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人材育成

2018年1月11日(木)更新

成功する人材育成の方法とは?課題解決のポイントと参考事例集

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人材育成の方法やテクニック、参考事例をご紹介します。企業経営において人材育成をどのように行うかという点は、中小企業や大手企業といった会社規模に限らず尽きることのない人事担当・責任者の課題のひとつではないでしょうか。 現在抱えている問題をどのように解決し、成功へ導けばいいのか参考にしてみてください。

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1.企業における人材育成の意義

経営において「人材育成は大事である」とはよく言われる所ではありますが、改めてその意義について見ていきましょう。

1-1.人的資源の有効活用で、企業の生産性を向上させる

「人的資源を活用し生産性を向上させる」というと非常に難しく聞こえますが、古くから日本企業が得意としてきた分野です。

高度経済成長期の日本企業を研究した書籍「Made in America」の中では、当時生産技術ではアメリカ国内の工場と差がないと思われていたトヨタ社が、人の力により圧倒的な業務効率を誇っていたことに触れ、人的資源こそ競争力の源になると述べられています。

2.人材育成における基本的な考え方

本章では、人材育成を考えていくにあたっての基本的な考え方と、具体的にどういった手法があるかについて述べていきます。

2-1.企業経営において人材を育成する意味

企業経営における人材育成の意味について、ダグラス・ホールは、「企業が戦略目的達成のために必要なスキル、能力、コンピテンシーを同定し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援することで、人材を経営に計画的に供給するための活動と仕組み」と述べています。

つまり、人材育成とは闇雲に取り掛かるものではなく、経営戦略に基づく形でその目的を達成するため、意図的かつ計画的に設計し、推進することが大変重要になります。

ここまで人材育成の意義を述べてきましたが、具体的な手法としては大きく以下の3つです。

  • OJT (On-the-Job Training)
  • Off-JT(Off the Job Training)
  • 自己啓発(Self Development)

以降、それぞれについて説明していきます。

3.OJT(On the Job Training)

OJTとはOn the Job Trainingの略で、 「職場で、業務遂行中に、上司が、部下に対して、個人および集団の育成必要点を見いだし、それに対する一切の指導、援助活動を計画的・意識的・継続的に行うこと」(寺澤弘忠 『OJTの実際』) を示し、 終戦後の1950年代に海外から輸入された言葉になります。

現在OJTを聞く場面としては新人教育等の場面ではないかと思いますが、当時は職場の管理者教育を目的とし、生産現場における生産性向上のために活用されてきたため、デスクワーカーに普及し始めたのは高度経済成長期以降になります。

3-1.OJTの基本、「経験学習」という考え方

人材育成というと、どうしても「教える」ことに目が向きがちですが、人材の成長を促進するためには経験から学び取る力を育む事が重要です。

この力が弱いと仕事を任せた後の伸び幅が小さくなるためです。

上の図は組織行動学者のデービッド・コルブの提唱する「経験学習サイクル」を示したものですが、育成においてはこのサイクルを頭に浮かべながら、「なぜ失敗した/うまく行ったと思う?」と投げかけ、内省を促すのが良いでしょう。

3-2.OJTを行うにあたっての心構え

まず大事なことは、OJTに取り組むことは自らのためになると理解することです。部下や後輩の育成は、マネージャーとして大変重要なスキルであり、ただ「育成対象のため」と考えるのではなく、自らのマネジメント力を伸ばす行為であることを意識し行いましょう。

教育心理学では「相手が成長すると信じて接すると本当に成長する」といった効果(ピグマリオン効果)も明らかになっています。

部下・後輩を信じ、期待している旨をしっかりと伝えましょう。 不信感を持ちながら過度に手取り足取り伝える教え方ではなく、主体性を持った取り組み(自主行動)を促すことが大切です。

3-3.計画・実行におけるポイント

ここではOJTにの出発点となる、計画・実行段階で意識しておくべきことをご説明します。

3-3-1.Plan(計画の策定)

