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2018年8月12日(日)更新

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

《RPAの解説と22件の注目記事》RPAとは、ルールエンジンやAI、機械学習といった高性能な認知技術を用いることによって実現する、業務の自動化や効率化に向けた取り組みやソフトウェアロボットを指す言葉です。製品のパーツ組み立てや荷物の運搬といったブルーカラー業務をサポートする産業用ロボットに対し、RPAはデータ入力や情報チェックなどのホワイトカラー業務をサポートします。RPAの効果を正しく理解し、組織導入による業務改革を成功させるために必要な情報を、言葉の意味や導入効果、具体的な導入方法、実際に導入した企業の導入事例、RPAツールなどの項目にまとめて分かりやすく解説致します。

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RPAの意味とは

RPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、バックオフィスにおけるホワイトカラー業務など、これまで私たち人間が手作業で行ってきた仕事を、ルールエンジンやAI、機械学習などの認知技術を取り入れたロボットに代行してもらうことにより、業務の大部分における自動化や効率化を図る取り組みを指す言葉です。

また、事務処理や業務処理といった定型作業をRPA化する取り組みだけでなく、RPAツール本体やRPA業務自動化ソリューションといったサービスをRPAと略して呼ぶこともあります。

RPAとRDAの違い

RPAとよく似た言葉にRDA(Robotic Desktop Automation=ロボティック・デスクトップ・オートメーション)というものがあります。

RDAはマクロ機能など作業の半自動化を実現させる機能を活用することによって、大量の情報を規則的に整理する反復作業や、決められたプロセスにそって定常的に行われるルーティンワーク(ルーチンワーク、定型業務)など単一アプリケーションに対する自動化を行うことができます。

RPAやRDAにはきちんとした定義が定められておらず単なる概念でしかないため、RPAとRDAの総称としてロボティック・オートメーションという表現を用いたり、RPAの中にRDAも含めて扱ったりと様々な形で分類されています。

しかし、大切なのは分類方法ではなくその言葉の持つ意味と役割です。組織内においてRPAを最大限に活用するためにも、RDAの違いを正しく理解しておきましょう。

なお、当記事ではバックグラウンド環境においてほぼ全ての業務プロセスを独立的にこなすデジタルレイバーとしての役割や性質を重視することから、RPAとRDAを完全な別物として扱うものとします。

  RPA RDA
正式名称 Robotic Process Automation
(ロボティック・プロセス・オートメーション)
Robotic Desktop Automation
(ロボティック・デスクトップ・オートメーション)
操作対象 複数アプリケーション 単一アプリケーション
インストール先 サーバー等 担当者個人のPC
運用管理方法 管理サーバー操作による集中管理 担当者自身による運用管理が必要
導入目的や効果 業務自動化 業務効率化
主な特徴 業務内容によっては100%自動化が可能
管理サーバーから一括操作が行える
同一業務の作業量と導入効果が比例する
個々の作業内容に合わせて細かく調整できる
幅広い業務に対して適用することができる
個人PCへのインストールのため気軽に導入できる

【参考】RPA (ロボティックプロセスオートメーション)による定型業務からの解放 - IBM THINK Business - Japan

RPAの3つのクラス

RPAは搭載された機能や適用対象となる作業の難易度に応じて3つのクラスに分けることができます。その中でも、クラス2とクラス3のRPAにはマシンラーニング(機械学習)と呼ばれる自動学習機能が備わっているため、判断や検討を伴う高度な作業を担当させることができます。

高クラスになるほど複雑で高度な作業を行わせることができますが、それに比例する形で導入コスト(イニシャルコスト)や運用コスト(ランニングコスト)も増加してしまうため、RPAに与える仕事の難易度や求められる判断レベルに応じて適切なクラスのRPAを選択しなければなりません。

クラス1:RPA(Robotic Process Automation)

RPAはこれまで人間が行ってきた定型業務を的確にこなすソフトウェアロボットであり、複数アプリケーションの連携を必要とする単純作業を得意としています。

主にルールエンジンや画像認識、座標取得、業務フロー管理などの機能が搭載されており、判定基準や対処方法を細かく設定しておくことによって様々なイレギュラーに対応することができます。しかし、設定されていないイレギュラーに対しては一切対応することができないため、RPAの導入時にはリスクの洗い出しと分岐条件の設定、対処方法の設定などを十分に行っておかなければなりません。

