新卒採用における採用計画の策定方法とは?
企業の人材獲得、とりわけ定期的な新卒採用は、企業の将来を大きく左右するものです。中途人材の確保が一般的になった現代においても、企業側が新卒者に期待するものは多くあります。新卒採用においては、年間の採用計画を確立し、内定者に求める人物像を明確にしながらコスト面やスケジュール、具体的なアクションに配慮する必要があるでしょう。 本記事では、新卒採用における年間採用計画の策定方法についてご説明します。
まずは現状認識!自社を取り巻く状況の整理から
新卒者の採用計画を立てる際、まずは現状認識として自社を取り巻く状況を把握しなくてはなりません。自社が市場内でどのようなポジションにあり、今後どうあるべきかを明確にしておきたいところ。
業界でのポジションを格上げし、シェアを拡大していきたいのであれば、競合他社と人材獲得競争を繰り広げる可能性が大きくなります。
ここで重要になるのが採用力。競合他社と比較して採用力が小さければ、それだけ採用活動にかけるコストを大きくするといった方向性になるでしょう。
採用力で劣るということは、それだけ採用活動を活発化させ、優秀な学生にアピールしていかなくてはなりません。
また、国内景気や自社が保有する会社としてのブランド、競合他社の情報なども重要になってきます。それぞれについて、具体的に見ていきましょう。
国内景気について
採用活動には、国内の景気も関与してきます。景気動向を踏まえながら、市場の規模感や展開を予測しておきましょう。
景気後退によって、採用により増員・増強を考えていた事業の市場規模が縮小する可能性が高ければ新卒採用者数を絞り、その逆の場合は拡大させるといった調整が必要です。
また、景気後退時には人材の買い手市場になり、景気拡張期には売り手市場となる可能性も踏まえておきたいところ。国内の景気が人材の需給にどう影響するかは、有効求人倍率を参考にするとよいでしょう。
採用競合・業種(業界)の採用動向の把握
業種ごとの採用動向を把握しておけば、自社の事業が属する業種全体の概況を知ることができます。
ただし、業種全体の採用状況が活発化しているとはいえ、個々の会社レベルでは必ずしもそれに追随するものではないため、競合他社の個別分析が必要になるでしょう。
自社が有する採用ブランド
前述したように、学生をターゲットとした新卒採用では、企業が持つブランドが採用力に影響してきます。
大手企業や有名企業、老舗企業にはない自社独自の強み(競合優位性)が何かを把握しておきましょう。 その一つとして、もしブランドが確立されていなければ、応募者を「ファン化」するような施策が必要かもしれません。
また、ブランドは機能的価値(規模、業種、サービス、待遇など)と、感情的価値(ビジョンや理念、社員のモチベーション、やりがい、仲間との絆)で構成されるとされています。
このうち、中小企業やベンチャー企業が重視したいのは「感情的価値」の部分。資本力やシェア、待遇で劣っていても、応募者の共感を呼び、感情に訴えかけるようなアピールができれば、ファン化は可能です。
競合他社の採用傾向
新卒人材の獲得は競合他社の採用動向にも左右されます。特に企業ブランドが確立されている大手企業と競合する場合、この傾向は顕著といえるでしょう。
有名企業や大手企業であればその企業へ所属すること自体がブランドやステータスともなり得ます。
そのため、業種や市場自体の景況感よりも、その企業が何をやっているか、どんな事業を主力としているか、知名度の高い製品やサービスは何かといったことが重視されやすいのです。競合他社の採用動向を個別にチェックし、市場や業種自体の景況感とは分離して把握しておくと良いでしょう。
採用実績と具体的アクションの振り返り
採用計画の立案には過去の実績とアクションを振り返り、必要であれば修正を加える必要があります。
より効率的で内定充足率の高い採用活動を目指すために、採用計画をブラッシュアップしていきましょう。
採用実績の整理
過去年度の採用実績を整理する際、採用目標に対してどの程度の達成率であったか、KGI とする採用決定数はもちろんのこと、昨今は就活のスケジュールも毎年大きく変更しているため、一次面接数、最終面接数、内定数などファネル別に振り返り、ポジティブポイントとネガティブポイントを整理しましょう。
