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2018年6月20日(水)更新

シンギュラリティ(技術的特異点)

科学技術の発展により、人工知能(AI)の研究開発が加速することで、我々の暮らしは豊かなものになると考えられています。一方で、2045年には人工知能は人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するといわれています。今回はシンギュラリティの意味や2045年問題、人類にもたらす可能性や影響をご紹介いたします。

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シンギュラリティ(技術特異点)とは

人工知能の研究開発が加速する中、シンギュラリティという言葉が徐々に浸透しつつあります。シンギュラリティの意味や2045年問題、シンギュラリティが注目される背景、プレシンギュラリティの意味を知ることで、理解を深めることができます。

【関連】人工知能(AI)とは何か?歴史や種類、メリット、仕事アプリをご紹介 / BizHint HR

シンギュラリティ(技術特異点)の意味

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念を指します。シンギュラリティという概念は、人工知能の権威であるレイ・カーツワイル博士により提唱された「未来予測の概念」でもあります。

コンピューターの進化はめざましく、すでに神経の働きをシミュレーションしたニューロコンピューターにより、脳内の神経細胞の働きは一部が再現可能となっています。20年以内にはコンピューター内のニューロンの数は人間の脳の数を超えることができ、コンピューターが意識を持つことが可能になると言われています。「機械が人間の脳を超える」という段階は、少なくとも人類の想像をはるかに越える速度で近づいていると言えるでしょう。

シンギュラリティ(技術特異点)がもたらす2045年問題

レイ・カーツワイル博士は、少なくとも2045年までには人間と人工知能の能力が逆転するシンギュラリティ(技術特異点)に到達すると提唱しています。この2045年問題とは、指数関数(倍増しの法則を定式化したもの)的に人工知能が進化し、少なくとも2045年には人類が予測できない域に達するという仮説を指します。つまり、永続的に人工知能が進化することは、人工知能が自らを改良し、人工知能人工知能を生み出すことを可能とし、事実上、人工知能の開発が人類最後の発明となることを意味しています。

人工知能が人類の能力を超えるには、パターン認識能力(文脈や状態が異なる同一の物や事象を同じものと認識する能力)や生物と機械のアルゴリズムの違いなどの課題があります。しかし、近年の研究では、機械は生物のアルゴリズムを摸倣できることがわかっているため、生物と機械との唯一の差はニューラルネットワーク(ニューロン間のあらゆる相互接続)の数のみといわれています。

現時点では2045年問題が現実化するかどうかは不明ですが、シンギュラリティ(技術特異点)はいずれ起こり得る事態と考えられます。人工知能が人間の脳を超えると、人間の生活環境は大きく変わり、これまで人間でしかできなかった多くのことが機械によって代替されると予想されています。

シンギュラリティが注目される背景

人工知能研究の歴史は古く、1950年代後半に第一次人工知能ブームが起きたとされており、1980~90年代には第二次人工知能ブームが起きています。

90年代後半には、コンピュータの性能が飛躍的に向上し、チェスの世界チャンピオンを破ったと話題となりました。2010年から人工知能を用いたビッグデータの蓄積やディープラーニング(深層心理)によるビジネスへの活用が始まり、第三次人工知能ブームが起きると同時に、シンギュラリティの可能性や脅威が議論されるようになりました。

今後、人工知能は人間の代替労働力として期待されているだけでなく、医療、金融、情報通信、さらには軍事にも適用されていることが予想されています。そのため、人間の知性を超える人工知能をいかに制御し、人類の発展のために役立てるかという議論が活性化したと考えられます。

プレシンギュラリティの意味

プレシンギュラリティとは、PEZY Computingの代表取締役で、優秀な科学者でもある斎藤元章氏が提唱した人工知能とスーパーコンピュータを併用した技術によって、もたらされる社会変革(社会的特異点)を指します。このプレシンギュラリティは5~10年の間に起こるといわれており、エネルギーの無料化、不老不死、不労社会の実現、戦争がない世界の実現を可能としています。

2025年にはAGI(汎用人工知能もしくは人工汎用知能のこと、Artifical General intelligenceの略)の登場により、人間が担うほとんどの仕事が機械に置き換えられ、少子高齢化、労働人口減少の影響を受けることなく、高度経済成長が可能と予測しています。そのため、企業は規模に関係なく、さまざまな労働の機械化が実現し、自社の商品開発力の向上とマーケティング強化に向けた経営戦略を実施することができるといわれています。

シンギュラリティ(技術特異点)より加速する分野

技術革新による人工知能の進化は、さまざまな分野で活用され、大きな影響をもたらします。今回はシンギュラリティの影響を受けやすい分野をご紹介いたします。

ビッグデータ・ディープラーニング(深層学習)分野

2010年頃から人工知能を活用した分野として注目されているのが、ビッグデータ・ディープラーニング(深層学習)です。

ビッグデータとは、通常の情報システムでは記録、保管、解析が難しい非構造化された、もしくは非定型的なデータの総称です。通常の情報管理では見過ごされがちなデータを抽出し、隠れた顧客ニーズを見つけ出す「源」と位置付けることができ、ビジネス活動への活用が期待されています。しかし、人間の能力はもちろん、通常の情報システムでも記録、保管、分析が難しいため、しばしば人工知能を使ったデータの蓄積と解析が行われています。

