連載:第6回 テレワークイベントレポート 2020
やってわかったテレワーク社員研修の極意。受講者・育成担当・経営の三方よし
「新人研修で、自社ならではの企業文化や業務知識を伝えても、現場配属後の成果に繋がりにくい」と頭を抱える育成担当の方も多いのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染拡大により、従来どおりの集合研修やOJTを実施することが難しくなっている今、新人研修もオンラインへの切り替えが求められています。新入社員を即戦力化し組織の成長へと繋げていくには、どのような研修を実施すれば良いのか。コストを削減しながら効果的な研修を行う方法について、株式会社スタディストで人材育成を担当する坂野亜希子さんが、自社で実践した内容を踏まえて提案します。
株式会社スタディスト
ビジネスイネーブルメント部 部長 坂野亜希子さん
多数の人材開発業務に従事した後、2016年に株式会社スタディストへ参画。営業、カスタマーサクセス担当を経て、2019年より現職。ビジネス部門の生産性を中長期的に上げ続けるため、人材育成を中心とした支援を行う。
研修の前提条件が変わり、従来型の研修をリセットする時機に
ビジネスの現場では、新型コロナウイルス感染のリスクを抑えるために、対面での接触を控えて、業務をデジタル化する動きが急速に起こっています。加えて、対応の長期化が予想されるなか、原価や経費を抑えて経営を維持しようと各社が取り組んでいます。
この変化は、人材育成も例外ではありません。 集合・対面での研修からのスタイル変更、育成コストの見直しなど、前提条件が変わり 、従来型の研修をリセットして新しい育成のあり方を再構築する時機が来ています。
ウィズコロナ時代の新たな研修では、デジタルを活用し分散して行う受講スタイルはもちろん、学んだことを現場で実践して成果に繋げてもらう ことがポイントです。
従来型の研修 | 新たな研修 | |
---|---|---|
優先事項 | 知識重視 | 実践重視 |
形式 | アナログ | デジタル |
場所 | 集合 | 分散 |
学習方法 | インプット中心 | アウトプット中心 |
「業務再現性」を重視し、手順書ベースの反転学習で新人教育を
成果に繋がる教育を行うキーワードは「業務再現性」 です。
従来型の研修のうち、OJTだと「Aさんに教わった方法でやったら、Bさんに『違うよ』と怒られる」現象が発生します。会社としてのやり方は決まっていても、指導担当が異なる解釈で受け止めていると、人によって言う内容が変わってくるからです。
では、教える人を1人にした集合研修の場合はどうかというと、伝える内容にばらつきは少なくなりますが、受講者は時間が経つと忘れていってしまい、1年もすれば研修で得た学びを現場で実践する割合が1割を切るんですよね(※1)。そのため、 知っているけれど、現場で実践できないケースが多い 。
(※1)出典:中原淳ほか『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社、2018年6月)
そうでなく、新人研修を現場の成果に繋げるには、まず会社が「この業務はこういう風にやってほしい」という標準的な業務のやり方を明確に定め、育成担当が教育を通して正しく伝える。そして受講者も正しく理解し、そのまま現場で迷わず・悩まず・ミスせず実践する。この連鎖があちこちで起これば、組織の生産性が高い状況になります。
当社では、業務のやり方を伝える際には、標準として定めた内容を落とし込んだ手順書を作成し、ビジュアルベースで教育を行う方法が有効だと考えています。つまり、 人に教わらなくても手順書を見れば、標準化された業務を現場で再現できるように教育する 。
さらに「反転学習」でカリキュラムを設計すると、育成担当の人数や工数を減らすことができ、受講者も知識が定着しやすくなります。
反転学習とは、自学自習の予習でインプットしたことを、講義など実践の場でアウトプットして習得するやり方 です。実際に、講義を受けて宿題で知識の定着度を確認する、いわゆる学校教育型の学習方法でなく、反転学習で研修を実施した結果、知識定着率が30ポイント以上アップしたというデータもあります(※2)。
(※2)出典:中原淳ほか『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社、2018年6月)
実際にオンライン研修をやって、見えてきた課題と工夫
コロナ禍の影響を受けながらも、当社では、今年(2020年)4月には新入社員の受け入れがあったほか、毎月のように中途社員が仲間に加わっています。
当社でも、手順書ベースの自学自習と反転学習のスタイルに辿り着くまでには、試行錯誤がありました 。
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バックナンバー (10)
テレワークイベントレポート 2020
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