「ノウハウの完全マニュアル化」で、安全・安心・美味しい店舗を全国展開！

株式会社おかやま工房
代表取締役社長　河上 祐隆（かわかみ つねたか）さん

1962年大阪市生まれ。高校を卒業後、大阪でインストアベーカリーを展開する企業に就職。1984年22歳で独立し「フレッシュベーカリー・パンクック」を開業。1990年、岡山に移住し「ベーカリーハウスおかやま工房」をオープン。2009年、小規模ベーカリー開業支援「リエゾンプロジェクト」がスタート。

「経営者」は「職人」ではない！ドイツで受けた衝撃体験でパン造りも数値化

河上祐隆さん（以下、河上）： 私は42年前、高校を卒業してすぐに製パン業界に入りました。そして、1984年22歳で独立しパン屋を開業。当初は大阪で営業していましたが、息子の喘息の転地療養先として岡山に移住し支店をオープン。1996年には本店を岡山に移し、現在は岡山県内2店舗、アメリカ2店舗の直営店を構えています。

また、当社では「リエゾンプロジェクト」として、未経験の方でも5日間でパン屋を開業できる、開業支援事業も展開しています。これまでに、国内外300名以上の方を支援してきました。現在の従業員数は約80名、売り上げは約6億円となっています。

――今回は、「リエゾンプロジェクト」を中心にお話をお聞きしたいと思います。まず、このプロジェクトについて詳しく教えてください。

河上： パン造りは「職人技」で、経験や感覚が命、何年もの修行が必要だと言われる職業だと思います。しかし、それを未経験の方でも5日間の研修を受ければ美味しいパンが造れるよう、完全マニュアル化しました。2009年にスタートし、これまで1,000名以上の方が受講され、その全ての方が「お店に並べられるレベル」のパン造りができるようになりました。

5日間の研修料は10万円で、別途契約料400万円で開業を支援します。具体的には、立地調査、図面の確認、業者との交渉から、オープン前の仕込みや当日のサポートまで、当社のトレーナーが伴走します。

――5日でパン屋になれるとは、にわかに信じられない話ではあるのですが…。では、このプロジェクトをスタートされた経緯を教えてください。

河上： 僕が独立した当時、バブル期だったこともあり、店には独立志望者がどんどん入ってきました。僕の技術や経営ノウハウを2～3年で習得し、その多くが巣立っていきました。しかし、バブルが弾けて景気が悪くなると、志望者も減っていき……。僕は、22歳の時に恩師に支援してもらって独立することができたので、「恩返し」として、自分がやってもらったことを若い子たちにと、ある意味独立支援を生きがいにしていたんです。だから、それが無くなったとき「どうしよう」と人生に悩み始めていました。

そんな時、弟子に誘われ、ドイツへパン屋の見学に行ったんです。繁盛しているお店をいくつか見学させてもらったんですが、本当に、人生観が変わるほどのカルチャーショックを受けました！そして「自分がこれから進むべき道」というのが見えてきました。

――それは何だったのでしょう？

河上： まず驚いたのは、「経営者がパンを造らない」ということです。客観的にお客様の動きを見ていたり、経営の舵取りをしたりと、基本的に「作業」をしないんです。日本のパン屋の経営者は職人が多く、パン造りに集中しているから、お店の状態や、お客様、そしてスタッフを見ていない。僕もそうでした。そこで、「経営者は職人ではいけない」と思ったんですね。「パンを造ってる場合じゃない」と。