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2019年1月9日(水)更新

試用期間

試用期間とは、採用選考をクリアした社員に対して設ける仕事のお試し期間です。今回は、試用期間とはどのようなものか、期間の相場や期間延長の方法、試用期間中の社員の給与額や残業代、保険加入、ボーナスや有給休暇についても余すことなく紹介します。また、試用期間中の解雇や本採用拒否、退職の申し出についても、ケースごとに解説します。

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試用期間とは

会社の中には、新たに雇用した労働者に対して「試用期間」を設けているケースも多いことでしょう。

しかしこの試用期間、制度の導入手順や取り扱いを誤った場合、さまざまな労使トラブルに発展する危険性があります。そのような事態を防ぐため、試用期間とは具体的にどのようなものかについて、順を追って見ていきましょう。

試用期間の定義

試用期間とは、採用手続きを経て雇うことを決定した従業員に対し、仕事のお試し期間を設けることで、正式採用の見極めを行う期間のことです。

社員を新たに雇う場合、履歴書による書類審査や採用試験・採用面接による手続きを経ることになります。しかし、この場合、直接求職者とコンタクトを取る機会が数回と限られることも多く、その求職者の人となりを理解するには時間が足りないケースがほとんどです。

このような場合に備え、実際に仕事に就いてもらう期間、つまり試用期間を設けることで、会社側が採用面接などでは把握することができなかった新規採用者の一面を知ることができる、という効果があります。

継続雇用の判断基準

試用期間の導入目的は、採用した従業員の仕事に対する適性を見極めることにあります。

具体的な判断基準としては、正式採用後に実際に携わってもらう業務に対する的確性や適応性、業務に耐えうるだけの健康状態を持ち合わせているかどうか、または仕事の遂行能力があるか、などの内容が挙げられます。

試用期間の長さ

試用期間とはどのようなものか、期間中に社員を見るポイントはどこか、という点について理解いただいたところで、次は試用期間の長さ、つまりどの程度の期間を設けたら良いかについて、解説をしていきます。

期間の相場とは

試用期間の長さについては、その会社にとって「長すぎない・短すぎない」期間を定めることが重要です。

一般的には、1~2週間では労働者の適性を見極めるには短すぎるとされています。その一方で、長期、たとえば半年を超える試用期間を設けることについては、違法と扱われた判例もあります。

このような事態を踏まえた上での一般的な相場期間は「3~6ヶ月の間」とされているのが通例です。

【参考】労働法ナビ:ブラザー工業事件(名古屋地裁昭和59年3月23日)

法的規制はあるのか

試用期間の長さには、明確な法的規制はありません。前述のように、あまりに長期にわたる期間を避け、明確な期間の長さを就業規則などで社内ルールとして定めることで、その会社の状況に応じた期間を定めることが可能となります。

試用期間の延長は可能か

あらかじめ定めていた試用期間を超え、なおも本採用までに従業員の見極めができていない場合は、試用期間の長さを延長しても問題はないのでしょうか?

結論からいえば、試用期間を延長する場合には、その対象となる従業員自身の同意が必要です。

同意を得る方法としては、口頭、書面によるものなどさまざまな手段がありますが、後々のトラブルを避けるため、同意書の記載を求める方法が有効となります。また、試用期間について定めている会社の就業規則などに、試用期間を延長する可能性と、延長する場合の事情についての記載を行う必要もあることに注意しましょう。

対象となる社員の種類

試用期間を設ける社員の種類は、正社員、パート、アルバイト、契約社員など、その雇用形態は問われません。状況に応じて、試用期間制度を導入することが可能になります。ただし、雇用形態ごとに試用期間制度の内容が異なる場合は、その旨を就業規則などで明らかにしておくことが必要です。

試用期間中の社員待遇

ここからは、試用期間の対象者に対する雇用条件をどのように定めたら良いかについて、内容ごとに説明をします。本採用後の待遇と差別化して良いケースと、本採用後と同等の待遇を取らなければならないケースがありますので、きちんと理解をしておくことが必要です。

