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ストレスチェックの集団分析を行うべき理由とは?分析方法や活用法など解説

BizHint 編集部 2017年12月14日(木)掲載
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個々の心理的負担の状況把握に役立つストレスチェックは、集団分析を通して「職場環境の改善」につなげることができます。現代人のストレス対策は、“個人”レベルでのアプローチのみならず、“職場”という側面からの改善策や支援も不可欠です。ストレスチェックの集団分析を実施して、組織の健康リスク低減に努めましょう。

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ストレスチェックの集団分析とは

平成25年12月より、労働者数50名以上の事業所で義務化されたストレスチェックは、個人のストレス状態を調べるための簡易検査です。しかしながら、従業員のストレス問題は個人の要因にとどまらず、その者を取り巻く職場環境に原因があることは少なくありません。

そこで、厚生労働省では法律上義務とされた個人を対象とするストレスチェックに加え、所属部署等の一定規模ごとにストレスチェックの結果を集計・分析し、職場特有のストレス要因を明らかにし、職場環境の改善の一助とすることを推奨しています。

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「努力義務」の意味

ストレスチェックの集団分析は、必ずやらなければならないことではなく、あくまで「努力義務」とされています。努力義務である以上、特段何も取り組まなくとも事業主の責任は果たせることになりますが、それだけではストレスチェックから得られる情報は半減してしまいます。

ストレスチェックによって判明した評価をさらに集団分析することで、職場を共有する従業員について、ストレスの傾向やその要因となり得る事項が浮き彫りにすることができます。個人レベルのみならず、職場全体に対して、ストレスを低減するための改善策を施すことができれば、会社としてのメンタルヘルス対策はより一層有意義なものになるでしょう。

集団分析の実施者

ストレスチェックによって得られた結果を、部・課、グループ等の集団ごとに分析し、その結果を事業主に提供するのは、ストレスチェックの実施者とされる産業医や保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士等です。

社内の実施担当責任者等と連携し、具体的な手法や実施後の職場改善計画について検討します。

集団分析の流れ

ストレスチェックの集団分析は、下記1~5の流れに従って進めていきます。

1.事前準備

集団分析に先立ち、まずは個人を対象とした通常のストレスチェックを実施します。ストレスチェックの趣旨や担当者を明らかにした上で、実施対象、時期、方法、面接指導対象の抽出方法と申出の流れ等、制度としてストレスチェックを導入するための具体的な事項をまとめ、社内で明文化します。取り決めた内容は労働者に周知します。

【関連】ストレスチェック制度とは?概要やチェックの流れ、罰則、助成金まで徹底解説/BizHint HR

2.ストレスチェックの実施

ストレスチェックを制度として確立し、社内に浸透させて初めて、労働者に対するストレスチェックを実施できます。対象者に専用の質問票への回答をもらい、それを実施者が回収・評価し、本人への通知を行います。

実施者により、「特に高ストレスである」と判断された者については、医師による面接指導が受けられるよう誘導できるのが理想です。

3.集団ごとの集計・分析

ストレスチェックの実施後、必要に応じて、部や課、グループ等の集団ごとの結果の集計・分析を実施者に依頼することができます。法律上の義務ではありませんが、政府では「努力義務」として、集団分析の結果を職場改善策の検討に役立てることを推奨しています。

4.事業者へ結果の通知

集団分析後、実施者より、集団分析の結果の提供を受けます。結果自体は個人情報を含むものではないものの、共有・閲覧の範囲は最小限に止め、集団に関わる情報の保護、不正利用の回避に努めるのが得策です。

5.職場環境の改善

ストレスチェックの集団分析を実施した結果、社内における部署ごとでの評価の比較を行い、高ストレス労働者を多く抱える集団について、仕事の量や質についての負担軽減、会社としての支援策を検討します。

ストレスチェックの集団分析を経ることにより、職場改善を必要とする集団に対してのアプローチが可能となるため、より効率的に働き方改革を進めることができるようになります。

集団分析を行うべき理由

個人を対象にした分析・評価を実施することで法的義務は果たされるストレスチェックですが、昨今の「働き方改革」の観点から言えば、集団分析まで行ってこそ意味があります。ここでは、集団分析を行うべき理由を2つ、紹介しておきます。

