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連載:第46回 リーダーが紡ぐ組織力

教育で人は変わらない。社長の信念が証明した「人が辞めない組織」の作り方

BizHint 編集部 2025年1月8日(水)掲載
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社長が始めた組織改革にベテラン社員が反発し、大量退職と業績悪化の危機に直面した株式会社カワキタエクスプレス。合計で150人以上もの退職者を見送った川北辰実社長は「教育で人は変わらない」という気づきを得ました。その気づきから理想の組織をつくりあげる術を見出し、徹底していった結果、離職率はピーク時の65%から5%に激減。業界未経験者の積極的な採用・育成に成功し、長年の赤字体質からも脱却しました。自らの信念を貫いてきた川北社長に、改革の道のりと経営者の覚悟について伺いました。

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社長と社員。価値観の違いが生んだベテラン社員の大量退職

――運送業界ではトラックドライバーの不足や高齢化が深刻になる中、貴社は若手未経験者の採用・育成に成功されています。2024年には離職率5%を実現し、業績も上向いていますが、かつては離職率が高く危機的な経営状況だったそうですね。

川北 辰実さん(以下、川北): はい。人材の定着に関しては、非常に苦労してきました。

特に大変だったのが2011年です。当時の社員数は23名ほどでしたが、わずか半年の間に、幹部を含めたベテラン社員が8名退職。他の社員の退職も重なり、2011年の離職率は65%に達しました。特に私の右腕だった幹部社員が辞めたときはショックが大きかったですね。周りにも「次の社長は彼だ」と言っていたくらいですから。会社の利益も53%減となり、売上もかなり苦しい時期が続きました。

――大量退職の原因は何だったのでしょうか?

川北: 私が始めた組織改革への反発がきっかけですが、根底にあったのは 「私の想いに共感してもらえなかった」 ことだと思います。

「トラックドライバーを若者が憧れる職業に」というビジョンを掲げ、2008年に高卒採用を始めたことを機に、2009年から組織改革を始めました。まず給与体系を歩合給から月給制に変更し、評価制度を導入。運送業界では売上や走行距離に対しての歩合給が主流ですが、新卒の受け入れに向けて見直しを図りました。

2010年には高卒の新入社員が2名入社。彼らに社会人のマナーやモラルなどを教育する中で、簡単なことから徹底しようと3つのルールを決めました。「名札を着用する」「靴を揃える」「運転中には携帯電話を使用しない」――どれも基本的なことです。

私は、 どんな仕事も誰かの役に立った分だけ報酬をいただけるもの だと思っています。我々は物を運ぶ仕事ではありますが、人とも接しますから、挨拶がきちんとでき、身だしなみも整っている方がいいですよね。プロドライバーとして、運転マナーも守れる。チームとして動き、誰かが積み込みをしていたらそれを手伝う。お客様から「さすがプロだな」と言われるような仕事をしてほしいし、人として当たり前の行動をしてほしい。お客様や周りから信用される仕事をした結果として、仕事が増えていく。これが私の考えです。

当時はそれができておらず、ミスや事故も多かった。だから、ごく基本的なことから改革を始めました。

――しかし、その改革に反発があったと。

川北: はい。「靴を揃えろとか挨拶しろとか、小学生がやるようなことをなぜ言われなければならないのか」という反発が起きました。また、給与体系を月給制に変えたことで、実際にもらう金額はあまり変わらなくても、張り合いがなくなったという声がありました。

当時の社員には「自分のために自分が頑張って稼げばいい」という感覚が強く、私の想いとは合わなかった。極端に言えば、「自分だけ良ければいい」と考える人達がだんだん辞めていったんです。

2011年の大量退職の後も、新しい人を採用しては辞めていく…といった状態が10年ほど続きました。今まで、150人以上もの社員が会社を去るのを見送っています。その過程において、ひとつの気づきを得ました。

――それはどんな気づきですか?

川北:「教育で人は変わらない」 ということ。マナーやスキルを高めるためのいろいろな研修を実施してきましたが、 相手に変わる気がない限り、どんなに教育をしても人は変わりません。 中には、私が借金の肩代わりをしたり、家庭問題のフォローをしたりしても、恩を仇で返すような形で去っていく人もいました…。そういう経験を重ねる中で、「そもそも人は変わらないのだ」という考えに至ったんです。

経営者の想いが伝わるか伝わらないかも同じです。大量退職があった当時も、現在も、私から社員に毎朝メールを送っているし、年2回ほど全体ミーティングもやっている。何かあれば個別の声かけもしています。 伝え続けることは必要ですが、どんな伝え方をしても伝わるとは限りません。 もっと言うと、伝わらないと思って伝えた方がいい。結局は相手の問題だと思っています。

「人は変わらない」の気づきから得た、人が辞めない組織の作り方

川北: ただ、その気づきのおかげで、何を重要視すべきなのかが明確になりました。

――それはなんでしょうか?

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