給与額の差別化は可能か

試用期間中の社員待遇において、会社側が最も気になる内容としては、「本採用後のケースと比較して、給与額を低く設定して良いのか」という点でしょう。まだ正式採用を決定していない段階の者に対して、本採用後の社員と同等の給与額を支払うことを躊躇してしまう経営者も少なくありません。

では、本採用後の社員との差別化は許されるのでしょうか。

法律における規制内容を見てみましょう。実は最低賃金法では、試用期間中の者に対して支払う給与は、最低賃金額を一定額下回っても良い、という特例が認められています。

最低賃金の減額の特例とは

最低賃金の減額の特例は、最低賃金法7条2項により次のように定められた正式な制度です。

《最低賃金法7条(最低賃金の減額の特例)》
使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
一 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
二 試の使用期間中の者
三 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
四 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)

具体的な制度内容としては、次の項目をクリアした場合、最低賃金より最大20%までの間で給与額を減額することができる、というものです。

  1. 試用期間の詳細について、労働協約や就業規則、労働契約などで定めていること
  2. 本採用後の従業員の賃金水準が最低賃金額程度であること
  3. 試用期間中の者の給与額を定額にするだけの慣行があること
  4. 試用期間の長さが、最大6ヶ月間であること
  5. 職務内容を勘案した上で定められた率で減額した給与額であること

減額の特例許可申請書

最低賃金の減額の特例を実際に受ける場合は、「減額の特例許可申請書」を労働基準監督署へ提出し、許可を得てから実施する必要があります。

減額の特例許可申請書のフォーマットは、厚生労働省のホームページに掲載されています。全部で2通作成し、必要事項を記入した上で提出をする必要があるため、注意をしましょう。

【参考】厚生労働省ホームページ:最低賃金の減額の特例許可申請書の記入要領(減額特例許可記入要領パンフレット(試の使用期間中の者用))

【関連】最低賃金とは?制度や種類、東京都の推移例、罰則までご紹介 / BizHint HR

残業代の扱い

試用期間中の社員に対して残業や休日出勤をさせること自体は、法律上の問題はありません。

ただし、その場合は本採用後の社員と同様に、労働時間に応じた割増賃金を支払う必要があります。深夜残業や休日出勤についても、同じく労働基準法に沿った率での賃金支払いが求められます。

【関連】残業時間の上限は?36協定や変形労働時間の概要、計算法や削減対策まで解説/ BizHint HR

雇用保険・社会保険の扱い

試用期間中の社員については、まだ正式に採用したわけではないのに、長期雇用を見越した雇用保険や社会保険(健康保険・介護保険・厚生労働保険)への加入は必要ない、と考える経営者がいるかもしれませんが、それは間違いです。

試用期間中の者に対しても、その働き方に応じた形で、雇用保険や社会保険への加入が必要となりますので、注意をしましょう。

加入手続きの時期

試用期間中の社員を雇用保険や社会保険へ加入させる場合、加入が適用される起算日は「試用期間の初日」となります。

基本的には、雇用保険の加入手続き期限は、社員を雇った日の属する月の翌月10日までです。一方、社会保険の加入手続き期限は雇入れ日より5日間と、雇用保険の場合と比較して短く設定されています。

ただし、試用期間中の社員の場合、本採用がされるかどうかについては、試用期間が終了してみないことには分からないケースがあります。このような場合、本採用後に、起算日を試用期間の初日にさかのぼって加入手続きを行う方法も通例として認められています。

雇用保険や社会保険の加入期間は、失業保険の給付額や年金支給額に影響する、労働者にとっては重要なポイントです。さかのぼって手続きを行う場合もすみやかに手続きを行い、加入もれがないよう心がけましょう。

【関連】社会保険とは?加入条件や社会保険料の計算方法、扶養のしくみまで徹底解説/ BizHint HR

ボーナスの扱い

ここまでは、試用期間中の社員に対する給与額、残業代、保険の加入についての詳細を解説してきましたが、次は賞与、いわゆる「ボーナス」について見ていきます。

ボーナスは、会社から労働者に向けたある程度のまとまった出費となるため、試用期間中の社員に対する扱いをどうすれば良いか、気になる経営者も多いことでしょう。

ボーナス査定期間に含まれるのか

ボーナスは、一定時期の査定期間の会社業績や社員成績に応じた形で支給されるものです。その査定期間に試用期間を含めるかどうかは、会社の裁量に応じて決定することができます。ただし、トラブルを防ぐためには、あらかじめ就業規則などで査定期間の詳細を明らかにしておく方法が重要となります。

