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連載:第15回 アトツギが切り拓く、中小企業の未来

先代の苦悩は、自分も社長になってみないとわからない。退職の連鎖や無力感を経て、若き経営者は何を得たのか

BizHint 編集部 2022年11月28日(月)掲載
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歴史ある企業ほど、積み重なった過去からの財産があり、新たな一手を生みだすことが難しいもの。家業でもある創業76年のアパレルメーカー・双葉商事株式会社に入社した深井喜翔さんは、自社のビジネスモデルの限界や社内の様子に危機感を覚えます。そこから新規事業を立ち上げ分社化。設立したKAPOK JAPAN株式会社は東京・渋谷の一等地に店舗を構えるなど、大きな注目を集める企業となっています。深井さんの成長を後押ししたのは「無力感」。そこからどんな気付きを得て、行動を起こしてきたのでしょうか。詳しくお話を伺いました。

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KAPOK JAPAN株式会社
代表取締役 深井 喜翔さん

1991年生まれ、大阪府吹田市出身。2014年慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である双葉商事株式会社に入社。大量生産・大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、木の実由来の新素材である「カポック」と出会い、軽量で高機能なファッションブランド「KAPOK KNOT」を立ち上げ。クラウドファンディングで累計5,000万に近い資金調達に成功したほか、経産省主催「始動Next Innovator」では、シリコンバレーピッチで第1位に選ばれる。2020年KAPOK JAPAN株式会社を設立、代表取締役に就任。


衰退傾向にあるビジネスモデル。社員もどんどん辞めていく状況を目の当たりにして…

――KAPOK KNOT(カポックノット)の渋谷・宮下パークへの出店おめでとうございます。一方で深井さんは、老舗アパレル企業のアトツギでもあるそうですね。

深井 喜翔さん(以下、深井): はい。私はファッションブランド「KAPOK KNOT」の製造・販売を行うKAPOK JAPAN株式会社の代表であり、創業76年を迎えるアパレルメーカー双葉商事株式会社のアトツギでもあります。双葉商事から分社化する形で、2020年にKAPOK JAPANを設立しました。

家業である双葉商事には、2017年に入社したのですが、最初から波乱の幕開けでした…。

――なにがあったのでしょう?

深井: 家業に戻り、私は営業に配属されたのですが、入社初日に唯一の営業メンバーである営業課長から「私、あと半年後に辞めます」と言われたんです。

そんな話は、社長である父からは一言も聞いていませんでした。当時20人で売上規模が約15億程度の会社で、営業が私1人しかいない状態になるんです。本来であれば、営業人員は4人はいないといけないのに。「とんでもないところに戻ってしまった…」と思いましたね。

双葉商事はカタログ通販向けの女性用ボトムのOEMが主な事業です。しかし、カタログ通販で購入する顧客は高齢化が進んでいますし、服を購入する場所も、カタログからインターネットに移っていますので、市場は縮小することが目に見えていました。

しかし、 時代の変化に対してビジネスモデルとしての打ち手をなかなか打てず、社員はどんどん辞めていってしまいました…。

服の値段って、10年前と今であまり変わっていませんよね。しかし、服の売値が変わっていなくとも、生産拠点である海外の人件費は、この10年で確実に上がっているので、利幅は下がっているんです。

しかし、双葉商事の決算を見ると、不思議なことに売上はそこまで下がっていないし、利益も出ている。とてもいい訳ではないけど、きっちり継続は出来ている。そういう状態もあり、社内にこれまでと劇的に違うことをしようという雰囲気や危機感は感じられませんでした。

私が一度、社員のやりがいにつながるかと思い、「デザインショーやってみようよ」と社員に提案してみたんです。そうしたら「そういうことは諦めているからこの会社にいるんです。そんなことをやりたい人はここにはいないと思います」と、社員から反発を受ける始末で……。

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