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2019年8月30日(金)更新

有給休暇義務化

2019年4月に働き方改革関連法の施行を受け、年5日の有給休暇取得義務化や有給休暇帳簿の作成義務が科せられることになりました。今回は、法改正の具体的な内容や対象となる労働者、法改正に伴う有給休暇の取得方法の内容や特徴を解説します。また、有給休暇の取得を促すために企業が行う取り組み内容や実施において気をつけるポイントも伝授します。

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働き方改革関連法施行により、有給休暇の取得義務化へ

2019年4月より、年次有給休暇の取得が義務づけられることになりました。

これは、国が推し進める施策である「働き方改革」にまつわる法律である「働き方改革関連法」の施行により、労働者の最低限の権利が定められた労働基準法が改正され、実施に踏みきられたものです。

労働法に関する大規模な法改正が行われる場合、まずは大企業のみが義務化され、中小企業については努力義務の状態から期間を経て義務化される、というケースが少なからずみられますが、この法律については段階的な義務化は行われず、大企業・中小企業ともに法改正の対象になっていることに大きな特徴があります。

【関連】働き方改革関連法とは?改正内容と企業に求められる対応について徹底解説/BizHint

法改正の概要

今回の法改正で変更されるのは、以下の2点です。

年5日の取得義務化

年に10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、そのうちの5日間を、使用者による時季指定のうえ、取得させることが義務となりました。

<ポイント>
労働者からの申請(通常の取得)、計画的付与のいずれかで有給休暇を年5日取得している労働者に対しては、使用者による時季指定は不要(また、することもできない)
→つまり、労働者からの申請(通常の取得)、計画的付与、使用者による時季指定いずれかの方法で、労働者に年5日有給を取得させることができればOK

この改正内容に従わなかった使用者に対しては、労働基準法違反として30万円以下の罰金刑に処せられることがあるため、注意が必要です。

年次有給休暇管理簿の作成義務

有給休暇の日数は、社員の働き方や勤務年数に応じて一人ひとり異なります。したがって、会社側が確実に労働者へ有給休暇を取得させるためには、有給休暇の取得状況を確認できるような帳簿を作成する必要があります。

そのため今回の改正では、使用者は会社で働く労働者それぞれに対して、 有給休暇日数を管理するための帳簿を作成し、3年の間保存をしなければならない 、という有給休暇帳簿の作成義務も追加されました。

具体的な方法としては、同じく作成が義務づけられている労働者名簿や賃金台帳内に、有給休暇の基準日や取得日数、具体的な取得日を記載できるような項目を加え、労働者が有給休暇を取得するごとに記載をしていくことになります。

この改正内容に従わなかった使用者に対しては、年5日の取得義務化の場合と同じく、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科せられることがあります。

対象となる労働者

そもそも有給休暇が付与されるのは、以下2つの要件いずれも該当する労働者です。

  • 入社から6か月間以上の継続勤務
  • その期間の全労働日について8割以上の出勤率

今回の法改正の対象は、上記の付与要件に該当し、年に10日以上の有給休暇が与えられる労働者となります。

年に10日以上の有給休暇を持つのであれば、正社員・契約社員・パート・アルバイト・嘱託社員など、雇用形態を問わず、すべての労働者に対し年間5日の有給休暇を取得させることが必要です。もちろん、管理監督者も対象となります。

具体的な有給休暇の付与日数は以下の表をご覧ください。下記の表で付与日数が10日を超えている労働者は今回の法改正の対象となります。

【正社員やフルタイムで勤務する契約社員】

継続勤務年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

【パート・アルバイトなど、労働日数が少ない労働者】

週の所定
労働日数
年間の所定
労働日数
6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
以上
4日 169~
216日
7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~
168日
5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~
120日
3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~
72日
1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

施行時期

改正労働基準法の施行は、 2019年4月1日 です。年次有給休暇の年5日取得義務については、 中小企業に対する猶予措置は設けられません 。よって、会社規模に関わらず、「 改正労基法の施行日以降最初に到来する有給休暇の付与日 」を基準日として、現場では順次対応する必要があります。

