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連載:第7回 躍進する企業の転換点

創業97年の老舗「神戸紅茶」をV字回復させた、36歳の社長が語った成功の秘訣とは

BizHint 編集部 2022年2月2日(水)掲載
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長年に渡って関西圏で愛されてきた銘茶「神戸紅茶」。しかし、阪神・淡路大震災の被災を経て経営が悪化し、売上至上主義を続けていたため業績は低迷していました。そんななか、経営に参画したのが現在社長を務める社長の丸山輝真さん。神戸紅茶は丸山さんの入社により見事赤字を解消し、1億円の経常利益が見込めるまでになったといいます。どのようにV字回復させたのでしょうか。

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神戸紅茶株式会社
代表取締役社長 丸山 輝真さん


「利益を上げない社員に価値はない」と言い放った経営者に起こった出来事

丸山輝真さん(以下、丸山): 「実は私、経営に入ってから3回も愛車を釘で刺されたんです」

さも当然のことであるかのように、丸山社長が笑顔で話しだした。伝統ある老舗・神戸紅茶の若き社長。若干35歳にして、創業97年を誇る企業の代表を引き継いだ男である。若い頃はモデルとして活躍し、芸能界も目指していたというキャリアだそうだから、とても“経営者”然としているようには思えなかった。しかし、気がつけばすっかりと丸山社長の話に惹き込まれていた。

神戸紅茶は、関西人には馴染みのある銘茶で“ちょっと良い日”に飲みたい紅茶ブランドである。関西を中心に高島屋や京阪百貨店などの高級店はもちろん、イオンやイトーヨーカドーなどのスーパーでも目にしたり、神戸空港や新神戸駅などのお土産ショップでも取り扱いがあるなど幅広く展開されている。

前経営者のもとで同社は、売上が極端に重要視され、利益率の管理が行き届いていなかったという。そのため、いくら商品を売っても赤字を垂れ流し、全く稼働していない工場、モノが動かない倉庫、何のためにあるのかよくわからない仕事が山積していたそうだ。

かつては利益率を考える必要もないほどにブランド力で儲かっており、OEMの商品を作り続けていたという。しかし、90年代以降はバブル経済が崩壊し、高級品が売れなくなり、贈答文化もどんどんと縮小していく……。そして、取引先とは条件が悪くOEMへの依存が強かったため、まともな交渉もできないまま逆鞘になっていた取引も少なくなかったという。そんななかで会社の現預金が尽き果て、経営危機に陥り、身売りをせざるをえなくなったのだという。

――「しかし、なんでまた3回もタイヤを刺されたんですか?」

丸山: 「実は私、相当なメチャメチャを言っていた時期があるんです。『利益を上げない社員に価値はない!』とまで、朝礼で言い放ったこともありました」

――「ちょっと刺激的ですね」

丸山: 「しかも自分は高級車で通勤しながら、ですからね。私自身がターンアラウンド(事業再生)の重責自体を、しかも社長として引き受ける覚悟を全く理解していなかったんです」

――「釘が刺された車を見て、どう思いましたか?」

丸山: 「率直に『ありがたい』と思いました。私は自分がそうされてもおかしくない未熟者だったと、気が付かせて頂いたのですから」

そしてこれが転機になり、「自分は全てを見られている」立場なのだと、改めて強く自覚したのだという。

言い換えれば、「自分は会社そのもの」。プライベートな時間として一息つける瞬間はない。発する言葉はもちろん、着ているもの、表情、立ち居振る舞いなど自身の一挙手一投足が社員へのメッセージであることを、本当の意味で理解できたそうだ。

そのことに気がつくとさっそく、社員との“本当の対話”に乗り出す。「経営トップの考えていること」「やろうとしていること」「助けてほしいこと」を、ことさらに言語化して社員たちに伝える必要があると認識したからだ。

自分の立ち居振る舞いが間違ったメッセージとして社員に伝われば、いずれ会社がもたなくなることに、危機感を持ったのも理由の一つである。

社員との対話のなかで、印象深かったのは、ある年配の女性社員とのコミュニケーションだったそう。自分よりも社歴が長いベテランであり、人生の先輩でもあり、仕事に誇りを持っている人に対し、上から目線で「わかったフリ」の仕事を指示しても、動いてもらえるものではない。それでも、自分の弱さを敢えてさらけ出し、「わからないから、教えて欲しい」と頼り、質問を重ねると必ず助けてくれた。そのなかで得た気付きに心からの感謝を伝えた。その積み重ねによって、ようやく信頼関係が生まれる端緒を掴めたのだという。

社員との“本当の対話”を通じて「本当の意味で、社長としての仕事をさせてもらえるようになった」と、丸山社長は語った。

やる気のある人が辞める理由は「仕事をしないほうが得」だから

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