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2018年8月6日(月)更新

ホワイトカラー・エグゼンプション

ホワイトカラー・エグゼンプションは、労働時間に関係なく、成果に応じて賃金が支払われるアメリカで生まれた考え方・制度を指します。対象者のほとんどが、ホワイトカラーであることから、この名前が付けられました。

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目次[表示]

「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは?

ホワイトカラー・エグゼンプションとは、一定の要件を満たすホワイトカラーを労働時間規制の適用から除外する制度のことです。そのため、「ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度」と呼ばれることもあります。経営者にとっては労働時間の規制が免除され、労働時間ではなく成果と報酬を連動させて支払う制度です。

ホワイトカラーの業務はデスクワークなどの頭脳労働が中心のため、ブルーカラーの業務とは異なり、「労働時間に比例して生産性が向上する」とはいえません。ホワイトカラーが従事している業務は労働の価値を時間で計りにくく、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しないという特徴があります。そのため、労働時間を基準にして報酬を支払うといった方法では労働者の能力に対して適正な評価ができていない、成果の実情に合っていないと考えられていました。

そこで、短期的な成果に応じて報酬を支払うことによりホワイトカラー層の労働を適正に評価し、「労働生産性」の向上を図ることが、ホワイトカラー・エグゼンプションの目的です。

アメリカ版で免除されるのは主に割増賃金の支払い義務についてですが、日本版の「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、割増賃金だけでなく労働時間に関する規制を含めて免除しようという制度になっています。

ホワイトカラーとは?

国によって社会階層の区分を表すこともありますが、多くは職業の区分として専門職や管理職、あるいは販売や事務などの業務に従事する人たちを指します。

ホワイトカラーの「カラー」はcolor(色)ではなく、collar(襟)のことです。ホワイトカラー(white-collar)は白い襟、つまり、白いワイシャツにネクタイといった服装で働く労働者を意味します。 ことばの由来は諸説ありますが、1950年代半ばに米国の社会学者C.W.ミルズが中間層の労働者を服装の特徴を捉えて分析した著書「ホワイトカラー」が始まりという説もあります。

なお、主にオフィスで働くホワイトカラーに対し、工場などで肉体労働をする労働者は青系の作業服を着ていることが多いため、ブルーカラー(blue-collar)と呼ばれています。

また、エグゼンプション(exemption)とは、課税や義務などを「免除する」という意味があります。

日本においての「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは

「ホワイトカラー・エグゼンプション」には、長時間労働を助長したり過重労働による健康障害などが増えたりするのではないかという、反対意見や慎重論など批判的な意見が多く出ています。しかし、経営者を中心として導入を推進する動きもあります。その一つが「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」です。

ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言

「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」は、日本経済団体連合会(経団連)が平成17年6月に発表しました。

提言の中には、労働者のさまざまなニーズや価値観に合わせた多様な働き方、その実現のためには労働時間の弾力的な運用が必要なことなどを記されています。この提言の後、厚生労働省の労働政策審議会労働分科会では検討を重ね、その結果は平成27年に「今後の労働時間法制度の在り方について」によって報告されました。

また、ホワイトカラー・エグゼンプションにつながるものとして、政府から国家戦略特区における雇用や労働法の規制緩和について検討されています。たとえば、東京や大阪などの都市部に限定した「特区」において、一定の条件を満たした企業には解雇ルールなどの雇用条件の規制を緩和するといった特別措置などです。

【参考】日本経済団体連合会:ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言
【参考】厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会:今後の労働時間法制度の在り方について
【参考】内閣府地方創生推進事務局:有識者等からの「集中ヒヤリング」 国家戦略特区ワーキング-雇用・労働法制の規制改革-(神戸大学大学院法学研究科教授 大内伸哉)

「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度が日本に必要な理由とは

労働基準法をはじめとする労働法は、使用者に時間外労働の制限や休日に関する規定などさまざまな義務を課すことで労働者を保護しています。特に近年は長時間労働による健康被害が深刻化し、防止策の強化が急務といった状況です。その中で、なぜ規制を緩和するのでしょうか。ホワイトカラー・エグゼンプション制度の必要性について説明します。

