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2019年1月9日(水)更新

身元保証書

身元保証書は、社員の入社時などに会社が提出させるものですが、この書類は身元保証人にその者が誠実に勤務することを保証させ、万一、会社に損害を与えた場合には連帯して責任を負わせる重要なものです。何も問題がなければ、形式的な書類になりがちですが、人事労務担当者はこの書類の目的や法律上の整理などを十分に理解しておかなければなりません。

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身元保証書とは

社員を雇い入れるにあたり、会社はその者から多くの書類の提出を求めます。この書類には、社内規則を遵守することなどについての誓約書や住民票、年金手帳、マイナンバー通知カードの写しなどが挙げられますが、以下のような身元保証書も含まれていることがあります。

まずは、会社がこの身元保証書を提出させる目的や、法律的にどのような意味を持つ書類であるのかについて説明します。

【身元保証書の書式例】

身元保証書の目的

身元保証書を提出させる会社には、次の2つの目的があります。

  1. 人物保証
    雇い入れる者の経歴や素性に問題がなく、社員として適性を有する人物であることを身元保証人に保証させること。
  2. 損害賠償
    雇い入れる者が将来的に会社に損害を与えた場合には、身元保証人にもその損害を賠償させること。

これらは、人事労務管理上のリスクを避けるためにも有効ですが、損害賠償の問題が発生することなどそうあるものではありませんし、このあと説明するとおり、実際に身元保証人に損害賠償を請求してもその全額を回収できる可能性はほぼありません。

そのため、現実的に身元保証書に期待されることは、どちらかというと人物保証の方になります。

法律上の整理

身元保証書は単なる事務的な書類ではなく、法律上の整理では、会社と身元保証人を契約者とする身元保証契約書になります。(このため、本人確認のために身元保証書とともに印鑑証明書の提出を求める会社もあります。)

実際に雇い入れる者が会社に損害を与えた場合には、身元保証人はその損害を賠償する契約上の義務が生じることになります。

身元保証人とは

身元保証人には、本人の父母やその他の近親者がなることが多いですが、会社が認める範囲の者を身元保証人にしなければなりません。

この身元保証人の責任の範囲は、法律によりかなり制限されており、借金などの連帯保証人とはその立場や責任は大きく異なります。

本人との関係・人数

身元保証人に、本人とどこまでの関係性を求めるのか、またその人数については、会社で自由に決定できます。本人の父母のどちらか1名でよい場合もありますし、父母のどちらか1名とその他の近親者1名の計2名を立てさせることもあります。

しかしながら、本人の家族構成上、2名の近親者を身元保証人として立てらないことや、外国籍の者にいたっては、その者の近親者が日本国内にいないこともあり、そのような場合には会社側も柔軟に対応しなければなりません。

身元保証人の損害賠償責任の範囲

身元保証書を提出した時点では責任を負うべき範囲が確定していないにもかかわらず、実際に賠償責任の問題が発生した場合にそのすべての責任を問われては、身元保証人にとってあまりにも酷な契約と言えます。

そこで、身元保証人の損害賠償責任の範囲は、「身元保証に関する法律」という法律により一定の制限が設けられています。この法律のポイントは以下のとおりです。

  1. 身元保証契約の期間(保証期間)を定めない場合は、原則として3年間のみその効力を有し、定める場合には、5年を超えることはできない。
  2. 身元保証契約は更新することもできるが、その期間も5年を超えることはできない。
  3. 会社(使用者)は、社員に問題行為があり、身元保証人に責任が生じる恐れがあることを知ったときや、社員の業務内容や就業場所を変更させることで、身元保証人の社員に対する監督を困難にするときは、身元保証人にそのことを通知しなければならない。
  4. 上記3の通知を受けた身元保証人や同様の内容を自ら知った身元保証人は、将来に向けて身元保証契約を解除することができる。
  5. 裁判所が身元保証人の損害賠償責任やその額を定めるにあたっては、会社(使用者)側の過失の有無や身元保証人が身元保証をするに至った理由など、その他一切の事情を総合的に勘案しなければならない。

上記のとおり、身元保証人の損害賠償責任の範囲はかなり制限されたものになっています。そのため、実際に身元保証人に損害賠償を請求したとしても、ほとんどの場合においてその全額が認められることはなく、大幅に減額されたものになります。

実際に損害賠償の問題が発生した場合には、まずは、その状況について弁護士などの専門家に相談し、現実的な対応を検討することが必要です。

【参考】身元保証に関する法律/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

連帯保証人との違い

借金などの債務を負う際に、連帯保証人を立てることがありますが、身元保証人とはその立場や責任の重さがまったく異なります。

具体的には、この連帯保証人が保証しなければならない金額は当初から明確であり、それを理解したうえで連帯保証人になっていること、また、連帯保証人は、自身に請求がきた場合には、本人と同様にその全額について返済する義務があることなどの違いがあります。