実施にあたってのPlan(計画)は、必ず長期・学習目標も含め立てるようにしましょう。

実務に限った目標はどうしても短期・成果重視に寄った計画になってしまう傾向にあります。

また、目標のレベルについては部下や後輩の現状を見極め、高すぎず、低すぎず、本人が頑張って手が届くくらいに設定(大体現能力の1.2-1.3倍ほどが目安)し、必ず部下自身が納得する目標設定を行いましょう。

よくあるのは合意形成をせずに目標を決定してしまうことで、部下が「上から落ちてきた目標」と認識してしまった途端に目標の意味がなくなってしまいます。 目標を立てたら計画へと接続・落とし込みます。

3-3-2.Do(実行)

実施段階におけるポイントは3つです。

  • 日々の声掛け

よく、問題が顕在化してから慌てて対応をするケースが見受けられますが、日々の声掛けを行うことでそうした問題の発生を防いだり、発生してしまったとしても早期解決をはかることが可能です。

何より「声をかける」ということは相手への興味関心を示すため、立ち上がり当初の段階においては不明点を尋ねやすくなるなどスタッフ自身の安心感にも繋がります。

  • 定例のミーティング(1on1など)

日々の声掛けにあわせ、ある程度まとまった時間を定期的に持つことも重要です。 業務の進捗確認はもちろん、悩みを聞き向き合う事ができるため信頼関係の構築に繋がります。

  • チーム共有

部下の育成においては自分一人で行おうとするのではなく、チーム全体で支える体制を作る事が重要です。 そのためにも、現状と課題点などはきちんと共有するようにしましょう。

3-4.トラブルが起きた場合には

部下を育成する過程で必ずトラブルにぶつかることになります。 まず前提としてトラブルに備え日々報告しやすい雰囲気を作ることを心がけて下さい。

その上で問題が生じた際には現状や原因を可視化しつつ、必ず部下と向き合い事情や心情を汲み取るようにましょう。

対応についても基本的にはヒントを与える形に徹し部下自身に考えさせることが重要ですが、能力不足や問題の深刻度に応じてこの点は調整が必要です。

3-5.部下へのフィードバック方法

先の通り内省する習慣づけを行うにあたり、フィードバックは非常に大切なコミュニケーションになります。

基本的には、「努力を褒める」⇨「話を聴く(この時、間で挟まず聞ききる)」⇨「成功/失敗要因を考えさせる」⇨「アドバイスする」という流れで行いましょう。

特に良かった点をアドバイスする際には出来るだけ具体的にし、努力を褒めるようにすることが重要です。 逆に叱る際には感情的にならず簡潔にしましょう。

もし感情的になってしまっている際には少し時間を置いてから叱るなど、最終的に部下が内省をし易い伝え方を心がけましょう。

3-6.OJT中のよくある悩み

OJTを行う中では日々あらゆる悩みが出てくるかと思います。ここではその中でも代表的なものについて解説します。

3-6-1.権限委譲が行えない

任せることが不安で部下に権限委譲を行えないと困られる方も多いのではないでしょうか。

言うまでもなく部下の成長スピードにあわせ任せてみることが大切ですが、この点の悩みは尽きないものです。

こうした時は、「任せる」にグラデーションをつけることで整理がしやすくなります。

具体的には、1業務を難易度別にプロセスを整理し、一度に全てを任せるのではなく、段階別に任せていき、「任せる」⇨「確認する」⇨「権限委譲範囲を広げる」というサイクルを踏んでみると良いでしょう。

3-6-2.失敗し落ち込んだ部下をうまく再挑戦へ促せない

特に社会人歴が浅い部下を持つ際には目標が未達成で終わった時や自己判断が誤た時、作業にミスが生じたときなど、「できなかった」という体験が深く心に深く刻まれてしまい過度なプレッシャーを負いがちです。

