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製造業は人手不足?製造業の課題や人手不足対策、成功事例までご紹介

BizHint 編集部 2019年3月20日(水)掲載
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日本の主力産業である製造業界では、大企業・中小企業に関係なく、深刻な人手不足(人材不足)に陥っています。今後、AIやRPAが発達するとはいえ、企業の成長には優秀な人材が欠かせません。今回は製造業の人手不足の現状や課題、製造業が取るべき人手不足対策から成功事例までご紹介いたします。

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製造業の現状と人手不足に陥る理由

平成30年7月に経済産業省が発表した『製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について』では、94%以上の大企業・中小企業において、人手不足が顕在化しており、そのうち大企業は29.4%、中小企業では32.2%が「経済活動に影響が出ている」と回答しています。

【参考】製造産業局 製造業における人手不足の現状 および外国人材の活用について/経済産業省

このように製造業における人手不足が深刻化している背景には、少子高齢化による労働人口の減少や製造業に対するイメージ悪化(大規模なリストラや激化する価格競争など)に加え、災害復興需要や世界的なイベントの誘致成功・インバウンドによる特需も関係しているとされています。

また、需要・特需後の景気後退を懸念する経営者が、好条件・好待遇での採用に慎重であることも原因のひとつと考えられます。現在、人材確保における求人倍率・採用コストも高騰しており、費用対効果に見合った優秀な人材確保が期待できないという認識が広がっているのです。

製造業の確保に課題がある人材としては「技能人材」が突出しており、中でも特に中小企業が技能人材の確保に苦しんでいることがわかります。

【参考】製造産業局 製造業における人手不足の現状 および外国人材の活用について/経済産業省

製造業の人手不足に対する課題

製造業では、大企業・中小企業に関わらず、技能人材をはじめとした人手不足が深刻となっています。

本章では、製造業界ならではの人手不足に対する課題をご紹介いたします。

技術進歩・環境変化への対応の遅れ

製造業では、高度な技術力以外にも製造業特有の知識や経験が求められましたが、技術進歩や働き手不足により、製造業で求められるニーズと供給側である労働者のスキルにズレが生じています。最新の製造業で求められる職業訓練機会の減少や基本的な社会人能力(出社や時間厳守の遵守など)や課題解決力を満たした人材の教育環境が整っていないことが原因と考えられます。

また、女性活躍社会が進む中、工場中心での労働環境の中で女性従業員の活躍する機会も少なく、熟練工による作業の属人化から脱却できていないことも技術進歩や環境変化への対応が遅れている原因といえます。

新たなスキルセットを持つ人材の不足

技術発展に伴い、品質管理などの間接部門のタスクが自動化され、現場での交渉力や伝達力、AIRPAをコントロールできる技術など、新たなスキルセットが求められるようになりました。

しかし、既存の従業員や若い人材で新たなスキルセットを持つ人材は少なく、また、教育には多大な費用と時間が必要であり、オートメーション化への対応は一朝一夕で行えないのが現実です。そのため、雇用側が求める募集要項と求職者のスキルセットのミスマッチが起こりやすくなっており、人材不足が起きていると考えられます。今後、「いかにオートメーション化に対応できる人材の確保や育成ができるか」が大きな鍵となっています。

熟練工の活用と労働環境の整備

従来、高度な技術力が必要とされた製造業では、熟練度の高い従業員の高齢化が大きな課題となっています。高度な加工技術を持つ優秀な人材の離職を防止するためにも、若い世代への技能継承を促せる環境の構築が重要です。また、技術発展に伴い、今まで培った高度で豊富な知識・経験だけでは足りないケースも出てくるため、新たなスキルの習得機会を設けることも必要となります。

また、製造業では熟練社員とそうでない社員が存在します。両者ともに異なるライフステージ(出産・育児、介護など)を持っており、双方が働きやすい労働環境を構築することで、優秀な人材の離職防止につながります。

製造業は景気に左右されやすく、大規模なリストラや海外企業との激しい価格競争といった厳しい経営環境を懸遠する人材も増えています。しかし、「ものづくりへの女性進出」や「ファブスペース(モノづくりを楽しめるスペース)」も増えていることからも、製造業に対する悪いイメージを払拭する工夫や情報発信も有効な手となります。

