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2018年11月18日(日)更新

ストレスチェック

2015年12月にストレスチェック制度が施行され、ストレスチェックの実施が義務化されました。義務化から数年たちましたが、実施方法やルールがよくわからずに困っている担当者はまだ多いのではないでしょうか?実施計画や準備するもの、費用など担当者が押さえておくべきポイントはいろいろあります。今回は、ストレスチェック制度で知っておきたい規定をはじめ、効率的に行うための進め方や自社に適した実施者の選び方など、ストレスチェックの完全対策マニュアルをお届けします。

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目次[表示]

ストレスチェック義務化について

労働安全衛生法の一部が改正され、2015年12月1日に「ストレスチェック制度」が施行されました。国が義務化を決めた背景には、どのような問題が挙げられるのでしょうか。

ストレスチェック制度の概要

ストレスチェック制度は、 長時間労働や職場環境による労働者のメンタル不調を予防し、かつ、精神的健康を保持増進するために設けられた新たな取り組み です。

近年の日本では、バブルの崩壊、ITの急成長によって経済状況や労働環境の急激な変化がおこり、労働者のメンタルヘルスの悪化が社会問題になっています。厚生労働省が毎年公表する精神障害による労災補償の請求件数は年々増加しており、2014年度(平成26年度)には過去最高の1,456件になりました。

このような状況を受けて、労働者の心身の健康を確保するため、労働者自身がセルフケアを行いストレスマネジメントの向上を促すこと、職場環境を改善し労働者の心理負担を軽減させることを目的に設立されました。現在では、企業のメンタルヘルス対策を後押しするための支援制度としてストレスチェック助成金も存在しています。

【参考】厚生労働省労働基準局補償課 職業病認定対策室過労死等の労災補償状況

【関連】ストレスチェック制度とは?概要やチェックの流れ、罰則、助成金まで徹底解説 / BizHint
【関連】平成29年度のストレスチェック助成金は?要件や申請方法などもご紹介 / BizHint

3つの義務

ストレスチェック制度では、事業者に対して3つの事柄を義務付けしています。

ストレスチェックの実施

会社は、常時使用する労働者に対して、医師、保険師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を定期的に実施することが義務付けられました。ストレスチェックを実施することで、労働者のストレス状況について把握することができ、労働者本人にも自らのストレス状況についての気づきを促すことができます。

結果に基づく医師の面接指導

ストレスチェックの結果、「高ストレス」など一定の要件に該当し、労働者から申し出があった場合は、医師の面接指導を実施する義務があります。事業者は医師の意見を聴取したうえで、必要な場合は勤務時間を制限するなど就業上の措置を講じなければなりません。

結果の集団ごとの集計・分析(努力義務)

事業者は、ストレスチェックの結果を受けて、職場のストレスの状況、その他の職場環境から、改善の必要性が認められる場合には、集団ごとに分析を実施し、その結果に基づき職場環境の改善を実施することも努力義務とされています。

努力義務とはいえ、万が一、労災事故などが起きた場合には、ストレスチェックで問題を把握していることから、集団分析による職場環境の改善が実施されていたなら事故が防げたとされる場合には、使用者責任が問われることになり得ます。ストレスチェックの実施のみにとどまらず、可能な限り、集計・分析もすべきでしょう。

義務化の対象範囲

ストレスチェック制度でまず知っておきたいのが、義務化の対象範囲です。対象の考え方は2つあります。ひとつは対象となる事業場の範囲、もうひとつは各事業場でストレスチェックを受けてもらう対象者の範囲です。

厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」(2016年8月4月改訂版)から、重要ポイントを解説していきます。

対象企業

ストレスチェックの義務が生じるのは 「常時50人以上の従業員がいる事業場」 です。ここでいう「常時50人以上」とは、正社員だけでなく、アルバイト・パート、派遣社員も含めて常態的に働いている人数をいいます。週1回程度のアルバイトであっても、継続して雇用し、常態として使用している状態であれば、従業員の数に含まれます。また、仮に派遣社員が20名、自社の雇用者が30名といったケースでは、50人以上となるため、実施対象企業となります。

