働き方改革関連法とは?改正内容と企業に求められる対応について徹底解説
働き方改革関連法とは、働き方改革の推進を目的とした、労働関係法を改正するための法律です。この働き方改革関連法は、2018年6月に成立し、各改正法は、2019年4月以降、順次施行されます。具体的にどのような改正事項があるのか、また、それらの改正事項にどのように対応していかなければならないのかについて解説します。
働き方改革関連法とは
働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)とは、文字どおり、働き方改革を推進すること目的とした、労働基準法のほかいくつかの関係法をまとめて改正する法律です。
2018年4月6日に法案が国会に提出され、同年6月29日に成立、7月6日に公布されています。
働き方改革としては、長時間労働の是正など様々な施策がありますが、それらを推し進めるためには、まずは労働関係法の改正が必要ということです。
【関連】働き方改革とは?目的や背景、今後の施策や企業事例まで徹底解説 / BizHint
働き方改革関連法の概要
働き方改革関連法の基本的考え方は、以下の3つ大きな柱で構成されています。
1. 働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法の改正)
2. 長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正)
- 各種労働時間制度の見直し 時間外労働の上限規制/中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率(50%以上)の猶予措置廃止/年5日の年次有給休暇の取得義務化 など
- 勤務間インターバル制度の普及促進
- 産業医・産業保健機能の強化
3. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)
- 非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消するための規定の整備
- 待遇に関する説明義務の強化
- 行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
上記の整理に従って、労働基準法ほかの関係法が改正され、各改正事項が施行されていくことになります。
【参考】働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要/厚生労働省
改正対象となる8つの労働関係法
働き方改革関連法の成立により改正された法律は次の8つです。
- 労働基準法
- じん肺法
- 労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
※改正前の法律名は「雇用対策法」 - 労働安全衛生法
- 労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)
- 労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)
- パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
※改正前の法律名は「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」 - 労働契約法
厳密に言えば、上記の法律が改正されたことによって、その改正部分に関係する他の法律も細かな部分で改正されています。
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改正内容&施行時期まとめ
上記8つの法律のうち、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)の改正については、公布された2018年7月6日から施行されていますが、その他の法律の改正については、2019年4月1日から順次施行されることになっています。
今後、施行される主な改正内容と施行時期は下記のとおりです。
【参考】働き方改革 ~一億総活躍社会の実現に向けて~/厚生労働省
大企業と中小企業の範囲について
上記の各改正・導入事項には、まず、大企業に対して施行され、一定期間経過後に中小企業に施行されるものがあります。これは、大企業と比べると、労務管理基盤などが整っていないと考えられる中小企業に対する配慮です。
この大企業と中小企業の定義については、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のいずれかが以下の基準に該当すれば、中小企業とされ、該当しなければ、大企業とされます。 ※これらの企業規模は、本社や支店、工場などのいわゆる「事業場」単位ではなく、企業単位で判断され、業種の分類については、「日本標準産業分類」に従って判断されます。
【中小企業の範囲】
働き方改革関連法の施行に合わせて、企業が対応すべきこと
それでは、上記で紹介した、各改正・導入事項が具体的にどのようなものであるのか、また、企業に求められる対応や違反した場合の罰則について説明していきます。
※罰則については、あくまで規定上のものであり、それらが直ちに適用されるということではありません。一般的には、まずは是正勧告などがなされ、それでも改善が見られない場合に適用されます。
残業時間の上限規制
【施行時期】
大企業 2019年4月1日/中小企業 2020年4月1日
※ただし、建設事業や自動車運転の業務のように、2024年4月1日から適用(上限規制の内容も異なります)されるものや、新技術・新商品等の研究開発業務のように適用が除外されているものもあります。
