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競業避止義務

2018年7月29日(日)更新

競業避止義務を従業員に課して競業行為を制限することは、企業のリスク管理としては有益といえるでしょう。しかし、退職後にも引き続き競業避止義務を課すことは、企業の都合で安易に行ってよい訳ではありません。たとえ、競業避止義務の特約を締結していた場合でも、裁判において特約が無効となったケースもあります。今回は競業避止義務の対象者をはじめ、就業規則や誓約書の内容についても詳細に解説していきます。

競業避止義務とは

競業避止義務とは、従業員が会社の事業と競合する事業を自ら営んだり、競合他社の取締役を務めたりといった競業行為を制限するための義務のことです。競業避止義務は誰に対して義務づけるかによって法律の規定があるかどうかが違います。また、裁判においては就業規則の規定や契約の効力などを判断する場合にも影響を与えています。

企業の重要なポストにある取締役や支配人などに対する競業避止義務は会社法や商法によって規定されているのに対し、一般社員の競業避止義務を直接、規定するものはありません。

一般社員の場合、在職中の社員は労働契約の締結によって信義則上、「誠実義務」を負うとされています。誠実義務とは企業の利益(名誉や信用、財産上の利益など)を害するような行為をしないという義務のことで、誠実義務に含まれる主なものが競業避止義務や秘密保持義務です。

労働基準法・労働契約法にも競業行為を直接禁止する定めがないため、トラブルを防ぐためには、競業避止義務に関する個別契約(特約)の締結や就業規則への規定などが必要となります。

取締役の競業避止義務

取締役は会社に取締役会があるかどうかで役割は異なりますが、基本的には会社の業務を執り行う役割をもっています。

会社の経営戦略やノウハウなど重要な情報を知り得る立場にある取締役が競業行為をすると、会社に与える損失は決して少なくありません。そのため、取締役は、会社法356条1項1号において競業行為が制限されています。

(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

【引用】e-Gov:「会社法」、第356条

会社法で制限しているのは、会社の「事業の部類に属する取引」についてです。具体的にどのような取引が「事業の部類に属する取引」に該当するかは、商品やサービスなどの「目的物」と、取引の場所などの「市場」が競合しているかという視点で検討されています。競業の範囲として注意したいのは、会社が「現在、行っている取引」だけではなく、「今後、行おうとしている取引」についても含まれるという点です。