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2018年10月23日(火)更新

オープン・イノベーション

顧客ニーズの多様化やイノベーションにより、プロダクトライフサイクルが短期化しており、企業は次々と新商品を開発することが求められます。研究開発手法のひとつとして注目されているのがオープン・イノベーションです。今回はオープン・イノベーションの定義やメリット、課題、企業事例と一緒にご紹介いたします。

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目次[表示]

オープン・イノベーションとは

企業が研究開発を行う際に、選択される経営戦略のひとつ、オープン・イノベーション。オープン・イノベーションの定義や注目される理由、クローズド・イノベーションとの違い、さらには新たなイノベーションのひとつ、リバース・イノベーションを知ることで、理解が深まります。

オープン・イノベーションの定義

オープン・イノベーションとは、2000年代の始め頃に米ハーバードビジネススールのヘンリー・チェスブロウ博士により提唱されたイノベーションに関する概念のひとつです。

企業や大学・研究機関、起業家など、外部から新たな技術やアイデアを募集・集約し、革新的な新製品(商品)・サービス、またはビジネスモデルを開発するイノベーションを指します。社内資源に依存せず、あらゆる枠組みを超えることで、イノベーションを創出するきっかけにもつながります。異業種間の交流や大企業とベンチャー企業との共同研究開発などがオープン・イノベーションの事例とされています。

経営学においても、経済合理性に叶った経営戦略であると注目されており、オープン・イノベーションを採用する日本企業も増えています。これまで日本企業が得意としてきたクローズド・イノベーション(自前主義)に変わるイノベーションとしても注目されています。

【関連】「イノベーション」の意味とは?種類や必要性、イノベーションの興し方から課題・事例をご紹介/BizHint HR

クローズド・イノベーションとの違い

オープン・イノベーションの対義語として挙げられるビジネス用語がクローズド・イノベーションです。

クローズド・イノベーションとは、自社の研究・技術のみで画期的な新製品(商品)・サービスを提供するイノベーションのひとつです。日本企業の多くが採用していた旧来型の経営手法であり、日本経済を急成長させた要因としても取り上げられます。一方で、オープン・イノベーションは企業という枠組みを超えた新製品(商品)・サービスを開発する経営手法のため、社外から広く技術やアイデアを集めるという点で違いがあります。

クローズド・イノベーションは、競争優位性の高い技術の独占や秘匿、利益が全て自社に還元されるというメリットがある一方で、研究開発から商品提供までに莫大な時間的・人的コストがかかるデメリットもあります。

競争環境が激しさを増す中で、対応が難しい経営戦略と認識されはじめ、現在ではクローズド・イノベーションから脱却する企業が増えています。

オープンイノベーションが注目される理由とは

オープンイノベーションが注目される背景には、大きく2つの理由が考えられます。それが「プロダクトライフサイクルの短期化」と「顧客ニーズ(価値観)の多様化」です。

プロダクトライフサイクルの短期化

経済のグローバル化により、日本企業を取り巻く競争環境は日々激化しています。技術革新により、次々と新しい製品(商品)やサービスが発表され、プロダクトライフサイクルが短期化され、磐石な競争優位性を確立することが難しくなっています。そのため、企業には迅速な研究開発が求められるようになり、従来のクローズド・イノベーション(自前主義)のみでは対応しきれなくなる事態に陥っているものと考えられます。

オープン・イノベーションはあらゆる枠組みを超え、新たな技術やアイデアを短期間で集約することで、新製品(商品)・サービス(ビジネスモデル)の創出を可能とするイノベーションです。クローズド・イノベーション(自前主義)の成功体験が強く根付いている日本企業には、より強くオープン・イノベーションを実施する必要があります。

そのためにも日本企業の経営陣には、明確な意思決定や、オープン・イノベーションを推進するための組織構築が求められます。

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顧客ニーズ(価値観)の多様化

日本市場の成熟化やコモディティ商品の増加により、顧客ニーズ(価値観)も変化しています。

政府が推進している働き方改革女性活躍推進法の影響もあり、製品(商品)・サービスのニーズや価値観が多様化し、ビジネスをより高度化・複雑化している傾向がみられます。多くの顧客を満足させられるような新製品(商品)・サービスを開発するためにも、多様なアイデアや技術が必要とされ、今後の研究開発や新たな価値感の創出に役立てる動きがみられます。

社内では見出せない隠れた顧客ニーズを掘り当てる有効な手段としてもオープン・イノベーションが注目されています。

リバース・イノベーションとは?