また、「常時50人以上」は、事業場単位で数えます。事業場とは、事業所や支店、店舗など同一の場所にある職場をさします。たとえば、本社に50人、事業所に20人という場合には、義務が発生するのは本社のみとなります。50人未満の事業場は、努力義務としてメンタルヘルスの取り組みが推奨されています。ただし、事業場が違うといっても同じ会社であることを考慮すると、すべての対象者が受検できる体制をとるほうが望ましいといえるでしょう。

対象者

上記のストレスチェック制度対象企業となる基準の「50人以上」と、実際にストレスチェックの対象者となる労働者は異なります。混乱しやすい部分ですが、ストレスチェックの対象者は一般健康診断と同様で、 「期間の定めのない雇用契約を締結する労働者」に加え、「期間を定めて雇用される労働者(有期契約労働者」のうち、契約期間が1年以上または契約更新で1年以上の雇用となっている従業員とされています。 また、1週間の労働時間が、同業種の社員の4分の3以上になる場合はアルバイト・パートであっても対象となります。

派遣社員については、派遣元企業がストレスチェックの義務を負います。派遣先となっている企業には実施義務はありませんが、職場全体として環境改善をはかる観点から、実施することが望ましいとされています。

頻度

ストレスチェック制度の実施については、 1年以内ごとに1回、定期的に実施 することが定められています。実施時期の規定はありませんが、経年変化を確認しやすくするためにも、毎年同じ月に実施するほうがよいでしょう。衛生委員会などで審議したうえで、1年以内に複数回実施することや、ストレスが高まっていると感じられる繁忙期に実施することも可能です。

ストレスチェックの実施と共に、 毎年1回の労働基準監督署への報告義務もあります 。労働基準監督署への報告書の提出期限は、各事業場の事業年度終了後など、事業場ごとに設定してよいとされています。

ストレスチェックの目的

「ストレス社会」といわれる現代は、様々なストレスが原因となってメンタルヘルスの不調を訴える労働者が増加しています。

労働者のメンタルヘルス不調の未然防止

うつ病や気分変調症と診断された患者数は、平成14年頃から増加の一途をたどっています。

【出典】厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課 職場におけるメンタルヘルス対策の推進について

また、平成25年の職業別及び原因・動機別自殺者数では、原因・動機特定者のうち、勤務問題を原因とするのは2,323人(11.5%)となっています。

【出典】厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課 職場におけるメンタルヘルス対策の推進について

これまでメンタルヘルス不調の者に対しては、「二次予防」とよばれるメンタルヘルス不調者の早期発見→適切な対応という対策や、「三次予防」とよばれる職場復帰支援など、何かが起こってから対策をたてるという後付けの対応が基本とされてきました。

しかし、精神障害の労災補償件数が3年連続で過去最高を更新するなど、深刻な状況をうけ、今回初めてメンタルヘルス不調を未然に防止する観点から「一次予防」を目的として「ストレスチェック制度」が創設されました。ストレスチェックを行うことで、うつ病など重篤化する前に未然に気づきを得て、対策を講じることができるとされています。

【参考】精神障害の労災補償件数の推移と主なできごと/こころの耳

職場環境の把握と改善

ストレスチェックによって、メンタルヘルス不調者の早期発見ができた場合には、なぜメンタルヘルス不調が起きてしまったのか、という原因を探ることで職場環境を把握することにも役立ちます。

人間関係に対するストレスなのか、労働時間に対するストレスなのか、または業務とは関係のない家庭環境によるストレスなのか、原因を探ることは、その対象者はもちろん、同じ業務に携わる他の労働者の職場環境の改善にもつながります。

労働生産性の向上

労働者が何らかのストレスを感じている場合には、作業効率が下がり、労働生産性の低下につながります。不調を抱える労働者を放置したことで症状が悪化し、うつ病などの心の病気になった場合には、休職・退職となり、会社にとって大切な従業員を欠くことで円滑な経営ができなくなる恐れもあります。

ストレスチェックを行うことで、早期にメンタルヘルス不調者を発見し、事前に業務量のバランスを再考するなどの手段を企てることもできます。過労死などの最悪な結果になる前に「気づき」を得ることは、安定して業務を遂行できる職場環境を維持することができ、長期的な観点で労働生産性の向上にもつながります。