そして、有給休暇を与えた日(基準日)から1年以内に5日分を取得させる必要があります。

たとえば4月1日に入社した正社員の場合、基本的には入社から半年後となる10月1日が基準日となり、10日分の有給休暇取得権利が与えられます。会社側は、入社年の10月1日~翌年の9月30日までの間に、この社員に5日分の有給休暇を取得させなければならないということです。

【出典】働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について/厚生労働省

企業が把握すべき、法改正に伴う有給休暇の取得方法

ここでは、法改正の内容に対し、企業側がどのように対応すれば良いかを紹介します。使用者は、何らかの形で労働者に年5日以上の有給休暇を取得してもらう必要があります。

具体的な方法としては、先述した通り以下の3つの方法があります。

  1. 労働者からの申請
  2. 計画的付与を利用
  3. 時季指定による取得

どのような方法で有給休暇を取得してもらうかについては、使用者が一方的に決めるのではなく、労働者側に意見を求め、その意見をくみ取りながら取得方法の整備をしていくと良いでしょう。

①労働者からの申請

【出典】年次有給休暇の時季指定 働き方改革支援のご案内/厚生労働省

労働者が有給休暇を取りたいと希望する日について休暇申請を行い、取得する方法です。有給休暇の取得において、もっとも一般的な方法であるといえます。

②計画的付与を利用

【出典】年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説/厚生労働省

計画的付与とは、あらかじめ労使協定により有給休暇を付与する時季を取り決めておき、その協定の内容に沿って労働者に対して有給休暇を与える方法です。

計画的付与の対象となるのは年間10日以上の有給休暇の取得権利をもつ労働者で、その10日のうち「5日を超える部分」について計画的付与制度の対象にすることができます。したがって、計画的付与制度を導入している会社で労働者が5日分の有給休暇を消化した場合は、法改正で義務化された使用者による有給休暇の時季指定を行う必要はありません。

<計画的付与制度の導入例>

  • 夏季休暇や年末年始休暇に沿った形で有給休暇を取得させ、大型連休に
  • 土日や祝日などの休日に挟まれた平日を、橋を架けるように休日にする(ブリッジホリデー)
  • 閑散期を活用した休暇 など

この制度を利用するためには、就業規則に計画的付与制度を利用する旨を記載する必要があります。その上で、付与の具体的な取り決め内容を労使協定に記し、締結をしなければなりません。

詳細はこちらの記事をご覧ください。
【関連】年次有給休暇の計画的付与とは?導入方法や活用事例などご紹介/BizHint

③時季指定による取得

【出典】年次有給休暇の時季指定 働き方改革支援のご案内/厚生労働省

使用者が有給休暇の取得時季を指定する方法です。

具体的には、使用者は年に10日以上の有給休暇の取得権利をもつ労働者の有給休暇取得状況を管理したうえで、一定期間経過後にいまだ5日以上の消化をしていない労働者を洗い出します。その後、その労働者に対して有給休暇を取得する時季に関する意見を聴収し、その意見をもとに時季指定を行います。

ここで重要となるポイントは、使用者が取得時季を指定する際には、あくまでも労働者の意見を尊重しなければならない点です。

なお、この方法を利用する場合も、就業規則に具体的な時季指定のタイミングや方法などの要件を記載しておく必要があります。

3つの方法のメリット・デメリットまとめ

これまでの項目で紹介した3種類の方法にはそれぞれ特徴をもち、導入した場合のメリットや懸念点があります。 ここでは、その内容やメリット・デメリットを比較してみましょう。