製造業の人手不足対策

多くの製造業では深刻化する人手不足を解消するためにさまざまな取り組みを実施しています。本章では製造業の人手不足対策をご紹介いたします。

外国人人材の活用

日本は外国人労働者が着実に増加しており、技能実習制度を活用した外国人材の活用が進んでいます。中でも外国人労働者の約3割は製造業に従事しており、人手不足問題への重要な対策と認識されています。

外国人人材の活用では、日本人とは異なるマネジメントスキルや労働基準法を遵守した雇用環境が必要です。

また、製造業にとって活用しやすい制度として、「外国人技能実習制度」があります。日本の高い知識・技術力の開発途上地域への移転を目的に実施される国際協力推進のひとつで、外国人技能実習制度の技術実習の製造分野は50職種程度と全体の6割(2017年時点)を占めています。

【参考】製造産業局 製造業における人手不足の現状 および外国人材の活用について/経済産業省
【参考】外国人技能実習制度とは/JITCO

アウトソーシングの活用

アウトソーシングとは、自社の必要業務を社外の人材や専門企業に委託する経営手法です。近年では人事や労務管理をはじめとする間接部門や見込み客の開拓、営業企画に関する事務作業に加え、OEM(他社ブランド製品の代理製造)などもアウトソーシングが可能です。

人手不足は従業員ひとり当たりの業務量を増やし、生産性やモチベーションの低下につながります。利益に直結しない業務のアウトソーシングは従業員の業務負荷を削減し、利益に直結する本業に注力することができます。

【関連】アウトソーシングとは?派遣との違いやメリット、業務例までご紹介/BizHint

キャリアパス・従業員教育の徹底

AIRPAの利用拡大に伴い、従業員に新たなスキルセットが求められるようになりました。企業側も、従業員に長く働いてもらうためにも、社員のキャリアパスを明確に提示し、IT技術の習得やリカレント教育(専門知識や知見の学びなおし)を促進しなければいけません。

近年では雇用保険の教育訓練給付(専門実践型)が拡充しており、助成対象の講座も多様化、利便性も向上しています。

同時に企業側は習得したスキルセットを活かせる労働環境を構築し、社員がキャリアパスを描けるように、職域の明確化やスキル・社員に期待する内容をきちんと提示してあげることが大切です。

【参考】教育訓練給付制度/厚生労働省
【関連】キャリアパスとは?キャリアパスの必要性を理解し優秀な人材の確保・育成を目指す/BizHint

IT投資を通じた生産性向上

IT投資は産業競争力の強化や従業員の生産性向上、労働環境の改善にもつながります。中でもIT投資は単純作業・重労働を省略化し、労務費の削減につながる画期的な方法として注目されています。

近年では、初期コスト・運用コストを抑えたソフトウェアやクラウドサービスの導入が可能となっており、インターネット環境の高速化とも相まって、 テレワークSFA(営業担当の業務支援システム)による生産性向上業務効率化が可能です。出産や子育て中の女性や、介護との両立を目指す従業員が働きやすい環境構築にも役立ち、生産性向上や労働環境の改善にも役立ちます。

また、IT投資だけでなく、IT・デジタル人材の育成も重要です。製造業特有のオペレーション技術とIT・データなどのデジタル技術を融合したスキルセットは、ビジネスプロデュースやイノベーション創出に欠かせない能力です。

製造業の人手不足には、IT投資による従来の業務削減と新たなスキルセット育成の両軸で生産性向上を目指さなければいけません。

Webメディアを活用した求人展開

インターネットでの情報収集が当たり前になっている現代では、求人展開も積極的にWebメディアを活用しなければいけません。アクセス数が多いSNSを活用した求人Webメディアも登場しており、主に若い世代の獲得に貢献しています。

掲載料無料のWebメディアを活用することで、採用機会の損失防止や採用活動業務の削減にもつながります。一方で、ホームページやオウンドメディアを通じた企業アピールも重要です。

人手不足対策に成功した製造業者事例

その他の業界とは異なり、特有のオペレーション能力や技術力が必要な製造業では、なかなか人手不足の解消が進んでいないと指摘されています。しかし、中にはさまざまな取り組みを通して、人手不足を解消し、必要な労働力の確保に成功した製造業者も登場しています。

