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2018年5月28日(月)更新

U理論

国際競争が増す中で、新たな価値を生み出すためにはイノベーションの創出が欠かせません。そんなイノベーションを起こす上で注目されているのが、組織や個人の課題に本質的な解決をもたらすといわれる「U理論」です。今回はU理論の意味や注目される背景、U理論のプロセスから実践方法までをご紹介いたします。

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U理論とは?

U理論は、 イノベーションや組織改革を生み出すための本質的な解決策として注目されています。U理論は比較的に新しい理論です。まだまだ認知されていないことも多いので、この機会にU理論の意味をしっかりと押えておきましょう。

U理論の意味とは?

U理論とは、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン校の経営学部上級講師、オットー・シャーマー博士によって提唱された、新たな現実を生み出すための理論です。オットー博士は世界中のリーダーへのインタビューや、イノベーションの仕事を通じた経験を調査し、組織や集団がイノベーションを起こすために、どのように リーダーシップ能力を開発するべきかを目的とした理論でもあります。結論に至るまでのプロセスがUの字に似ていることから、U理論と名付けられたといわれています。

また、U理論はイノベーションの創出だけでなく、個人や組織、社会など幅広い枠組みで、共通した変容と創造のプロセスを生み出すことも可能です。日本では、組織進化プロセスコンサルタントの中土井僚氏が翻訳を手掛け、U理論を基にした同氏のコンサルティングにより、業績低迷や風土悪化に苦しむ数々の企業がV字回復を果たしています。

このU理論は単なるフレームワークの提示に終わることなく、個人・集団が実行できる実践的なプロセスを紹介しており、すぐに実践が可能です。さまざまな要因が絡み合った課題に対して、必要不可欠といわれるリーダーシップと新たな集合意識を向上させる効果が期待できます。

U理論は7つのプロセスで実践し、感覚的な「何か」を得て、行動することが前提となります。この感覚的な「何か」はそれまで持っていた知識や経験などを一切手放すことから生まれるため、商品開発や斬新なアイディア、考え方の創出につながります。

PDCAとの違いは?

ビジネスマンであれば、一度は聞いたことがあるPDCAサイクルは計画・実行・評価・対策を柱とした業務改善のための手法で、さまざまなビジネスシーンで取り入れられてきました。このPDCAサイクルは仕事を行なう上でとても重要な作業であり、業務改善だけでなく、売上向上や問題解決などにも貢献しています。

このPDCAサイクルは過去の計画と実行を評価し、対策を行なうプロセスを辿るため、「過去からの学習」と定義づけることができます。一方で、U理論は過去から理由や正当性を学ぶのではなく、瞬間的・感覚的に生まれる「何か」を即興的に実現していく「出現する未来からの学習」と定義付けています。

PDCAサイクルのように過去を分析し、アイディアをひねり出すことで解決可能な問題や課題は本来の努力で解決できるものといえます。しかし、 イノベーションは、過去の延長線上にない現象であるからこそイノベーションと呼ばれるものであり、そもそも「過去からの学習」であるPDCAサイクルでは起こすことができないと考えられます。

U理論が注目される背景とは?

新たな実践的なアプローチであるU理論が注目されている理由は、主に2つあると考えられます。

イノベーションを生み出すための画期的な理論

経済がグローバル化する中で、国際競争が激化しており、企業は消費者に新たな価値を提供するイノベーションを生み出す必要があります。しかし、イノベーションは今までの考えややり方では到底生み出すことができません。

そこで、従来の考え方や判断基準を一切捨て去る視点が必要となり、フレームワークのような概念ではなく、実践的な手法が求められるようになりました。U理論は、今まで主流であった過去からの学習や経験則に基づいたアプローチではなく、感覚的・瞬間的に感じ取った「何か」を即興的に行動に移すという全く新しいアプローチとして注目されています。

リーダーシップの根源に迫る必要性

経済活動範囲が国内だけに留まらず、海外までに及ぶ日本企業が増えています。そのため、グローバル基準で物事を考え、行動に移せる新たなリーダーシップを持った人材の育成・獲得が必要とされています。