また、母集団形成においては利用した採用手法・媒体別の分析を行うことで、次年度使うべき手法が明確になるほか、募集職種毎に出身校・部活・サークル別など学生の基本情報を掛け合わせ見ることで、これまで言語化できておらず暗黙知化していた、求める人物像の可視化に繋がり、次年度以降の目標達成に向けた採用活動の立案に役立ちます。
過去の採用スケジュールと実態を把握
採用スケジュールと採用フローの管理も必要です。例えば、採用の準備をいつから開始して、いつ募集をかけたのか。また、応募書類の管理や筆記試験の日程、内定、内定後のフォローなどをどの程度の間隔で実施したのかなどを管理します。
理系学部、文系学部、院卒者、海外大学出身者など属性の違いによって、学生が就職活動を活発化させる時期には差異が生じます。
ターゲットとする学生の行動スケジュールにマッチした採用スケジュールでなければ、本当に欲しい人材と巡り合うことは難しくなってしまうでしょう。
また、競合他社と説明会や筆記試験の日時が重複しては、ブランド力にまさる大手企業に人材を奪われてしまいますよね。 学生側、企業側のスケジュールを加味した採用スケジュール・フローになるよう、工夫が必要です。
採用時の体制・役割分担
採用側の体制や編成の振り返りも大切です。なるべく採用コストをおさえつつ目標を達成するためには、採用活動に従事する人員数や労力を考慮しなくてはなりません。
採用時のコストを見直しつつスリム化を図るためには、採用管理システムなどの導入が考えられます。
人事向けニュースサイト「BizHint HR」編集部では、中立的な立場で独自調査を行い、国内で提供されている採用管理システムの比較一覧を作成しましたので、ご参考ください。
また、面接時に面接官の独自判断や主観が大きくならないよう、コンピテンシーの活用をはじめ、構造化面接などの手法を取り入れることも視野にいれておきましょう。
採用に要したコストとその内訳
採用活動においては、採用チームの人的コスト以外に、接待費用や媒体出港時の広告宣伝費、人材紹介を利用した場合は成功フィー、採用イベントに参加した際には、出展費用、そして内定期間が長期化していることもあり、最近では内定者へのフォロー費用もかさむことと思います。
これらのコストを把握し、次年度の採用計画立案の材料としておきましょう。
要員計画の策定
採用計画の肝ともいえる部分が、要員計画です。この要員計画が確立されていなければ、的確な採用計画を立案することは難しいでしょう。
要員計画にはターゲットとする人物像をモデル化したうえで、要員調査から判明する様々な要素を加味していかなくてはなりません。
募集職種ごとの人物像をモデル化
当然のことながら、募集する職種によって人物像は異なります。また、自社が求める人物像に揺らぎがあれば、ただでさえ戦力化までリードタイムが長い新卒採用は、戦力補充どころか入社後もコストになってしまう可能性すらあります。
そのため、まずは募集職種ごとに採用したい人物像をモデル化していく必要があります。明確な人物像のモデル化は、採用基準の策定にも役立つのでおすすめです。
自社の人員構成を確認
要員計画の材料として、部署単位や事業所単位で、社員の人員構成が必要になってきます。年齢別、ポジション別に人員構成を把握し、そこから数年から10年先の人員構成を導き出すのです。これによって今後不足しがちなポジション、年齢層などが導き出され、要員計画の重要な材料となります。
離職率の確認
「ゆりかごから墓場まで」の時代はとうに過ぎ去り、転職が一般的な時代になりました。つまり定年退職まで勤め上げるという従来の風潮は、徐々に薄まりつつあります。このような背景から、離職率も要員計画策定では無視できない要素です。
特に一定以上の規模の会社であれば、部署毎に退職者数・退職率も大きく変わることが想定されるため、自社の離職者数から歩留まり率を割り出し、まずはそれを実績として把握します。
一方、離職率が予想外に低かった場合などもシミュレーションしておきましょう。例えば離職率によってシナリオを設け、それにそった要員計画を策定するという方法も考えられます。
マクロ的アプローチ
要員計画には経営側からの視点としてマクロ的なアプローチも必要です。通常、現場からの積み上げ型では必要人員数以上に補填を求められるケースが多く、実際に各部から積み上げられた人員数を足し合わせると、人員コストが膨らみ利益率が悪化するシミュレーション結果になることも往々にしてあります。