連帯保証人のほかに(単なる)保証人を立てることもありますが、こちらは連帯保証人よりも責任の範囲は限定されています。

人物保証責任の範囲

人物保証責任については、損害賠償責任のように法律上の基準はありませんが、社員が誠実に勤務することを保証している身元保証人として様々な場面で対応が求められます。

例えば、会社と社員との間で何かトラブルが発生した場合には、円滑に解決させるために間に入ってもらうことが期待されますし、社員が精神疾患などを発症して連絡が取れなくなるような場合には、連絡窓口として対応を求められることもあります。

発生した問題によって求められる対応は異なりますが、プライベートな問題になればなるほど、人事部などの担当者が直接、話をするよりも近親者あるいは第三者である身元保証人が介入した方がより早期の解決につながるケースがあります。

社員の提出義務

採用しようとする社員が身元保証書の提出を拒否できるのか、またその場合、採用自体はどうなるのかについて説明します。

提出を拒否した場合

身元保証書の提出は労働法上の義務ではありませんので、入社しようとしている者にとっては提出を拒否することもできます。しかしながら、会社には会社の規則を守らない者を採用しない自由があります。入社前に身元保証書を提出しなければならない旨を説明し、就業規則にも採用時の必要書類として挙げているのであれば、身元保証書を提出しないことを理由に解雇することは裁判になっても有効とされる場合があります。

なお、採用予定者に内定通知を発出していればその段階で雇用契約は成立しているものと解されるため、採用内定者が身元保証書の提出を拒否していることを理由に、入社前に採用を取りやめることも解雇に当たります。

主な判例

身元保証書の提出を拒否した社員を解雇したことが争われた有名な判例として、平成11年のシティズ事件(東京地方裁判所:平成11年12月16日判決)というものがあります。

この裁判では、採用した社員が身元保証書の提出を拒んだことを理由に会社が即時解雇したことについて、身元保証書を提出しないことが労働基準法上の予告なく即時に解雇できる「労働者の責に帰すべき事由」に当たるのかが争われました。判決では、この会社が貸金業者であり、横領などを防ぐために身元保証書の提出を採用の条件としていたこと、また就業規則にもその旨の規定をおいていたことなどから、社員が身元保証書を提出しないことは、即時に解雇できる「労働者の責に帰すべき事由」に当たるとされました。

その他にも、身元保証書の提出を拒否した社員の解雇が有効とされた判例はありますが、解雇が有効とされるためには、上記のように身元保証書の重要性を客観的に説明できる場合であって、採用する社員に身元保証書の提出を拒否されれば、当然に解雇できるものではないことは理解しておく必要があります。

【参考】シティズ事件(解雇予告手当請求控訴事件)/公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会
【参考】名古屋タクシー事件(解雇無効確認請求事件)/公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会

身元保証書の注意点

身元保証書は、先に説明したとおり法律に則って運用しなければならず、そのことについて就業規則にも規定しておかなければなりません。

身元保証書の有効期間

身元保証書には有効期間があり、更新はできるものの一度の契約で5年を超えることはできません。そのため、身元保証契約を更新しないまま有効期間が経過した後に、社員が会社に損害を与えた場合には、身元保証人に責任を問うことはできなくなります。

なお、この有効期間が経過した後に身元保証書を再提出させて、身元保証契約を更新するかどうかについては、ある程度の信頼関係は構築されたとして、更新しない会社の方が多いと言えます。(常にお金を扱うような金融系の会社では更新するところもあります。)

身元保証人への通知義務

社員に問題行為があり、その社員の身元保証人に賠償責任問題が生じる恐れがあるような場合には、会社は身元保証人に通知しなければなりません。

この通知を受けた身元保証人は、身元保証契約を将来に向けて解除できるため、会社がこの通知を怠った場合には、その後、実際に会社に損害が発生しても身元保証人に責任を問えなくなる場合があります。

就業規則等の整備

雇い入れる者に対して、身元保証書の提出を求めるには、そのことが採用の条件であることを就業規則などで定めておく必要があります。身元保証人の本人との関係性や必要な人数、また、保証期間は何年であるのかなどを明確にしておかなければなりません。

一般的な規定としては、以下のような整理になります。(採用決定後の提出書類の規定に、履歴書などとともに身元保証書を挙げておくことも必要です。)

【就業規則の規定例】

まとめ

  • 身元保証書には、雇い入れる者が社員としての適性を有することを身元保証人に保証させ、雇い入れる者が会社に損害を与えた場合には、身元保証人にもその損害を賠償させる目的がある。
  • 身元保証人の損害賠償責任の範囲は、法律によりかなり制限されており、一般的に、社員が会社に与えた損害について全額の請求が認められるものではない。
  • 身元保証人に損害賠償を請求するに当たっては、事前に通知が必要であり、それがなければ、責任を問えないこともある。
  • 身元保証書は、社員になる者にとって法的な提出義務はないが、それを採用の条件としている会社は提出を求めることができ、従わない社員を解雇しても直ちに違法になるものではない。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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