連載:第23回 自社だけで悩まない!専門家に相談してみよう
その経営判断、数字で説明できますか?出光興産も陥った、経営危機を招く「売上と利益」の落とし穴


「その経営判断、根拠はあるのか?」そう問われて即答できなければ、あなたの決断は危ういかもしれません。かつて出光興産は、売上も利益もあるのに経営危機に陥ったことがありました。その最大の要因は、「経験や勘」といった属人的な基準に依存していた体質です。出光興産出身で、30年にわたり1,000社以上の企業を支援してきた経営コンサルタント・石原尚幸さんが、同社の実体験をもとに、事業投資や施策決定の精度を高めるための視点を解説します。

売上も利益もあるのに…出光興産はなぜ経営危機に陥ったのか
過去の投資判断が経験や勘といった属人的な基準に依存していた場合、それが後になって企業の足かせとなることがあります。 具体的な分析に基づかない投資は、資金を滞留させ、企業の「強さ」を損なう原因となり得ます。
私がかつて在籍していた出光興産でも、属人的な投資判断を行ってきた結果、経営危機に陥ったことがありました。
1990年代後半、日本の石油業界は石油製品の自由化を目前に熾烈なシェア争いを繰り広げていました。各社ともガソリンスタンドを建設し、シェア確保を図っていましたが、1件あたり数億円という巨額投資であったにもかかわらず、出光の意思決定のプロセスは極めて曖昧だったのです。
私が出光に入社した1996年時点でも、「なぜこんな場所に?」と思うような売れないガソリンスタンドが複数存在していたほど。 「経験」や「勘」といった属人的な基準 に依存していた結果、バブル崩壊後の金融危機で銀行や流通大手も倒産する中、石油製品のマージン悪化が重なり、「次は出光か」と噂されるほど経営が悪化していきました。
出光が陥ったのは「売上高は数兆円あり、利益も出ているものの現金が不足し、銀行返済が危うい」という危機。これは、 売上や利益だけでは見抜けない経営の脆さ でした。
当時は「数量が売れて、売上が立ち、赤字でなければOK」というPL(損益計算書)偏重の経営判断が支配的で、これは出光に限らず日本全体がそうであったように記憶しています。
では、出光はそんな状況からどうやって抜け出したのか。
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