クラス2:EPA(Enhanced Process Automation)

EPAは紙媒体によるアンケート用紙の集計や自由記述式による問い合わせ内容の分析など、非構造化データを扱う作業のシステム化を得意としています。また、イレギュラーに対しても柔軟かつ的確な対応を取ることができるため、RPAが苦手としていた非定型業務を任せることができます。

問い合わせ内容に対する自動回答や複数データの分析による売上予測など、EPAの導入によって人材活用や経営戦略の幅は飛躍的に拡大することでしょう。

クラス3:CA(Cognitive Automation)

CAは情報の整理や分析だけではなく意思決定まで行うことができる自立度の高いソフトウェアロボットです。予め与えられた大量の情報を元に自主的な学習と成長を続けるディープラーニング(深層学習)は、業務において常に最良の判断を導き出すだけではなく、作業プロセスの分析や評価、改善方法の検討、再実施なども可能にします。

高度なAIを搭載したCAを導入することにより、相手の感情や置かれている状況に配慮したメッセージの新規作成や気候変動に合わせた仕入れ量の調整など、人間とほぼ同じ水準のサービス提供や意思決定を再現することができるでしょう。

人間を補完するデジタルレイバー

RPAは人間にとって支援者(サポーター)ではなく代行者としての側面を強く持っています。そのため、業務プロセスやPC操作方法、判断基準やトラブル発生時の処理方法などを細かく設定しておくことによって、業務遂行に必要となるウェブブラウザ、電子メールクライアント(メーラー)、専門的な作業を行うためのソフトウェア、クラウドシステムなどの異なる複数の環境を自在に行き来しながら複雑な作業を行わせることができます。

また、多くのRPAソフトウェアロボットは従来の自動化ツールや自動ロボ、自動化システムなどと違い、バックグラウンド環境で動作することが可能であるため、人間がパソコンを使用して連続処理を行ったり、別のRPAソフトウェアロボットが稼動している場合であっても問題なく並行処理を行うことが可能となっています。

このように個々のRPAソフトウェアロボットが独立した1つの労働力として成立していること、そして人間の知能をコンピューター上で再現することで本物の人間によく似た反応や判断、挙動を可能にするAI(Artificial Intelligence=人工知能)が搭載されたものなど、人間を補完する形で業務を遂行できることから、RPAソフトウェアロボットのことをデジタルレイバー(仮想知的労働者)と呼ぶこともあります。

RPAが人間の仕事を奪うという誤解

【出典】日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に/ 野村総合研究所(NRI)

AI技術の進歩やオフィスのデジタル化に伴い、RPAの持つ力を活用できるビジネスシーンは日々増加しています。

2015年12月、コンサルティングや各種ITソリューション事業を展開する株式会社野村総合研究所(NRI)は、イギリスの名門大学であるオックスフォード大学(University of Oxford)のマイケル・A・オズボーン(Michael A. Osborne)準教授およびカール・ベネディクト・フレイ(Carl Benedikt Frey)博士との共同研究の成果として、日本国内における労働人口の約49%が今後10~20年の間に人工知能やロボットに置き換え可能になるであろうという驚くべき試算結果を公表しました。

研究対象が労働政策研究・研修機構が『職務構造に関する研究』内で報告している601の職業に限られていることや、コンピューターによる技術的な代替可能性の試算であることから、この研究結果が日本国内に存在する約半数の仕事が必ずロボットに奪われてしまうということを示したものでないことは明らかです。

しかし、49%という高い数値は『自分の担当業務も将来的にロボット化されてしまうかもしれない』という不安を感じさせるのに十分な力を有していました。その結果、この共同研究結果は大きな話題となり、経営者や人事担当者だけではなく現場労働者を含む全労働者の注目と関心を集めることになったのです。

しかし、ここで1つ誤解を解いておかなければならないことがあります。それは『AIやロボットが人間の仕事を奪う』というものです。確かにAIやロボットは人間よりも高い作業性と正確性を持ち合わせています。ですが、その能力を最大限に活かすためには人間によるサポートやメンテナンスが欠かせません。