試用期間とボーナス支給時期の重複

試用期間の時期によっては、他の社員にボーナスを支給する時期と重なってしまうケースもあることでしょう。このような場合に、試用期間中の社員に対するボーナスを支給するかどうかについても、査定期間の場合と同様に会社の裁量に任せられることになります。

実績を積んでいない試用期間中の者に対する支給であることから、本採用社員と金額を差別したいと考える場合、試用期間中の者には一切支給しない場合、本採用社員と同等の金額を支給する場合など、状況によってさまざまなケースが考えられますが、採用する方法に応じた基準を明確に定め、就業規則に盛り込む必要があることに注意をしましょう。

【関連】賞与とは?定義や計算法、社会保険料などの算出法、手続きについて解説/ BizHint HR

有給休暇の扱い

では最後に、社内トラブルとして挙げられることも多い「有給休暇」に関する取扱いについて、見ていきましょう。

雇入れ日のカウント方法

有給休暇については、労働基準法39条により、「6ヶ月間の継続勤務」と「全労働日の8割以上の出勤」を要件として、会社側に勤続年数に応じた休暇の付与が義務づけられています。この場合の「6ヶ月間」には、試用期間も含めなければならないという点に注意が必要です。

極端な例を挙げると、6ヶ月間の試用期間を設けている会社で試用期間を経たフルタイム勤務の正社員が退職を希望した場合、その社員が「全労働日の8割以上の出勤」をクリアしているならば、会社側はその社員に対して10日間の有給休暇を与えなければならないことになります。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/ BizHint HR

試用期間中の解雇

ここからは、試用期間中の社員に対する「退職」にまつわるトラブルについて、順に説明をしていきましょう。まずは、試用期間中における社員解雇が可能かどうか、という点について解説をします。

試用期間とは、すでに述べた通り会社側が労働者の業務に対する適性を見極めるための期間です。労働者は、試用期間中にはすでに本採用後に携わる業務に就いているため、使用者である会社と試用期間中の社員の間には「労働契約」が存在します。ただし、この試用期間中の労働契約は「解約権留保付労働契約」であることに注意が必要です。

解約権留保付労働契約

解約権留保付労働契約とは、解除する権利を保有する中で交わされている労働契約のことです。

試用期間は、労働者を本採用するための決め手となる適正を判断する期間であるため、会社側は最終的に「適正に値しない」として解雇をする権利を持ち合わせているといえるのです。ただし、解雇をする場合は、それなりの理由を有していることが要件となります。

解雇が許される理由とは

試用期間中の社員に対する途中解雇は、労働契約法16条により、客観的に合理的な理由があり、それが社会通念上相当と認められる場合に限って許されています。

客観的に合理的な理由の一例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 労働者の能力遂行能力が求められるレベルとはかけ離れている場合
  • 他社員との協調性がほとんどない場合
  • 素行不良が改まらない場合
  • 法律に違反する行為を続ける場合など

ただ単に遅刻や欠勤が続いただけでは足りず、不適切な行為や態度が度を越している場合であることに注意が必要です。

一方、社会通念上相当と認められる場合とは、労働者の状況や他社員とのバランス、会社側の対応から総合的に判断し、処分の内容が解雇に相当するとみなされる場合のことです。

たとえば、他の労働者と比較して勤務態度が悪く、業務遂行能力が著しく不足している労働者に対し、会社が度重なる面談や研修でフォローをしたにもかかわらず、改善の兆しが見えない場合などがこれに該当します。一方、社長が気に入らない社員を解雇にするなど、労働者によって処分を変える場合は、解雇処分は無効になります。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)