これまで、残業時間(時間外労働)の上限については、労働基準法ではなく、「時間外労働の限度に関する基準」(厚生労働省の告示)というもので、原則として、月45時間・年360時間とされていました。
また、「臨時的な特別の事情」があれば、36(サブロク)協定に「特別条項」というものを記載して届け出ることで、月45時間・年360時間の上限を超えることができ、一定の要件はあったものの、その超えられる時間の上限は定められていませんでした。
これらの整理が、改正後は次のようになります。
1. 時間外労働の上限(月45時間・年360時間)を労働基準法上のものとし、「臨時的な特別の事情」がなければ、これを超えることができない。
2. 「特別条項」がある場合でも以下を守らなければならない。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」、「3か月平均」、「4か月平均」、「5か月平均」、「6か月平均」の全てが1月当たり80時間以内
※毎月、当月を基準にさかのぼって1月当たりの平均時間を算出することになります。 - 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
企業に求められる対応
企業においては、次のような対応が求められます。
-
正確な労働時間の把握
労働時間を上限規制の範囲内で管理していくためには、各社員の正確な労働時間を把握できていなければなりません。このあと説明する「労働時間の客観的な把握」義務も参照のうえ、適正に管理していく必要があります。 -
現状の36協定の見直し
現状の36協定が上限規制に抵触しているということであれば、早急に見直す必要があります。ただし、施行前と施行後にまたがる期間の36協定を締結している場合には、経過措置としてその協定の初日から1年間はそこで定めた内容が有効とされることになっています。この場合、4月1日(施行日)開始の36協定を締結し直す必要はなく、その協定の初日から1年経過後に新たに定める36協定から、上限規制に対応することになります。
※上限規制の施行後に提出する36協定の様式は新様式になっていますので、注意が必要です。 -
労働時間の短縮・生産性の向上
残業を減らし、かつ、企業成長を維持するため、各業務フローの洗い出しや見直し、外部委託、ITの活用など、生産性の向上を図っていく必要があります。企業として、残業を減らし、かつ、生産性も向上していかなければならないことを、代表者などからメッセージを発出することも効果的です。
【参考】新36協定(平成31年4月以降)(中小企業は2020年4月以降)/東京労働局
違反した場合の罰則
「臨時的な特別の事情」があって時間外労働の上限(月45時間・年360時間)を超える場合に、先に説明した上限を超えてしまうと、「 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 」を科せられる可能性があります。
なお、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた延長時間を超えて時間外労働をさせた場合にも、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」を科せられる可能性がありますが、この取り扱いはこれまでと同様です。
【関連】「時間外労働の上限規制」をわかりやすく解説!罰則や施行開始時期は?/BizHint
年5日の年次有給休暇の取得
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については、時季を指定(労働者の意見を尊重する必要あり)して取得させなければならないことになります。
ただし、労働者が自ら申し出て取得した日数や、労使協定で取得時季を定めて与えた日数(いわゆる「計画的付与制度」により取得させた日数)については、上記の5日から除外することができます。
また、時季や日数、年次有給休暇の基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成(データでも可)して、3年間保存しなければならないという義務も追加されました。
企業に求められる対応
企業においては、次のような対応が考えられます。
- 毎年、年度当初などに労働者と面談を行ったうえ、時季(5日の取得予定日)を指定し、そのとおりに取得させる
(取得予定日については、労働者の申し出などにより随時変更していくことも必要) - ある程度、年次有給休暇の取得率が高い企業では、年度の途中までは労働者の自主的な取得に任せ、取得日数が5日に満たない者だけ時季を指定して取得させる
- さらに年次有給休暇の取得率が高い企業では、完全に労働者の自主的な取得に任せ、年度の途中で、5日に満たない者には取得を促す
(会社から時季は指定しない)
なお、年次有給休暇は、就業規則に記載しなければならない「休暇に関する事項」であるため、使用者(会社)が時季を指定して運用する場合には、就業規則に記載しておかなければなりません。
違反した場合の罰則
次に該当する場合には、「 30万円以下の罰金 」を科せられる可能性があります。
-
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
※罰金は対象労働者1人ごとに計算されます - 使用者による時季指定を行う場合に、就業規則に記載していない場合
なお、先に説明したとおり、労働者が年次有給休暇を自主的に取得した日数は、時季を指定して取得させなければならない「年5日」から差し引くことができます。
そもそも、この労働者から請求のあった時季に年次有給休暇を与えなかった場合にも、「 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 」を科せられる可能性がありますので、注意が必要です。
