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2019年1月15日(火)更新

有給休暇義務化

2019年4月以降、年次有給休暇の消化が年5日未満の労働者に対し、使用者は時季指定により取得徹底を図る義務が課せられます。これにより、有給休暇取得の対策に現場レベルで取り組むことが必要となります。この記事では、有休取得日指定の義務化に伴い、企業に求められる対応について解説します。

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年次有給休暇制度の説明

皆さんは、年次有給休暇の制度について正しく理解しているでしょうか?しばしば「うちの様な小さな会社には有給休暇制度ないよ」「パートタイマーだから有休なんて取得できない」との声を耳にすることがあります。

ところが、年次有給休暇は、勤続期間やその間の出勤率に関わる条件を満たすすべての労働者に対して会社規模や雇用形態の別を問わず、権利として法律上当然に与えられる休暇です。

 使用者に課せられる有給休暇付与の義務

年次有給休暇制度に関わる定めは、労働基準法第39条第1項にて下記の通り明記されています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov:労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)

つまり、使用者は法律上の義務として、労働者に対し年次有給休暇を付与しなければなりません。従業員数が1名であっても、パート・アルバイトであっても、働く人が要件を満たす限り使用者は所定日数の年次有給休暇を付与し、自由に取得させるよう努める必要があります

 有給休暇付与の対象者とは?

有給休暇が付与される対象者は、以下の両方の要件を満たす労働者です。

  • 雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務していること
  • その6ヵ月間の全労働日の8割以上出勤していること

ただし、会社独自の取決めとして入社当初から有給休暇を付与する等、法定を上回る取扱いをすることは問題ありません。

 有給休暇の付与日数

有給休暇の付与日数は、原則として下記の通りです。勤続6ヵ月間に対し10日の年次有給休暇が付与され、以降は1年ごとに一定の日数が加算されていきます。

【出典】厚生労働省:有給休暇ハンドブック

一週間の労働時間が30時間未満のパート・アルバイトの有休日数は原則とは異なり、勤務日数に応じた付与が可能です。もちろん、原則と同じ付与日数のルールを適用し、法定を上回る処遇とすることもできます。

【出典】厚生労働省:有給休暇ハンドブック

その他、年次有給休暇の詳細は、別記事よりご確認いただけます。年次有給休暇の取得義務化を理解する前に、まずは基本的な制度概要を正しく把握しておきましょう。
【関連】BizHint:有給休暇とは?付与日数や2019年義務化への改正情報まで徹底解説

有給休暇取得義務化の概要

さて、冒頭でも触れたとおり、年次有給休暇の消化が進まぬ現状を背景に、労働者に年5日以上の有給休暇を取得させることが、使用者の義務となることが決定しました。

年次有給休暇制度はいつから、どのように変わるのでしょうか?その概要を一つひとつ確認していきます。

義務化の内容

このたび新設される「使用者による年5日の有給休暇の時季指定義務」は、改正労働基準法第39条第7項、第8項として追加されます。通達から読み取ることのできる改正条文のポイントは、下記の通りです。

  • 使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、このうち5日については付与日から1年以内に、時季指定の上、取得させなければなりません。
    時季指定義務について、使用者は労働者に対し、事前に取得時季の希望をヒアリングした上で、「○月○日に休んでください」と具体的な取得日を指定する取扱いが想定されます。
  • ただし、労働者の請求または計画的付与制度に基づき、使用者が年5日以上の有給休暇を取得させた場合、使用者による時季指定は不要となります。
    年次有給休暇の計画的付与とは、あらかじめ労使協定に定められた日程に休暇を取得することで、計画的な有休消化を目指す制度を指します。夏季や年末年始の休暇の前後に計画的付与を適用し大型連休とする、閑散期に有休取得日を設定し業務に支障をきたさず有休取得率を向上させる等の有効活用が可能です。