リバース・イノベーションとは、新興国や発展途上国に研究開発機関を設け、現地のニーズから生まれた新製品(商品)やサービスを先進国に流通・展開させるイノベーションのひとつを指します。市場規模の大きい海外市場から新たな発想や需要を見つけ、新たな価値観を創出する画期的な経営戦略として注目されています。

リバース・イノベーションは、従来の先進国から発展途上国へとローカライズされた製品(商品)を流通・展開させるグローカリゼーション に変わるイノベーションでもあります。外部環境からアイデアの発想や新たな技術を得るという点では、オープン・イノベーションと共通点があります。

海外企業の買収や競合他社の合併・統合するM&Aが主流となる中、オープン・イノベーションとともに採用すべきイノベーションと考えられます。

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日本企業のオープン・イノベーションの現状

クローズド・イノベーションによる成功体験が根強い日本企業では、どの程度、オープン・イノベーションを採用しているのか、経済産業省が最新の「オープンイノベーション白書」を発表しています。

大手企業・中小企業におけるオープン・イノベーションへの取り組み

日本の大企業71社、中小企業30社から回答受けた「オープンイノベーション活動への取り組みに関する調査」(2015年6月~11月がアンケート期間)では、「実施したことはない」と回答する企業が53%を占めており、「実施したことがある」と回答した企業は47%となっています。

【出典】経済産業省 オープンイノベーション白書 初版2.4.2 科学研究費補助金(基盤 A:25245053)「オープンイノベーション活動への取り組みに関する調査」P42

  • 実施したことがあり、現在も継続している…43.0%
  • 実施したことがあるが、現在は行なっていない…4.0%
  • 実施したことはない…53.0%

しかし、「実施したことはない」と回答した企業の中の65%の企業が「実施する必要性は感じるが、実施が難しい」と回答しています。「実施したことがない」という理由の中には、費用や外部との調整、自社の知的財産の流出リスク、オープン・イノベーションの経験を持つ経営者・人材の不足が挙げられています。

【出典】経済産業省 オープンイノベーション白書 初版2.4.2 科学研究費補助金(基盤 A:25245053)「オープンイノベーション活動への取り組みに関する調査」P42

これらの調査結果から、今後はオープン・イノベーションを進める上での組織改革や経営戦略、さらにはイノベーションを推進する経営者や人材の確保が必要と考えられます。

大手企業における外部連携の状況

日本の大手企業における外部とのコラボレーションの状況では、「オープンイノベーション推進奨励」が、「Fair(標準)」「Good」「Excellent」のいずれかであるとの回答が半数に達している一方、実行組織化や推進施策などの具体的な取り組みは「Poor」であるとの回答が5割以上を示しています。多くの企業が「スローガン」として先行し、実態が追いついていない現状がわかります。

【出典】経済産業省「オープンイノベーション白書 初版(概要版)」

また、研究開発における外部との連携割合においては、自社単体での開発を行なっている企業が6割弱を占めています。さらにグループ内企業との連携が約1割となっており、国内外の外部企業との連携している企業は3割に満たない実態がわかります。

【出典】経済産業省「オープンイノベーション白書 初版(概要版)」

しかし、「推進奨励」自体は決して悪いことではなく、会社の風土を変えていく上でも大切な取り組みでもあります。実際に自社のオープン・イノベーションに関する取り組みや考え方を紹介している企業も多く、今後のオープン・イノベーションに関心が集まっています。

【参考】味の素株式会社「オープンイノベーション」
【参考】富士フイルム株式会社「Open Innovation」
【参考】セコム株式会社「SECOM OPEN INNOVATION」
【参考】大成建設株式会社「大成建設のオープンイノベーション」
【参考】株式会社カヤック「オープンイノベーション請け負います」

日本企業の資金提供の実態

日本企業は、海外企業に比べて、オープン・イノベーションの導入が遅れていると指摘されていました。

日本企業の「総研究費に対する大学への研究費の拠出割合」は、2008年の0.44%から2012年までにわずか0.02%増の0.46%に留まっています。海外では、ドイツを除く、アメリカ、イギリス、韓国、中国の拠出割合は減少していますが、0.91~3.65%と高い割合を維持しています。

