労務士などの専門家に依頼することも検討しなければなりません。

【関連】労使協定とは?労働協約との違いや効力、種類や届出・有効期間などもご紹介/BizHint

労務管理の負担が増える

企業は従業員の健康を確保する義務があるため、裁量労働制を適用した従業員であっても通常の従業員と同様にタイムカードなどで労働時間の管理が必要になりますし、そのうえで、給与計算においては通常の従業員とは別の扱いにする必要があります。

従業員にとってのデメリット

従業員にとってのデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

長時間労働の常態化

裁量労働制における実際の労働時間については、2014年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した下記のデータによると、専門業務型裁量労働制の1か月の平均労働時間は203.8時間、企画業務型裁量労働制の1か月の平均労働時間は194.4時間となっており、通常の労働時間制で働く者の平均時間、186.7時間よりも多いという結果が出ています。

【各労働時間制度における1か月の労働時間】

【独立行政法人 労働政策研究・研修機構】裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果の情報を元に作成

裁量労働制は、より成果を求められる制度であることもあり、通常の労働時間制で働く者と比べて長時間労働が常態化してしまう可能性があるということです。

企業文化によっては時間のコントロールができない

裁量労働制を適用された従業員が、個人ではなくチームで業務に取り組むことを重視している企業に属しているのであれば、実質的にその従業員自身が労働時間をコントロールできない場合もあります。

この場合、通常の労働時間制が適用される従業員と同様に、一定の時間は勤務しなければならないことになり、みなし労働時間以上働くことを強いられて残業代だけがカットされるということにもなりかねません。

まとめ

  • 裁量労働制は、労使間で定めた時間について労働があったものとみなす「みなし労働時間制」のひとつであり、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があり、それぞれ対象となる職種が異なる。
  • 裁量労働制を導入するためには、複雑な手続きが求められるため、自社で対応が難しい場合には、社会保険労務士などの専門家に依頼することが効率的である。
  • 裁量労働制においてもみなし労働時間の設定によっては残業代を支払わなければならない場合があり、休日、深夜の労働があった場合には必ず割増賃金を支払わなければならない。
  • 裁量労働制においても会社は社員の健康を確保する義務を負っているため、長時間労働にならないように労働時間の状況を適切に管理しなければならない。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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