連載:第6回 経営・SaaSイベントレポート2024
やらされ1on1の弊害。部下が育たないのは上司のせいじゃない
現在、様々な企業で導入されている1on1ですが、「具体的に何を聞いたらいいのか分からない」「とりあえずやっているけど、部下の変化を感じない」といった課題も多いのが実情です。気づけば沈黙が続き、互いに苦痛の時間になっている…なんてこともあるのでは?部下の成長支援を目的としている1on1ですが、なぜうまくいかないのでしょうか。長年にわたり人材開発・組織開発を研究する立教大学経営学部の中原淳教授は、1on1が活性化しない原因として、「上司に課題がある」とされている現状に問題があると指摘します。その背景と、効果を実感できる1on1にしていくために超えるべき「3つの壁」について解説いただきました。モデレーターは、合同会社あまね舎代表の齊藤光弘さんです。
1on1がうまくいかない理由は「上司」だけじゃない
齊藤 光弘さん(以下、齊藤): 1on1の一般的な定義とは、「定期的に行う上司と部下の面談」です。1on1は、部下のための時間であり成長支援の場なので、 部下が「話したいことを話せる」「振り返りの機会」であることが非常に重要 です。現在、導入されている企業も多いのではないでしょうか。
一方で、1on1がうまくいかないと感じている管理職の方が多いのも実情です。
以下の図は、社外メンターサービスを提供するMentor For社が、400名の部課長に対して行った調査結果です。
引用:【MentorFor 独自調査】キャリア1on1実施における効果や課題
齊藤: 「人数が多く、負担が大きい」のほか、「業務の進捗確認になってしまっている」「本音が引き出せていないと感じる」「プライベートについてどこまで踏み込んでいいのか分からない」など、1on1スキルを実践する難しさも感じているという結果が明らかになっています。
実際、世の中は「むごい1on1」に満ちています。
たとえば、人事がやってくださいと言うから仕方なく1on1をやっているような「やらされ1on1」。その他にも、上司が「君はどう思う」「君はどうしたいの」と問い続け、部下が疲弊…。ついには何も話してくれなくなってしまうケース。「傾聴」すべく、とにかく黙って話を聴いているけど、部下の変化を感じない…といった1on1もあるでしょう。
中原 淳さん(以下、中原): 1on1がうまくいかないのは、上司がやり方を分かっていない、部下の行動変容につながるような背中のひと押しが足りないなど、「上司側」に課題があると言われがちです。管理業務の忙しさだけでなく、プレイヤーとして売上と利益を上げなくてはいけないプレッシャーに加え、人事施策でももっと活躍しろと言われる現場の上司への負担はとても大きいですよね。
しかし、私が現場でうまくいかない1on1の事例を数多く見て気づいたのは、 上司側だけではなく「部下」側にも課題があるということ。対話が進まないのは上司だけの問題ではない のです。
上司と部下、双方に問題のあるケースは多く、その原因として考えられるのは以下の2つ。
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