これらの調査結果からも日本企業の多くがオープン・イノベーションの実施に消極的であることがわかります。

【出典】経済産業省「オープンイノベーション白書 初版(概要版)」

経済産業省の取り組み

日本企業におけるオープン・イノベーションの調査結果を受け、経済産業省では2017年5月に「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き」を公開しました。この手引きには、大企業とベンチャー企業が提携し、オープン・イノベーションに取り組むための知見が記されているため、オープン・イノベーションの導入の際の参考資料として活用できます。

【出典】経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)」

オープンイノベーションのメリット

オープン・イノベーションを推進することは、多くのメリットがあり、企業の成長にもつながる重要な経営戦略にもつながります。ここではオープン・イノベーションのメリットの一部をご紹介いたします。

事業推進のスピードアップ

オープン・イノベーションは外部の知識・技術を幅広く取り入れる事で、調査や研究、企画・設計に必要な時間と費用の削減につながり、新たな市場に新製品(商品)・サービスの生産性が向上できます。その結果、競合他社との差別化・競争優位性を確立することができ、先行者利益を得られる事業の立ち上げに役立ちます。

次世代の収入源確保のためにも事業推進のスピードアップは欠かせないため、オープン・イノベーションは合理的な経営戦略と考えられます。

多様化する顧客ニーズ・価値観への対応力向上

顧客ニーズや価値観の多様化が進む中、新たな技術を導入した他業種による市場参入も珍しくなくなっています。

従来の自前主義のみで、競争優位性を保つことが難しくなり、組織や業界の垣根を超えた新たな発想や技術の必要性が増しています。オープン・イノベーションは、で、両社の知識や技術を集約し、多様化する顧客ニーズや価値観に応え得る新たなアイデアを生み出すきっかけにもつながります。

外部の新たな知識や技術の獲得

オープン・イノベーションではこれまで自社内での確立が難しかった知識の蓄積や技術力の向上を補完できます。技術の獲得方法には、公的機関主催のマッチングイベントの活用、自社ホームページでの募集、サプライチェーンや仲介業者を通す技術スカウティングが考えられます。

また、自社内で確立した知識や技術が自社内で活用する機会がない場合、オープン・イノベーションを推奨している企業に対して、技術ライセンシングとして提供することも可能です。技術ライセンシングは、商品化・サービス化する施設を持たない企業にとって、有効な技術活用方法であり、自社の研究開発部門の人材のモチベーション向上にもつながります。

自社のコアコンピタンスのアピール

オープン・イノベーションの取り組みを公開する事は、新しい事へ積極的に取り組む姿勢を社会に発信できるだけでなく、自社のコアコンピタンスのアピールにもつながります。

また、協業提携という形ではなく、M&Aによる買収や統合のきっかけにもなり、組織全体の強化にもつながります。大企業だけでなく、資本金が少ないベンチャー企業や中小企業も積極的にアピールすることで、オープン・イノベーションを成功に導くことが可能です。

短期間・低コストでの開発が可能

企画・調査・検証・開発全てを自社内で行なうクローズド・イノベーションは、多くの時間と資金、人材を費やす必要があり、独自の技術を確立することに成功しました。従来であれば、十分に採算が取れた経営手法でしたが、プロダクトライフサイクルの短期化に伴い、短期間かつ低コストで新製品(商品)を開発する必要性が高まっています。

オープン・イノベーションは外部から知識や技術を調達できるため、クローズド・イノベーションよりも迅速に商品開発と提供がおこなえます。獲得できる知識や技術は協力する他社の持つ強みでもあるため、自社のモノと組み合わせることで、結果的に時間的・人的コストの削減につながります。

オープン・イノベーションの課題

自前主義による成功体験を得た日本企業の多くは、オープン・イノベーションを実施していない状況にあります。しかし、その他にもオープン・イノベーションの推進に立ちはだかる課題があると考えられます。

アイデア・技術流出の懸念

他社との知識や技術の組み合わせにより成立するオープン・イノベーションには、自社の特許や技術に関する機密情報や知的財産が他社に流出する危険性が考えられます。

そのため、事前に提携する企業や組織とどこまで情報を開示するなど、明確なルールを作っておく必要があります。即効性の高い機密情報は、取引が始まる前に開示することは避けなければいけません。

また、中にはすぐに実現できない情報もあります。オープン・イノベーションに必要な組織体制の構築や新たな人材の獲得にかかるコストを踏まえた上で、技術者の派遣の有無、形式知化するためのコスト負担の割合も考慮しなければいけません。

