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連載:第60回 リーダーが紡ぐ組織力

人が辞めない組織の絶対条件。社員の離職を止めたリーダーの葛藤と変化

BizHint 編集部 2025年6月27日(金)掲載
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「リーダーは、すべての答えを持っていなければ」かつて、そんな考えに囚われていたのがドリームサポート社会保険労務士法人 代表の安中繁さん。当時、超トップダウン型のマネジメントで離職率は52%に達しミスやクレームが多発。組織は崩壊寸前でした。しかし、半ば強引に誘われた研修での「気づき」により、考え方が一変。安中さんの姿勢、そして社員への向き合い方も180度変化しました。「社員の能力を封印していたのは自分だった」と猛省した安中さんは改革を実行し、離職率0%を実現。そして現在、組織は完全に自走し、同社は業界トップクラスの規模にまで成長しています。「リーダーの器以上に組織は大きくならない」と語る安中さんが考える、経営者のあるべき姿とは。詳しく伺います。

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離職率52%から0%へ。社員の離職を止めた、リーダーの「変化」

――貴社は2018年から組織改革に取り組まれ、離職率52%から最少時には離職率ゼロを実現されました。まさに「人が辞めない組織」となっていますね。

安中 繁さん(以下、安中):ありがとうございます。ここ数年は、配偶者の転勤や独立など、ごく自然な退職があり離職率4%台で推移していますが、一時は4期連続ゼロということもありました。そして、一人ひとりが自身の役割をしっかり全うし、私が現場から離れても組織が回る、いわゆる「自走」する組織になっています。

――かつての高い離職率の原因は、何だったのでしょうか?

安中:さまざまな理由があると思いますが、根底には「自分たちが何のために仕事をしているのか分からない」ということがあったと思います。離職率のピークは2017年頃で、当時は社員数が21名ほどの社会保険労務士事務所でした。

当時の私は「経営者は完璧であり、すべてにおいて答えを持ち、決断しなければならない」と考えていました。だからマネジメントは、超トップダウン。仕事の価値や会社が目指す方向性を伝えないまま、管理・指示だけを行い、それにより仕事は「作業」になっていたんです。私たち社会保険労務士(以下、社労士)の仕事は本来、お客様がどんな会社にしていきたいのかをしっかりヒアリングし、心を通わせ、ビジョンに共感し、それを実現するためのサポートをすること。社員たちはそれを夢見て入社したのに、とにかく淡々と作業をこなすだけの毎日。混乱していたと思います。

――そのような状態に、危機感を感じていらっしゃったのでしょうか?

安中:どんどん人が辞めていくことに対して課題を感じていたけれど、去るもの追わず、とにかく現状維持することで精一杯でしたね……。人の補充はするものの、教育もせずにお客様のところへ行かせる。だから、ミスやクレームも多発していました。

私自身、社員たちの行動や言動に対して「どうして私はこんなに一生懸命なのに、あなたたちはやらないのか」と責めるような気持ちでいました。だから思うように動かなければ、厳しく指導する。そうやって、強制的に動かそうとしていたんです。何のために仕事をしているのか理解できず、ただただ作業を振られる。ろくに教育もされず、できなければ怒られる……。それは、辞めますよね。完全に負のスパイラルに陥っていました。

そんなときお客様に勧められて、ある研修会社の経営者向け講座を受講しました。当時の私は100%お客様のために生きていたので、「研修に時間を割くのは嫌だなあ」と思いつつ、渋々ついていったんです。それが2018年のこと。

研修では、選択理論心理学について学びました。具体的に言うと、人は内発的に動機づけられて行動している。そして、常に人は幸せになりたいと思って、そのときの最善の行動を選択していると……。そのように考えたことが無かったので、私は衝撃を受けました。そして、私の中で「最善の行動を選択」しているとはとても思えなかった、父のことが頭に浮かんだんです。

私が子どもの頃、父は自宅で小さな学習塾を経営し、母は学校の先生をしていました。私は、父が外で働いていないことを恥ずかしいと思っていたし、平たく言うと虐待のような扱いも受けていました。父のことを軽蔑していたんです。だから「あの父の行動が最善であるはずない」と、最初は受け入れられませんでした。

でも選択理論心理学の視点で考えると、父は幸せになりたくて「彼の中にある選択肢」の中で最善を尽くしていたのかも知れないと思えるようになってきました。もちろん、何度も自問自答し、もがいた結果、芽生えた感情です。外で活躍する母を支えるため、あえて家にいられる仕事を選んだのだろうか。そして娘の幸せを願いつつも、愛情表現の仕方が分からず厳しく接していたのだろうかと……。そのとき既に父は亡くなっていたため確かめようがありませんが、父の苦悩を知ろうとしていなかったことを反省しました。そして、自分の身に起きたことすべてに、感謝の気持ちが湧いてきたのです。

すると、私の中で大きなパラダイムシフトが起きました。そして私自身が180度変化し、それが組織を変え、結果的に離職率ゼロの人が辞めない組織に変化させたのです。

――どのようなパラダイムシフトが起こったのでしょうか?

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