また、RPAに業務を引き継ぐことによってフリーとなった従業員を活用することによって更なるビジネスチャンスを生み出すこともできます。

【人間とRPAの共存例】

  • RPAにバックオフィス業務全般を担当してもらい、従業員を顧客サポートに注力させることでサポートの質を高める
  • これまで人手不足を理由に二の足を踏んでいた新規事業開発や新プロジェクトに着手する
  • 創造的業務を人間が担当し、入力業務や管理業務、判断業務をRPAが担当することで組織力を最大化させる

RPAツール導入による組織内の業務改革や業務改善を実現させるためには、早期段階においてRPAに対するイメージを『一方的に仕事を奪う侵略者』や『限られた仕事を奪い合うライバル』といったネガティブなものから、『共に支えあう良き同僚』というポジティブなものに変えておかなければなりません。

従業員に対する意識改革は、人間とRPAが良好な関係を築き、共存していくことができる未来の実現に向けて絶対に達成しておかなければならない重要課題なのです。

【参考】日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に / 野村総合研究所(NRI)

RPAに注目が集まっている社会的背景

クラス1に該当する技術は、以前から存在しているにも関わらず近年になってその名前を耳にする機会が増えているRPAですが、そこにはどのような理由があるのでしょうか。RPAに注目が集まっている社会的背景には次のようなものがあります。

生産年齢人口の減少による慢性的な人材不足への備え

【出典】1 高齢化の現状と将来像|平成28年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

RPAに注目が集まっている最大の理由は生産年齢人口の減少による慢性的な人材不足への備えです。

日本政府は『平成28年版高齢社会白書』において、15歳以上65歳未満の人口層を指す生産年齢人口は2015年から2060年にかけておよそ3290万人減少していくと予測しています。多くの経営者は『2015年時点の生産年齢人口実数である7708万人に対して4割以上の人材が姿を消すであろう』という日本政府の予測に大きな危機感を抱いているのです。

これまで生産性の向上や業務補助を目的として多くの場面で活用されてきたアウトソーシング(外部委託)や派遣社員は、その業務を担当する人材がいて初めて成立するものであるため、超人材不足時代に突入してからも安定して業務委託や派遣受け入れを行えるという保証はどこにもありません。 また、業務遂行に欠かせない知識の伝達や技術の指導、製品やサービスの品質を維持するためのチェック環境の構築、管理担当者の配置など多くの手間とヒューマンリソース(人的資源)を必要とすることから、より良い代替案を探し求める声は少なくありませんでした。

このような現状に頭を抱える経営者に対し、業務システム向けRPAツールやRPAソリューションを提供する企業が、RPAの強みである『絶対に自ら辞めない』、『24時間365日働き続ける』、『状況変化に強く、同じ失敗を繰り返さない』、『ノンプラミングによる業務やオペレーションの自動化が可能』などの性質を積極的にアピールしたことにより、アウトソーシング(外部委託)や派遣社員に変わる新しい業務パートナーとして注目が集まるようになったのです。

デジタルデータに関する周辺環境の整備

これまで紙媒体として扱われることが多かった契約書類やアンケート用紙、会議資料などが多くの組織で次々にデジタル化(電子化)されていることもRPAに注目を集める一因となっています。

クラス1であるRPAはデジタルデータの整理や処理を得意とする一方でアナログデータを正確に扱うことを苦手としていたため、デジタル化が進まない企業においては必要性が乏しく、長きにわたり日の目を浴びることができませんでした。

しかし、ITインフラの普及やクラウドシステムの登場、パソコンをはじめとする情報通信機器や大容量メディアの低価格化など、中小企業でもデジタルデータを扱いやすい環境が整備されたことによってRPAの活躍機会が一気に拡大したのです。

AI技術の高度化

AI技術の高度化により、クラス2となるEPAが誕生したこともRPAの普及に拍車をかけました。

デジタルデータを決められたルールに則って処理するだけではなく、紙媒体やスキャンデータなどの手書き文書を正しく読み取り、デジタル化した上で処理を行い、予め用意された複数の対処方法から適切なものを選択して実行できるようになったことで、RPAの対象業務範囲は一気に拡大し、多くの需要が発生したのです。