解雇の手続き方法

実際に解雇を行う場合、試用期間の開始日からの経過日数に応じて、次のように行うことになります。

試用開始より14日以内の解雇

試用期間が開始されてから14日、つまり2週間以内に解雇をする場合は、前述の解雇が許される事由に合致しているならば即時解雇を行うことが可能です。これは、労働基準法により次のように定められています。

《労働基準法21条》
前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

なお、この場合は事前の解雇予告通告や解雇予告手当を支払う必要はありません。

試用開始より14日超の解雇

解雇を実施するのが試用期間の開始より14日を超えてしまった場合は、本採用時と同様に、解雇の手続きを行うことが義務づけられています。

通常の解雇の場合、少なくとも30日前の労働者に対する解雇予告や、予告をしなかった場合の解雇予告手当の支払が必要です。試用期間についても、通常の場合と同様の日数カウントを要するため、最大30日分の平均賃金額を解雇予告手当として払わなければならないことになります。

《労働基準法20条(解雇の予告)》
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は、第一項但し書の場合にこれを準用する。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

本採用拒否トラブルの防止対策

ここからは、試用期間中のトラブルでも取り上げられるケースの多い「本採用拒否」についてと、トラブルを防ぐための対策の内容について紹介をしていきます。

なお「本採用拒否」とは、試用期間を終了した際に、その社員を本採用せず、辞めてもらうことをいいます。

本採用拒否は可能なのか

では、本採用拒否を行うことは可能なのでしょうか。

結論からいえば、本採用拒否を行うことは可能です。前述の通り、試用期間は「解約権留保付労働契約」という、解雇権を有した労働契約が締結されているため、試用期間終了後に「採用しない」旨の選択を行う権利が会社側にはあります。

ただし、本採用拒否を行うためには、次のような手続きを踏む必要があるため、注意をしましょう。

就業規則の整備

本採用拒否を行うためには、あらかじめ社内ルールとして就業規則等に定めを置く必要があります。

内容としては、採用を取り消し、本採用を実施しない旨の事実と、本採用拒否に該当する要件などを定めます。たとえば、次のような形で定めを行います。


第○条 本採用拒否
試用期間中の社員が次のいずれかに該当し、業務に不適格であると判断された場合は、会社側はその社員を本採用しないことができる。
1.○○○○○
2.○○○○○
3.○○○○○ ・・・


解雇の手続き方法

本採用拒否を実施する手順は、試用期間中の解雇の場合と同じです。したがって、試用期間の開始日より14日を基準として、手続きの流れが異なります。

試用期間が14日以内であるというケースはあまり考えられないことから、実際に本採用拒否を行う場合には、前述の「試用開始より14日超の解雇」のケースと同じく、少なくとも30日前の労働者に対する解雇予告や、予告をしなかった場合の解雇予告手当の支払が必要です。

本採用拒否の基準は明確か

ここまでの内容で、本採用拒否を実施する場合には、就業規則による定めと、法律に沿った形での解雇手続きが必要だということがお分かりいただけましたでしょうか。

では次は、本採用を拒否するにあたっての基準について話をしていきます。この基準を明らかにしないことには、採用を拒否された社員が納得しない場合があります。会社の状況に沿った形で、一つずつ定めを行っていきましょう。

解雇権濫用法理

本採用を拒否するにあたって忘れてはならないのが、労働契約法による「解雇権濫用法理」という原則の内容です。これは会社側に課せられた考え方のことで、合理的な理由があり、社会通念上相当であるとされた場合を除き、労働者の解雇をしてはならないことです。

《労働契約法16条(解雇)》
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)

本採用基準の作成

本採用拒否をスムーズに実施するためには、前もって「本採用基準」の作成を済ませておくことが必要不可欠です。

その内容については、具体的には、遅刻や早退、欠勤が続いた場合や勤務態度がよろしくない場合、健康状態に問題があり、当面の回復見込みがない場合、懲戒事由に該当した場合、採用選考時に提出した履歴書などの書類に偽りが発覚した場合、などが挙げられます。

会社の対応に不足はないか

本採用拒否の実施時、その採用拒否の事実が適切かどうかを判断する重要なポイントの一つに、採用拒否をした労働者に対して適切な指導をしていたか、という点が挙げられます。