加えて、改正労働基準法施行規則第24条の5には、例外的な年次有給休暇の付与パターンに応じた実務上の取扱いが網羅されます。

例えば入社した日に10日の年次有給休暇を付与する場合、もしくは「入社日に5日、勤続6ヵ月経過日に5日」というように有給休暇を分けて付与する場合には、下記の資料を参考に適切な対応ができるようにしましょう。

【参考】厚生労働省:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について

対象となる企業・労働者

年次有給休暇の年5日時季指定義務は、対象となる労働者を雇用するすべての使用者に課せられます。対象労働者は、「年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者」です。つまり、「入社から6ヵ月間以上の継続勤務」と「その期間の全労働日について8割以上の出勤」を満たす労働者が属する企業では、例外なく対応しなければなりません。

義務化の施行時期

改正労働基準法の施行は、2019年4月1日です。年次有給休暇の年5日取得義務については、中小企業に対する猶予措置は設けられません。よって、会社規模に関わらず、「改正労基法の施行日以降最初に到来する有給休暇の付与日」を基準日として、現場では順次対応する必要があります。

例えば、有休付与日が毎年10月1日の会社では、2019年10月1日から2020年9月30日までの1年間に、5日の年次有給休暇を対象労働者に取得させなければなりません。

【出典】厚生労働省:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について

違反した場合の罰則

万が一、使用者が対象労働者に対して年次有給休暇を年5日取得させなかった場合、労働基準法第39条違反として「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働契基準法

企業が行うべき対応

2019年4月以降、年間5日の年次有給休暇を取得しない従業員に対し、使用者は時季指定による付与を行うことで確実に休暇を与える必要があります。政府主導で法整備が進む一方、現場レベルでは未だ準備に着手できずにいるケースは少なくないでしょう。

ここでは、義務化される年次有給休暇年5日の時季指定に向け、企業が取り組むべき5つの対応をご紹介します。

「年次有給休暇管理簿」の作成

年次有給休暇の時季指定義務化の陰に隠れあまり知られていませんが、このたびの法改正を受け、「年次有給休暇管理簿」の作成もまた、企業の義務となります

会社によっては、有休管理のために既に作成されているケースもあるかもしれません。今後は、これまで特に有休に関わる管理簿を準備してこなかった会社でも作成し、必要な情報の把握と有休管理に役立てることになります。

年次有給休暇の取得奨励を進めるための第一歩は、「適切な状況把握」です。各従業員について、現在何日分の年次有給休暇が付与されているか、そのうちの何日分が取得されているかを認識するため、有給休暇の付与と取得に関わる記録を残しておきましょう。

【参考】厚生労働省:有給休暇ハンドブック

会社主体の有休管理

すべての従業員に対し、年5日の有給休暇を確実に取得させるためには、会社が主体となって有休管理を行っていく必要が生じます。

年次有給休暇管理簿を作成することで、従業員各人、部署ごと、会社全体の有休取得状況がぐんと把握しやすくなりますから、会社は状況に応じて適切な対応を検討しましょう。具体的な取り組みとしては、「労働者ごとの個別指定」もしくは「計画的付与制度」のいずれかの導入が考えられます。

労働者ごとの個別指定

大半の労働者が毎年5日以上の有給休暇を取得しており、会社が時季指定によって有休を取得させるべき対象がごく一部という場合には、「労働者ごとの個別指定」が有効です。

「個別指定」とは、有給休暇の取得が年5日未満になってしまいそうな労働者に対し、会社が取得時季の希望を取った上で時季指定をする方法です。有給取得を労働者の自発性に任せるのではなく、最初の声掛けを使用者側が行うことで、有休を取得しづらい現状の改善につながるのではないでしょうか?