ストレスチェック実施の流れ

ストレスチェックは、いつまでに何をすればよいのでしょうか?はじめに全体的な流れを把握しましょう。担当者だけでなく、従業員にとっても戸惑うことが多いといわれるストレスチェック制度。スムーズに進めていくには、事前に実施計画を立てておくことが重要です。

導入準備

上記の図で示しているように、ストレスチェックを実施するに当たり、事業者はまず、実施方法の検討を行います。

ストレスチェックについては、事業主自らが行うことができないため、社内担当者を選任し、その人を中心に、社内で実施するか、外部機関に委託するかなど、どのようにストレスチェックを実施するかを検討します。

実施方法の策定

実施方法の策定は、衛生委員会などを開催し、審議を行い、ストレスチェック制度の実施方法を検討していきます。検討を進めると共に、ストレスチェックを円滑に実施するための体制の整備として、就業規則などに規程を作成していきましょう。導入準備をいかに整えられるかによって、効率的な運用をできるかどうかが左右されます。詳細は後の「ストレスチェック実施前に決めておくべきこと」で解説します。

方針の表明

実施方法が決定すると、次はストレスチェック制度に関する基本方針を表明します。

具体的には、これからストレスチェックを実施する旨を文書で作成し、社内に公表・周知します。周知する内容については厚生労働省の定型マニュアルはありませんので、社内で周知内容を検討し、作成します。以下の内容は盛り込んでおくと良いでしょう。

  • ストレスチェックを実施するという表明
  • 実施の目的
  • 実施時期
  • 実施者(外部に委託する場合は、委託先事業者の詳細)
  • 社内の実施事務従事者
  • 実施方法
  • 高ストレス者に対する面談方法
  • ストレスチェック結果の記録の保存方法
  • 個人情報の保護について

実施

ストレスチェックの中身はどのようになっているのでしょうか?調査票の内容や実際の手順を紹介します。

ストレスチェック実施・評価

ストレスチェックは対象者に調査票の質問に答える形で記入、または入力してもらいます。質問項目は以下の3つの領域を含むよう規定されています。

  • 仕事のストレス要因
    職場において心理的な負担となっている原因に関する項目
  • 心身のストレス反応
    心理的な負担を受けたことで生じる心身の自覚症状に関する項目
  • 周囲のサポート
    職場において他の労働者からの支援に関する項目

【 厚生労働省が推奨するのは「職業性ストレス簡易調査票」】

質問項目は3つの領域を含んでいれば特に指定はありませんが、独自に項目設定する場合は、一定の科学的な根拠が必要とされています。

厚生労働省では57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」を用意しており、こちらの利用を推奨しています。これを簡略化した23項目のタイプもあり、どちらを使用してもかまいません。何を使えばよいのかわからないという場合は、国が推奨する調査票を使うのがお勧めです。

結果の告知

ストレスチェックについては、結果の通知にも注意が必要です。個人情報保護の下、 労働者本人の同意がなければ事業主に結果を通知することは許されません。 ただし、産業医については、労働者の同意がなくとも結果を知ることができるとし、面接指導対象となる労働者を呼び出し、指導することができるとされています。

実施後

ストレスチェック制度は、「実施すれば終わり」というものではありません。結果を受けたあと、改善に向けて取り組むところまでが事業者の義務となっています。

面接指導の実施

高ストレスで医師の面接が必要と判定された労働者は、結果が通知されてから1カ月以内に面接の申し出を行うことができます。面接指導の申し出を受けたら、事業者はおよそ1カ月以内に、面接指導を実施しなければいけません。面接指導は、法により事業者の義務として制定されているため、費用は事業者が負担することになっています。健康保険制度による保険診療では行えないことも留意しておきましょう。医師と実施日時を調整するときは、原則として就業時間内に設定するのがよいとされています。

ただし、面接指導が必要と連絡を受けても、申し出をするかどうかはあくまでも本人の意志が尊重されます。とはいえ、事業者にとっても労働者にとっても、そのまま放置してしまうのはリスクを伴います。できるだけ労働者が申し出をしやすいよう、相談窓口を設けるなどの環境づくりも重要になってきます。

【関連】ストレスチェック後の面接指導について。対象者、実施者、流れなど解説/ BizHint

就業上の措置・職場環境の改善

面接指導が実施されたあとは、遅くても1カ月以内には医師の意見を聴き、必要と考えられる就業上の措置をとる必要があります。勤務時間を制限する、就業場所を変えるといったことが挙げられますが、労働者の不利益につながらないように、十分に話し合って理解を得ることが大切です。