前述で触れたように、これからの時代は新たな価値を提供するイノベーションを生み出さなければなりません。そして、このイノベーションを生み出すためにも、今までにない優れたリーダーシップを発揮するリーダー像が求められます。

U理論において、適切なリーダーシップを発揮するためには、リーダーシップの根源(盲点)を見極める必要があります。さらにこの盲点は社会的相互関係の中にも存在しているといわれており、社会を取り巻く課題や問題解決に有効とされています。つまり、企業や社会が抱える課題を今までにない方法で解決するためには、過去の判断に囚われない新たなリーダーシップの根源を知ることが欠かせないと考えられます。

【関連】グローバルリーダーとは?言葉の意味や能力、育成に関して解説 / BizHint HR

U理論によるメリットとは?

U理論を実践することは、イノベーションの創出や新たな課題解決方法を見出せるだけでなく、個人の思考や人間関係が改善するメリットがあります。

自らの思考を変化させる

U理論はイノベーションを生み出せる画期的な理論ですが、人間関係や業績不振、メンタルヘルスにも効果的とされています。

ビジネスにおいて、合理主義、論理的であることは必然といえます。しかし、チームや組織で仕事をすることが多いビジネスでは、感情を起因とする問題や課題なども多く生じます。社員のモチベーションや職場の人間関係、さらには業績においても合理的・論理的な方法では解決できないことが珍しくありません。これらは人間の感情に深く結びついており、感情に起因する「何か」を根本的に解決しない限り、真の解決は得られません。

U理論はPDCAサイクルのように「過去からの学習」ではなく、感覚的に得た「何か」を即興的に実現していく「出現する未来からの学習」のため、合理的・感覚的に解決できない事象の解決に役立つことができます。これは自分の中に存在する恐怖や不安、困惑といったさまざまな感情を完全に手放し、新しい「何か」が自分の中に生れ落ちることを意味します。そのため、感情に起因するさまざまな問題や課題において、画期的な解決策が生まれる可能性が高いといえます。

幅広い人材に適用が可能

会社にはさまざまな能力やポジション、職種を持つ社員たちが在籍しています。そのため、社員のレベルに合った教育・研修を行なうことは至極当然であり、合理的といえます。しかし、U理論は職種やポジション、経験に関わらず、全ての人たちのパフォーマンスを最大化することが可能です。個人はもちろん、チームや組織、社会といった枠組みでも「内面のあり方」を探ります。

そのため、個人の変容はそのまま組織の変容につながり、人材育成やチーム力の向上に高い効果が得られるとされています。U理論は経営者から現場の社員まで、一人ひとりの内面の変容を生み出せる全く新しい人材育成方法といえます。

人間関係が劇的に変化する

U理論の実践方法の中に、「感じ取る」というプロセスがあります。このプロセスは、人間関係の構築や改善に効果的です。

この「感じ取る」というプロセスは、「他人の目から自分がどのように見られているか」ということを得るプロセスを指します。さまざまな問いかけを通じて、相手の立場を知り、知り得た言動から自分がどのように変容すべきかを可能とします。

人間関係の構築や改善には「自分から変わる」ということが大事といわれていますが、U理論はその方法を「感じ取る」という具体的な実践方法を提示してくれています。つまり、過去の延長線上から知りえた行動を実践するのではなく、現場で感じ取った「出現した未来」を即興的に行動することで、人に対する全く新しいアプローチが生まれるとされています。

その結果、最悪の人間関係も良好な関係に改善できたという事例も紹介されています。

U理論の7つのプロセス

U理論を実践するためには、7つのプロセス(Uプロセス)を辿る必要があります。そのプロセスがUの字に似ていることからU理論と命名されたといわれています。これら、7つのプロセス(Uプロセス)を理解し、実践することで今までにない変容を生み出すことが可能です。