※請求のあった時季に取得させることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更することはできます。
【参考】年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説/厚生労働省
【関連】有給休暇は2019年から年5日の取得義務化に。企業の対応方法を詳しく解説/BizHint
労働時間の客観的な把握
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
労働時間の把握義務については、これまで労働基準法に明確に規定されておらず、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」というものに示されていました。
ただし、このガイドラインにおいては、労働時間を把握しなければならない対象として、管理監督者や、みなし労働時間制が適用される労働者などが除外されていたこともあり、すべての労働者に完全に徹底されているものではありませんでした。
これが、改正労働安全衛生法においては、このあと説明する「高度プロフェッショナル制度」の適用者を除いて、その他 すべての労働者の労働時間を把握し、その労働時間の記録を3年間保存しなければならないことになります。
※労働基準法ではなく労働安全衛生法で規定された理由は、労働時間を把握することで、長時間労働者に対する医師の面接指導を確実に実施するためです。
※「高度プロフェッショナル制度」の適用者についても、労働時間の管理については別枠で定められています。
企業に求められる対応
企業においては、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者についても、その他の労働者と同様に、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録によって労働時間を把握し、その労働時間の記録を3年間保存しなければいけません。
やむを得ない場合には、自己申告制による労働時間管理も認められていますが、その場合には、適正に申告を行うことを労働者や管理者に十分に説明することや、必要に応じて、自己申告の労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かの調査を行わなければならないなど、一定の措置を講じる必要があります。
【参考】「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます/厚生労働省
※「Part2長時間労働者に対する面接指導等」の「Point1労働時間の状況の把握」部分参照
同一労働同一賃金
【施行時期】
大企業、中小企業とも2020年4月1日
※ただし、中小企業に対して、2020年4月1日から施行されるのは、派遣労働者に関する部分のみ(パートタイム労働者・有期雇用労働者に関する部分の施行は、2021年4月1日)
同一労働同一賃金とは、文字どおり、同じ労働をする者には同じ賃金を支給するというもので、非正規雇用労働者の待遇改善を目的としています。
以下では、非正規雇用労働者ごとに改正内容を整理しています。
【パートタイム労働者】
- 同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇が禁止される
【有期雇用労働者】
- 同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇が禁止される
- 正規雇用労働者と「職務内容」や「職務内容・配置の変更範囲」が同一である場合の均等待遇の確保が義務化
【派遣労働者】
- 派遣先の労働者との均等・均衡待遇、または一定の要件(同種業務に就く一般労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であることなど)を満たす労使協定による待遇、いずれかの確保が義務化
また、パートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者から、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由などについて説明を求められた場合には、それに応じなければならないことになっています。
企業に求められる対応
まずは、正社員と非正社員の職務内容と待遇を明確にする必要があります。
そのうえで、正社員と非正社員との間に不合理な待遇差がある場合には、就業規則や賃金規定、人事制度を見直しましょう。
厚生労働省が定めている「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」)では、どのような待遇差が不合理であるのかなどの具体例が示されていますので、それらを確認のうえ改善を進めていきます。
同一労働同一賃金を実施するためには、人件費の高騰は避けられません。このため、業務効率化を進めて残業を削減していくことも必要ですし、正社員の待遇を下げてバランスを取ったり、全体的な人員調整の検討も必要になることがあります。
※正社員の待遇見直しや人員調整は、労使間の調整が必要になるため、慎重な対応が必要です。
【関連】2020年から施行!「同一労働同一賃金」とは?企業の対応まで徹底解説/ BizHint
月60時間を超える残業の割増賃金率引き上げ
【施行時期】
中小企業 2023年4月1日
2010年の労働基準法の改正により、月60時間を超える残業(時間外労働)については、割増賃金率を50%以上にすることとされましたが、中小企業についてはその適用が長らく猶予されていました。
今回の改正により、この割増賃金率が中小企業についても適用される ことになりましたが、その影響力も考慮され、2023年4月1日からの施行になっています。
企業に求められる対応