  ①労働者からの申請 ②計画的付与を利用 ③時季指定による取得
内容 労働者が有給休暇取得希望日を申請し、取得する 労使協定で付与時季を取り決め、内容に沿って有給休暇を与える 使用者が一定期間経過後に5日未消化の労働者に対して時季指定を行う
メリット 特別な制度を導入する手間がかからない 労使協定で一斉に制度を定めるため、労働者ごとに有給休暇の管理をする必要がない 使用者が一定期間経過後に5日未消化の労働者に対して時季指定を行う
デメリット 労働者が適切に有給休暇の消化をしているかを管理しなければならない 労使協定を締結する手間がかかり、締結した取得期間や取得日を使用者の都合で変更できない 労働者ごとに休暇の取得日数や残日数を管理しなければならず、事務作業が複雑化する

罰則について

有給休暇の取得において使用者側が義務を怠った場合、次のような罰則が科されることがあります。

  • 使用者が年に5日以上の有給休暇を労働者に与えなかった場合
    →労働者一人につき30万円以下の罰金
  • 時季指定による取得制度を導入している場合で、時季指定の旨を就業規則に記載していない場合
    →労働者一人につき30万円以下の罰金
  • 労働者が希望する時季に有給休暇が与えなかった場合
    →労働者一人につき6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

【参考】労働基準法/電子政府の総合窓口e-Gov

有給休暇取得推進のために企業が行うべきこと

ここまでの項目では、有給休暇の取得義務化の概要や休暇の取得方法について説明をしてきました。

ここからは、労働者が実際に有給休暇を取りやすい環境づくりのために企業側が留意すべき点について解説をしましょう。

年次有給休暇取得計画表の作成

有給休暇の取得を促進するために行うべきことの一つに「年次有給休暇取得計画表」を作成する方法が挙げられます。年次有給休暇取得計画表とは、一定期間(年間・四半期・月別)中に、労働者が有給休暇の取得を希望する時季を明記する表のことです。

労働者ごとに有給休暇が与えられる「基準日」や基準日の段階で労働者が持っている「有給休暇の日数」と、一定期間ごとに取得する予定の有給休暇日を記載することで、年間で消化する有給休暇日数を管理することが可能になります。

この取得計画表があることで、使用者や労働者本人が有給休暇の取得を忘れず、確実に消化できるようになります。また、他人の取得状況を確認することもできるので、仕事の進め方や担当の割り振りなどの参考になるというメリットもあるでしょう。

社員の意識改革

年次有給休暇を確実に取得してもらうためには、「 有休に対する意識改革 」を行うことも重要です。

まず、経営者側・労働者側がともに有給休暇制度について、「有給休暇の取得が労働者の権利である」ということを正しく認識することが第一です。

その上で、「労使のコミュニケーションを円滑にすることが、休みやすい風土を築く」「管理職が積極的に有休を取得することで、部下も休みやすい雰囲気を作る」等の内容を理解し、社内へ積極的に働きかけをしていくと良いでしょう。

また、従業員同士が「“お互いさま”の精神で、有休取得時に助け合える関係性」を構築していけるよう、会社側は職場体制の整備に努める必要があります。

【関連】「意識改革」の意味とは?社員の意識を変える目的や方法、リーダーの役割を解説 / BizHint

業務分担や業務内容の見直し

従業員が安心して有給休暇を取得するためには、いつ、誰が休んでも直ちに業務運営に支障が生じない職場体制の実現が不可欠です。

特定の人や部署に業務が偏ることのない様、業務分担の見直しを図ると共に、業務の属人化を防ぐためにマニュアル化やシステム化に積極的に目を向けましょう。また、併せて、既存の業務内容について「本当に必要な仕事か」「無駄な作業はないか」といった業務の棚卸しを行うことも必要です。

業務効率化に向けた取り組みは、働き方改革の中でも特に重要な要素といえます 。厚生労働省から豊富に情報提供が行われていますので、これらを参考に、御社に合った形で取り組んでみてください。