RPAにできること、できないこと

RPAを組織内で最大限に活用するためには、RPAにできることとできないことを正しく把握しておく必要があります。

RPAにできること

2017年9月現在、多くの企業で導入されている一般的なRPAツールには次のような機能が備わっています。

  • キーボードやマウスなどのパソコン操作の自動化
  • 画面に表示された文字列の判別
  • 画面に表示された図形や色の判別
  • アプリケーションの起動や終了
  • IDやパスワードなどの自動入力処理
  • スケジュールの設定と自動実行
  • 様々な業種や職種、現場条件に合わせた柔軟なカスタマイズ
  • ノンプログラミングによる作業手順の設定
  • 蓄積されたデータの整理や分析
  • システムの異なるアプリケーション間でのデータの受け渡し
  • 社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
  • 条件分岐設定やAI機能による適切なエラー処理や自動応答

RPAが得意とする業務

様々な機能を有しているRPAですが、実際の現場では次のような形で活用されています。

  • 会計システムへの売上伝票や領収書、請求書データなどの処理業務
  • 過去データの分析と予測による受発注業務
  • アンケート用紙のデータ入力作業と集計作業
  • 従業員の勤怠管理や長時間残業に対する自動警告
  • 派遣社員やアルバイトスタッフの雇用管理
  • 問い合わせフォームに対する自動応答と自動処理
  • 名刺のスキャニングと既存システムへの登録作業
  • ライバル製品のWebサイト巡回による情報収集とマーケティング
  • 顧客情報の管理分析
  • 見込み客の洗い出しと購買意欲を高めるメッセージの自動作成

RPAにできないこと

現場の生産性を高める多くの機能が備わっているRPAですが、ライン業務を行うロボットのようにロボットアームなどの専用ハードウェアを持ち合わせていないため、物を運んだり組み立てるといったアナログ作業を行うことはできません。

また、クラス3のCAに含まれるディープラーニングという機能は発展途上中の最新技術であり、実用化に向けた取り組みが進められているものの、現時点ではまだ一般的に使用できる段階まで至っていないため、AIによる意思決定を実務レベルで活用することはできません。

RPA導入によるメリットと効果

RPAはアウトソーシングや派遣社員といった従来の人力による業務補助に比べ、多くのメリットを持ち合わせています。

  • 大量の仕事を素早くこなすことができる
  • 作業精度が非常に高く、エラーがほとんど発生しない
  • キャパシティ一杯の仕事を与えても慌てることなく1つずつ確実に処理できる
  • 休憩や休暇、有給を必要としない
  • 業務時間外に仕事を与えても残業代が発生しない
  • 部署変更や業務内容の変更に対して即座に対応できる
  • 業務変更や作業環境の変化に対してストレスを感じない
  • 業務ルールの追加や変更に不満を感じることなく素直に従える
  • 体調不良による遅刻や早退がない
  • 集中力の低下によるエラー率の増加や作業性の低下が起きない
  • ボーナスや退職金、福利厚生制度が不要
  • パワハラやセクハラなどの人間関係トラブルが発生しない
  • 業務外におけるコミュニケーションやスキンシップが不要

このように多くのメリットを持ち合わせているRPAを導入することにより、組織は次のような効果を得ることができます。

生産性の向上

1台で人間2~5人分の仕事をこなしてくれるRPAを導入することにより、大量の事務作業を迅速に処理することが可能となります。また、その正確性によりエラー数を限りなく0に近づけることで、導入部門内の生産性を最大限にまで高めてくれます。

生産性向上という効果は売上高や労働生産性といった指標を用いて視覚化することができるため、RPA導入直後からその効果を実感することができるでしょう。

コスト削減効果

RPAの導入コストや運用コストは決して安価なものではありません。しかし、RPAの持つ作業速度の速さやエラー率の低さ、制限のない連続稼働時間といった数々の強みを十分に活かすことによって、人件費の大幅削減と高いコストパフォーマンスの実現を両立させることが可能となります。