自社開発力の衰退リスク

オープン・イノベーションの推進は、これまで行われてきた自社での研究開発を衰退させてしまう可能性があります。これは、オープン・イノベーションへ優秀な人材や資金を投資するあまり、既存の研究開発に割ける投資割合が極端に減少した場合に起こり得ます。そうなることで、研究開発部門の人材のモチベーション低下にもつながり、人材流出の可能性も生じてしまいます。

これまでの自社の競争優位性を保ってきた自社開発と、新しく取り組むオープン・イノベーションのバランスを考えながら、適切な経営資源の投入が必要です。

収益分配の課題

クローズド・イノベーションとは異なり、オープン・イノベーションで得た収益は提携企業同士で分配しなければいけません。

出資した資金や技術の秘匿性を考慮した上で分配割合を決める方法もありますが、オープン・イノベーションを提唱したチェスブロウ氏は、資金面以外の点を考慮しなければいけないと提唱しています。それが最初にアイデアを提唱した者や、根幹となるビジネスモデルを考案した者です。

彼らの提案がなければ、そもそも実現できなかった可能性が高く、事業化・収益化に寄与した彼らこそが優先的な権利を得るべきと考えられます。これらの点を考慮しなければ、アイデアや技術の盗用にもなりかねず、結果的に企業イメージを毀損してしまう事態に発展しかねません。

無意味な活動の実施

オープン・イノベーションの実現に向けた取り組みを行なう企業の中には、かえってオープン・イノベーションを阻害してしまう可能性があります。

シリコンバレー視察

イノベーションの聖地ともいわれる、米サンフランシスコのシリコンバレー。世界中から優秀なエンジニアやビジネスマンが集まり、世界中の企業から常に注目されています。

イノベーションを創出できる環境はどんなものかを実際に目にしたい経営者や幹部は多いかと思います。しかし、そのような安易な理由で視察に訪れることは、現地の企業に迷惑をかけるだけでなく、実態のない形式上の組織構築に終わってしまいます。シリコンバレーを訪れる際は、明確なビジネスプランを持った上で訪れなければいけません。

シリコンバレーに拠点を構える企業は日本以上に厳しい競争環境に立たされており、ビジネスプランを持たない表敬訪問や視察は相手にされないということを肝に銘じておきましょう。

トップダウン方式の改革

オープン・イノベーションを自社に導入するためには、トップを含む経営陣や幹部社員の意識改革が欠かせません。しかし、トップダウン方式の改革は一任された責任者やチームメンバーは何をするべきか判断に迷う可能性があります。

そのため、トップダウンでオープン・イノベーションを実施する際はトップ自らが現場に入り、明確な方針を定め、特任チームのメンバーのモチベーションを向上させなければいけません。

メディア・イベントの先行

オープン・イノベーションを行なう上で、外部からのアイデアや技術を提供しやすい企業イメージのアピールは大切です。最近では、オープン・イノベーションの推進の一貫として、コワーキングスペースを提供している企業が増えています。このようにオープン・イノベーションの拠点を設けることで、資金力が乏しいスタートアップ企業やフリーのクリエーターを集めやすく、コラボレーションやリレーションの構築、事業投資がしやすくなるメリットがあります。

しかし、これらの施設提供やメディアへの掲載、イベントの実施が先行するあまり、想定していたイノベーションの創出が興らない事態に発展する可能性もあります。施設の提供やメディアへの露出、イベントの実施を行なう場合は、明確な目標と期限を立てて、実施しなければいけません。

VC(ベンチャーキャピタル)への誤った認識と投資

ベンチャーキャピタル(以下、VC)はハイリターンな積極的な投資を行なう投資会社です。そのため、シリコンバレーに拠点を置くVCは、世の中を変えるイノベーションを興す可能性が高いベンチャー企業に投資していることが多く、有益な情報を持っています。

しかし、VCへの投資を行なう企業の目的は金銭的なリターンを目的としています。また、VCが提供する投資家に提供する情報は公平性を担保することが多く、特定の出資者に対してのみ、有益な情報を流さないと傾向がみられます。

そのため、オープン・イノベーションに有益な情報を獲得するための投資は避けるべきであり、VCへの誤った認識を正さなければいけません。

オープン・イノベーションを推進するためのポイント

オープン・イノベーションを実現するためには、「抜本的な組織改革」と「解決すべき課題と目標の明確化」が欠かせません。これらのポイントを理解し、着実に実行していくことが大切です。