そこで、人工知能が利用する技術がディープラーニング(深層学習)です。ディープラーニング(深層学習)とは、機械が人間の手を借りることなく、自動的にデータの特徴を抽出するディープニューラルネットワークを用いた人工知能の学習方法を指します。人工知能よりも低い処理能力の情報システムや人間の脳では抽出・分析が難しかったビッグデータを活用できる技術として注目を集めています。

今後、人工知能の発展により、隠れた顧客ニーズを見つけることが容易くなり、ビジネスへの活用が進むと考えられます。そのため、シンギュラリティを加速させる要因としても注目されている分野といえます。

ロボット産業分野

深刻な労働人口の減少に対する補完施策として注目されているのがロボット産業です。

製造業において、工作ロボットの導入は既に行われており、日本の「ものづくり」を支える重要な技術として、現在も活躍しています。しかし、今後はロボットに人工知能を組み込むことで、人間によるプログラミングを必要とせずにロボット自らが動作を自動生成することが可能となります。この技術により、最初の指示と目的を示すだけで、ロボット自らが途中プロセスを考え、実行に移すことができます。途中プロセスを制御するプログラミングが省略できるだけでも、大幅な人件費の削減が期待できます。

また、ソフトバンクが開発したpapperは受付の省人化を実現し、人件費の削減だけでなく、クーポンの配布や安価な商品の発売を可能とし、売上の向上に役立つと期待されています。

ナノテクノロジー分野

ナノテクノロジーとは、原子や分子の配列をナノメートル単位で操作・制御することで、新たな構造物を作り出し、様々な物質を小型化することに長けた技術を指します。この技術により、膨大な量の情報を指先ほどのマイクロチップに収めることを可能とし、理論上は細胞レベルまで小型化した機械を生物の体内に組み込むことも可能とします。

ナノテクノロジーにより超小型化された人工知能を体内に組み込むことで、生物学上の限界を超えた能力を発揮でき、さまざまな病気や環境変化に耐えうる肉体を手に入れられると考えらえています。今後、シンギュラリティによって、一気に加速する分野のひとつでもあります。

IoT分野

IoTとは、パソコンやサーバー以外の「モノ(電化製品や建築物、自動車など)」にインターネット接続を行い、相互に情報をやりとりする技術を指します。「モノのインターネット」とも呼ばれ、人々を取り囲むあらゆる「モノ」に情報の相互通信を可能にすることで、より豊かで快適な暮らしを実現できると考えられています。

また、IoT技術には人工知能の存在が欠かせません。IoT化された「モノ」が収集・蓄積したデータを、人工知能が適切に分析・指示を行って、はじめてサービスを実現することができるからです。

また、これらのデータはビッグデータとして、マーケティングや自社開発能力の向上に役立てることもできます。今後、「モノ」に組み込むセンサーのコストも下がることが予想されており、人工知能を活用したIoT社会の到来が期待されています。

シンギュラリティ(技術特異点)がもたらす可能性

「シンギュラリティによって、人間の生活は大きく変わる」と予測されています。現在でも、自動車の自動運転や介護ロボットなどの身近な分野で、人工知能の恩恵と呼べる研究開発が進んでいるのは周知の通りです。

今後は、医療分野にナノテクノロジーを利用することで、生物学上の限界を克服することができるともいわれています。一方で、シンギュラリティがもたらす可能性には、さまざまな意見や指摘も存在しています。

機械化・自動化による労働力の削減

シンギュラリティの実現によって、人間が担ってきた多くの仕事が機械化・自動化されるといわれています。その結果、人類は生活のための労働から解放されることとなり、シンギュラリティ以前よりも豊かな生活や人生を手に入れることができると考えられています。これらの可能性は、シンギュラリティの提唱者であるカーツワイル博士を中心としたシンギュラリティに対する楽観論として認識されています。

経済がグローバル化する中で、少子高齢化や労働人口の減少のあおりを受ける日本社会においては画期的な解決策でもあり、注目を集めています。社会問題化している長時間労働過労死の解決策としても、シンギュラリティがもたらす機械化・自動化による労働力の削減は魅力的といえます。

ベーシック・インカムの導入

ベーシック・インカムとは、就労(もしくは就労意思)や資産の有無、年齢や性別にかかわらず、無条件に最低限の所得を支給する社会政策の構想のひとつです。貧困問題の解決や需給審査の管理コストの削減が見込め、ライフスタイルの選択を豊富にするメリットがあります。一方で、膨大な財源が必要になる、就労意識の低下などの解決が難しい深刻な課題も抱えており、議論が絶えないテーマでもあります。