■社員に起こる不公平感の解消

新しい制度が必要といわれる理由の一つは、従来の労働時間と報酬を連動させた働き方では能力のある人を正当に評価できておらず、給与などの面で歪みが生じているためです。

たとえば、同じ仕事をしても、能力のある人は短時間で終えて定時に退社できますが、能率の悪い人は残業が必要になるので、結果として残業分の給与が多くなってしまいます。このような状況では、能力のある人にとって不公平感に納得がいかず、モチベーションを保つことが難しくなったり、労働意欲が低下したりして離職する人も出てくるでしょう。

そこで、能力に見合った報酬を支給することで社員の給与に対する納得感を得られ、さらに専門性を磨く意欲などにもつながります。企業としては、優秀な人材の確保も期待できるでしょう。

【関連】モチベーションの意味とは?上げる・高める・維持する方法をご紹介

■国際競争力の低迷

ホワイトカラー・エグゼンプションは、経営者側からみると社員が意欲的に働く環境を作ることで生産性が向上し、さらに残業代の削減で収益アップが期待できます。

日本は世界的に見て人件費が高く、一方、国際競争力は伸び悩んでいるのが現状です。国際経営開発研究所(IMD)が発表している2013年の国際競争力ランキングをみると、トップはアメリカで、日本は調査対象の60か国(地域)中24位でした。アジア地域に限ると、2013年は11か国(地域)の中で日本は7位に低迷しています。

また、OECD加盟国の2015年のデータに基づき、就業者1人当たりの労働生産性をドルベースでみると日本は35か国中22位でした。就業1時間当たり労働生産性(42.1ドル、4,439円)は20位ですが、主要先進7か国でみると統計資料が残る1970年から最下位から抜け出せていません。

ホワイトカラー・エグゼンプションを導入し労働生産性を向上させることで、国際競争力を高められることが期待できます。

【参考】総務省:日本の国際競争力強化に向けた戦略と課題 p5
【参考】公益財団法人 日本生産性本部:労働生産性の国際比較 2016年版 p7-8

「残業代ゼロ制度」と呼ばれている理由

労働基準法では使用者に対し、週40時間(特例では週44時間)の所定労働時間を超えて労働者を使用することを原則、禁じています。また、時間外労働や休日労働をさせたときには、労働基準法の定めに基づき割増賃金を支給することも使用者の義務です。しかし、ホワイトカラー・エグゼンプションの制度対象者は労働時間規制の適用除外となるので使用者は時間外でも制限なく使用でき、しかも割増賃金を支払う必要がありません。

そのため、ホワイトカラー・エグゼンプション制度や労働基準法改正案は、労働組合やマスコミから「残業代ゼロ制度」や「定額働かせ放題法案」などと揶揄されるのです。

「ホワイトカラー・エグゼンプション」対象者・対象業務

ホワイトカラー・エグゼンプショ制度は、どのような労働者や業務が対象になるのでしょうか。

エグゼプションの対象者

労働条件分科会の報告書は平成27年に発表されたもので、ホワイトカラー・エグゼンプションを特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)と表記しています。報告書をみると、制度対象者は以下のような労働者です。

  • 使用者との間の「書面による合意」に基づき「職務の範囲」が明確に定められている
  • 1年間に支払われる見込まれる賃金額が「平均給与額の3倍相当程度」を上回る

なお、「平均給与額の3倍相当程度」の年収としては、1,075万以上という具体的な数値が示されています。

また、現在、検討されているホワイトカラー・エグゼンプション制度に公務員は含まれません。ホワイトカラー・エグゼンプション導入に否定的な意見をもつ人の中には、公務員はこれまでも優遇され、さらに、新制度の適用除外者になることに対し、強く異を唱える人もいます。

対象とする業務

分科会の骨子では、対象業務とするふさわしい業務の性質を法律で定めた上で省令によって規定するのが適当としていますが、以下のような業務が挙げられています。

  • 高度の専門的知識、技術または経験を要する業務
  • 業務に従事した時間と成果との関連性が強くない業務

また、具体的な業務として例示されているのは、次のようなものです。

  • 金融商品の開発
  • 金融商品のディーリング
  • アナリスト(企業、市場などの高度な分析)
  • コンサルタント(事業・業務の企画・運営に関する高度な考案、または助言)
  • 研究開発 など

分科会の骨子にはこれらの業務を念頭に入れて、省令で適切に定めるのが適当としているので今後、変更になる可能性があります。

新制度の適用には「労働者の同意」が必要

企業がホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入した場合、対象業務に従事する労働者全員が制度の適用対象になる訳ではありません。分科会の骨子では、企業業務型裁量労働制のように、いくつかの条件を設けることが挙げられています。その一つが、同意を得られた労働者だけを制度の適用対象者にすることです。