抜本的な組織改革

日本の大企業は、自前主義を前提とした研究開発を行なっていた傾向が強いため、オープン・イノベーションを興すための抜本的な組織改革が必要です。以下にご紹介する3つのポイントを押えた上で、組織改革を行なうことが望ましいといえます。

戦略・ビジョン等の組織戦略

オープン・イノベーションを推進するにあたって、戦略や目的、その位置づけを明確にした上で、実現するための目標値を設定します。

また、オープン・イノベーション推進に必要なツールの開発や、インセンティブ制度の構築、そして多くの製品(商品)・技術開発に関するテーマを効率的に絞り込む「ステージゲート法」による管理手法の整備を実行します。

外部ネットワークの構築に向けた組織オペレーション

組織という枠組みを越えたオープン・イノベーションは社内外での組織作りも重要です。組織内部の「自社開発」の風潮を刷新し、経営陣や幹部社員を含む従業員の意識改革を行います。その上で、オープン・イノベーションを推進する専門プロジェクトチームを立ち上げます。

同時に共同開発を行なうパートナー企業を募集・選定するために、自社ホームページの改修やサプライチェーンとの連携強化、公的機関主催のマッチングイベントの活用、仲介業者の選定といった外部ネットワークの構築を目指します。

人材の確保と社内文化の醸成

オープン・イノベーションを興すための能力を持った人材を社内外問わずに確保しなけれればいけません。また、オープン・イノベーションへの経営層の理解やどの程度現場に関わるのか等の調整も必要です。

また、コーディネーター人材として機能するミドル層やイノベーター人材としての現場の人材の選定を行ないます。オープン・イノベーションを興せるだけの組織改革や風土の醸成、さらには経営層を含む全従業員の成功体験の付与も大切な要因です。

解決すべき課題と目標の明確化

「オープンイノベーション白書」でも指摘されている通り、多くの企業が「イノベーションを興す」こと自体が目的となってしまい、実態のない組織体制の構築や、「そもそも何をして良いかわからない」などの問題が生じています。

イノベーションを興すには、なぜイノベーションを起こしたいのか、イノベーションを活用して、どんな課題を解決にしたいのかなど明確な理由と目標が必要です。

オープン・イノベーションも例外ではなく、自社が抱える課題や将来の展望、経営戦略など活用するべき手段として、オープン・イノベーションを活用することを前提にしなければいけません。イノベーションの実現性を高まるためにも解決すべき課題と目標を明確化しましょう。

オープン・イノベーションに必要なマネジメント体制とは

オープン・イノベーションの推進には、適したマネジメントを行える人材の選抜や情報管理、リソースの確保などイノベーションに特化したマネジメント体制の確立が欠かせません。

オープン・イノベーションに適した人材の選抜

オープン・イノベーションは全社的に取り組む必要があるため、適した人材は幅広い社内人脈を持ち、各部門の利害調整を行なえる人材が適していると考えられます。しかし、日本的慣行の強い日本企業においては、学歴や勤続年数を重視する傾向がみられます。イノベーションを興すは、新規事業を構想し、最後までやり抜く強い想いと実行力を有する人材が適しています。そのため、学閥や年功序列を基準にした人材選抜は避けるべきです。

また、イノベーション事業に専念させるためにも、以前の業務との兼任は避けることが良いとされています。退路を断つことにより、適度なモチベーションとプレッシャーを与えられるため、成功率が上がります。

情報管理とリソースの確保方法の確立

オープン・イノベーションの課題のひとつに、情報漏洩のリスクがあります。自社の強みである独自技術やアイデアを競合他社に流出しないか、開示する情報の吟味が必要です。

また、イノベーションを実行するだけのリソース確保においても社内のみで行なえることも少なくありません。これらの問題を解決するには、コーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)や仲介業者の活用が最適です。これら、第三者機関は情報管理体制を徹底しており、費用と情報漏洩リスク低くすることができます。

ITを活用した公募体制の構築

インターネットやSNSは個人の優秀なクリエーターやエンジニアの情報発信ツールとしても活用されており、画期的なアイデアの発掘にもつながります。現在ではクラウドファンディングやフィンテックといったIT技術を駆使した、迅速な資金調達も可能となっており、イノベーションを興しやすい環境が整ってきました。