部署ごとの業務負荷状況を把握できる

部・課の単位で仕事の量や労働時間に偏りが生じていることをただ漠然と感じていたとしても、実情を目に見える形で示される機会はそう多くありません。

労働者の心理的負担状況を把握することで、集団ごとのストレスの傾向を発見できる可能性が高く、業務量や人員の調整、業務手順の見直し等を検討する際に役立ちます。

机上の空論ではない、本当に必要な職場改善を施すことができる

時間外労働の上限規制の導入予定、生産性要件の向上による助成金の割増支給等の影響もあり、最近では進んで「働き方改革」に乗り出す企業が増加傾向にあります。しかしながら、実際にはどこの会社も未だ手探り状態であることが多く、ともすれば現場を知らない上層部によって的外れな施策が検討されているケースを散見します。

ストレスチェックの集団分析の結果を活かすことで、職場改善が必要な部署を明確にすることができるため、より実情に合った形での働き方改革が可能になります。

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仕事のストレス判定図を用いた集団分析の方法

ストレスチェックに用いる調査票や、集計・分析の具体的な手段については任意となっており、その手法に応じて集団分析の方法も異なります。ここでは、厚生労働省が公開する「職業性ストレス簡易調査票」及び簡易版を用いた場合を想定し、併せて政府により推奨されている「仕事のストレス判定図」を用いた集団分析の方法を紹介します。

仕事のストレス判定図とは

対象となる集団に属する労働者のストレスチェックの回答から平均値を求め、その数値を判定図に落とし込み、仕事上のストレス要因とその度合い、そこから予想される労働者の健康問題のリスクの程度を評価する方法です。

職業性ストレス簡易調査票にある「仕事の量的負担」「コントロール」「上司支援」「同僚支援」の4観点について、それぞれ集団における平均値を算出し、判定図上で標準集団(全国平均)と比較します。

仕事のストレス判定図は、後述する「量一コントロール判定図」と「職場の支援判定図」の2つで構成され、それぞれ男女別に用意されています。

【出典】厚生労働省:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

量―コントロール判定図

仕事のストレス判定図のうち、「仕事の量的負担」「コントロール」の尺度から作成されるのが「量一コントロール判定図」です。仕事量とそれに関する裁量権のバランスを判定します。前掲上段の図です。

職場の支援判定図

仕事のストレス判定図のうち、「上司支援」「同僚支援」の要因が落とし込まれるのが「職場の支援判定図」です。職場において、上司と同僚それぞれから受けられる支援の状況とバランスが明らかになります。前掲下段の図です。

1.対象とする集団を選定

まず、ストレスチェックの集団分析を行う対象を検討します。同じ職場環境で勤務し、なおかつ業務内容や量についてある程度共通する集団であることが望ましく、一般的には部もしくは課の単位とされています。

2.4つの尺度から得点を算出

職業性ストレス簡易調査票の「仕事の量的負担」「コントロール」「上司支援」「同僚支援」について、各労働者の得点を計算します。各項目について「そうだ/非常に=4点」「まあそうだ/かなり=3点」「ややちがう/多少=2点」「ちがう/全くない=1点」に換算し、各3項目、計12項目について算出します。

3.得点の平均値を計算し、判定図に落とし込む

労働者ごとに算出した得点を元に、4つの得点について集団の平均値を計算します。得られた平均値を量一コントロール判定図、職場支援判定図のそれぞれに落とし込み、縦軸と横軸が交わる箇所に印をつけます。

4.判定図上で標準集団(全国平均)と比較

標準集団(全国平均)を100と想定し、マークの位置との比較を行いましょう。健康リスクが130の線上にあれば、全国平均と比較して30%ほど、健康上の問題発生の可能性が高いことを表しています。

また、縦軸と横軸のバランスを見ることでも、職場改善の手掛かりを得ることができます。非常にシンプルな図の中で、「仕事量に対して自由度が低い」、「上司からの支援が少ない」等、その職場特有の問題が浮き彫りになるケースは珍しくありません。

注意事項

仕事上のストレス判定図を用いた集団分析では、比較的簡易な図からの評価となることから、その分析についても簡単に考えられがちです。しかしながら、実施の際には下記の注意点に留意する必要があります。

判定図に記載されている以外のストレス要因についても考慮する

ひと口に「ストレス」といっても、その種類は様々であり、背景にはあらゆる要因が潜んでいます。判定図から把握できるのは特定の尺度からの評価であり、その結果を以てストレスに伴うリスクを総合的に判断できるものではありません。