RPAは無限の可能性を秘めており、組織内における活用方法によってコストパフォーマンスに大きな差が生まれます。各業務における人間とRPAの作業速度の比較やヒューマンエラー(人為的ミス)の多い業務の見極めを行い、業務内容と業務量を適切に設定することにより、RPA導入によるコスト削減効果を最大化させることができるでしょう。

顧客満足度の向上

RPAの導入により作業品質が向上することで、顧客とのトラブルを未然に防ぐことができます。また、ユーザーからの問い合わせに対しても内容をしっかりと分析し、質問の意図を正しく理解した上で適切な回答を瞬時に返すことができます。

品質向上と時短は顧客の満足度に直結する重要な要素です。PRAは安定性した処理能力と高度なAI技術によって顧客満足度の向上にも大きく貢献してくれるのです。

リスクマネジメント効果

RPAに業務を任せることにより、ヒューマンエラーによる機密情報や個人情報の外部流出を未然に防ぐことができます。また、個人従業員の偏見と独断によるコンプライアンス違反などのトラブルも防止することができます。

このことから、RPAはリスクマネジメントに対しても有効であるといえるでしょう。

アグレッシブな経営戦略の構築

RPAの導入と業務の自動化により、それまで担当していた従業員は業務オペレーションから解放されることになります。また、生産性の高いRPAに業務を行わせることで、より多くの業務を受け入れることが可能となります。

この開放されたヒューマンリソースとRPAを活用することによって、新たなイノベーションの創出や価格競争への積極的参加など、これまで以上にアグレッシブな経営戦略を構築することができるでしょう。

RPAの導入方法

アウトソーシングや派遣業務に代わる新たな労働力として導入することで、組織に多くのメリットや効果をもたらしてくれるRPAですが、本格導入に向けた事前準備や自社業務に適したRPAの選定など、正しい導入プロセスを踏まなくてはその効果を十分に得ることができません。

組織力の向上や大幅なコスト削減、労働環境の改善や人材リソースの再配置など大規模な業務改革(業務変革)を実現させるためにも、RPAの組織導入を成功へと導いてくれる8のプロセスについて順に学んでいきましょう。

1.導入目的の明確化

RPA導入に向けて行う最初のプロセスは導入目的の明確化です。運用後の効果測定時に使用する指標の洗い出しを行うため、『なぜRPAを導入するのか』や『どのような効果を期待しているのか』を予め明確にしておきます。

  • コスト削減によって商品やサービスの価格を引き下げたい
  • 労働生産性を高め、リードタイム(作業期間)や時間外労働時間を短縮したい
  • 入力ミスや認識ミス、情報管理ミスなどのヒューマンエラーを無くしたい
  • 定型処理作業を担当している従業員の保有スキルを最大限に活用したい

最初の段階で導入目的を明確にしておくことにより、RPAに置き換える業務の選別やRPAツールの選定もスムーズに行うことができるでしょう。

また、組織内にIT関係に強い従業員が少ないなどの理由によりRPAの導入および運営に自信がない場合には、導入初期の段階で複数もの導入目的を設定せず、全従業員に受け入れられやすい明確でシンプルなRPA導入環境を構築するように心掛けましょう。

2.ホワイトカラー業務の洗い出し

業務内容の洗い出しでは、システム入力作業や事務処理作業、請求処理や経理業務など組織の中に点在するホワイトカラー業務を業務部門ごとに分けてまとめていきます。その際、以下のような点を意識しながら整理することでRPAの導入効果を高めることができます。

  • 定型業務か非定型業務か
  • その業務に関わる担当者は何人か
  • どのようなアプリケーションを使用しているか
  • 一度の作業にどれだけの時間を費やしているか
  • 業務に関連するアナログな情報や資料を今後どこまでデジタルデータ化(IT化)できるか

この時点ではまだ細かな選別や適用後のシミュレーション(効果予測)を行う必要はありません。後のプロセスを通じて最高の選択肢を導き出すためにも、RPAの適用対象となる業務を全てリストアップするよう心掛けましょう。