【出典】厚生労働省:働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~

計画的付与制度

一部の労働者だけでなく全体的に有給休暇の取得が進まない、繁忙期と閑散期がはっきりしているといった会社では、年次有給休暇の「計画的付与制度」の導入が有効です。

前述の「個別指定」の場合、従業員ごとの細かな調整が必要になりますが、計画的付与制度を活用すれば各人に関わる管理が不要となります。また、業務に支障のない時季に有休を取得させることができる、お盆や年末年始の休暇を長く確保できる等、会社にとってのメリットも期待できます。

計画的付与は、労働者ごと、部署ごと、そして全社一斉での適用が可能であり、有休取得義務への対応にも柔軟に駆るようできる制度です。

年次有給休暇の計画的付与制度を導入する際には、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分について時季を定め、労使協定を締結します。ただし、労使協定に定めた時季を会社都合で変更することができない点に、注意が必要です。

有休取得させやすい手続きの導入

御社では、従業員が有給休暇を取得する際、いつまでにどのような手続きを経ることになっているでしょうか?

例えば、「取得予定日の30日前までに届け出なければ申請は無効」「理由によっては申請が却下されることがある」といった取扱いが常態化しているとすれば、早急に手続きの見直しを行う必要があります。

申請期限を極端に前もって設定することや、有休取得に理由を求める等のルールは、法に反する取扱いであり、労働者の有休取得を不当に妨げる要因となるからです

有休取得の請求を正当な理由がないことで却下したり、有休を取得したことで賃金の減額対象としたりすることは問題です。ただし、法律や判例では、事業の正常な運営のために数日前までに申請を求める、やむを得ない場合に他の時季に変更する等の取扱いは認められることになっています。

【参考】厚生労働省:有給休暇ハンドブック

業務分担や業務内容の見直し

従業員が安心して有給休暇を取得するためには、いつ、誰が休んでも直ちに業務運営に支障が生じない職場体制の実現が不可欠です。

特定の人や部署に業務が偏ることのない様、業務分担の見直しを図ると共に、業務の属人化を防ぐためにマニュアル化やシステム化に積極的に目を向けましょう。また、併せて、既存の業務内容について「本当に必要な仕事か」「無駄な作業はないか」といった業務の棚卸しを行うことも必要です。

業務効率化に向けた取り組みは、働き方改革の中でも特に重要な要素といえます。厚生労働省から豊富に情報提供が行われていますので、これらを参考に、御社に合った形で取り組んでみてください。

【参考】厚生労働省:働き方・休み方改善ポータルサイト
【関連】BizHint:BPR(業務改革)とは?業務改善との違いやメリット、導入方法、事例をご紹介

休みやすい職場風土づくり

年次有給休暇の確実な取得を促進する上で、企業に求められるのは「有休に対する意識改革」です。

まずは経営陣も労働者も有給休暇制度を正しく認識することで、有給休暇の取得が労働者の権利であることを理解することから始めましょう。その上で、使用者側からは「労使のコミュニケーションを円滑にすることで休みやすい風土を作る」「管理職が積極的に有休を取得することで部下も休みやすい雰囲気を作る」等の働きかけをしていくと良いでしょう。

また、従業員同士が「お互い様の精神で、有休取得時に助け合える関係性」を構築していける様、会社は職場体制の整備に努める必要があります。

【関連】BizHint:組織風土とは?意味と改善方法、組織風土改革の企業事例をご紹介
【関連】BizHint:組織デザインとは?ポイントから事例まで総まとめ

有給休暇が義務化となった背景

最後に、有給休暇が義務化となった背景を説明します。

労働者に対し、年次有給休暇を少なくとも年5日取得させることが使用者の義務とされる背景には、「低迷する有給休暇の取得率」という課題があります。

厚生労働省の調査によると、日本における有給休暇の取得率は、平成12年以降、5割を下回る水準で推移していることが明らかになっています。

【出典】厚生労働省:年次有給休暇の取得率等の推移(全国)

政府は、2010年に閣議決定した「新成長戦略」内で、ワーク・ライフ・バランス実現に向けた目標のひとつに「2020年までに年次有給休暇取得率70%の達成」を明言しています。そして今、このたびの働き方改革の推進を追い風に、依然として低迷し続ける有休取得率への対策へと本格的に乗り出そうとしているのです。