そのため、事業成長見込みなど経営側の視点からP/Lなども勘案し必要人員数を算出することで、要員数の過不足を調整することが重要です。 このとき使用する指標としては、目標売上高や労働生産性が挙げられます。指標から導き出される人件費をもとに、採用枠を決めていくのです。
ミクロ的アプローチ
マクロ的アプローチと反対に、現場から積み上げられるミクロ的なデータも要員計画策定に役立ちます。マクロ的アプローチをトップダウンとするならば、こちらはボトムアップ。
部署単位で掲げた目標を達成するには、どのようなスキルや適性を持った人材がどの程度必要なのかを計算します。
このとき、事業戦略が途中で変化することも考慮し、状況に応じて部門の責任者から経営陣への提案が通るよう、配慮することがポイント。
特にベンチャー企業などではスピード感をもったビジネス展開が想定されるため、現場に求められるものが変わったときすぐに経営陣へ具申できるよう、事前にコネクションを持つことが重要になってきます。
計画算定時のポイント
前述した要員計画に必要な材料に加えて、作成過程にはいくつかのポイントがあります。ここでは特に重視すべきものを3つほど紹介していきます。
本当に必要な人員補充か見極める
新卒採用は毎年定期的に行う企業が多く、それゆえに慣習やルーチン化しやすいものでもあります。自社の周辺環境や競合他社の動きなどに配慮しつつも、「本当に自社にとって必要な採用活動か」を常に意識するようにしましょう。
企業体力を強化するのは新卒採用だけではありません。中途採用の実施や業務請負契約の締結などの選択肢も確認するようにしたいところです。
条件面が適正かどうか
新卒者と一口に言っても、学生の能力やポテンシャルは均一ではありません。現状認識と要員計画を照合し、欲している人材に対する応募条件や待遇が適正であるかを見極める必要があります。
求める能力に見合った待遇でなければ人材獲得は難しくなりますし、相場や予算以上の待遇はコストの肥大化につながるでしょう。 景気や競合他社の採用動向を踏まえながら、条件面の適正化に努めていくことが大切です。
正社員として採用する必要性
そもそも新卒採用として正社員を補充する必要性があるのかも、常に確認したいポイント。
働き方が多様化している現代では、あえて正社員を望まずにパートタイマーや契約社員、派遣社員を希望する応募者も存在するのです。
新卒での正社員採用を主力としつつも柔軟な雇用形態を維持することで、将来のリスクを軽減できます。
採用方針とアクションプランの策定
要員計画の策定ののち、具体的な採用方針とアクションプランの策定に入ります。これまで挙げられた要素を採用方針とアクションプランに落とし込み、より実効性の高い採用計画の策定を目指しましょう。
採用全般における方針の策定
ここで策定するのは、採用活動全般における基本的な方針です。コンセプトの策定といっても良いでしょう。
できるだけ自社の特徴を短くまとめつつ、ターゲットと据えた学生の心に響くメッセージ性を持ち、なおかつ独自性の強いものにしたいところ。また、採用活動における視点や心構え、応募者への対応方針なども含まれます。
ターゲット別の目標設定
要員計画や実績にもとづき、ターゲット別の採用目標数を設定します。
この時、要員計画の中で確立したモデル像を確認しながら、ターゲット別の取り組み方針などもまとめておくと良いでしょう。単なる頭数合わせとならないよう、注意が必要です。
採用目標達成のためのアクションプランを策定する
採用目標数が決まったら、それを達成するためのアクションプランを策定します。実際の採用活動に最も近い部分となるでしょう。
このアクションプラン自体が、年間採用計画となることも珍しくありません。広告媒体・応募者ツールの選定や、採用プロセス、スケジュール、イベント開催、内定後のフォローといった内容を具体化させていきます。
6W2Hの要素を満たしつつ、スケジュールや採用プロセスの管理にはガントチャートを使用することで、より実効性の高いアクションプラン策定が可能です。
まとめ
- 採用計画を立てるにあたっては、まず前年度以前の振り返りや自社の周辺環境の分析が必須。
- 要員計画を考える際には、現場と経営、両面から案をぶつけ、折衷することでバランスを保つことができる。
- 計画を立てた後は、ターゲット毎に適したアクションプランを策定し、一貫性を持たせられるよう注意する。
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