RPA導入事例6選【企業や自治体の導入実例を導入効果別にご紹介】
RPAとは、ホワイトカラー業務の自動化や効率化を主な目的として開発されたITソリューションです。当初は定型業務のロボット化によるコスト削減やリソースの有効活用など直接的な効果ばかり関心が寄せられていたRPAですが、技術進化により人間と同じレベルでのプロセス分析や意思決定が可能となったことで、より多くの場面で様々な導入効果を期待して活用されるようになりました。当記事では導入時の流れや導入効果がイメージしやすいよう、導入効果別に6つの導入事例(5企業、1自治体)を紹介致します。
RPAとは
RPAとは、ホワイトカラー業務の自動化や効率化を主な目的として開発されたITソリューションです。
多種多様な業務に適用することができ、企業成長や働き方改革を強く後押ししてくれることから、業種や部門を問わず様々なビジネスシーンで活用されています。
RPAの特徴や導入方法などは以下の記事で詳しく解説しています。
【関連】RPAとは?意味や効果、導入方法、導入事例、RPAツールをご紹介 / BizHint
※RPAツールの導入を検討している方は、こちらの記事もご覧ください。
【関連】RPAツール比較13選【フリーソフトウェアもご紹介】/BizHint
RPAを導入する企業が急増している理由
【出典】RPA導入企業の半数近くが業務の完全自動化を実現 - ITmedia エンタープライズ
2018年3月、RPA導入した企業の97%が5割以上の業務工数削減を実現し、47%が完全自動化を達成できたという驚くべき導入効果がアビームコンサルティング株式会社と日本RPA協会の共同調査によって明らかになりました。
また、RPA研究の第一人者であるロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のレスリー・ウィルコックス教授は2017年7月に開催されたRPA Summit 2017において、RPAが人から職を奪う事例が一つも存在しなかったという調査結果や、導入からわずか3年で650~800%ものROI(Return On Investment=投資利益率)を達成した欧州の通信事業者の事例を紹介しました。
このような調査結果や事例が後押しとなり、RPAの自社導入を前向きに検討する企業が急増していると考えられます。
【参考】RPA導入企業の半数近くが業務の完全自動化を実現 - ITmedia エンタープライズ
【参考】51の事例から見えるRPAの実像とは?|IT Leaders
導入効果別・導入事例6選
RPAを最大限に活用するためには、「RPAの導入によってどのような課題を解決したいのか」を明確にした上で、適切なRPAツールを選択し、自社に合った形で導入、運用しなければなりません。
ここでは、導入から運用までの流れや導入後の活用方法が具体的にイメージできるよう、RPA活用のヒントと合わせて導入効果別に5つの企業と1つの自治体の導入事例を紹介致します。
約70%の時間削減、RPAで人的資源の有効活用 / マルコメ株式会社
味噌をメインに扱う食品メーカーのマルコメ株式会社は、ソフトバンク株式会社とRPAテクノロジーズ株式会社が共同で開発したRPAソリューション『SynchRoid』の導入によって約70%の対応時間を削減、人的資源の有効活用に成功しました。
抱えていた課題
営業用の提案ツールとして、社内システムにPOSデータを読み込ませて市場データと比較した資料を毎月作成しているマルコメ株式会社。
しかし、POSデータのダウンロードには細かな条件設定が必要な上、卸先企業約50社ごとにPOSデータのダウンロードサイトが存在するため、1社あたり約20分もの時間を費やしていました。
また、この作業は2名体制で行われていたため、他業務の進捗に影響を及ぼすほどの負荷がかかっていました。
RPA導入による効果
ソフトバンクのRPA担当者と共同でダウンロード自動化ロボットを作成し、一部の卸先企業のダウンロード自動化を実現することができました。
その結果、これまで約20分かかっていた作業時間を約5分に短縮することができました。
RPA活用のヒント
マルコメ株式会社のRPA導入担当者はソフトバンク株式会社の社内で「SynchRoid」を活用したプロジェクトがすでに何千も走っているという話を聞いて同製品の導入を決定したといいます。