3.RPAに置き換える業務の選別

RPA対象業務のリストが完成したら、その中からRPAに置き換える業務の選別を行います。この際、作業熟練者やベテラン社員など長期にわたり実務に携わってきた人物の意見に対して積極的に耳を傾けることで、リアルな導入イメージを描きながら選別作業を進めることができます。

ただし、組織全体におけるRPA導入効果の最大化を目指すためには、単純な導入効果だけではなく部門間の連携や他部門への影響、既存環境とのシステム連携などの諸条件も加味して検討しなければならないため、一部の意見に影響を受けすぎないように注意しましょう。

4.RPAツールの選定

組織内に構築するRPA環境の全体像を明確にすることができたら、数多く存在するRPAツールの中から自社の求めている条件に最も適しているものを選定します。

実際にオペレーション自動化の開発や修正、運営を行う操作画面のユーザーインターフェース(UI)の使用感や、安定稼動に求められるITシステム環境や要件など、RPAツールによってセールスポイントや特徴が大きく異なるため、最初からRPAベンダーを数社に絞り込むのではなく幅広く情報収集した上で検討を行うようにしましょう。

5.エラーやトラブルの予測と対処方法の検討

自社に導入するRPAツールを決定したら、導入後に発生しうるエラーやトラブルの洗い出しと対処方法の検討を行います。 この際、『誰がどのような形で対処するのか』や『IT管理者などIT関連に詳しい人材の不在時はどうするのか』など、組織の現状や従業員の保有スキルと照らし合わせながら具体的に検討しておくことによって、損失と業務停止期間の最小化を図ることができます。

RPAベンダーはRPAツール開発企業ならではの深い知識と企業導入支援で培った多くのノウハウを保有しているため、自社の導入イメージの詳細を伝えることによってRPA導入を成功させるために有効なアドバイスを受けることができるでしょう。

6.パイロット導入と分析

思いがけないエラーやトラブルによって業務遂行に致命的なダメージを受けることがないようにするため、本格導入に先駆けてパイロット導入(試験的導入)を実施します。

多くの場合パイロット導入は、RPAに作業させるパソコンの台数の削減やRPAベンダー連絡がつきやすい日中限定など、本格導入時よりも小規模かつ短時間で実施します。しかし、予測できていないエラーやトラブルの洗い出しという目的達成のため、業務難易度を下げたりプロセスを簡略化させて実施することはほとんどありません。

パイロット導入によって得られた情報をもとに分析を行い、必要に応じて更なる対策を講じることで本格導入によるリスクを最小化することが可能となるでしょう。

7.本格導入

ここまでのプロセスを1つずつ丁寧に進めておくことで本格導入後に起こりうるリスクを最小限化することができています。しかし、それでも不測の事態は発生するものです。本格導入後は次のような点をチェックしながら運営管理するように心掛けましょう。

  • 設定した通りの挙動や処理が行われているか
  • 作業性の更なる向上を実現させる改善点はないか
  • RPAツールの作業レベルや設定台数がRPA管理者のキャパシティを超えていないか
  • 組織内に存在する全てのRPAを正しく認識、管理運営できているか(野良RPAを生み出していないか)
  • 人間とRPAの連携や部門間連携、既存システムとの連携は正しく行えているか

8.RPA導入効果の検証と見直し

運営管理と同時進行で行うチェックが手応えや感覚的判定によって評価される項目を中心としていることに対し、RPA導入効果の検証や見直しでは数値化することができる項目を中心に扱っていきます。以下は検証や見直しの際に用いられる指標の一例です。

  • 人件費およびRPA関連費の総コスト(円)
  • データ処理量(件)
  • エラー発生件数(件)
  • データ1件あたりのリードタイム(分または時間)
  • 部門内総残業時間(時間)
  • 1人あたりの平均残業時間(時間)
  • クレーム件数(件)
  • 新規アイディア提案数(件)
  • 従業員満足度(%)
  • 顧客満足度(%)

RPAによる業務自動化の導入事例

RPAは導入組織に対して業務改革のきっかけと今後更に厳しさを増していくであろうビジネスの世界を生き残るために必要な力を与えてくれる素晴らしいパートナーです。実際にRPAを組織内に導入したことによって多くの効果を生み出すことに成功した、3つの導入事例を紹介致します。