事業場全体、部やグループ単位といった集団分析の結果は、事業者も見ることができます。使用する調査票やプログラムによっても異なりますが、厚生労働省の調査票を利用した場合は「ストレス判定図」から仕事の量的な負担、コントロールによる負担、支援状況によるストレスなどがわかります。

集団分析は努力義務とされているので、必ず実施しなければいけないということではありませんが、企業の健全さを維持して成長につなげていくためにも、職場環境の改善に生かすべきことと考えましょう。

【関連】ストレスチェックの集団分析を行うべき理由とは?分析方法や活用法など解説/Bizhint

労働基準監督署への報告

ストレスチェックを実施した後は、結果を労働基準監督署へ報告する必要があります。提出する書式は定められており、以下の事項を報告します。

  1. 対象年・検査実施年月日
  2. 在籍労働者数
  3. 検査の実施者
  4. 検査を受けた労働者数
  5. 面接指導を実施した医師
  6. 面接指導を実施した労働者数
  7. 集団分析実施の有無
  8. 産業医の記名・押印

これらを1年に1度は報告する必要があり、年に複数回ストレスチェックを実施している場合にはまとめて1年分を提出すればよいとされています。

実施時の注意点

ストレスチェック制度では繊細な情報を取り扱うため、労働者への配慮が大変重要になります。以下の2つについて、事業者は特に注意しなければいけません。

プライバシーの保護

労働者のストレスチェック結果は、本人の同意なしに事業者が閲覧することはできません。また、個人情報を取り扱う実施者、実施事務従事者には守秘義務があるため、違反した場合には刑罰の対象となります。

従業員の不利益となる扱いは禁止

面接指導の申し出をした労働者や、ストレスチェックを受けない労働者などに対し、不利益な扱いをすることは禁じられています。また、面接指導の結果を受けて、これを理由に解雇や雇い止め、不当な配置換え、職位の変更などを行うことも禁止されています。

ストレスチェック実施に必要な人員体制

ストレスチェック制度を効率的に推し進めるには、事前に手配しておく人を定めることが必要です。ストレスチェックの実施に必要な人と、それぞれの役割は以下のようになります。

社内担当者

ストレスチェック制度の実施計画をつくり、従業員への周知など全体の管理を行います。実施者や面接指導をする医師の手配も含めた全体運用の役割を担います。

実施者

ストレスチェックを実施する人です。ストレス程度の評価を行い、医師の面接指導が必要かどうかも含めて判断し、結果を本人に通知します。また、ストレスの評価基準を決める際にもかかわります。

実施者は、

  • 医師
  • 保険師
  • 一定の研修を経た看護師
  • 精神保健福祉士

この4業種の者だけが実施できるとされていましたが、2018年8月の労働安全衛生規則の改正によって、今後は歯科医師や公認心理士も対応できることとなりました。

自社に保健師など条件を満たす人がいる場合は実施者に選任できますが、いない場合は外部に委託することもできます。実施者の選任先それぞれにメリットや注意点がありますが、まず大切なのは「自社にとってマストな要件は何か」を整理しておくことです。委託したい範囲がわかれば、自社に合った選択ができるようになります。

選任の一例としては、以下が挙げられます。

現在契約している産業医を「実施者」に選任する

従業員が50人以上いる事業場では産業医の選任が義務化されているため、ストレスチェックの義務がある事業場には産業医がすでにいる前提です。日頃から社内の状況を知っている産業医であれば、ストレスチェックの実施やその取り決めに関してもスムーズに打ち合わせが進みやすいというメリットがあるでしょう。ただし、必ずしも引き受けてくれるとは限りません。お願いしたい場合は、早めに打診しておきましょう。

費用については、産業医契約とは別に、ストレスチェック実施者として新たに発生します。従業員数、内容によって見積もりが変わるため、事前に確認しておく必要があります。

外部機関に「実施者」を委託する

ストレスチェックに関するサービスを提供している外部機関に委託するのも選択肢のひとつです。外部機関には、ICT(質問票への回答・集計機能など)のみを提供しているところと、実施者や実施事務従事者、面接指導まで請け負っている機関があります。どこからどこまでを委託するかは、自社のリソースや予算に照らし合わせた検討が必要です。