中小企業においては、 月60時間を超える残業があった場合 には、その超えた時間についての割増賃金を 50%以上の割増賃金率 で計算して支給しなければなりません。
これが施行(2023年4月1日)されるまでにはもうしばらく時間があるため、業務効率化を進めるなど、残業を削減する対策を講じておくことが必要です。
違反した場合の罰則
「 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 」を科せられる可能性があります。
産業医・産業保健機能の強化
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
今回の改正では、過重な長時間労働やメンタル不調などの問題を抱える労働者に対し、産業医による面接指導や健康相談が確実に実施されるような体制整備が求められています。
様々な改正が行われていますが、主なものを整理すると次のようになります。
1.産業医の活動環境の整備について
- 産業医に対して健康管理に必要な情報を提供しなければならない
- 産業医からの勧告を衛生委員会または安全衛生委員会へ報告しなければならない
2.健康相談の体制整備および健康情報の適正な取扱いルールの推進について
- 産業医が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければならない
- 労働者の健康情報を適性に管理するために必要な措置を講じなければならない
企業に求められる対応
そもそも、産業医とは、事業場(企業単位ではなく、支店や工場などの単位)に常時50人以上の労働者がいる場合に、その選任が義務付けられているもので、50人未満の事業場では、医師または保健師に労働者の健康管理を行わせるように努める(努力義務)こととされています。
このため、上記の改正事項は、基本的には、産業医を選任している場合に対応が必要になるものですが、50人未満の事業場でも、「健康相談に応じるための体制整備」などはあわせて努力義務とされていますので注意が必要です。
対応すべき事項は、その他の改正事項と比べると明確であるため、その通りに社内規程などを整備して運用していくことになります。
注意すべき点を挙げるとすれば、労働者の健康情報の取り扱いです。 労働者の健康情報は個人情報であることから、労働者が雇用管理上、不利益な取り扱いを受けることのないよう十分に配慮しなければなりません。
※これについては、厚生労働省から、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」というものが公表されており、その中で、策定すべき取扱規定の内容や運用方法などが紹介されています。
【参考】「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます/厚生労働省
【関連】産業医とは?選任の目的や業務内容、報酬の相場まで詳しく解説 / BizHint
【関連】働き方改革の「産業医・産業保健機能/面接指導」の強化 企業の対応事項も解説 / BizHint
高度プロフェッショナル制度の創設
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
収入が一定額以上 (年収1,075万円以上を想定)で、 高度の専門知識を持った労働者 (金融商品の開発業務・ディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務などを想定)について、 働いた時間ではなく成果で評価する 制度です。
導入には「労使委員会」を設置して、高度プロフェッショナル制度の導入についての決議を行い、労働基準監督署へ届出、対象労働者の同意を書面で得るなどが必要となります。
これを導入することで、対象労働者にとっては柔軟な働き方が可能になり、企業にとっては労働基準法上の労働時間に関する規定の適用を除外できるというメリットがあります。(時間外、休日、深夜労働があっても割増賃金を支払う必要がない など)
【参考】2018 年12月14日 労働政策審議会(労働条件分科会)資料:高度プロフェッショナル制度の対象業務(素案)/厚生労働省
企業に求められる対応
高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者がおり、導入を検討している企業においては、現在、公開されている資料などを参考に導入手続きを進めることになります。
※細かな要件などについては、今後、省令で変更になる可能性があります。
【参考】2018 年12月14日 労働政策審議会(労働条件分科会)資料:「高度プロフェッショナル制度」の導入フロー/厚生労働省
違反した場合の罰則
高度プロフェッショナル制度を導入するかどうかは企業の判断になりますので、対象となる労働者がいたとしても、導入しないことで罰則を科せられることはありません。
ただし、導入した場合に、対象労働者の1週間あたりの事業場内外の労働時間が40時間を超え、さらにその超えた時間が1月あたり100時間を超えた場合には、医師による面接指導を行わなければならないことになっており、これを行わなかった場合には、「50万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。
【関連】高度プロフェッショナル制度とは?対象職種やメリット・デメリットを解説 / BizHint
フレックスタイム制の拡充
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
フレックスタイム制においては、労働者が一定の範囲内で自由に出社、退社できるものですが、「清算期間」というものを設けて、この期間を平均して1週の労働時間が40時間を超えないように調整しなければならないことになっています。