第1プロセス:ダウンローディング

第1プロセスの「ダウンローディング」とは、過去の知識や経験が枠組みとなっている状態を指します。U理論では、この過去の経験を再現することから始めます。この状態は過去の考えや意見に焦点があっている状態と考えることができます。問題・課題に対して、個人や組織が過去の経験上からどのように捉えているかを落とし込む作業がダウンローディングといえます。

第2プロセス:観る

第2プロセスの「観る」では、ダウンローディングで明らかになった過去の経験や枠組みが基となった判断を保留し、新たな視点で対象を観ることを指します。先入観、不安、困惑、プライド、恐怖などは過去の経験や枠組みから生み出されるものです。これら全てを保留しなければ、第3以降のプロセスを辿っても理想とする答えを得ることができません。ダウンローディングで明らかにした枠組みから離れ、問題や課題などの対象をつぶさに観察する作業を指します。

第3プロセス:感じ取る

第3プロセスの「感じ取る」は第2プロセスで行なった「観る」とともに、「何か」を得る作業を指します。このプロセスでは、問題や課題が生じている現場から直接肌で感じ取らなければいけません。人間関係に問題や課題を抱えている場合は当事者との直接対話を通して、「何か」を得ます。組織やチームであれば、集団の中に入り込んで、盲点となっていた「何か」を感じ取ることが大切です。

第4プロセス:プレゼンシング

第4プロセスの「プレゼンシング」とは、個人の枠組みを超えて、共振する「何か」が生まれる源に辿り着く段階を指します。ここで生まれる「何か」こそが、画期的なアイディアや個人のビジョン、新たなリーダーシップのあり方、活力溢れる行動意欲、自己受容感の高まり、チーム・組織の一体感、共感的な合意形成、共創ビジョンなどにあたります。

第5プロセス:結晶化

第5プロセスの「結晶化」とは、第4プロセスの「プレゼンシング」で生まれた「何か」を言語化させる作業を指します。主にビジョンや意図を言語化する作業が中心となります。個人や集団に共有できるレベルまで言語化する段階でもあります。

第6プロセス:プロトタイピング

第6プロセスの「プロトタイピング」では、個人または集団が迎え入れたビジョンや意図を具体化し、第4プロセスの「プレゼンシング」で生まれたインスピレーションやアイディアを具現化する作業の段階です。この段階では、完全に形にする必要はなく、迅速な実行と実験を繰り返す作業を重視します。そのため、数々の失敗も予想されますが、失敗を怖れずにどんどんプロトタイプを作り出すことが大切です。

第7プロセス:実践

第7プロセスの「実践」は、これまで行なってきた全体のプロセスで生み出した新たな方法ややり方、仕組み、習慣を実現する段階となります。第6プロセスの「プロトタイピング」で形成したものよりもさらに完成度が高まり、世の中に提供していくこととなります。

組織変革を起こすU理論の実践方法とは?

U理論はイノベーションの創出以外にも組織変革などの企業経営に役立てることができます。ここでは組織変革を目的としたU理論の実践方法をご紹介いたします。

既存ルールの見直し

個人・集団に関わらず、過去の知識や経験から改革や改善を行なうことは至極当然といえ、一定以上の成果を上げてきたことも事実です。しかし、組織変革や企業風土など根っこから変化を起こす場合、当たり前、最善とされていた既存ルールを一切見直す必要があります。

この既存ルールは「暗黙のルール」と呼ばれており、これを変革することはさまざまな反発や混乱が予想され、決して容易なものではありません。U理論の7つのプロセス(Uプロセス)では、この「暗黙のルール」を組織の内外からアプローチが可能であり、組織変革を促すルールを作ることができます。

聞くことに特化した「場」の地ならし

U理論による組織変革は、Uプロセスにおける第2、第3プロセスが重要となります。この第2プロセスの「観る」と第3プロセスの「感じ取る」は、問題や課題を抱える「場」で実践する必要があります。この第2、第3プロセスを実践するにあたり、大切な作業が「聞く」に特化したコミュニケーションです。