このような場合には、ただ「再挑戦しよう」と促しても効果が薄く、一度気持ちを切り替えさせる事が重要です。 具体的には話を傾聴した上で、失敗の中から得たものを正しく理解させ、学んだことを踏まえ次に繋げるように促しましょう。

3-6-3.部下に手本を見せたいが受け入れてもらえない

OJTに近い制度として日本では古くから徒弟制度がありますが、古来からのの考え方として古典芸能に「守破離」があります。

まず、「型」を習得し、実践を経て自らの型を作っていくわけですが、何もわからない中で周囲の話を聞かず自分で行おうとする部下に対してはこの「型」を学ぶ重要性を本人に理解させる必要があります。

また、逆にいつまでも教えられた行動しか取らない部下に対しては、成熟度に応じて「型」を守り続けていても一定以上成果が出ないことも伝えていくことが重要になります。

3-7.近年のOJTの課題点

高度経済成長期からデスクワーカーの人材育成手法として普及してきたOJTですが、バブル崩壊により現場人員が削減されると、管理職であった中堅社員が現場仕事も担うようになり、部下指導や管理の余裕が失われていきました。

そのため近年では管理職自らが手取り足取り人材育成を行うこと以外に、職場の外へ学習機会を移し、人材開発の効率性を高める動きも活発化しています。

また、詳しいOJTの内容や手法に関しては、OJTの意味とは?計画の立て方、研修の内容・手法・メリットをご紹介をご覧ください。

4.Off-JT(Off the Job Training)

OJTが職場での指導を指すのに対し、OffJTは職場を離れて行う社員教育を指します。座って勉強をするため「座学」や「教室・講義形式」などと呼ばれますが、この他にもゲームやグループワーク等、多様な形式で行うケースもあります。

Off-JTというと日常から離れた所で場所を借り行う印象がありますが、最近では勤務地近くの部屋で短時間学習をし、すぐに職場へ戻り試すようなOJTに近しい形も増えています。 また、インターネットやイントラネットを活用した学習方法もありますので、併せて活用を検討するのが良いかもしれません。 

4-1.Off-JTプログラム・集団研修によくある勘違い

研修効果を高めようと考えた際に真っ先に浮かぶのは優れた講師を招聘することですが、ロバート・ブリンカーホフによれば、研修の各プロセスによる影響度は以下の通りになるとのこと。

  • 研修前40%
  • 研修中20%
  • 研修後40%

つまり、研修がいかに素晴らしい時間になろうとも、20%程度の影響しか出ず、研修前後でフォローアップが出来なければ効果は80%減少するということです。

100%を目指すためには、研修の実施前・実施中・実施後をひとつのプロジェクトと捉え参加者へ効果的にアプローチ出来るよう設計する、プロジェクトマネジメント的視点が必要不可欠になります。

4-2.集団研修において重要な関係者

研修の関係者で重要な人を問われれば、企画運営者、講師、受講者の3名が大きく上がることになるかと思います。

ただ、先の通り研修をひとつのプロジェクトとみなし時系列で考えた場合、研修の依頼主(多くは最終評価者)と受講者の上司が大きなステークホルダーとして加わります。

まず、依頼主については研修実施前の段階でニーズを詳細に聞いた上で研修に期待する効果の目線があった状態にしておくことが重要です。

そして何より、研修後については受講者の上司のフォローがなくては成り立ちませんので、成果を最大化するためにも協力を仰ぐ事は欠かせません。

4-3.多様化する研修手法

後述している自己啓発(Self Development)でも触れていますが、近年の技術革新による影響もあり一口に「研修」と言っても社外で集団で受けるもの(長期/短期)から自宅で受講するものまで様々です。

4-3-1.社外研修

従来、研修といえば留学などを除いて社内を指すケースが大半でしたが、長期短期様々な社外研修が行われています。

長期社外研修の最たるものはビジネススクールへの派遣(一般的には2年ほど)、講義型・相互交流(インタラクション)型様々ですが、近年はインタラクション型に移りつつあるようです。

