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中小企業が生き残るためには「生産性向上」が必須!事例とともに徹底解説

Logo markBizHint 編集部 2019年3月7日(木)掲載
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中小企業が長期的な戦略を描くために、生産性の向上が重要性を増しています。その背景にあるのは、人材不足やIT技術の急速な進展。今や生産性向上の本格検討なくして、中小企業は生き残っていくことが難しい状況にあるといえるでしょう。本記事では、注目度が高まる中小企業の生産性向上について、その重要性や検討したい具体的な施策について解説していきます。

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中小企業こそ生産性向上が重要である理由

従来は、中小企業には生産性は重要視されてきませんでした。規模の経済性を追い求める大企業は、圧倒的な効率性で商品やサービスを大量に提供します。中小企業は、そうした大企業に対抗するために、高品質や独自性により差別化する必要があったのです。

そこには、「こだわり」「丁寧」といった、生産性を犠牲にすることで大企業との差別化を実現する要素が多分に含まれていました。このため、国の中小企業支援も、創業や事業承継、新規事業に対して重点的に行われており、生産性向上に対する支援は決して十分ではありませんでした。

しかし、中小企業も生産性向上なくして事業の存続が難しい状況にあり、国の中小企業支援も生産性向上に軸足を移しています。ここでは、中小企業に生産性向上が求められる理由について解説していきます。

【関連】生産性向上のために企業が行うべき施策や取組事例をご紹介/BizHint

そもそも「生産性」とは

生産性とは、製品やサービスを生み出すために投入した資源(インプット)に対する、得られた成果(アウトプット)の割合です。

投入した資源として労働力に着目した場合は労働生産性とよび、設備に着目した場合は設備生産性とよびます。また得られた成果(アウトプット)も付加価値額を使う場合や売上、営業利益を使う場合など様々なケースがあるので、生産性を算出する方法は一つではないことに注意してください。

中小企業白書などでは、生産性の指標として労働生産性( 付加価値額 /労働力 )が使われることが多くなっています。

【関連】労働生産性とは?定義や計算式、問題点や向上のためのポイント/BizHint

理由① 人手不足

中小企業に生産性向上が求められる最も大きな理由は、人手不足です。人手不足は日本が直面する構造的な問題であり、長期的に労働人口が減少することはもはや避けることが出来ません。

現在60%程度の生産年齢人口(15歳~64歳)割合は段階的に減少を続け、2060年には50%程度にまで落ち込むことが予想されています。従来どおりの収益性を維持するためには、労働生産性を向上させるしかないのです。

【出典】2016年度版中小企業白書

理由② IT技術の高度化とクラウドの普及

近年においては、IT技術の進展はめざましく、特にAIやIoTといったIT技術を使うことで、従来は職人にしか出来なかった作業をパソコンやロボットに代行させることも可能になってきました。

そして見逃せないのが、IT業界に急速に普及するクラウド化です。数千万円、ときには億単位の巨額な設備投資が必要なERPに代表されるようなITシステムは、中小企業にとっては導入することは難しいのが実情でした。しかし、クラウドであれば初期投資を抑えて、簡単にITシステムを導入することができます。

IT技術の高度化とクラウドの普及は、中小企業でも効果の高いITシステムを簡単に導入できる環境を実現しています。このことが、中小企業に対して生産性向上が求められる要因の一つとなっているのです。

理由③ 従業員の働く意識の変化

従業員の働く意識の変化も、中小企業に生産性向上が求められる理由として挙げられるでしょう。

長時間労働の是正や有給休暇取得の促進など、ワークライフバランスを実現し、働きやすい環境の整備が求められているのです。実際に、大企業を中心に労働者の総労働時間は減少傾向にあります。しかし、従業員300人未満の企業では逆に労働時間は増加しているのです。

このことは、深刻な人手不足に悩む中小企業では、十分な生産性向上が進んでおらず労働時間を増加させていることを示唆しています。このままでは人材が大企業に偏重する傾向がより一層高まりかねません。

中小企業は、生産性を向上させて働きやすい環境の整備を実現しないと、人手の確保すらままならない難しい状況にあるといえるでしょう。

【出典】【日本経済団体連合会】2018 年労働時間等実態調査 集計結果

中小企業の労働生産性の現状

労働生産性を向上させて、長期的な成長戦略を描くことが求められている中小企業。それでは、中小企業の労働生産性はどのような状況なのでしょうか。

中小企業と大企業の生産性の差

中小企業の労働生産性は、大企業と比較した場合に半分程度しかなく、その差は大きいといわざるを得ません。しかもその差は、年々拡大傾向にあるのです。

【出典】【経済産業省】中小企業・小規模事業者の生産性向上について

圧倒的な規模の経済性により極限まで生産性を高める大企業に対し、投資余力の小さい中小企業は生産性に劣ることは仕方がないともいえます。それでも、積極的な設備投資により生産性を高める中小企業も出てきました。