費用は、従業員数によって設定しているところが多いようです。ストレスチェック実施のみの費用相場は、 Web利用の場合、従業員数200名で1名あたり600円程度、紙の調査票を使用する場合には1,100円程度 となっています。ただし、委託業者によって、費用に含まれる内容が異なるため注意が必要です。単に料金だけで比較するのではなく、自社に必要な機能や役割を持っているかを確認したうえで選ぶと失敗が少なくなります。

定期健康診断を行っている医療機関に「実施者」を委託する

定期健康診断を行っている医療機関でも、ストレスチェックを実施しているところがあります。ストレスチェックの対象者は健康診断の対象者と同じであるため、健康診断のときと一緒に受検できるというメリットがあります。ただし、健康診断とストレスチェックは目的や取り扱いが違うことを、事前に労働者に周知しておく必要があります。

費用の相場は、ストレスチェック実施のみの場合で、 1人あたり400~600円程度 になっています。医療機関によって異なりますが、医師の面接指導や集団分析なども受け付けています。集団分析や医師の面接指導をお願いする場合は、別途費用がかかります。

実施事務従事者

実施者の指示を受けて、実施者を補助する役割を担う担当者です。調査票の回収や結果通知にかかわる業務等を行います。ここで注意しなければならないのは、「解雇、昇進、異動にかかわる直接の権限を持つ人」、つまり、人事権を持っている人を実施事務従事者に選んではいけないということです。

これは、結果や受検の有無が労働者の不利益になってはならないという観点から規定されています。この業務では個人情報を取り扱うため、守秘義務を踏まえて担当者を慎重に選ぶ必要があります。

面接指導をする医師

ストレスチェック実施後に、高ストレスの労働者を面接指導する医師のことを指します。社内の状況を把握しやすいという点から、会社で選任している産業医が推奨されていますが、別の医師に依頼してもかまいません。それぞれの人は、条件を満たしていれば兼任することも可能です。

ストレスチェック実施前に決めておくべきこと

従業員にストレスチェックを受けてもらう前に、会社としての方針や社内規程を作成・表明しておく必要があります。実施時や実施後の混乱を避けるためにも、事前に衛生委員会を開催し、以下の内容を決めておきます。

【衛生委員会とは】

衛生委員会とは、労働安全衛生法に基づき定められた制度です。労働災害を防止するための取り組みを労働者・使用者が一体となって行うことが目的で、毎月1回以上開催することとされています。

義務となる事業場は、業種にかかわらず、常時50人以上の労働者を使用する事業場とされています。

衛生委員会のメンバーは、以下の者を事業者が指名します。

  • 統括安全衛生管理者または、事業の実施を統括管理する者もしくは準ずる者
  • 衛生管理者
  • 産業医
  • 事業場の労働者で衛生に関して経験を有する者

ストレスチェックを円滑に実施するためには、衛生委員会をこれまで以上に活用し、内部規程の策定、審議から制度が適切に運用されているかの継続的な検討の場としての役割が求められています。

1.実施方法の決定

厚生労働省の指針では、衛生委員会でストレスチェック制度の実施方法を調査審議することが求められています。

具体的な事項は以下のとおりです。

  1. ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
  2. ストレスチェック制度の実施体制
  3. ストレスチェック制度の実施方法
  4. ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
  5. ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
  6. ストレスチェック結果の記録の保存方法
  7. ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
  8. ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
  9. ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
  10. 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
  11. 労働者に対する不利益な取扱いの防止

【参考】労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル/厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室

2.実施者・実施事務従事者などの選定

実施前に決めておく内容として重要なのが、ストレスチェックを実施・評価・通知する「実施者」と、これを補助する「実施事務従事者」の選任、高ストレス者への「面接指導をする医師」を決めることです。

社内担当者がひとりでこれらの人員の選定をすることは厳しいため、衛生委員会で協議を進めていくことが望ましいでしょう。

3.高ストレス者の選定基準

高ストレス者の選定については、厚生労働省が一定の評価基準を示しており、自覚症状がある「心身のストレス反応」の評価値が高い労働者が選ばれることになります。しかし、厚生労働省の基準では、一般的な評価となっているため、過度の労働が常態化し、自覚症状がない不調程度の労働者は見落としてしまう恐れがあります。