仕事上のストレス判断図から得られる結果は一つの指標としつつも、分析を行う上ではその他の情報について考慮する必要があります。例えば、職場の人間関係や賃金体系、待遇等の要素によって、仕事上感じられるストレスの度合いは大きく変わるでしょう。判定図の結果と併せて関係者へのヒアリングや職場巡視を行い、より適切な職場改善策を検討できるのが理想です。

産業保健スタッフと相談しながら行うことが望ましい

現場の実情をよく知る人間だけでの分析では、どうしても得られた評価に対して偏った見方になりがちです。専門的な知識を有する第三者を交えて実施することで、より職場の状況を客観的に捉えることができます。また、集団分析の評価を受けて職場改善策を検討する段階においても、ノウハウを有する産業医、衛生管理者、心理カウンセラー等の産業保健スタッフを交えることで、現場に活きる改善案を導き出すことが可能となります。

集計人数が少ない場合

ストレスチェックの集団分析を行う際には、個人特定の危険性を考慮しなければなりません。

10人未満単位での集計・分析の結果を事業者に提供する場合には、対象となる労働者全員の同意が必要です。同意がある場合であっても、「2名程度の少人数についての集計・分析は不適切である」旨が厚生労働省のマニュアルに明記されています。

【参考】厚生労働省:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

集団分析の結果を職場環境の改善に活用する

ストレスチェックの集団分析から得られる結果は、職場環境の改善策を検討する際に役立ちます。もちろん、分析結果のみから改善計画を導き出すことは難しく、実際には職場に応じた対応が不可欠ではありますが、ここでは職場環境改善案として代表的な例を紹介します。

【参考】厚生労働省:職場環境改善のためのヒント集

労働時間の削減

一般的に、長時間労働が恒常化している労働者にこそ、高度のストレスを抱える者が多いとされています。長時間労働によってプライベートな時間や睡眠時間が減少すれば、肉体的な疲労の蓄積も相まって、精神面で追い詰められた状態に陥ります。そうなれば当然、精神的なストレスの度合いは高まります。

労働者がストレス解消のための時間を十分に確保できるよう、労働時間の削減に取り組むことが、労働者のメンタルヘルス対策の第一歩となります。

【関連】長時間労働の原因とは?削減に向けた対策・厚生労働省の取組をご紹介/BizHint HR

勤務体系の見直し・多様化

さて、労働者の休息を確保する目的として「労働時間の削減」を掲げたとしても、やみくもに働く時間の制限に乗り出そうとすれば、そこには必ず弊害が生じます。会社に申告できないサービス残業が生じる、仕事の質や仕事への意識が低下する等の悪影響が出ることは、労働者及び組織にとって決して好ましくない状況です。

既存の勤務体系の見直しを行うことにより、本当に必要な時間・場所に必要な労働力が備わっているかどうか、職場風土としてダラダラ残業することが恒常化していないか、深夜・早朝労働による過重負担が特定の集団に集中していないか等の点検を行いましょう。抽出された課題を元に、改めて適正な勤務体系を検討していけば、労働時間に関わる改善は円滑に進みます。

有給休暇取得の推進

労働時間の削減とは、労働者に休暇を取ってもらうことと同義です。そのための施策として真っ先に頭に浮かぶのは「有給休暇取得奨励」ですが、現状を鑑みれば、特に中小企業においてはそう容易いことではないでしょう。

労使双方にとって使い勝手の良い有給休暇制度となるよう、「時間単位での取得を奨励する」「有給取得奨励日を設定して計画的な付与を促進する」等の工夫を凝らす必要があります。

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/BizHint HR

個人の負担軽減

日本企業における特徴の一つに、「仕事の属人化」が挙げられます。「属人化」とは文字通り、ある業務についてその人にしか分からない、取り組めない状態にあることを指します。仕事の属人化が続く限り、個人の負担軽減は実現しません。

業務については可能な限り「いつでも、誰でも取り組める仕組み」を構築し、特定の個人に業務負担が集中しないようにすることが肝心です。

【関連】多能工化の意味とは?メリット・デメリットと進め方/BizHint HR

業務内容の見直し

個人や部・課、グループに業務上の負荷がかかっていることが明らかになれば、その部分の業務内容の見直しを行うことで、状況の改善を図ることができます。対個人では前述の通り、仕事が属人化しない様、労働者間にノウハウを共有する意識作りをした上で「業務をマニュアル化・仕組化する」等の見直しが必要になります。

部・課、特定のグループへの負荷が問題視される場合には、「業務や組織を統廃合する」「部・課等への業務の割り振りを変更する」等、極力負荷を分散させる工夫を検討します。