多くの中小企業は、商品やサービスの品質を高めることにばかり目を向け、生産性向上には注力してこなかった、そのツケが回ってきているともいえるでしょう。

業種別の中小企業の生産性

労働生産性を業種別に見ると、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業などにおいてその差は小さいものの、すべての業種において中小企業が下回っています。特に、設備投資が生産性に跳ねかえりやすい製造業や情報通信業では、差が大きくなっていることがわかります。

【出典】2018年度版中小企業白書

生産性が高い中小企業の特徴

大企業に比べて低いといわれる中小企業の生産性。しかし、大企業よりも生産性を高めて事業を拡大させる中小企業も存在します。

【出典】【経済産業省】中小企業・小規模事業者の 生産性向上について

製造業は約1割、非製造業では約3割の中小企業が、大企業平均以上の労働生産性を実現しています。こうした生産性の高い中小企業は、他の中小企業と比較して設備投資やIT投資に積極的で、従業員の賃金も高いことがわかっています。

【出典】【経済産業省】中小企業・小規模事業者の 生産性向上について

輸出実施企業のほうが、輸出非実施企業より生産性が高いことも分かってきました。輸出実施企業はリーマンショック時に労働生産性を大きく下げたものの、その他の年度では輸出非実施企業より労働生産性が高い状況にあります。

中小企業が行うべき生産性向上の施策とは

それでは、生産性を向上させるために、中小企業はどのような施策を取るべきなのでしょうか。

ITツールの導入・活用

まずは先述した「生産性が高い中小企業の特徴」にもあったように、ITツールの導入が挙げられます。

従来、中小企業が導入するITツールと言えば、売上を増加させるためのホームページ作成が中心でした。大企業で導入が進む業務効率化ツールは、設備投資負担が重いことに加え、必ず効果が出るかどうかは保証されません。このため、中小企業では積極的に導入されてきませんでした。

こうした中、クラウド型のITツールの登場により、気軽に始めて、気軽に利用をやめることができる環境が整備されています。さらにAIやIoTの普及によって、効果が高いITツールも次々と登場しています。

しかし、ITツールの導入は、業務効率の向上とセットで検討する必要があります。自社の業務プロセスを見える化し、そこから浮かび上がる課題を解決するためにITツールを導入するという考え方でなければ、いくら導入しても大きな効果は期待できません。課題を明確化してITツールを導入することで、おのずと生産性は向上していくでしょう。

設備投資

機械設備に投資することも、先述の「生産性が高い中小企業の特徴」から生産性向上に有効であることがわかります。

【出典】2018年度版中小企業白書

中小企業の設備投資は、緩やかな回復傾向にあるものの、まだリーマンショック前の水準には達していません。くわえて、設備投資の目的が、設備の維持更新に向いており、生産能力の拡大や付加価値向上といった方向性には向いていないのです。つまり、設備が老朽化しており、事業を継続するためにやむなく設備投資するという姿勢がうかがえます。

今後、設備投資を労働生産性につなげていくためには、売上や収益、付加価値を向上させる目的や、業務効率を向上させるといった目的を持つことが求められます。より積極的で前向きな、攻めの設備投資が必要であるといえるでしょう。

人事制度の見直し

労働生産性を上げるためには、人的資源活用を最大化させることが求められます。単純に従業教育を行う以外にも、人的資源活用を効率化させる方法は複数あります。

まずは、従業員とのコミュニケーションをとってみましょう。従業員が成長するためのキャリアプランを明確にしたうえで、権限の移譲や透明性の高い人事評価制度の導入することは、従業員のモチベーション向上を通じて、労働生産の向上に寄与することが期待できます。

そして、働き方改革の推進にも力を入れていきましょう。近年増加傾向にあるテレワークの導入や、残業時間の抑制は、従業員の貢献意欲の向上につながります。中小企業は厳しいと言われる採用面でも優位に立ち、優秀な人材確保にもつながるでしょう。

人事制度の見直しは、特に特別な投資をしなくても実現できることも少なくありません。人的資源を最大限に活用するためにも、ぜひとも検討したい施策であるといえます。

【関連】人事制度とは?設計・構築のポイントやトレンド・事例をご紹介/BizHint

生産性向上における中小企業の成功事例

中小企業は、生産性を向上させるために具体的にどのように取り組んでいるのでしょうか。ここでは、生産性向上を実現した中小企業の成功事例を紹介します。

RPAの導入による業務自動化/株式会社オカフーズ

株式会社オカフーズは、水産加工食品の開発、製造を手がける社員数40名程度の中小企業です。従来は、エクセル上の商品コードや数量などのデータを、基幹システムに対し個別に入力していました。当然時間もかかる上に、人的ミスが発生するなど非効率な作業となっていました。