また、これまでビジネススクールというとフルタイムで学習するスタイルが中心でしたが、夜間開講など、在り方も多様化してきている点も特徴です。

短期研修については会社による費用負担が行われるケースも多く、社内研修では補えない内容を受講する上で役に立つ他、社内常識が通じない場に少しでも身をおくことで客観的に自身を見つめる役割もあり、経験学習の促進に寄与します。

4-3-2.社内研修

社内研修については、社外研修と比較し更に手法が多岐に渡ります。

身近な知識のインプットを目的とした講義形式のものから、近年ではパソコンを用いたビジネスゲーム形式、参加者が双方向でコミュニケーションを取りながら行われるワークショップ形式、職場と近い状況下で意思決定を行い思考力を高めるアクションラーニング形式まで様々です。

5.自己啓発(Self Development)

自己啓発(Self Development)は元々OJTや集合研修等のOff-JTで得にくい長期的な人材教育の観点から修得する際に推奨される考え方でした。

例えば、短期的には海外勤務機会が少ないが、長期的に海外展開を見据える企業において、語学研修を行うなどが該当します。

5-1.自己啓発の変容

約20年前までは通信教育を指し、指定された受講講座の中から選択する形式でしたが、近年は通信インフラの発達やIT技術の革新によりe-learningも活用されはじめた他、社会人向けのスクールも増え、以前と比べ選択肢が増え、自己啓発自体も普及しています。

また、選択肢の拡大に伴い、社員自らがあらゆる手段を比較検討出来るようになり、最近では個人の自律的な学習を指し、会社の関わり方は社員自らの開発を支援する存在として移り変わってきました。

6.WBT(Web Based Training )

WBTとは、インターネットやWWWの技術を利用し教育を行うもので、e-learningのうち、特にWEBブラウザやインターネット上の情報やシステムを利用するものを指します。

6-1.WBT普及の背景

先に述べた通り、近年OJTの実施が困難になる中で、現場仕事の新しい伝承手段としてWBT(Web Based Training)の活用が始まりつつあります。

インターネット上に情報の集積地を設けることで企業における必須知識を社員に漏れ無く伝達することが可能になった他、Off-JT(集合研修など)で学んだ知識を復習・補完することが可能になりました。

7.人材別の育成方法

7-1.グローバル人材(海外派遣員)

昨今のグローバル化に伴い製造業を始めとして、グローバルに展開するケースが増えています。

展開を行う場合、効率的に現地運営を行うための方法として、派遣人員を増加させる動きと、現地で人材を育成し自走を目指すケースが見られますが、現状では現地人材の育成スピードよりも産業機能を海外へ移転させるスピードの方が早く、日本国内で生じている労働力人口の減少や国内での人員採用コストなどを鑑みれば、派遣人員は継続的に求められるであろうことは間違いありません。

しかし、海外派遣スタッフの育成といった際、現地言語に徹しているという企業の方も多いのではないでしょうか。言語以外の点は前任者からの引き継ぎや人員の自己努力に任せてしまっているケースが散見されます。

もちろん、現地言語はコミュニケーションを取る上で不可欠ではありますが、それと同等に重要な点として「現地の文や社会・経済」を知ること、そしてこれを教育しておくことにあります。 アメリカ等、国内に多様な人種・民族を抱える国では、価値観の相違による衝突、それによる生産性の悪化を懸念し、「多様性管理(ダイバーシティ・マネジメント」が事業経営において重要な役割を担っているのです。