人員補充

特定の個人や部・課に負担がかかり過ぎている原因が「人手不足」にある場合、たとえ業務改善を行ったとしても、その効果はさほど期待できないでしょう。その場合には適切なところにマンパワーを投入し、業務にあたる人員を増やすことが最善の策となります。

業務の性質上、繁忙期と閑散期が明確であれば、有期雇用の契約社員を活用することで、人件費の継続的な高騰を避けることができます。

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人材育成

どんな仕事に取り組むにせよ、ストレスはつきものです。ストレス軽減のための職場環境改善を行ったとしても、ある問題から受けるストレスの程度には、個人の捉え方や考え方が大きく関係します。

昨今、長い職業生活の中で労働者がストレスと上手く付き合っていけるよう、人材育成の一環として「ストレスマネジメント」に関わる研修を実施する企業が増加傾向にあります。労働者個々がストレスへの対処法や、ストレス耐性を高めるためのノウハウを習得することで、組織全体を強靭にしていくことが可能となります。

【関連】 ストレスマネジメントの意味とは?個人・組織別の対策方法~研修までご紹介/BizHint HR

労働環境の見直し

職場は、労働者が一日の大半を過ごすことになる大切な場所です。働く人が安心かつ快適に過ごせるよう、労働環境の見直しを行うことで、労働者のストレス軽減につなげることができます。

作業環境の改善

空調や照明、音等の基本的な環境が、現状、労働者にとって快適な状況と言えるでしょうか?単体で考えれば些細な違和感でも、毎日の積み重ねによって大きなストレスとなることがあります。作業環境が労働者にとって過ごしやすい空間となるよう、十分配慮しましょう。

加えて、受動喫煙の防止や、化学物質等の有害物質からの隔離、衛生的な環境の保持、休息場所の確保等、人体への影響を考慮した職場環境作りも不可欠です。

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風通しのよい職場づくり

厚生労働省の調査によると、「職場において強いストレスとなっていると感じている事柄」について、「対人関係(30.5%)」は「仕事の質・量(53.8%)」に次いで2番目に多い回答となっています。

上司や同僚に相談しやすい環境作りや、職場における連携作り、相談窓口の周知等に努めることで、悩んだ時に労働者が一人で抱え込むことのない環境の実現を目指すことが求められています。

【参考】厚生労働省:平成28年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況

【関連】 社内コミュニケーション活性化の方法と事例をご紹介!/BizHint HR

評価制度の見直し

ひと昔前と比較すれば、最近では、成果に応じた評価制度の導入が広く進められるようになりました。しかしながら、依然として多くの会社で、労働時間と賃金とが密接に関係しているケースを散見します。このような場合、満足な収入を得るためには長時間労働が不可避となり、過重労働による労働者の精神的ストレスは増していくばかりです。

労働者のストレスを軽減し、前向きに働いてもらうために、能力や成果が適切に評価に反映される制度作りを進めましょう。

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まとめ

  • ストレスチェックの集団分析は法律上の実施義務はないものの、職場特有のストレス要因を明らかにし、職場環境の改善の一助とすることが、事業主の努力義務となっています。
  • ストレスチェックの集団分析では、通常のストレスチェック実施後、結果を集団ごとに集計・分析し、そこから得られる評価から集団が抱える課題を検討します。
  • ストレスチェックの集団分析に用いる「仕事のストレス判定図」では、「仕事の量的負担」と「コントロール」の尺度から作成される「量一コントロール判定図」と、「上司支援」「同僚支援」のバランスから成る「職場の支援判定図」の2つの図を用います。全国平均を100としたときのマークの位置から、評価・分析を行います。
  • ストレスチェックの集団分析の結果を元に、職場環境の改善策を検討します。例えば、労働時間を削減するために勤務体系を見直したり、個人の負担軽減のために業務内容を再検討したり、労働環境を改善したり等、評価から分かることを元に実態に応じた施策の検討が望まれます。

<執筆者>
丸山博美 社会保険労務士(HM人事労務コンサルティング代表)

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。一般企業(教育系)勤務時代、職場の労働環境、待遇に疑問を持ち、社会保険労務士を志す。2014年1月に社労士事務所「HM人事労務コンサルティング」を設立 。起業したての小さな会社サポートを得意とする。社労士業の傍ら、cotoba-design(屋号)名義でフリーライターとしても活動中。


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