【参考】働き方・休み方改善ポータルサイト/厚生労働省

【関連】業務効率化で取り組むべき6つのポイントと成功事例をご紹介/BizHint

有給取得の手続きの見直し

労働者が有給休暇を適切に取得できるような環境づくりの一環として、自社の有給休暇取得方法を見直すことも重要です。

中には、「取得予定日の30日前までに届け出なければ申請は無効」「理由によっては申請が却下されることがある」などの扱いが常態化しているケースもあります。そのような場合は早急に手続きの見直しを行いましょう。

上記のように申請期限を極端に前の日付へ設定することや、有休休暇の取得に理由を求めるなどの扱いは、法に反する取扱いです。なぜなら、これらの行為は労働者の有休取得を不当に妨げる要因となるためです。

また、有休取得の請求を正当な理由がないことで却下することや、有休を取得したことで賃金の減額対象とすることも、法律に違反する行為となるので注意しましょう。ただし、事業の正常な運営のために数日前までに申請を求めるといった、やむを得ない場合に他の時季に変更する取扱いについては、認められる場合もあります。

【参考】有給休暇ハンドブック/厚生労働省

有給休暇義務化推進において抑えておくべきポイント

最後に、実際に有給休暇の義務化に対応する際に気をつけなければならない点について解説します。

基準日を統一する

基準日とは、先にも述べたとおり、労働者に有給休暇が付与される日のことです。
※フルタイムの労働者であれば、入社から6か月間の継続勤務要件が満たされた日(その期間の全労働日について8割以上の出勤率があることを含む)

基本的に中途社員がおらず、毎年決まった時期に社員が入社する会社の場合は、その決まった時期を基準日として有給休暇を与えれば良いのですが、入社時期がばらばらの社員が集まる会社の場合は、事務作業が複雑になってしまう可能性があります。

このような状況に対応するため、社内で基準日を統一することも可能です。中途社員の入社や社員の入退社が頻繁に行われる会社の場合などは、基準日を一定期間ごとにいくつか設けることで事務作業を効率化する方法が認められています。

このように基準日を統一する場合のポイントとしては、法律で付与が義務づけられている期間と日数よりも不利益となる処置をしてはならないことです。

たとえば、基準日が入社日の6カ月後を過ぎてしまうケースなどが該当します。基準日を統一する際は、労働基準法に沿った形で設定するために、勤務期間を切り捨てる方法や四捨五入する方法は認められていないことを留意しましょう。

労働条件の不利益変更にならないよう注意

有給休暇の取得義務化を受けて、従来の有給休暇制度を見直す会社も多いことでしょう。この場合に気をつけなければならないのは、制度の見直しの結果が労働条件の不利益変更になるかどうかです。

たとえば、これまでは有給休暇とは別に設定していた休日を有給休暇として扱うことが挙げられます。具体例としては、8月13~15日の3日間をお盆休暇として有給休暇とは別に設けていた会社が、この3日分を取得義務化される5日分に含めて処理をした場合などは、これまでは確保されていた労働者が取得できる有給休暇が3日分減少してしまうことになるため、不利益変更とみなされます。

また、土日を休日に設定している会社が、その休日である土日を有給休暇に充ててしまった場合も、不利益変更と扱われます。

不利益変更自体には労働法上の罰則は設けられていないものの、労働条件の変更をするためには労働者の合意が必要となります。そのため、労働者が不服を申し立てた場合などは、この変更自体が無効となる点に注意しなければなりません。

スムーズに法改正に対応することができるよう、既存のルールの見直しは慎重に行うようにしましょう。

まとめ

  • 2019年4月より働き方改革関連法の施行により労働基準法が改正され、大企業・中小企業問わず、年5日の有給休暇の取得義務化や有給休暇帳簿の作成義務が科せられました。
  • 有給休暇の取得義務化に対応するため、企業では、労働者からの休暇取得日申請、計画的付与の利用による取得、時季指定による取得などの方法を取らなければなりません。
  • 有給休暇の取得促進のため、年次有給休暇取得計画表の作成や社員の意識改革、業務分担や業務内容の見直し、有給取得手続きの見直しなどを行う必要があります。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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