また、全プロセスを自動化することで社員のリソース創出を推進するため、完成したロボットを元に独自の新たなロボットを作成しています。
このように、数多くの導入実績やノウハウを活かした導入支援や開発トレーニングを提供しているベンダーと契約を結ぶことで、自社内にITスキル保持者が少ない企業であっても安心してRPAを導入、運用することができます。
また、システムの再利用が可能なRPAツールや開発パートナーが作成したロボットを利用することができるRPAツールを採用し、より高度な作業を実行できるロボットを作成していくことでROIを高めることができるでしょう。
【参考】マルコメ株式会社 様 : 法人ビジネス : ソフトバンク
エンドユーザーの満足度向上を実現 / トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社
スイスに本社を置く女性用下着製造販売会社のトリンプ・インターナショナル。
その日本法人であるトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社はRPAテクノロジーズ株式会社が提供しているデジタルレイバープラットフォーム『BizRobo!』の導入によってエンドユーザーの満足度向上を実現しました。
抱えていた課題
1対1の店頭応対とは違い、無数の顧客から矢継ぎ早に対応を迫られるECの現場。
人的リソース不足がボトルネックとなるケースは珍しくなく、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社でも顧客からの要望や受注に対してオペレーションが追いつかずに慢性的な出荷遅れが発生していました。
この現状を早くから問題視していたEC事業担当者ですが、システム部門に特定の部門のみで使用するシステムの開発を依頼することは難しく、データとして連携できない『顧客要望対応』も多かったため、どうすればオペレーション改善を実現できるか頭を悩ませていました。
RPA導入による効果
社外ECサイトで行われた取引を社内システムに反映し、発送手続きを行うという一連のプロセスの自動化することができました。
また、受注データに含まれていない情報の処理やオペレーション作業、データ連動ができないシステムとの繋ぎこみなど人間と同等の判断力や認識力が求められる作業もロボット化することができました。
RPA導入後、人的リソース不足によって発生していた出荷遅れやミスはなくなりました。
以前よりも早く、要望通りの商品を手に入れられるこの素晴らしいオペレーション環境は、エンドユーザーの満足度向上という形で数字にも現れているようです。
RPA活用のヒント
「自社と同じような課題を抱えている企業にRPAをぜひ使ってみてほしい」と話すトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社のEC事業担当者。
休日や勤務時間外のロボットによる業務遂行や複数サイト間の連携、ECサイトへのレビューや問い合わせのリアルタイムアップロードなど、EC業界におけるRPA活用方法を提案されています。
【参考】EC運営における受注処理業務をデジタルレイバーで自動化 | 導入事例 | RPA テクノロジーズ株式会社
人間には実行困難な業務のロボット化 / 株式会社大塚商会
コンピュータ・複合機・通信機器を主に取り扱う株式会社大塚商会は、複数のRPAツールを特性に合わせて使い分けることでコスト削減や生産性向上、顧客満足度向上など数多くの成果を生み出すことに成功しました。
抱えていた課題
約500名のコミュニケーターを抱え、月間10万件もの対応を行う株式会社大塚商会の「たよれーるコンタクトセンター」。
この「たよれーるコンタクトセンター」内で使用されているCTS(Call Tracking System)は全ての課が使用する共通システムであるため、それぞれの課からの細かなカスタマイズ要望に応じることができず、CTSで対応できない部分についてはExcelなどを使用して手作業でしなければなりませんでした。
また、顧客へ提供する様々なサービスを管理する「たよれーるマネジメントサービスセンター」では2016~2017年にかけて定型業務の自動化に関するシステム開発を実施しましたが、自動化が実現した業務は限られており、現場からの業務効率化のニーズに対して満足に応えることができていませんでした。