【出典】首相官邸:新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~

ところで、日本における有給休暇の取得率はなぜ一向に改善されないのでしょうか?ここでは、「人手不足」「職場環境」「認識不足」の3つのキーワードを軸に、その原因を考えてみましょう。

有休を取得できないほどの「人手不足」

少子化の進展により、日本では企業における働き手不足が深刻化しています。

帝国データバンクの調査によると、2018年10月時点で「正社員が不足している」と回答した企業の割合は、大企業で60.8%、中小企業では50.3%であり、人手不足が会社規模に関わらず問題化していることが明らかにされています。

さらにこれを業種別にみると、「放送」「情報サービス」「運輸・倉庫」の3業種で、実に70%以上が働き手不足を感じているという結果になっています。

政府が有休消化を奨励する一方、人手不足に悩む現場からは「1人でも休めば仕事が滞ってしまう」「休みたくても業務スケジュールの調整が難しい」といった声が後を絶ちません。

【参考】帝国データバンク:人手不足に対する企業の動向調査(2018年10月)

有給休暇を取得しづらい「職場環境」

既に解説した通り、年次有給休暇は法律上、労働者が権利として当然に取得できる休暇です。

ところが、働く皆さんの中には、本来の労働日に体調が悪いわけでもないのに休みを取ることに、罪悪感を抱く方も多いのではないでしょうか。「周りが有給休暇を消化しない」「人手がないために自分が休めば他の人が忙しくなる」「上司が良い顔をしない」といった職場環境を考慮すれば、有休取得が進まぬ現状もやむを得ません。

昨今、活発に議論されている「働き方改革」は「休み方改革」とも言われ、実現に向けた職場意識の改善の必要性が叫ばれています。しかしながら、働く人が有給休暇を気持ち良く取得できる職場環境は、企業においてまだまだ十分に整っているとは言い難い現実があります。

有休制度に関わる「認識不足」

有給休暇制度については、労使共に誤った捉え方をされるケースを散見します。

経営者の中には、「パートやアルバイトは有休制度なんて使えない」「うちの様な小さな会社には有休制度なんてない」等と誤解されている方が未だにいらっしゃいます。

一方で、労働者の中にも、「有休は特別な時にしか使えない」「病欠の時のために有休を残しておくべき」等、本来の年次有給休暇の趣旨とは異なる捉え方をする方は少なくありません。

繰り返しになりますが、年次有給休暇の取得は労働者の権利です。勤続期間とその間の出勤率に関わる要件を満たせば、会社規模や雇用形態に関わらず、所定の日数が付与されます。そして、有給休暇を取得する際に、特別な理由は必要ありません。

まずは労使が年次有給休暇制度を正しく認識することが、有休取得の促進につながるものと考えられます。

まとめ

  • 年次有給休暇は、勤続期間やその間の出勤率に関わる条件を満たす労働者に対し、会社規模や雇用形態の別を問わず、権利として法律当然に与えられる休暇です。しかしながら、日本においては低迷する取得率が問題視されています。
  • 働き方改革に伴う改正労働基準法には、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給休暇を取得させることが使用者の義務とする旨が盛り込まれます。
  • 年次有給休暇の年5日の時季指定義務は、2019年4月より、対象労働者を雇用するすべての使用者に課せられます。
  • 年次有給休暇の時季指定義務化の背景には、「人手不足」「職場環境」「認識不足」といった問題が挙げられます。
  • 年次有給休暇の時季指定義務化に伴い、今後使用者が行うべき対応として「年次有給休暇管理簿の作成」「会社主体の有休管理」「適切な有休取得手続きの導入」「業務分担や業務内容の見直し」「休みやすい職場風土づくり」等があります。

<執筆者>
丸山博美 社会保険労務士(HM人事労務コンサルティング代表)

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。一般企業(教育系)勤務時代、職場の労働環境、待遇に疑問を持ち、社会保険労務士を志す。2014年1月に社労士事務所「HM人事労務コンサルティング」を設立 。起業したての小さな会社サポートを得意とする。社労士業の傍ら、cotoba-design(屋号)名義でフリーライターとしても活動中。


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