第2プロセスでは、今までの自分の判断軸を保留し、新たな視点で対象を観察することが求められます。この観察は対象となる個や集団が発する言動を「聞く」ことが大きな収穫となります。そのため、企業や経営者、チームリーダーや課題を抱える個人は「聞く」に特化した場を提供、もしくは地ならしをしていく必要があります。

プロトタイプ化で実践

組織変革や社内風土、社員の意識改革に短期で最大の効果を発揮するような夢の施策はありません。そのため、U理論で感じ取った「何か」(アイディアやインスピレーションなどソースの源)を即興的にプロトタイプ化し、実装することが大切です。組織変革や社員の意識改革において、前例のない施策を断行したことにより、劇的に改善したという事例は数多くあります。これらの事例は完璧に作り上げた施策を実装したことで功を奏したというよりも不完全な段階で実装し、それを完成系へと実体化させていった結果といえます。

U理論で生み出された解決策は、過去の延長線上にない特徴を持っています。そのため、完成度にこだわるのではなく、新たな方法や習慣のプロトタイプ化を迅速に行い、実践していくことが大切です。

U理論が学べるおすすめの書籍をご紹介

U理論はイノベーションに特化した新しい理論ですが、関連書籍は多数出版されています。今回はその中でもおすすめの書籍をご紹介いたします。

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

U理論の提唱者オットー・シャーマー博士が著者である原書を、U理論の有識者である中土井僚氏が翻訳を務めた書籍です。

U理論を学ぶ際は必ず読んでおきたい書籍でもあります。U理論の提唱者自らが書き下ろした現代マネジメントの理論であり、経営学や心理学、哲学などさまざまな学問の視点を取り入れているため、合理的・論理的な視点だけでなく、感情的な側面からもアプローチしているのが特徴です。学術書に近いため、内容をしっかりと把握したい方は他のU理論の書籍と併せて、読むことがおすすめです。

【参考】amazon U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

マンガでやさしくわかるU理論

U理論について、漫画を使って、わかりやすく説明してくれている書籍です。

時間がない方やU理論の概要を知りたい方におすすめです。知識がない状態でもイノベーション創出のために必要なものを理解することができます。新規事業の立ち上げや商品開発に関わる方はもちろん、管理職経験が浅い方やチームリーダーなどにもおすすめです。U理論の入門書としても高い評価を得ています。

【参考】amazon マンガでやさしくわかるU理論

人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門

U理論の翻訳者である中土井僚氏が著者であるU理論の入門書です。

U理論によるコンサルティングにおいて、数多くの実績を持つ筆者ならでは事例を基に解説をしてくれています。そのため、理解を深めやすく、より実践的に活用することが可能です。U理論の原書は概念的な側面も強く、現場で実践するには少しハードルが高い傾向にあります。しかし、本書ではU理論を3つのフェース、7つのステップ(今回、ご紹介した7つのUプロセス)をわかりやすく紹介しているので、本書を読み終えた後すぐに実践できるメリットがあります。

【参考】amazon 人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門

出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する

U理論の提唱者であるオットー・シャーマー博士の新書であり、同じくU理論の有識者である中土井僚氏が翻訳を務めている書籍です。

新たなリーダーシップの開発、組織改革に至るまでの道筋について、詳細を記しており、前作「U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術」をさらに深化させた書籍となっています。U理論を実践するマネジメント層や、U理論を学んでいる人、理解を深めたい人におすすめの書籍です。

【参考】amazon 出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する

まとめ

  • 新たな価値の創出が求められているといっても、企業にとって、イノベーションの創出や新たなリーダー像の構築することは決して容易なものではありません。また、組織変革や社員の意識改革においても時間的・金銭的に多大なコストがかかります。
  • それらを無駄にしないためにも、個人や集団、コミュニティー、さらには社会に変容を生み出すU理論の実践は、まさに理想の方法論といえます。
  • 個人の成長や人間関係にも効果的であるU理論は、ビジネスマンであれば、一度は学んでおきたい優れた理論といえます。

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