事例1:作業レベルの均一化と大幅な人員削減

【RPA導入企業】

大手通信会社

【企業が抱えていた課題】

  • システム上で『顧客ステイタス』を変更するために30~40もの画面遷移が必要
  • 顧客からの問い合わせに対して1件あたり約20分の時間がかかっている
  • 数多く存在する選択肢から瞬時に最適解を導き出さなければならないためミスが多発している
  • 熟練スタッフと新人スタッフの処理速度に大きな差がある
  • 新人スタッフの教育に時間がかかるため、人手不足が常態化している

【RPAの組織内活用方法】

  • 『顧客ステイタス』変更時の画面遷移をRPAによって自動化
  • 多数の選択肢から最適解を自動で導き出せるようにするための分岐条件設定

【RPA導入による効果】

  • 『顧客ステイタス』を変更するための画面遷移を3つに減少
  • 1件あたりの処理時間が1分に大幅短縮
  • 設定されたルールに従ってRPAが最適な条件を導き出すことでミスが消滅
  • 待ち時間とミスの減少によりクレーム数が激減
  • これまで熟練スタッフ10名を要していた作業が新人スタッフ1名で対応可能に

【参考】RPA(ロボットによる業務自動化)とは | RPA テクノロジーズ株式会社

事例2:速度と精度を両立した作業環境の構築

【RPA導入企業】

国内生命保険会社

【企業が抱えていた課題】

  • 解約返戻金の算出などの事務処理に多くの時間を費やしている

【RPAの組織内活用方法】

  • 解約返戻金および契約者貸付算出プロセスの自動化

【RPA導入による効果】

  • 証券1件あたりの処理時間が2分から2秒に短縮
  • ミスすることなく半年で37000件の処理を行える作業環境の構築

【参考】RPA(Robotic Process Automation)導入支援 / PwCコンサルティング合同会社

事例3:作業担当者のストレス軽減と保有スキルの活用

【RPA導入企業】

流通業界経理部門

【企業が抱えていた課題】

  • 毎日100件以上発生する入金情報を確認しながらの自社会計システム上データの消しこみ作業によって、作業担当者がストレスを感じている
  • ストレスの直接的原因となっているヒューマンエラーを排除し、作業時間を短縮したい

【RPAの組織内活用方法】

  • インターネットバンキングからCSVファイルをダウンロードする作業を自動化
  • CSVファイルに必要な情報を追加したExcelファイルを自動作成
  • Excelファイルの自社会計システムへのインポートを自動化

【RPA導入による効果】

  • 作業時間の大幅短縮
  • 作業担当者のストレス軽減
  • 作業担当者が保有しているスキルの他業務への有効活用

【参考】RPA業務自動化シリーズ導入事例のご紹介|アイティフォー

RPAツール4選

世の中には数多くの素晴らしいRPAツールが存在します。今回はその中から異なる特徴を持つ4つのRPAツールを紹介致します。

Automation Anywhere Enterprise/Automation Anywhere社

RPA市場において最も大きなシェアを獲得しているといわれるアメリカのRPAベンダー企業Automation Anywhere社が販売しているRPAツールが『Automation Anywhere Enterprise』です。

『Automation Anywhere Enterprise』には、Webサイトからのデータ抽出やスケジュール管理によるファイル転送などのタスクを自動化するための数十種類のタスクテンプレートをソフトウェア本体に格納しているため、一般的なタスクを組み合わせて行うシンプルな業務であればプログラミングに関する知識や高いパソコンスキルを有していない人でも比較的容易に自動化することができるようになっています。

また、高度な機能を備えたオプションの統合パックを購入することで、光学式文字認識(OCR)やJavaとの統合も行えるようになるため、難解な業務フローを自動化したいと考えている企業の需要にもしっかり対応することができます。

これまで日本国内における公式な販売経路がなかったため導入ハードルが高いように感じられていた『Automation Anywhere Enterprise』ですが、2017年にオートメーション・エニウェア社と株式会社日立ソリューションズとの間で日本国内での販売代理店契約が結ばれたことにより、RPA導入相談や自社業務とRPAツールとの相性診断、本格導入に向けたサポートなどを受けやすくなりました。