本章では、人手不足対策に成功した製造業者事例をご紹介いたします。

女性社員が働きやすい労働環境を作り上げた、旭電気株式会社

【参考】旭電気株式会社ホームページ

1948年創業、機械製造業を手掛ける旭電気株式会社(以下、旭電気)では、親会社の海外移転をきっかけに主力商品構成が変化し、従業員比率が多い女性従業員にも従来とは異なる専門知識が求められるようになりました。

そこで、旭電気では女性従業員が活躍しやすい労働環境を構築するために、「ワンポイントレッスン」による専門知識をひとつひとつ学んでもらう教育体制を整備しました。また、妊娠中の配置転換や育児休業中の情報共有、短時間勤務制度などの人事制度も同時に整備しました。

一方で、力仕事が必要な業務を機械化・省力化にも努め、作業の細分化を行い、女性が従事しやすい労働環境を実現。その結果、「製造業でも女性が働くことは当たり前」という社内文化を醸成し、社内雰囲気の向上に成功。また、女性を中心とした教育体制と人事制度の整備により、女性の管理職も登場しました。「女性が働きやすい環境」として評判になり、採用や社員の定着にも効果が出てきています。

男社会が前提だった製造業において、女性従業員が中心となった工場を実現させた、貴重な事例といえます。

【参考】中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集/中小企業庁

社員のスキル・業績向上に成功した、ウインナック株式会社

【参考】ウインナック株式会社ホームページ

精密機械部品の製造を手掛けるウインナック株式会社(以下、ウインナック)では、重度障がい者を採用してもすぐにやめてしまい雇用が進まないことと、健常者社員についても定着率の悪化と技術レベルの低下が経営課題になっていました。

そこでウインナックでは、「人を大切にする、よりよい企業」という理念を掲げ、障がい者の方が働きやすくなるように社員課を新設。手話通訳者や障がい者相談員の配置、職場の安全・環境づくりを実施し、生活面での指導や支援も充実させました。

その結果、障がいのある社員だけではなく一般社員も定着率が飛躍した他、社員個人の能力も向上し、製品に対する信頼度もあがりました。

このように従業員の目線での福祉厚生や労働環境を充実させることで、企業業績の向上も達成した良き企業事例といえます。

【参考】中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集/中小企業庁

生産性向上と早期退職の減少に成功した、エヌ・エス・エス 株式会社

【参考】エヌ・エス・エス株式会社ホームページ

1884年創業、超精密加工を手掛けるエヌ・エス・エス株式会社(以下、エヌ・エス・エス)では、受注増加に伴う時間外労働の増加とミスマッチによる新入社員の早期離職が経営課題になっていました。

エヌ・エス・エスでは、公的機関の補助金制度で最新型設備機械やIoTシステムを導入し、加工時間の短縮やデータの一元管理による浪費時間の低減に成功。また、採用活動全般を見直し、従来の採用活動スケジュールよりも早くに大学での学内説明会やインターンシップ・会社見学会を積極的に実施しました。さらに、Webメディアを積極的に活用した企業アピールを行っていきました。

その結果、採用段階でのミスマッチが減少し、新入社員の早期退職減少に成功しています。

【参考】中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集/中小企業庁

まとめ

  • 製造業の大企業・中小企業の94%以上で人手不足の状況が顕在化しており、その内の約3割が「ビジネスにも影響が出ている」のです。その原因には、少子高齢化による労働人口の低下や需要拡大・特需の影響、採用・求人コストの増加、製造業に対するイメージ悪化が挙げられます。
  • 製造業の人手不足の課題では「スキルギャップの深刻化」、「オートメーション化への対応」、「優秀な人材の離職防止」が挙げられます。
  • 製造業の人手不足には「外国人人材の採用」、「アウトソーシングの活用」、「キャリアパス・従業員教育の徹底」、「IT投資を通じた生産性向上」、「Webメディアを活用した求人展開」が効果的です。
  • 人手不足の状況を解消するためには、新たな人材の採用よりも設備投資や人事制度・労働環境の整備が重要です。

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