そのため、オープン・イノベーションを実行したい企業もこうしたIT技術を活用した、柔軟性の高い公募体制を構築する必要があります。

オープン・イノベーションの企業事例

日本企業になじみにくいといわれるオープン・イノベーションですが、組織改革を行ない、実行に移している日本企業も多く存在しています。今回は、オープン・イノベーションの取り組みを実践している企業事例を一部ご紹介いたします。

オープン・イノベーション室を推進する大阪ガス株式会社

大阪ガス株式会社(以下、大阪ガス)では、2010年に新たなイノベーション創出に向けた京都大学との連携協定を皮切りに、さまざまな分野でオープン・イノベーションを推進しています。

大阪ガスでは、パイプライン・インフラ技術、産業用危機など社内のニーズを公開することで、持ち込まれた提案を、新商品の提供やコストダウン、性能UPなどに活用されています。

【参考】大阪ガス株式会社 プレスリリース 京都大学と大阪ガスとの新たなイノベーション創出に向けた包括的な連携協定の締結について
【参考】大阪ガス株式会社 大阪ガスグループ 技術ニーズの一覧(H29年度)

さまざまな分野で拠点を構築する東レ株式会社

2009年に社長直轄組織と発足された東レ株式会社(以下、東レ)の研究開発組織であるE&Eセンター。太陽電池部材、リチウムイオン電池部材といった重点領域を中心にオープン・イノベーションを促進し、新たな事業創出とビジネスモデルの確信を目指しています。

また、E&Eセンターの機関組織である環境・エネルギー開発センターでは、太陽・燃料電池、化学防護服など次世代のエネルギーの分野でのイノベーションを目指しています。

【参考】東レ株式会社 研究開発 E&Eセンター

日産自動車株式会社による技術ライセンシング

持続可能なモビリティ(乗り物)社会の実現を目指す日産自動車株式会社(以下、日産)では、「世界の智が集うオープン・イノベーションの拠点になること」を目指した取り組みを実践しています。

日産では、自社が開発した独自技術を積極的に公開し、さまざまな業界の企業に技術ライセンシングを行なっています。次世代の自動車のために開発されたスーパーモーターや3Dモーターをはじめ、導電性高分子繊維、高耐久セミアニリン本革などの最先端技術を公開しています。2万点以上のパーツを支える日産独自の技術を、他の分野で活用することで、暮らしを変える取り組みはオープン・イノベーションの好事例といえます。

【参考】日産自動車株式会社 持続可能なモビリティ社会の実現に向けて
【参考】日産自動車株式会社 ライセンス可能技術

味の素グループによる新たなパートナーシップ

日本有数の食品会社である味の素グループでは、オープン・イノベーションの取り組みとして、研究助成プログラムを実施しています。味の素のコアコンピタンスであるアミノ酸研究も募集の対象としています。また、北米リサーチ&イノベーションセンターを中心にグローバル戦略を展開し、世界中の企業と技術提携を実施しています。

味の素グループでは、途上国の食の改善事業である「栄養改善プログラム」や「KOKO plus」(栄養サプリメント)の実施を通して、社会貢献活動を通して、新興国でのビジネスチャンスを模索しています。

【参考】味の素グループ オープンイノベーション

支援体制の確立と独自技術の開発に成功したKDDI株式会社

日本の大手通信事業者であるKDDI株式会社(以下、KDDI)では、オープン・イノベーション推進を目指した支援体制を充実させています。国内外のスタートアップ企業への出資を行なう「KDDI Open Innovation Fund」やオープン・イノベーションを支える次世代人材開発拠点である「KDDI∞ Labo(無限ラボ)」を運営しています。

社会の持続的発展を目指した新しいサービスの創出や斬新なアイデア、ノウハウを蓄積することで、本業である携帯電話事業に活かせるメリットがあります。グローバル市場の多極化に対応するためにも積極的にプロダクトイノベーションを推進し、近年ではKDDIのSIMカードを活用したIoTセキュリティ技術の確立につながっています。

【参考】KDDI株式会社 イノベーションマネジメント

まとめ

  • 自前主義の成功体験が根強く残る日本企業では、オープン・イノベーションが根付いていないと指摘されていますが、激変する世界経済に対応するためにもその必要性は日々増しています。
  • 導入への課題も多いですが、時間的・コスト的にもメリットも高く、事業促進の有効な経営戦略としても注目されています。

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