7-2.リーダーの育成

リーダーの育成を考えるにあたっては、「リーダーとは特性であり生まれついてのものである」という考え方は捨てましょう。

アメリカのリーダーシップ論研究を行うウォレン・ベニスも最も危険なリーダーシップの考え方として、「リーダーは生まれるもの、リーダーシップには生まれつきの要因があるというものである。この神話は、人々は単に一定のカリスマ的特質を持っているか、持っていないかだと決めて掛かる。これはナンセンスだ。事実、その反対が真実である。リーダーは生まれるのではなく、作られるのである。」と述べています。

また、アメリカンフットボールの名コーチとして知られる、ビンス・ロンバルディも、 「リーダーは生まれない、彼らは作られる。そして彼らは他のものと同じで、ハードワークによって作られる。他の目的についてもそうだが、リーダーを作るという目的を達成するために支払わねばならぬ代価が、それである。」と述べているように、時間をかけ育てるものであるという認識を正しく持つことが最初の一歩になるでしょう。

その上でどのように育てるかですが、座学や講義ではなく、時間をかけ実際のビジネスの場で経験を摘み、時に選別を行うという考え方と、教科書を用いたOJTや疑似体験を踏まえるOff-JTによっても育成が可能とする、大きく2つの考え方があります。

前者について、カナダの著名な経営学者、ヘンリ・ミンツバーグ教授は「リーダーシップを水泳に例え、本や座学での学習は困難である」という考え方を持っており、

後者については近代工業を飛躍的に変化させたヘンリー・フォードが、「1ドルで買った本、そして習得された1冊の本がその人の人生を大きく変え、リーダーシップ開発のきっかけになることもある」と述べているように、人により意見が異なることがわかります。

7-3.ベテラン・経営幹部の育成

ご自身の会社を思い浮かべた際、ベテラン・経営リーダーと呼ばれ組織のトップ層になるほど育成に関しての化学は遅れているのではないでしょうか。

しかし、急速に時代が移り変わる中ではこの層の育成を避けて通る事はできないと感じているところかと思います。

W.エドワード・デミングの言葉「アメリカ産業の病とそれによる失敗の基本原因はトップマネジメントにマネジメントが出来ないことである。」にもあるように、経営幹部人材(トップマネジメント)を育成することの難しさは全国共通といえます。

中核人材・経営幹部・経営者が育つ背景は「生涯学習」であり、過去の経験の積み重ねであることが多いため、キャリア形成の要点が書かれた学術書・ビジネス書は汎用性が薄い傾向にあり、伝記のような生まれ育ちにスポットを当てたもののほうが相性が良い傾向にあるとの考え方があります。

7-4.育成失敗の要因

ホートンの議論によれば、

①トップマネジメントに必要な技能や経験を正確に把握できていない。

②長期的に人事考課をしておらず、推し量れていない。

③選抜過程に十分な時間をかけていない。

④選抜基準に公平性・客観性を欠いている。(表層しか見られていない。)

⑤候補者の審査に時間をかけられていない。

上記5つが主な原因と言われており、対応策としては、周囲の人々からの評価を集計することや、経営幹部候補のディスカッションの場を見て評価を行うこと、マネジメンストスキルを評価出来る社外のアセスメントセンターを活用することなどが挙げられます。

いずれにせよ、しっかりと客観情報を踏まえ検討のできる枠組みを設け、時間を掛けた上で十分に吟味することが大切です。

8.企業事例

ここまで主に人材育成手法とそれぞれの特徴について述べてきましたが、具体的に各社どういった取り組みをしているのでしょうか?数社事例を挙げていますのでご参考ください。