RPA導入による効果
RPAの活用によって見事当初の課題をクリアした株式会社大塚商会は、開発を進めるにつれてロボットならではの業務を見つけ出すことに焦点が移行していきました。
そして、人間では到底実現できないような業務を次々にロボット化していきました。
その中の一つが頻回に受けるお問い合わせに対する回答がまとめられたFAQの作成です。
人手では970時間かかると試算された入力作業や分析作業をロボットはわずか1時間で行いました。
また、FAQの内容が充実したことによって一部の内容に関する問い合わせ件数は半減しました。
RPA活用のヒント
株式会社大塚商会はRPAを最大限に活用するため、社内でコンテストを開催し、多くの素晴らしいアイデアを集めました。
また、当初の課題であったCTSのパソコン画面上での操作を自動化するにあたり、当初採用していたものとは別のRPAツールの方が適していることに気づいて切り替える対応を取りました。
株式会社大塚商会では2018年4月までに100種類以上のロボットを開発し、年間1億円以上に相当する大幅なコスト削減と生産性向上を見込んでいます。
単なる人間の代わりではなくロボットという個性を認め、個々のRPAツールが持つ長所と短所を正しく理解することによって数多くの成果を生み出すことができるでしょう。
【参考】大塚商会のRPA導入実績とRPA関連サービス提供 | 大塚商会のERPナビ
RPAによる未来トレンドの予測に挑戦 / 楽天カード株式会社
様々な金融サービスを提供している楽天カード株式会社は、株式会社NTTデータが提供している純国産RPAソリューションです「WinActor」の導入により約75%の削減効果を獲得。
現在はRPAによる未来トレンドの予測に挑戦しているといいます。
抱えていた課題
サービス維持のために必要なイレギュラーな業務が約200種類も存在するという楽天カード株式会社。
イレギュラーな業務は不定期に発生し、その都度、稼働中のカード決済システムを停止させることなく手作業で行わなければならないため現場は大きな負担を感じていました。
RPA導入による効果
多種多様な業務への適用と迅速な現場改善を理由に、楽天カード株式会社は現場の担当者によるワークフロー作成が可能なデスクトップ型のRPAツールを選択しました。
また、数多くの個人情報を取り扱っている現場への導入トラブルを未然に防ぐため、2ヶ月間のPoC(Proof of Concept=概念実証)を実施しました。
その結果、約200種類のイレギュラー業務の中からPC操作が中心となる12種類にRPAを適用することを決定。
約75%の削減効果を得ることに成功しました。
RPA活用のヒント
今回のRPA導入によって得たノウハウと、人間より遥かに早く、正確に大量のデータを扱えるというRPAの長所を活かし、楽天カード株式会社はRPAによる未来トレンドの予測に挑戦しているといいます。
ログ分析の対象データの増加に比例する形で分析精度は高まるため、RPAに対して膨大なデータを分析対象として与えることで未来予測のツールとして機能することに期待しているのです。
RPAにはまだまだ数多くの可能性が秘められています。
個々のRPAツールの特性や得意分野を最大限に活かすことにより、様々な場面で競争優位性を得ることが可能となるでしょう。
【参考】楽天カードがWinActorを導入。RPAで未来トレンドを手に入れた? | RPA 国内シェアNo.1 「WinActor(ウィンアクター)」 公式サイト|NTTデータ
現場主導によるRPAの導入で業務改革マインドを醸成 / 住友商事株式会社
住友グループの大手総合商社である住友商事株式会社。
同社の財務関連部署は、イギリスのBlue Prism社が提供している全社統括管理RPA「Blue Prism」の導入と運用を通じて業務改革マインドを醸成することに成功しました。
抱えていた課題
最新鋭のデジタル技術をビジネスに活用するため、全社横断的な検討委員会を設置した住友商事株式会社。