シンギュラリティによって、ベーシック・インカムが導入される視点は2つあります。それが人工知能の発展による労働からの解放がもたらす恩恵としての楽観的な導入です。一方で、人工知能により人々の仕事が奪われ、生活保護を求める人が増加し、ベーシック・インカムの導入が避けられないという悲観的な導入です。

人工知能による労働力の削減は人類に幸せをもたらすか、それとも不幸をもたらすか。その見通しが立てにくいことも、シンギュラリティ特有の不確実性が要因になっていると考えられます。

シンギュラリティに対する悲観論

シンギュラリティへの楽観論がある一方、シンギュラリティの結果、「人間は機械に支配されるのではないか」という悲観論を唱える特異点論者も存在します。それは特異点に到達した後、どのような世界が実現しているか、現時点で人類が全く予測できないからです。

それが機械超知能であるのか、人間が超人類となるのかは誰にもわかりません。それゆえに「超知能と呼ばれる人工知能によって、人類が滅亡するのではないか」と指摘する特異点論者たちも多く、警鐘を鳴らしています。

既に「意思を持った機械の反乱」や「倫理に反する人造人間の誕生」という世界観を題材にした映画や小説は多く発表されており、その現実性が増してきたといえます。軍事問題に発展する可能性もあり、人工知能に関するガイドラインの必要性も叫ばれています。また、人間が担っているほとんどの仕事が機械に奪われ、失業率が悪化するという懸念や指摘も悲観論を形成する要因といえるでしょう。

シンギュラリティ(技術特異点)がもたらす影響

シンギュラリティは、人類にさまざまな影響を与えることが指摘されており、中でも人工知能がもたらす労働問題はたびたび議論のテーマとして取り上げられています。

オックスフォード大学が発表した「なくなる仕事」

英オックスフォード大学で人工知能の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授は論文『雇用の未来(THE FUTURE OF EMPLOYMENT)』の中で、販売員や事務員、銀行の融資担当などが機械によって代替されるという衝撃的な見解を述べています。特に知識やスキルを必要としない定型的な仕事や、体系的に物事を処理する仕事が人工知能へと転換されていく可能性が高いと指摘しており、中には会計士など高度な知識を必要とする職種も含まれています。

しかし、対人的な仕事に関しては、人間がどこまで人工知能を受け入れられるかが鍵となっており、人工知能によって代替が難しい仕事も多数存在すると考えられています。

【参考】米オックスフォード大学 THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?

今後、必要とされる仕事

一方、オズボーン准教授が「人工知能への代替が難しい」と挙げている仕事が、社会性、創造力、臨機応変さが求められる仕事です。

カウンセラーやコンサルタントといった抽象的な概念に基づく考え方が必要とされる仕事や、芸術関係や学問関係などの職種が挙げられます。また、スポーツ選手やタレント、ミュージシャンといったショービジネスを担う仕事や、介護福祉、接客業、医療などのホスピタリティ性が高い職種(高度な接客を必要とする職種)も人工知能による代替が難しいとされています。そのほか、アイデンティに関わる仕事(伝統工芸の職人や文学者、哲学者、宗教家など)も今後生き残る仕事といわれています。

一方で、シンギュラリティによって新たに生み出される仕事も注目されています。それが人工知能を搭載したロボットを教育・運用する仕事です。今後、人工知能は自らをアップデートし、人間によるプログラミングを必要としないと考えられています。とはいえ、人工知能に柔軟な考えを植え付け、人間に危害を加えることを防ぐ意味でも、人間が人工知能やロボットをチューニングする作業が必要になると考えられています。

そのため、シンギュラリティの到来前には、人工知能やロボットを適切に教育・運用する仕事がすると考えられています。

ビジネス倫理の問題

シンギュラリティの到来は、「ビジネス倫理の崩壊を招く」と指摘する特異点論者も存在します。近年、注目を集めている「フィンテック(IT技術を活用した金融サービスを指す造語)」という分野で、シンギュラリティによって誕生したとされるのが「仮想通貨」です。従来の物理的な貨幣の価値を仮想空間に移転し、流通・匿名性を高めたサービスでもあります。

その結果、フィンテックはマネーロンダリングやテロ資金の温床と指摘されることも多く、その存在を疑問視する声が後を絶ちません。フィンテック同様に、人工知能によるシンギュラリティも既存のビジネス倫理を破壊する可能性があり、今後の動向が注目されています。

まとめ

  • シンギュラリティは人類に多大な恩恵をもたらすと同時に、さまざまな危機を招く諸刃の剣として、今後も議論されていくことが予想されます。
  • 2045年問題やプレシンギュラリティの到来が現実的になってきており、企業や個人は大規模な変革に備える必要があります。
  • シンギュラリティによる可能性や影響を理解し、「どのように人工知能を企業経営に活用していくべきか」を真剣に考えるタイミングが来たと捉えるべきではないでしょうか。

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