今回の改正では、この 清算期間の上限が、これまでの「1か月」から「3か月」に延長されることになります。
※1か月を超える清算期間とする場合には、労使協定を締結したうえで、労働基準監督署に届け出なければなりません
この清算期間を、例えば3か月に変更すると、3か月間での労働時間の調整が可能になるため、労働者にとっては、より自由な働き方ができるようになり、企業側としても、割増賃金の抑制が期待できるなどのメリットがあります。
企業に求められる対応
フレックスタイム制を既に導入している企業については、1か月の精算期間からさらに長い清算期間に変更するのか、フレックスタイム制を導入していない企業については、これを機に導入するのか検討することになります。
ただし、このフレックスタイム制において、精算期間が1か月であれば、労働時間の管理は比較的単純ですが、3か月などの複数月になると、月をまたいだ労働時間管理が必要になるため、労務管理担当者の負荷は増えます。
導入には、企業におけるメリット、デメリットを検証することが必要です。
違反した場合の罰則
フレックスタイム制を既に導入していても、これから導入するにしても、1か月を超える清算期間にするかどうかは企業の判断になりますので、1か月以内の清算期間にしても罰則はありません。
ただし、フレックスタイム制を導入し、1か月を超える清算期間にした場合に、その労使協定を労働基準監督署に届けなかったときは、「30万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。
【参考】フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き/厚生労働省
【関連】フレックスタイム制とは?導入ポイントやメリット・デメリットまで徹底解説/BizHint
勤務間インターバル制度の導入促進
【施行時期】
大企業、中小企業とも2019年4月1日
勤務間インターバル制度とは、 時間外労働を含めたその日の終業時刻から、翌日の始業時刻までの間に、一定の休息時間を確保しようとする制度 です。
法律上の整理としては、労働時間等設定改善法において、事業主が必要な措置を講ずるものの1つに「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」というものが加えられており、これに対応するものですが、導入はあくまで 努力義務 です。
企業に求められる対応
どのように導入すべきか、また、「一定の休息時間」が何時間であるべきかなどは法律上、定義されていませんが、2018年12月に、厚生労働省の有識者検討会がまとめた報告書では、導入に向けたポイントや、休息時間を「8~12時間」とする例が紹介されています。
そのほか、厚生労働省の「勤務間インターバル制度」の専用サイトでは、各企業の導入事例も紹介されていますので、それらも参考のうえ導入を検討していくことになります。
【参考】勤務間インターバル制度/厚生労働省
【参考】「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」の報告書を公表します/厚生労働省
【関連】勤務間インターバル制度とは?努力義務になる制度の内容や導入企業のご紹介/BizHint
中小企業に対する働き方改革の支援
日本の雇用の約7割は、中小企業や小規模事業者が創出しているものであり、働き方改革が成功するかどうかは、中小企業や小規模事業者において実施されるかどうかが鍵になっていると言えます。
このため、政府、厚生労働省では、中小企業や小規模事業者における働き方改革の実施を支援する取り組みを行っています。
働き方改革推進支援センター
働き方改革に関して、企業(特に、中小企業や小規模事業者を想定)が抱える様々な課題に対応するため、47都道府県に相談窓口として「働き方改革推進支援センター」が開設されています。
各センターに配置されている、社会保険労務士などの専門家に、就業規則の作成方法や賃金規定の見直し、労働関係助成金の活用などのアドバイスを無料で受けることができます。 ※窓口相談や電話相談のほか、自社への直接訪問を依頼することも可能です。
働き方改革支援ハンドブック
中小企業や小規模事業者における働き方改革を一層推進させるため、「働き方改革支援ハンドブック」というものも作成されています。
厚生労働省のホームページでは、様々な働き方改革関連の資料が公開されていますが、この「働き方改革支援ハンドブック」では、改正内容も中小企業目線でコンパクトにまとめられており、相談窓口や活用できる補助金・助成金などが紹介されています。
中小企業における働き方改革の重要性、その他課題や事例などは、以下の記事で詳しくご紹介しています。
【関連】中小企業こそ働き方改革を!課題や事例、助成金について徹底解説/BizHint
まとめ
- 働き方改革関連法とは、働き方改革を推進すること目的として、労働基準法のほかにいくつかの関係法をまとめて改正する法律です。
- 各改正事項は、2019年4月1日から施行されるものが多いですが、大企業と中小企業とで施行時期が異なるものがあります。
- 各改正事項の対応は、その必要性や施行時期、罰則の有無などを確認して、優先度を決めて進めていくことが必要です。
※高度プロフェッショナル制度の導入やフレックスタイム制の改正など、対応が必要ない場合もあります。 - 中小企業などで労務管理に精通した担当者がいない場合には、「働き方改革推進支援センター」などの無料相談窓口を活用することもできます。
<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士
関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。
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