また、同意を得る方法としては、職務記述書への署名などの形で労働者一人ひとりから書面による同意を得るなどの方法があります。

【参考】厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会:今後の労働時間法制度の在り方についてp8-10

「ホワイトカラー・エグゼンプション」のメリット

それでは、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入した場合のメリットを確認していきましょう。

労働生産性の向上

企業において、1人の従業員が新しく生み出す付加価値である「労働生産性」を向上することは国際競争力を高めるうえでも重要です。ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すると、次のような点から労働生産性が向上すると考えられます。

・仕事の能率が上がる

これまで、自分の能力を十分に評価されていないと感じていた社員にとって、成果主義の労働制はモチベーションを高め、仕事の能率アップにつながります。また、専門性を高めることで一層、評価が高くなることを実感できると、専門性をさらに磨こうと努力する社員も増えて好循環が生まれるでしょう。さらに、効率よく働くことで自由な時間ができることで時間的なゆとりも生まれ、私生活の充実や心身の健康などつながるとされています。

【関連】成果主義の意味とは?日本企業におけるメリット・デメリットをご紹介 / BizHint HR
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・社員間の競争力もアップ

成果主義の採用によって社員の間に競争力が生まれます。すると職場に活気がでて、労働生産性の向上に貢献します。

・不公平感の緩和にも効果的

有能な社員の場合、能率がよいので残業せずに済むことが多いです。従来の働き方では、能率が悪く長時間残業している人の方が「残業代が多い分、給与が高い」といった矛盾があり、不公平感を口にする社員も少なくありませんでした。能力に見合った給与が支給されることで有能な社員の中に生じた不公平感が緩和され、労働意欲が高まるだけでなく、社内の人間関係や雰囲気にもよい影響があるとされています。

【関連】「労働生産性」は付加価値が大切?日本企業の現状と課題、取り組むべき施策とは? / BizHint HR

適性な評価ができ、社員の意識改革につながる

ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すると、社員の意識改革につながるのもメリットの一つです。たとえば、漠然と仕事に向かうのではなく、この仕事をいかに短時間に、効率よく行うか、また、より成果を上げるにはどうしたらよいかを常に意識して働くようになります。

また、正当な評価を受けられることは報酬に対する納得感につながり、社員の中には「専門性をより高めていこう」とする成長意欲もみられることが多いです。

【関連】人事評価の目的と方法から、書き方・進め方まで一挙ご紹介

企業の人件費削減につながる

ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入すると、残業代を支払う必要がなくなるので人件費の削減につながります。日本は、世界的に見ても人件費が高いので、人件費削減は経営者にとって大きなメリットです。そのため、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入に賛成するのは、経営者に多くみられます。

「ホワイトカラー・エグゼンプション」を成功させるポイント

ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入し、効果的に運用するには事前にどのような準備が必要なのでしょうか。

人件費の配分

ホワイトカラー・エグゼンプションは人件費の削減につながる労働制といわれるため、導入の目的は「人件費を削減すること」と考える経営者もいらっしゃることでしょう。しかし、人件費の削減を第一に考えてしまうと従業員には経営者に対する不信感が強まり、労働意欲が下がり、結果として生産性の低下を招く可能性があります。

エグゼンプション制度を効果的に導入するには、「将来への投資」ともいわれる人件費を導入前に比べ抑えすぎないことが重要です。一つの目安として、人件費の配分を「労働分配率」の点から確認するとよいでしょう。

労働分配率は、企業が新しく生み出した価値、「付加価値額」に対する「人件費」の割合を示すもので重要な経営指標の一つです。以下のように、給与や福利厚生費などの「人件費」を「付加価値額」で割り、100をかけてパーセントで表します。

労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100

労働分配率は業種によって目安が異なるため、検討の際には同業他社や自社における導入前の実績などとの比較が重要です。

さらに、従業員の満足度やモラールを上げるには労働分配率とともに、1人当たりの人件費が地域の平均人件費相場を下回らないといった視点も大切といわれています。

【参考】株式会社 日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター:労働者分配率の“適正水準”と新しい成果配分のあり方~持続的成長に向けた2007年「春闘」の課題~ p5
【参考】中小企業研修協会:はじめての決算書 はじめての簿記ドットコム

