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連載:第16回 新規事業の作り方

社長にしかできない2つの責務。戯言と思われても10年貫いた「社員との対話」が地方中小を急成長させた

BizHint 編集部 2023年2月7日(火)掲載
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業界ピラミッドに生かされるのではなく、「自分で生きる会社」を作る。40億だった売上をこの10年で140億にまで成長させた中小企業が山形にあります。設備工事業を手掛ける株式会社弘栄ドリームワークス/弘栄設備工業株式会社です。始まりは10年前、船橋吾一さんの社長就任でした。役員会で怒号を浴び、一度は引っ込めたパイプ探査ロボット「配管くん」の開発や、社長就任以降貫いてきた「社員との対話」。それらは「社長にしかできない」と語る「2つの責務」を果たすためでした。

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弘栄設備工業株式会社 代表取締役社長
株式会社弘栄ドリームワークス 代表取締役会長
船橋 吾一 さん

1971年生まれ。1999年、弘栄設備工業株式会社入社。2012年の社長就任後、事業開発やM&Aを積極的に進め、グループ会社を12社まで拡大(2021年)。商圏を東日本全域に広げる。2019年にパイプ探査ロボット「配管くん」を製造・販売する弘栄ドリームワークスを創業。


先輩役員らの怒号。計画撤回から始まった自社製品開発

――もともと建設設備業を手がけられていた中で、配管検査ロボット「配管くん」というヒット商品を生み出されました。どのような思いがあったのでしょうか?

船橋吾一さん(以下、船橋): 建設設備業は、いわゆる建設業という大きなピラミッドの中の一部分です。

当社は長年、その構造の中で主体的に動けない、あるいは主体的に動いてこなかったのではないかと思っていました。いわばその構造によって「生かされている」状態です。そしてそれが続けばいつか、 会社は「自分で生きようとしない体質」になってしまう…。これは絶対に避けなくてはならない、という危機感 がありました。

たとえ今現在は、業界ピラミッドの中で生きる設備業であっても、『自らが生きる道を、自ら作るべき』だし、そのような方向に会社を向けていく必要があると考えたのです。

さらには、地方の中小企業はその存在意義に対して、なかなか注目してもらえません。そんな状況を変えたい。日の目を浴びるような場面を増やしたいという思いもありました。

――「配管くん」のプロジェクトは、社長ご自身で進められたとのこと。

船橋: はい。話は社長就任時に遡ります。

創業者であった父が病で倒れたため、父に「お前、来年から社長になれ」と言われ、当初の予定より5年ほど早く社長に就任しました。私は入社以来、営業畑で社外の関係構築は進めてきたのですが、当時、社内に対してはまったく関係性ができておらず…。社長の息子という認識はあっても「あいつ、何者だ?」と思われていました。

社長就任後の役員会では何を言っても反対され、初めて作成した経営計画書で「5年で売上を2倍にする」と発表すると 「お前、ふざけるな!」と怒号を浴びました。 役員は私より年上、百戦錬磨の先輩ばかりでしたので、当然と言えば当然でした。

そしてその経営計画書には、後に配管くんを生み出すプロジェクトについても記載していました。「新しい商材を作って市場を広げて…」と説明しましたが、 「何を馬鹿なこと言ってるんだ!」「冗談もほどほどにしろ!」 と責められました。

前社長の父とはまったく異なる考え方でしたし、周囲との相互理解や関係性もない中で、多くの反発を受けましたね。

仕方ないので、いったん売上目標は下方修正して、配管くんは片隅に置いておく形で最初の経営計画書を作り直しました。ただ、外部に向けては、私が事業で思い描く夢を話し続けていました。

社長の責務は、社長にしかできない2つのこと

――そういった反発を受けてもなお、事業構造を変えようとされる理由は何だったのでしょうか?

船橋: 私は 社長の責務は、この2つだと思っているんです。 そしてそれは、絶対に社長にしかできません。

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