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2019年4月9日(火)更新

辞令

辞令とは、人事異動などの際に該当従業員に交付するものですが、法的に義務があるものではないため、会社の慣例で作成していることが多いと言えます。しかしながら、転居を伴う異動の辞令などで手順を誤ると、該当従業員との間でトラブルになることもあるため、経営者、人事担当者においては、辞令の意味、交付までの手順を理解しておくことが必要です。

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辞令とは

辞令とは、会社が該当従業員の採用を認めたり、所属部署や役職の変更などを命じる書類のことを言います。辞令には数多くの種類があり、会社組織を運営していくうえで、重要な意味を持っています。

辞令の種類

辞令は、従業員採用時のものをはじめ、所属部署、役職、給与などについて変更を行う都度、発行が必要になります。

主な辞令としては、次のようなものが挙げられます。

  • 採用辞令
  • 退職辞令
  • 配置転換・転勤辞令
  • 出向辞令、転籍辞令
  • 昇進・昇格辞令、降格辞令
  • 昇給辞令、降給(減給)辞令
  • 休職辞令、復職辞令
  • 出張辞令

辞令の意味

辞令は、会社から従業員に対する業務上の命令行為であるため、組織的に従業員をコントロールしていくうえで重要な意味を持っています。このため、労働基準法やその他の法律において、その発行が義務付けられているわけではないものの、命令文書として交付することが一般的となっています。

辞令の拒否

辞令に法的な拘束力はないものの、業務命令である以上、原則として拒否することはできません。(些細な理由で拒否すると、場合によっては懲戒対象ともなり得ます。)

しかしながら、その辞令が明らかに会社による人事権の濫用と認められる場合には、裁判で争えば無効とされるケースもあります。これについては後述します。

辞令の書式・書き方

インターネット上に様々な辞令のテンプレートがあるとおり、定められた書式はありません。どれを利用しても構いませんが、業務命令を伝達するものであることを考えると、正確かつ具体的に記載するものであることが求められます。

主な辞令の書式、書き方をご紹介します。

採用辞令

新たに従業員を採用する時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

なお、採用した従業員には、労働条件通知書や雇用契約書などを交付することになりますので、採用辞令を作成しない会社もあります。

【関連】「雇用契約」とは?労働契約との違い、雇用契約書の雛形や注意点も解説 / BizHint HR

退職辞令

従業員が退職する時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

なお、退職者には、退職証明書や離職証明書など、退職に関する証明書を発行することになります(再雇用が前提の定年退職時などを除く)ので、退職辞令を作成しない会社もあります。

配置転換辞令

従業員の所属部署を配置転換などで変更する時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

発令日については、現部署の任を解く日と、新部署への異動を命じる日を同日で整理することが一般的です。これは、例えば、月末に現部署の任を解き、翌月1日に新部署へ異動を命じると、現部署と新部署の所属期間の間に空白の1日が生まれるためであり、このあと出てくる昇進や出向、転籍の場合も同様の整理です。

なお、転勤などを含む配置転換を命じるにあたっては、就業規則、労働協約などにおいて、その旨の規定がなければ該当従業員の同意を得なければなりません。(これについては後述します。)

【関連】「配置転換」とは?人事異動との違いや不当になる事例を解説 / BizHint HR

昇進辞令

従業員の職位(係長、課長、部長など)を上位のものに変更する時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

配置転換などと同時期に命じる場合には、あわせて記載することもあります。降格の辞令もありますが、基本的な記載内容は同じです。

昇給辞令

従業員の給与を上げる時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

社内給与規程などで定められている基本給の等級などをあわせて記載することもあります。降給(減給)の辞令もありますが、基本的な記載内容は同じです。

出向辞令

従業員を他社に出向させる時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

なお、出向を命じるにあたっては、就業規則や労働協約、出向規程などにおいて、その旨の規定がなければ、該当従業員の同意を得なければなりません。(これについては後述します。)

【関連】出向の意味とは?契約書の重要性や派遣との違いは? / BizHint HR

転籍辞令

従業員を他社に転籍させる時の辞令です。書式、書き方は以下のようなものになります。

なお、転籍を命じるにあたっては、原則として該当従業員の同意が必要です。(転籍は雇用契約上の所属会社を変更するものであり、配置転換や転勤、出向とは整理が異なります。)

辞令交付までの流れ

辞令は書面により本人に交付することが一般的ですが、その交付までにも一定の手順があります。

内示

内示とは、正式な辞令の1~3か月程度前に、経営者や人事部などの責任者、直属の上司などから該当従業員に対して、書面あるいは口頭により連絡することを言います。

特に、転居を伴うような異動などを命じる場合には、該当従業員に準備期間(検討も含めて)を与えるためにも重要な連絡になります。また、この段階では決定事項ではないため、該当従業員には口外しないように注意しておくことも必要です。

発令

発令とは、上記の内示を経て、辞令が正式なものになることを言います。

転居を伴うような異動を命じる場合には、その発令日から数日後に、着任日を設けることもあります。これは引っ越しなどの作業を考慮したものです。

交付

交付とは、正式な辞令として、経営者や人事部などの責任者、直属の上司などから該当従業員に対して書面により連絡することを言います。

交付の時期は、発令日の1か月ほど前から当日であるなど、会社により様々です。(内示がされているのであれば、特に問題になることはありません。)