業務量の適正化

ホワイトカラー・エグゼンプション制度を導入すると、効率よく仕事ができる社員は「短時間で仕事から解放される」といったイメージがあるでしょう。しかし、労働基準法改正案では業務量の規制はしていません。そのため、一つの仕事が早く終わっても、業務量が多ければ早めに帰宅することは難しくなります。

また、高い給与を安定的に得るには「成果を出し続ける」ことが必要です。さらに、継続して効率よく働くという環境は労働者の緊張感を強めるため、長期間に及ぶと疲弊してしまう人も少なくないでしょう。

たとえ有能な労働者でも、業務量が過剰になれば心身の不調をきたす可能性は高くなります。そのため、業務量の適正化は重要でしょう。

評価制度の見直し

成果主義を導入する場合、報酬の支払い方だけでなく、人材の評価や育成などの人事制度全般にも影響を及ぼします。

経団連から新制度に関する提言があったのは平成17年です。その前年に発表された労働政策研究・研修機構の調査 をみると、年齢や勤続年数より成果を重視した評価制度を採用している企業は6割超でした。また、成果を報酬に反映させる制度を導入している企業はおよそ56%、3年以内の導入を検討している企業も約27%を占めていました。

成果と報酬の連動については、主に賞与支給の際に採用し、月々の給与は生活の安定を優先して大きな変動がないように固定報酬を中心にしている企業も多いことでしょう。しかし、成果主義の導入は課題もあるようです。特に、毎月の給与も成果主義にしている企業では評価に納得がいかない、社員が目先の業績にばかり目がいってしまう、また、社内がギスギスするといったことも少なくありません。

ホワイトカラー・エグゼンプション制度は、導入前に「この業務において成果とは何か」「成果をどのように測るか」などの基準を明確にすることが重要です。また、事前に新制度について、社員にていねいに説明して理解を得るというプロセスを設けることも必要になります。

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構:成果主義の普及は職場をどう変えたか ~「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」結果~ p3

【関連】人事評価制度とは?評価対象や評価手法、企業事例などもご紹介 / BizHint HR

勤務間インターバル制度の導入

長時間労働の抑制、また、過重労働を防ぐための制度として「勤務間インターバル制度」が注目されています。勤務間インターバル制度は勤務と次の勤務との間に時間を空けて、休息時間を確保できるようにする制度です。

たとえば、勤務時間が8時30分から17時までの企業で12時間のインターバルを設けた場合、残業を終えたのが22時であれば、次の勤務は12時間後の翌朝10時からとなります。

厚生労働省では、支給対象となる取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給するなど勤務間インターバル制度を推進しています。

【参考】厚生労働省:職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)

【関連】「勤務間インターバル制度」とは?厚労省による長時間労働是正策の解説と導入企業紹介 / BizHint HR

モチベーション向上への支援

夜、遅くまでは仕事をする社員は、「残業代のため残業しているのではない」というかもしれません。しかし、残業が多く、残業代の給与に占める割合が多かった人にとって残業代が実際にゼロになると、経済力だけでなくモチベーション低下にも大きく影響するでしょう。

また、自分の能力を「十分に発揮して働けている」と感じる社員は、仕事の満足度が高いといわれています。そのため、新制度を導入するときは社員が能力を発揮しやすい環境を整備して仕事の満足度を高め、モチベーションの向上を図る支援体制なども必要です。

具体的には、社員が能力を発揮する機会を与えたり、社員教育を通して専門性を高めたりするとよいでしょう。

【関連】『社員研修』のテーマ選定と企画選定の進め方 / BizHint HR
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「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入の問題点

ホワイトカラー・エグゼンプションの導入により、起こり得る問題を考えてみましょう。

長時間労働を助長してしまう可能性

エグゼンプション制度を導入した場合、労働基準法の労働時間や休憩時間、休日に関する規定は適用されません。そのため、長時間労働がさらに増えるのではないかと危惧されています。

ここで、ホワイトカラー・エクゼンプションに関する研究を紹介しましょう。この研究は、ホワイトカラー・エグゼプション制度をすでに導入した企業において、労働時間規制が労働者の働き方にどのような影響を与えるかを調査したものです。研究によると、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入しても、労働時間は必ずしも短くなっていませんでした。労働時間は対象労働者の属性に影響を受け、たとえば、大卒の労働者かどうか、また、収入などの要因によっては労働時間がむしろ長くなったといいます。