もしも、試用期間中に労働者の能力にあわせた指導を行わないまま結果だけを見て本採用拒否をした場合、会社側にも不手際があるとして、労働契約の解除が適切ではないと判断されるケースがみられます。

指導記録表の作成

前述のような対応不足にまつわるトラブルを防ぐためには、試用期間中の労働者に対する指導内容を明確に記録として残しておく方法が有効です。労働者に対してどのような教育を実施したか、研修や個人面談の機会を持ったかなど、労働者を正式に社員として雇うための努力を会社側が行っていたことを、事実として指導記録表に残しておきましょう。

有期雇用契約を用いる方法

本採用拒否をスムーズに実施するための可能性を残しておく方法の一つとして、あえて試用期間を設けず、その期間を「有期雇用契約」にする方法があります。

有期雇用契約の長さは、試用期間に相当する期間と定めます。こうすれば、本採用拒否をしたい場合は「契約期間をもって満了」として、労働契約を更新しないという選択をすることが可能となります。

導入時の注意点

試用期間を有期雇用契約とする場合、次の点に注意をしながら実施をしなければなりません。

  1. 勤務態度や遂行能力によっては、本採用で正規雇用をする可能性があることを、あらかじめ労働者に伝える
    たとえば、有期雇用契約期間を過ぎたら自動的に本採用されるという流れができてしまっている場合、有期雇用契約期間後の契約更新をしなかった際には問題となる可能性があります。
    このようなケースを防ぐため、あらかじめ「契約期間終了後の本採用は、基準に沿って判断した上で実施する可能性がある」と労働者に伝えておく必要があります。
  2. 本採用をする場合の基準を、就業規則等で明確にしておく
    前述の項目で述べた「本採用の基準」について、就業規則等による定めを行う必要があります。基準が明確ではない場合、後の労使トラブルに発展する可能性があるため、注意をしましょう。

なお、定めた有期雇用契約期間が過ぎてもなお本採用の判断を迷う場合は、契約社員として有期雇用契約を更新する方法で「様子見」の期間を延長することができます。この方法を取れば、社員を本採用するための判断期間を充分に取ることが可能となるのです。

試用期間中の退職申し出への対策

ここまでの項目では、試用期間中、もしくは終了時に、会社側が労働者を採用しない方法について述べてきました。この項目では逆に、試用期間中の労働者が退職を希望した場合のケースについて、解説をしていきます。

試用期間中の退職は可能か

試用期間中にその社員が退職を申し出た場合は、民法627条の内容に該当する場合ならば、会社側はその退職を認めることになります。

具体的には、退職したい日の2週間前までに労働者からの申し出があった場合です。これには会社側の退職への同意は必要なく、労働者が退職の申し出をすれば2週間後には労働契約が解除されるということです。

この退職は、当然ながら労働者側の自己都合退職扱いとなります。

《民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)》
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕:民法(明治二十九年法律第八十九号)

退職申し出の方法

労働者が退職を申し出る方法は、口頭や電話などさまざまですが、後に「言った・言わない」の水掛け論になることを防ぐためには、労働者側に退職届の提出を求める方法が効果的です。

退職希望日やその理由を書面により明らかにすることで、退職日や退職事由が事実として残るため、会社側も堂々と退職の受理手続きを行うことが可能となるのです。

まとめ

  • 試用期間とは、採用手続きを経て雇うことを決定した従業員に対して仕事のお試し期間を設けることで、会社側が正式採用をするかどうかを見極めるためのもの。
  • 試用期間中の社員には、給与額の差別化が最低賃金の減額特例として認められている。残業代や保険の加入については実際の働き方に応じて実施する必要あり。
  • 本採用拒否は、客観的に合理的な理由や社会通念上相当であると認められた場合に実施が可能。また、就業規則への本採用基準明記や会社側の事前指導も必要。

<執筆者> 加藤知美 社会保険労務士(エスプリーメ社労士事務所)

愛知県社会保険労務士会所属。愛知教育大学教育学部卒業。総合商社で11年、会計事務所1年、社労士事務所3年弱の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。


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