【参考】Enterprise Robotic Process Automation | Automation Anywhere
【参考】Robotic Process Automation 業務自動化ソリューション | 製品/サービス | ワークスタイル変革ソリューション | 日立ソリューションズ

Blue Prism/Blue Prism社

マサチューセッツ工科大学(MIT)が発行する『MITテクノロジーレビュー』において、『2017年度の世界で最もスマートな企業トップ50』に選出されたRPAの老舗であるBlue Prism社は、製品名に社名をそのまま使用した『Blue Prism』というRPAツールを提供しています。

『Blue Prism』は大企業や中堅企業、金融機関や公的機関などのエンタープライズ組織への導入を念頭に入れて設計されていることから、情報セキュリティの面で他社のRPAツールと大きな差別化を図っています。

クレジットカードのグローバルセキュリティ基準としても用いられているPCI-DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)規格や、企業で相次ぐ粉飾決算などの不正会計処理対策としてアメリカ政府が制定したSOX(Sarbanes-Oxley Act)法、アメリカ国内の全医療機関に対して患者情報に関する機密性と完全性の維持を徹底させることを目的としたHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)など、数々の厳しい基準をクリアしたセキュリティの高さは『Blue Prism』の導入を決定付ける十分な理由となるでしょう。

【参考】Our products - Blue Prism

BizRobo!/RPAテクノロジーズ株式会社

デジタルレイバーの組織内活用を推奨しているRPAテクノロジーズ株式会社は、革新的なスマートキャプチャやプロセスオートメーションを実現させるソフトウェアとソリューションを提供するKofax社のRPAツールである『kapow』の日本語版OEM製品である『BizRobo!』シリーズを提供しています。『BizRobo!』シリーズの中でも大きな特徴を持っているのが『ベーシックロボ』です。

『ベーシックロボ』はウェブサイトから必要としている情報を抽出するウェブスクレイピングや多数のウェブサイトから収集した大量のデータを統合するデータインテグレーションを得意としているため、業務遂行にウェブデータの活用が必須となる情報産業をはじめとした多くの国内企業に導入されています。

【参考】Biz Robo|RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入・運用支援

WinActor/NTTアドバンステクノロジ株式会社

NTTグループの技術的中核企業としてコンサルティング業務からソリューションの提案まで幅広いサービスを提供しているNTTアドバンステクノロジ株式会社(NTT-AT)は、業務システム向けに『WinActor』というRPAツールを提供しています。

『WinActor』の最大の強みはインターフェイスやマニュアルの分かりやすさです。日本企業であるNTTアドバンステクノロジ株式会社が、国内企業のために製作した純国産ソフトウェアならでは操作性と保守サポート体制を活かし、現場業務の自動化を全力で支援してくれます。

また、クライアントPCに直接インストールして使用することで専用サーバーを不要とする導入ハードルの低さも、『WinActor』の大きな特徴です。専用サーバーからの中央集中管理を行うことができないため、大規模導入や大量のデータにあまり向いていないというデメリットもありますが、まずは国産のRPAツールで小規模導入から始めたいという需要に対しては最高のエントリーモデルだといえるでしょう。

【参考】業務システム向けRPAツール WinActor(ウィンアクター) | NTT-AT

まとめ

  • RPAとは高性能な認知技術の組織内活用による業務自動化や業務効率化に向けた取り組みやRPAソフトウェアロボットそのものを指す言葉である
  • RPAは最新のルールエンジンやAI、機械学習を最大限に活かすことで、ほぼ全てのホワイトカラー業務を代行することができる
  • 高クラスのRPAはルーティンワークだけではなく詳細分析や自己決定といった高度な作業も行うことができる
  • 今後10~20年の間に日本国内における労働人口の約49%が人工知能やロボットに置き換え可能になるであろうといわれている
  • 組織内業務改革は、RPAを人間の仕事を奪うライバルではなく既存従業員と支え合いながら仕事を進めていくパートナーとして前向きに迎え入れることによって実現可能となる
  • 正しい導入プロセスを踏むことによってRPA導入効果を大幅に高めることができる

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