ただし、大卒労働者の労働時間が長いのはホワイトカラー・エグゼンプションによる労働時間の規制緩和が原因ではなく、関与が考えられるのは昇進に関連する要因でした。具体的には、大卒労働者はそもそも昇進するために長時間労働をし、昇進した後は労働時間が短くなる傾向があるとしています。

【参考】 独立行政法人 経済産業研究所:ホワイトカラー・エクゼンプションと労働者の働き方:労働時間規制が労働時間や賃金に与える影響 p23

・24時間連続勤務も可能に

繰り返しになりますが、ホワイトカラー・エグゼンプションの対象労働者は労働時間の延長を禁止した労働基準法の規定が適用になりません。使用者は時間的な制限を受けずに労働者を使用できるので、極端な場合、24時間連続で働かせても法的には「問題なし」ということになります。

・休憩時間も休日もなくなる?

ホワイトカラー・エグゼンプション導入の影響は、労働者の休憩時間や休日にも影響を与えます。労働基準法第34条の規定によると、使用者は一日の労働が6時間を超えるときは45分以上、8時間超の場合には1時間以上の休憩を労働時間の「途中」に与えなければなりません。また、労働基準法の第35条では使用者に対し、労働者の心身の疲労を癒すなどの目的で休日(労働義務のない日)を付与する義務を課しています。原則としては「毎週1日以上」、変則休日制の場合には「4週に4日以上」の休日を付与することが使用者の義務です。

しかし、ホワイトカラー・エグゼンプションの対象者は休憩時間がなくても、休日なしの連続勤務でも労基法違反になりません。

過重労働による健康障害の増加

分科会報告では、労働者の健康・福祉確保措置が必要であるとし、いくつかの措置を挙げています。その一つが「4週間に4日以上」、かつ、「1年間に104日以上」の休日を与えるといった措置です。ただし、あくまで「選択的措置」のため、このままの内容で法案が成立すると複数の措置から一つを選んで実施すればよいことになります。

近年、過重労働による過労死撲滅が喫緊の課題となっている状況では、新制度の導入によって労働時間規制が緩和されると健康障害が一層、増えるのではないかと危惧されています。

残業代が支払われない

ホワイトカラー・エグゼンプションが適用された労働者は労働時間や割増賃金の規定から外されるので、時間外や休日の労働に対する割増賃金の支払いがなくなります。

また、割増賃金について考えるとき、労働基準法第41条で規定する管理監督者との違いに注意しましょう。管理監督者も労働時間や休憩、休日に関する規定の適用除外者のため、時間外や法定休日の労働には割増賃金が発生しません。しかし、管理監督者であっても労働が深夜(22時~翌朝5時)に及んだときは、深夜労働に対する割増賃金が必要です。

一方、ホワイトカラー・エグゼンプションの制度対象者になると、深夜労働も含めて割増賃金を支払う必要がありません。

安易な導入は労働者の不信感につながる

ホワイトカラー・エグゼンプション制度は企業側からみると、人材を有効活用しつつ、人件費を削減できるという効果が期待できます。

しかし、労働者側にとって能力に見合った働き方が選択できるのはメリットですが、最悪なケースではどんなに長く労働しても残業代なしのサービス残業になる可能性が大きいです。

人手不足で過重労働が続く中、成果主義とは名ばかりで経営者に都合のよい「残業代の削減策」という印象が強くなると、経営者に対する不信感が生まれやすいでしょう。労働者と経営者との間に信頼関係が築けていない場合、エグゼンプション制度の導入がきっかけで経営者への不信感がより強まる可能性もあるので注意が必要です。

有能な人材が流出してしまう可能性

日本の労働市場はアメリカほど転職しやすい環境ではありません。しかし、経営者に対する不信感が芽生えると、多くの場合、転職の意向を強める要因となるでしょう。

ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入について、「経営者側の都合優先」と社員が感じ、不信感が消えないと労働意欲を低下させ、有能な人材を失う可能性もあります。

日本とアメリカの相違点

日本とアメリカでは企業構造などの違いがあるため、ホワイトカラー・エグゼンプションを日本に導入するのは難しいのではないかといわれています。どのような違いなのでしょうか。