そこで、実施者が個々のストレス程度の評価をするにあたって、事業場の業務内容を考慮してどの状態を高ストレスと認定するかといった判断基準を事前に設けておく必要があります。実施者や産業医の意見を聴取しながら事業場ごとに基準を定める必要があります。

4.面接指導の方法

高ストレス者から面接指導の申し出があったときに、どの医師に依頼するのかを決めておきます。また、申し出をした労働者が面接指導の対象者かどうかを確認する方法についても、あらかじめ社内規定として定めておきましょう。労働者からストレスチェック結果を提出してもらうなど、事前に方法を決めておくとスムーズです。

5.集団分析結果の利用方法

職場やグループ単位などで行う集団分析は努力義務となっていますが、せっかくなら分析結果を職場環境の改善に活かしたいところです。どのように利用するのか、開示範囲をどこまでとするかなど、結果の利用方法も事前に決めておくとよいでしょう。ただし、10人未満の事業場の場合、個人が特定される可能性が出てくるため、全員の同意がない限り、結果の提供を受けることはできません。

ストレスチェックのプログラムについて

ストレスチェックの実施には、事業者が円滑に制度を導入できるよう、ストレスチェックの受験・結果出力・集団分析ができる「プログラム」が用意されています。

厚生労働省のプログラムを利用

厚生労働省が提供する「ストレスチェック実施プログラム」のサイトから、ストレスチェックに利用できるプログラムを無料でダウンロードできます。

https://stresscheck.mhlw.go.jp/

主な機能は以下の通りです。

  1. 57項目の調査票と23項目の調査票の2パターンから選択できる
  2. 紙の調査票で実施したあと、データをインポートすることも可能
  3. 受検状況を管理できる
  4. あらかじめ判定基準を設定しておくと、自動的に高ストレス者を判定できる
  5. あらかじめ部やグループ単位を設定しておくと、集団分析ができる
  6. 労働基準監督署に報告する情報を表示できる

最低限必要な機能を無料で利用できるので、ストレスチェックを自社で手配したい場合は手軽な方法といえるでしょう。また、外部機関に実施者を委託した場合でも、ストレスチェックにはこのプログラムを利用しているという機関もあります。

ただし、スマートフォンやタブレットには対応していないなど動作環境に制限があるので、自社の環境に適しているか事前に確認しておきましょう。

外部機関のプログラムを利用

ユーザーの使い勝手を考慮した実施プログラムを用意している外部機関もあります。より便利な機能を求めているときはチェックしておくとよいでしょう。提供者によって異なりますが、たとえば以下のような機能が提供されています。

  • PC・スマホ・タブレットいずれからでも受検可
  • 英語版の提供
  • 未受検者にリマインドメールを送付
  • 気になったときにストレス程度をセルフチェックできる仕組み
  • 面接指導の勧奨

担当者にも受検者にもメリットのある機能がいろいろありますが、初期導入費用や月間利用料などが別途かかるケースもあるので、導入を検討するときは確認しておきましょう。事業場によっては、ひとり1台のPCを持っていないなどWebで受検することが難しいケースもあります。紙の調査票で受検したものをWebに反映できるかなど、機能面の確認も必要です。

外部委託といっても何を基準に選べは良いのかわからない、という場合には、無料体験期間を用意してあるサービスでお試ししてみることをお勧めします。

NEC VALWAY

NEC VALWAYでは、1ヵ月間無料のお試しで使ってみることができます。同業種と比較したストレス状況の分析データの提供から産業医の紹介、結果をうけての職場環境改善支援サービスまで専任スタッフがサポートしてくれるため何から始めればよいのかわからないという会社にはとても助かるサービスになっています。

【参考】NEC VALWAY

STRESS CHECKER

株式会社HRデータラボが運営する「STRESS CHECKER」では、無料プランも用意されており、社内の実施事務従事者が管理画面から操作して運用するプランがあります。どのような制度なのかまだよくわからず、いきなり多額の費用をかけたくないという場合には、自社でできる範囲は自社で行い、一部外部の手を借りるという手段もあります。