しかし、蓄積データの少ない現状のままではAIやIoT(Internet of Things)、ビッグデータの導入効果を満足に得ることが難しいため、それらの導入に先駆けて社内に数多く存在しているペーパーワークをデジタル化し、データの蓄積を行わなければならないことが発覚しました。
検討を重ねた結果、住友商事株式会社では現場主導によるRPAの導入を決定。
同社の財務関連部署は金融機関における採用実績やセキュリティレベル、直感的に操作できる開発画面などを採用基準に現場主導型の導入方針と相性の良いRPAツールを選択、導入することにしました。
RPA導入による効果
財務関連部署では2017年からRPA活用を開始。
翌年の2018年には50台以上のロボットによる年間2000時間以上の作業時間削減に成功しています。
RPA活用のヒント
大幅な効率化を実現させた住友商事株式会社の財務関連部署ですが、RPA導入によって得られたものはそれだけではありません。
RPAによるロボット化を通じて社員一人ひとりが真剣に業務全体の効率化という問題に向き合うことで、業務改革マインドを醸成することができたというのです。
セキュリティ意識やITスキルの不足などを理由に現場主導によるRPAの導入を敬遠する企業は少なくありません。
しかし、そのような企業であっても各端末上で可動するロボットを一元的に管理できるシステムと現場担当者が直感的な操作で扱える開発環境を兼ね備えるRPAツールを選択することで、業務効率化への興味を高め、業務改革マインドに刺激を与えることが可能となるでしょう。
【参考】住友商事/Blue Prism 専任組織を置き、使いやすい製品を選ぶ 成功事例にみる「現場主導のRPA活用」 - 日経ビジネスオンラインSpecial&日経 xTECH Special
災害による慢性的なマンパワー不足の解決を目指す / 熊本県宇城市
2016年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本県宇城市は、イスラエルのNICE Systems社が提供するRPA業務自動化ソリューション「NICE Advanced Process Automation」の導入によって慢性的なマンパワー不足の解決を目指しています。
抱えていた課題
2016年4月に九州地方で発生した熊本地震。
この地震によって大きな被害を受けた熊本県宇城市は、災害復旧や復興業務に関する業務の増加による慢性的なマンパワー不足に陥っていました。
RPA導入による効果
災害による業務量の増加やマンパワー不足を解決するための手段として日本国内で初めて自治体にRPAを本格導入することを決定した熊本県宇城市。
システム稼働は2019年4月を予定しているため現時点ではまだ効果が発生していませんが、職員給与やふるさと納税など6つの業務にRPAを導入することでマンパワー不足の解消と住民サービスの品質向上を目指しています。
RPA活用のヒント
中小企業を中心として多くの企業が抱える慢性的な人材不足問題。
この深刻な問題を経営陣や人事部の努力だけで解決するのは容易なことではありません。
RPAはただのロボットではなく、自ら考え、判断することができる仮想知的労働者(デジタルレイバー)です。
提携業務から非定型業務まで幅広く対応することができるRPAを組織内で最大限に活用することによって、働き方改革とリスクマネジメント戦略の強化を同時に図ることが可能となるでしょう。
【参考】国内初! 熊本県宇城市様がRPA本格導入で6業務を自動化、業務改革を目指す / 株式会社アイティフォー
RPAツールの適切な選択が導入効果を大幅に高める
前述したように、RPAツールの選択は導入効果に大きな影響を与えます。
以下の記事にて、事例で登場したRPAツールを含む13のRPAツールを紹介、比較していますので、自社に最適なRPAツールを検討する際にご活用下さい。
【関連】RPAツール比較13選【フリーソフトウェアもご紹介】/BizHint
まとめ
- RPAは業種や部門を問わず様々なビジネスシーンで活用されている
- RPAにより導入企業の97%が5割以上の業務工数削減を実現、、47%が完全自動化を達成した
- 自社の抱えている課題を明確にした上で、適切なRPAツールを選択、導入、運用することにより、導入効果の最大化を図ることができる
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