そこで、導入したのが、大企業を中心に導入が進むRPA(Robotic Process Automation)。RPAは、生産現場で進む自動化を、事務作業をおこなうホワイトカラーにまで拡大させるためのITツールです。

専任のシステム部門がない中でも、従来の基幹システム入力業務の自動化に成功、労働時間や人的ミスを減少させ生産性向上を実現しました。

【参考】オカフーズ:「オカフーズのRPA導入事例 中小企業の導入責任者の経験から」

惣菜に使う魚の下処理等を自動化/株式会社きむら

香川県高松市に拠点を置く株式会社きむらは、香川県や岡山県で20店舗程度のスーパーマーケットを多店舗展開しています。同社の強みは、積極果敢な設備投資にあります。5億円にものぼる食品加工機を導入し、バックヤードにおける業務効率向上を実現しているのです。

食品加工機の導入が実現したのは、業務効率向上だけではありません。魚の下処理などから開放された職人が対面販売や接客に注力できるようになりました。これにより、顧客満足は向上、他のスーパーとの差別化も実現しました。

【参考】2018年度版中小企業白書:「積極的に設備投資し、惣菜に使う魚の下処理等を自動化する一方、 職人による対面販売や接客に力を入れる企業」

機械化により人手不足解消と生産性向上を実現/株式会社コイワイ

株式会社コイワイは、従業員140名程度の非鉄金属製造業。神奈川県小田原市に本社をもち、工場は宮城県においています。同工場で展開する金属鋳造は、危険な重労働であるため、男性正社員が業務にあたっていました。しかし、採用は難しく深刻な人手不足に陥っていたといいます。

そこで、危険性の高い工程において生産ロボットを導入。さらに電動ハンドリフトも導入して作業環境改善に取り組み、女性やパート、派遣といった様々な社員の採用につなげることが出来ました。

【参考】2018年度版中小企業白書:「生産ロボットと電動ハンドリフトの導入により、 人手不足に対応しつつ生産性を高めた企業」

中小企業庁からの支援

国は中小企業庁を通じて、中小企業の生産性向上を実現するための施策を次々と打ち出しています。ここでは、そうした国の支援策について紹介していきます。

中小企業等経営強化法による支援

「中小企業等経営強化法」は、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律を一部改正することで2016年7月に施行されました。

【出典】【経済産業省】中小企業等経営強化法の概要

その特徴は、従来重視されてきた創業や事業承継、新規事業に対し、支援の軸先を「本業の成長」に定め生産性向上を実現しようとしていることにあります。

その柱に位置づけられるのが経営力向上計画です。国は幅広く経営力向上計画を認定することで、中小企業全体の生産性向上を実現しようとしているのです。

【関連】経営力向上計画とは?メリットや必要な申請書類・手順を解説/BizHint

生産性向上特別措置法による支援

2020年までを「生産性革命・集中投資期間」と定め、様々な支援措置を打ち出すために2018年6月に施行されたのが、「生産性向上特別措置法」です。

その目玉施策が、先端設備等導入計画。国から導入促進基本計画の同意を受けた市区町村において中小企業は先端設備等導入計画を作成し、その計画の認定をもって固定資産税の特例や補助金の加点対象といった措置を受けることができます。

【参考】経済産業省:「【生産性向上特別措置法】先端設備等導入計画について」

中小企業生産性革命推進事業

平成30年度第2次補正予算で、1,100億円の予算が閣議決定されたのが、中小企業生産性革命推進事業です。

その実体は、従来から行われてきた補助金です。「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)」、「小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)」、「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」の3つの補助金が閣議決定されたことにより、それぞれ公募が開始される見込みです。

注目されるのは、前述の経営力向上計画や先端設備等導入計画の認定が、こうした補助金において加点要素になる可能性が高いことです。中小企業は、経営力向上計画や先端設備等導入計画を通じて生産性を向上させるという意思表示をすることが、補助金獲得を優位に進めることになるのです。

【参考】経済産業省:「中小企業生産性革命推進事業」

まとめ

  • 深刻な人手不足やIT技術の進展を背景に、中小企業にも生産性向上が強く求められているます。
  • 中小企業の生産性は大企業より劣るが、積極的な成長戦略により大企業以上の生産性を実現している中小企業も一定数存在します。
  • 国の中小企業支援の軸足は生産性向上に移っており、様々な施策を打ち出しています。

<執筆者>
香川 大輔 中小企業診断士

千葉大学工学部卒業。ベンチャー企業における営業、企画、マーケティング業務を経て、富士ゼロックス関連会社でシステム提案営業に従事。

2015年、中小企業診断士登録。現在では独立し、地域に密着した経営支援や新規事業コンサルティングに加え、セミナー活動や執筆活動など幅広く活動している。


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