8-1.博報堂の事例

博報堂大学著の「「自分ごと」だと人は育つ 「任せて・見る」「任せ・きる」の新入社員OJT」を元に、同社の取り組みをご紹介します。

8-1-1.取り組みの背景

高度経済成長期が終わり日本とその周辺の経済環境が大きく変化している中で、「会社で働く」こと自体も根本的に変容を遂げています。

そうした過渡期である現在において、同社でも旧来型のOJTが機能不全に陥ってしまい、新入社員に向けたOJTは改革すべき大きな課題でした。

8-1-2.原因

具体的な原因として書きの5つを挙げています。

  • OJT担当者の、「OJT」への捉え方の変容(誉れでありリーダーへの一歩→面倒な仕事)
  • 上意下達の指示命令形の育成に合理性がなくなった。
  • 世の中の移り変わりの速さに対し上司や先輩の持つ過去のノウハウだけでは太刀打ちできなくなってきた。
  • 組織の面でもフラット化に伴いユニット単位の組織規模が縮小し一人あたりの業務領域が拡大、同じ組織に所属する社員間の相互関係が希薄化。
  • 誤った成果主義の蔓延による実務を通じて相互に育てあう自然発生的な育成システムの風化

8-1-3.対応策

同社では特に新卒1年目の育成における考え方を大きく転換しました。

具体的には、スキルや知識は当然重要である一方で、目まぐるしく変化する環境に適応・乗り越える素地を養うため、 最初の一年間で伝えるべき事象を「意識(マインド)」に集中し育て、2-3年目の素地を作ること」とし、 各論の伝達から入るのではなく、新人・若手自身に「自分ごと」化する力をつけてもらう事でした。

具体的には、

①仕事のオーナーシップを持った上でアウトプットを行う

②未経験でも「やり遂げる」という姿勢を持つこと

③仕事に対し自分なりに意味づけをし取り組む状態

④所属チームに対する安心感と信頼感が育まれている状態

これらを積むことにより、自信が身につくに伴い失敗への不安が軽減され、主体性をもった行動の促進に繋がると述べています。

また、これを育むにあたってのハウツーは前段で触れているOJTの概要およびポイントと同様で、「気づかせながら歩ませる」こと、つまりフィードバックが肝となります。

8-2.アサヒビール株式会社の事例

同社は古くからOJTに力を入れる企業として有名ですが、厚生労働大臣表彰事例「キャリア支援企業好事例集」を参考に、具体的な取り組みをご紹介します。

8-2-1.具体的な施策

1年目の新卒社員の育成にあたり古くからOJTを用いており、指導役の先輩社員を「ブラザー・シスター」とし、入社後4ヶ月間は彼らが教育担当となり新入社員を指導しています。

ブラザー・シスターになるためには人事部審査通過ののち、事業部長特命のもと行われ、加えて2年目以降の社員についても、キャリア相談員によるキャリアアドバイザー面談という形で経験豊富な社員が上司ー部下以外の斜め上の関係としてサポートを行うことで、職場への継続的な定着とモチベートを行っています。

9.参考書籍のご紹介

本記事作成にあたり参考にさせて頂いた書籍や、より知識を深める上で参考になる書籍をご紹介いたします。

・「自分ごと」だと人は育つ 「任せて・見る」「任せ・きる」の新入社員OJT (博報堂大学 著)

・OJT完全マニュアル—部下を成長させる指導術 (ダイヤモンド社人材開発編集部 / 松尾 睦 氏 著)

・パフォーマンスを生み出すグローバルリーダーの育成 (永井 裕久 氏 / キャロライン ベントン氏 著)

・経営学習論: 人材育成を科学する (中原 淳 氏著)

・人材育成論入門 (川喜多 喬 著)

・人材開発マネジメントブック-学習が企業を強くする (福澤 英弘 氏 著)

10.まとめ

育成の手法や人材別育成方法については日本では徒弟制度をはじめとし、古くから議論されていましたが、特に昨今は時代変化の波が激しい事からあらゆる方面で議論が進んでいる領域になります。

  • 育成手法が、OJT/Off-JT/自己啓発の大きく3つに分けられ、それぞれにメリット・デメリットがあり、時代とともに移り変わっていること
  • グローバル人材や経営幹部候補など、タイプによりケアすべき事が更に分かれていくこと

この点について、関心のある方は参考書籍にも目を通していただくことをおすすめします。

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