有料プランも用意されているため、無料でお試しの後、正式導入することができます。

【参考】STRESS CHECKER

ストレスチェック結果の保管について

ストレスチェックの結果は5年間保存しなければいけません。また、実施者と実施事務従事者以外が閲覧できないよう、情報管理を行う必要があります。データへのアクセス制限をかけるなど、セキュリティを確保できる保存場所、保存方法を決めておくことも必要です。

保管が必要なもの

保管しなくてはいけないものは3つ定められており、受検者が記入・入力した調査票原票は保存しておく必要はありません。

  1. 個人のストレスチェックのデータ
    個人ごとの検査結果を数値、図表等で示したもの。調査票の各項目の点数の一覧又は、個人のストレスプロフィールそのものなど。
  2. ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果)
  3. 面接指導の対象者か否かの判定結果

保管者

労働者が同意した場合には、事業者が保管することになりますが、労働者の同意が得られない場合には、実施者又は事業者が指名した実施事務従事者が保管することになります。ただし、実施者等が個人的に保管するわけではなく、衛生委員会などで審議を行った上で事業者が保管場所を決定し、実施者等は事業者を含めた第三者に見られないよう厳密な管理を行います。

保管期間

保管期間は、事業者が保管する場合も、実施事務従事者が保管する場合も5年間保存することとされています。

保管方法・保管場所

保管方法については、紙媒体・電磁的媒体のいずれの方法でも構わないとされています。データの場合には、企業内ネットワークのサーバ内に保存することも可能です。電磁的記録による保存の場合には、厚生労働省の省令に基づき適切な保存を行う必要があります。

【参考】厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令/e-Gov

ストレスチェックのよくある質問

制度の理解が進んでも、実際に動き出すと疑問がいろいろ出てくるものです。ここでは、ストレスチェック制度担当者からの質問として多いものを紹介します。

Q1:社員にストレスチェックを拒否された場合

企業にはストレスチェック制度を実施する義務がありますが、 労働者には受検の義務はありません 。

ここが、この制度をわかりにくくしている部分ではありますが、メンタルヘルスはデリケートな問題であり、個人への配慮が重要と考えられているためです。受検するか否かは労働者が選ぶことになり、就業規則などで受検を規定したり罰則を設けたりすることはできません。

Q2:会社が選任した実施者以外で受検したいと言われた場合

従業員から、自身の「かかりつけ医」などで受検したいと言われることもあるでしょう。ストレスチェック制度では、 事業者が指定している実施者以外で受検した場合にはストレスチェックを受けたことになりません 。事前に周知しておくようにしましょう。

Q3:海外の長期勤務者にもストレスチェックは必要なのか

海外の現地法人での雇用となっている場合は、日本の法律の適用外となるため、ストレスチェックを実施する義務はありません。ただし、日本の企業が雇用していて海外で長期勤務をしている場合は、ストレスチェックを実施する義務が発生します。

Q4:本社が事業所の分もまとめて実施することは可能なのか

本社が一括して行い、できるだけ手間を省略したいという声も多いでしょう。労働安全衛生法では事業場ごとに規定を適用するというルールがありますが、全社共通ルールを決めて、各事業所で実施するという方法は可能です。

ただし、事業場によって実施者や実施時期が異なるなど個別の事情が発生するときは、各事業場ごとに実施方法を決めていく必要があります。また、労働基準監督署への報告は各事業場が行う必要があるため、本社一括で報告することはできません。

Q5:ネット上にある無料セルフチェックを受けても実施になるのか

ネット上にあるセルフチェックは、結果を実施者が確認して面接指導の必要性を判断することができないなど、労働安全衛生法に則った方法をとれないため、 実施したものとはみなされません。

Q6:ストレスチェックや面接指導にかかった時間の賃金について

賃金については労使間で協議して決めることになります。ただし、一般健診1年以内ごとに1回実施されている定期健康診断と同じように、労働者の健康の確保は事業運営に不可欠という観点から、賃金を支払うことが望ましいとされています。

まとめ

  • 常時使用する労働者が50人以上の事業場では、ストレスチェックが義務化されています。
  • ストレスチェックはメンタルヘルス不調を未然に防止するために策定されました。
  • ストレスチェック後は結果を受け止め、職場環境の把握・改善に活用しましょう。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


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