アメリカのホワイトカラー・エグゼンプション

ホワイトカラー・エグゼンプションはアメリカで誕生した制度で、日本はアメリカの制度をモデルにしているといわれています。ここでは、アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションについて紹介しましょう。

■アメリカの労働時間規制と適用除外

アメリカの労働時間に関する制度は連邦法と州法の二重構造で、連邦法については公正労働基準法(Fair Labor Standard Act)と呼ばれています。公正労働基準法は最低賃金と労働時間、割増賃金の支払い義務の規定を中核とする法律のため、「賃金・労働時間法」と呼ばれることも多いです。その公正労働基準法の6条では最低賃金以上の賃金を、7条では週40時間を超えた労働時間に対して1.5倍以上の賃金を支払うよう義務づけています。

また、公正労働基準法における時間外労働時間などの規制には多くの適用除外があり、その一つがホワイトカラー・エグゼンプションです。アメリカ版では以下のような基準を設け、一定の収入や職務に関する要件を満たした労働者を時間外割増賃金の支払い義務などの適用から除外しています。

■アメリカ版における対象要件と法的効果

アメリカでホワイトカラー・エグゼンプションの規定といわれているのは、公正労働基準法13 条(a)(1)の規定のことです。その中で適用対象者は、腕力や身体的な技能、および能力によって、主に反復的な労働に従事している肉体労働者、また、その他のブルーカラー労働者ではないこととしています。

他には俸給要件や職務要件があり、職務要件は管理職エグゼンプト(被用者)、運営職エグゼンプト、専門職エグゼンプトについてそれぞれ詳細な要件を設けているのが特徴です。法的効果として、エグゼンプトに該当する労働者は最低賃金のほか、割増賃金や実労働時間の記録保存義務に関する規定の適用除外者になります。以下の労働政策研究・研修機構の報告書では、アメリカをはじめ諸外国のホワイトカラー・エグゼンプションについてまとめられているので参考にするとよいでしょう。

【参考】労働政策研究・研修機構:労働政策研究報告書 No.36 2005 「諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究」

企業の組織構造の違い

アメリカの企業はさまざまな「職務」の組み合わせによって組織が構築され、多くの企業が職務を基準にして人事管理をしています。しかし、日本の企業において職務をベースにしているところは、いまだ少数のようです。

日本版ホワイトカラー・エグゼンプションでも、「職務を明確にできる」という要件が挙げられています。しかし、日本では所属する部や課、係の事務分掌はあっても、社員それぞれの職務内容を明らかにしている企業は少ないため、制度導入に必要とされる職務の明確化は容易ではありません。

職務決定権に関する違い

日本では、たとえ過酷な業務が多い部署であっても業務命令がだされれば従事しなければならないでしょう。しかし、アメリカのホワイトカラー層は、担当職務の決定権をもっている点が日本とは異なります。

たとえば、アメリカでは、欠員が生じたときにまず社内公募をし、応募があれば社員の能力を明文化した職務記述書に基づいて採用を決定します。社内で適当な人がいなければ社外にも公募しますが、賃金に見合わないような過酷な業務には応募者がおらず、やがて過酷な業務は消滅していくのです。このような職務決定権が担当者にあるかどうかも、日本とは異なります。

転職しやすさの違い

労働市場における転職のしやすさ、転職可能性という点でもアメリカと日本の違いは大きいです。アメリカでは、その人がどのような業務に従事し、どんな能力をもち、何ができるかが重視され、多くの場合、職務記述書に書かれた内容によって採用が決まります。

そのため、労働者は特定分野における専門性を高めようと目指すため、能力を有する人は転職がしやすくなります。転職のしやすい労働市場では、長時間労働などの問題がある職場では優秀な社員は転職してしまうでしょう。そのため、企業としては劣悪な労働環境を改善しないと人材の流出を止められないため、過酷な業務を強いることが少なくなるのです。

【参考】 独立行政法人 労働政策研究・研修機構:労働政策の展望 ホワイトカラー・エグゼンプションの日本企業への適合可能性

まとめ

ホワイトカラー・エグゼンプション制度は推進の動きがある一方で、批判的な意見も根強く、賛否が分かれています。近々、導入されるのではないかという声も高まっていますので、一般的なメリットやデメリットを基に自社に導入したときの影響を具体的に検討するとよいでしょう。

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