辞令に関するトラブル

出向や配置転換の辞令については、従業員との間でトラブルになりやすく、厚生労働省が平成29年の6月に発表した、平成28年度の個別労働紛争の相談件数の中でも、出向や配置転換に関するものは、9,244件もあったとされています。

出向や配置転換に関する主な裁判例をご紹介します。

【参考】「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します/厚生労働省

出向について

新日本製鐵事件(2003年4月18日最高裁判決)

経営合理化のため、従業員2名を業務委託先会社に出向させ、経営が改善されなかったため、3年間の出向期間を3回延長したことについて争われた事件です。

判決においては、「従業員に著しい不利益を与えたとは言えず、就業規則や労働協約などにおいて、出向に関して詳細に規定されている以上は、従業員に同意を得る必要もないものであり、権利の濫用には当たらない」とされました。

ゴールド・マリタイム事件(1990年7月26日高裁判決)

この前の裁判において懲戒解雇したことが無効とされた従業員を復帰させるポストがなかったため、新たに制定した出向規定に基づいて下請会社に出向を命じたところ、その従業員が拒否したため、論旨解雇したことについて争われた事件です。

判決では、「従業員は出向規定に従う必要はあるものの、業務上の必要性、人選上の合理性がなく、権利の濫用に当たり、論旨解雇は無効」とされました。

日本ステンレス事件(1986年10月31日地裁支部判決)

期限の定めのない子会社への出向を、同意を得ることもなく命じた従業員3名がそれ拒否したため懲戒解雇したこと、また、別子会社への出向から復帰した従業員1名に対し、直ちに別工場に配置転換を命じたところ、それを拒否したため、懲戒解雇したことについて争われた事件です。

判決では、「子会社への出向は、配置転換と同様のものであり、就業規則にも出向、配置転換などの規定があることも考えると、本人の同意は不要であるが、従業員3名のうち1名については、親を介護しなければならない家庭の事情などがあり、転居を伴う出向は、人選方針にも反するものであり、人事権を濫用したものとして無効」とされました。

【参考】裁判例 2.配置 2-1出向/厚生労働省

配置転換について

東亜ペイント事件(1986年7月14日最高裁判決)

別の営業所への転勤を内示した従業員が家庭の事情で拒否し、さらに別の営業所への転勤の内示も拒否したため、懲戒解雇したことについて争われた事件です。

判決では、「入社時に勤務地を限定する旨の合意もなく、就業規則や労働協約にも転勤を命じることができる旨の規定があり、転勤が多い会社であることも考えると、会社は個別の同意を得ることもなく勤務地を決定できる。業務上の必要性も認められ、従業員に与える不利益も通常甘受すべき程度であり、権利を濫用したとは言えない」とされました。

ネスレ日本事件(2006年4月14日高裁判決)

他県の工場への配置転換(または退職)を命じた従業員60名のうち2名(49名は退職、9名は配置転換に同意)と、その配置転換命令の有効性などが争われた事件です。

判決では、「勤務場所を限定していない契約の場合には、使用者は業務上の必要に応じてその裁量により配置転換を命じる権利があるが、従業員2名とも、家族介護などの家庭の事情があったことを考えると、従業員に与える不利益は通常甘受すべき程度を著しく越えるものであり、配置転換命令権の濫用にあたり無効」とされました。

【参考】裁判例 2.配置 2-2配置転換/厚生労働省

対策方法

上記の判例も踏まえると、出向や配置転換に関するトラブルの対策方法として、以下の対応が必要であると考えられます。

就業規則、労働協約、出向規程などの確認

出向や配置転換を命じるためには、就業規則などにおいて、その旨、規定しておくか、該当従業員の同意を得ておくことが必要です。また、根拠規定がある場合であっても、該当従業員を採用する際に、出向や転勤はないなどと説明している場合には問題になる可能性がありますので注意が必要です。

社内規程などの整備については、社会保険労務士などの専門家に依頼すると効率的です。

従業員への十分な説明と家庭の事情の確認

出向や配置転換が転居を伴うものであれば、該当従業員に対して、できるだけ早めに内示し、その業務上の必要性や該当従業員でなければならない理由などについて、十分に説明しておくことが必要です。また、この際には、該当従業員に家庭の事情(家族を介護しているなど)がないか確認しておくことも重要です。

まとめ

  • 辞令の交付は、法律で義務付けられているものではないが、その内容が会社から従業員に対する業務命令であるため、書面により本人に交付することが望まれる。
  • 辞令を発することについて、原則としては、該当従業員の同意を得る必要はないが、出向や配置転換などについては、就業規則や各規程に会社の命令権の規定がなければ、同意を得なければならない。
  • 転居を伴う出向や配置転換などの辞令を発する場合には、該当従業員に対して十分な説明を行うとともに、家庭の事情なども考慮して決定することが望まれる。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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