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連載:第10回 経営危機からの 復活

看護師200名中60名が離職。医療法に翻弄される地方病院の人材施策

Logo markBizHint 編集部 2020年4月5日(日)掲載
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医療は暮らしに欠かせない重要なインフラであるからこそ、国・法によってしっかり統制されています。その一方、医療法の変更は病院の経営を大きく翻弄する要因にもなり得ます。約640床の規模を誇る成田病院。100年以上にわたって、千葉県成田市周辺の医療を支えてきました。その間、幾度もの法改正や経営危機を乗り越えてきた同院は、人材確保や職場改革で独自の取り組みを行っています。今回、同院の理事長である藤崎壽路さんらにお話を伺いました。

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医療法人凰生会 成田病院
理事長 藤崎 壽路 さん(写真左)

東京慈恵会医科大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学院医学研究科へ進学、医学博士。1997年6月に医療法人鳳生会の理事長に就任。明治35年に開設された110年余りの歴史を持つ、地域に根差した成田病院の経営の舵を取る。看護学校の運営に早期から取り組み、成田市とも連携しながら地方病院の人材確保に尽力している。


病院の事業承継、まずは親族。増えつつあるM&A

――100年以上の歴史をもつ成田病院ですが、これまで続いてきた大きな理由は何でしょうか?

藤崎壽路氏 (以下、藤崎):家族・親族から代々医師を確保できたというのが大きいと思います。我々のような地方の私立病院ですと、何より医師の確保が難しい。そうなると血縁関係や家族のツテ、医学部時代の同級生などから確保するケースが多くなります。地方の総合病院に勤めたいとやってくる医師はあまりいませんから。

――家族から医師を輩出するのはなかなか大変ですよね。

藤崎: 医師になるまでにはとてもお金がかかります。特に教育費が大きな投資になります。どうしても医師が確保できなかった場合、養子や婿をもらうなんてこともあります。しかし最近は、医療業界もM&Aが増えていますね。病院の事業承継がしやすいような制度も整備されつつあります。経営母体が不動産会社や建設会社に代わった病院もありますし、医療法人が他の病院を買収するケースも増えています。

――他業種が医療業界に参入する理由は何でしょうか?

藤崎: 基本的に病院経営は国の制度に沿って運営していくのが大前提です。しかし、国が決めた制度も完璧ではありません。制度変更の結果、“うまみ”のある診療制度が生まれることがあります。異業種からの参入を見ると、そういった利益の出やすい診療を中心に展開する事例が多く見受けられますね。

例えば、訪問診療は国が力を入れている分野で、訪問診療専門の医院も増えてきています。訪問診療専門の医院ができる分にはよいのですが、認知症で同意能力に問題のある患者さんに儲け重視で医学的根拠のない不必要な医療や介護サービスを押し売りする医院や業者、それからキックバックが前提の斡旋会社も出てきました。 そのため、これらの業者の行為が社会的な問題として浮き上がり、訪問診療の診療報酬の切り下げが行われました。診療報酬を切り下げることで、不必要な参入の抑制やうまみを感じなくなった悪徳業者の撤退が起こるからです。

このように医療は国によってコントロールされているので、 儲け重視の他業種からの参入は一時的には利益が出ても、長期的に経営していくのは難しい でしょうね。

法改正の結果、看護師が次々と離職。閉鎖状態になって見直した職場環境

――病院経営にとって、医療法の変更は大きな影響がありますね。

藤崎: その通りです。例えば6年前、急性期病院(急性疾患や重症患者を24時間体制で治療する病院)や大学病院の診療体制を充実させるという政策のもと、それらの病院の看護師の雇用定員を1.5倍にすることになりました。

その結果、成田市にある当院では 200名いた看護師のうち50~60名が退職し、都市部や近隣の急性期病院に転職 していきました。当時、 多くの地方の慢性期病院で同じことが起こっていました。

――看護師の大量退職は病院経営にどのような影響をもたらしたのでしょうか?

藤崎: これも国の制度なんですが、その病院で診られる患者数、病床数は、看護師の数によって決まります。当院は一般病床が180床あるのですが、当時の看護師の大量退職の結果、30床程度しか診られなくなってしまいました。

そのままではもちろん法令違反になります。仕方がないので、入院していた患者さんには近隣の病院へ移っていただくこともありました。新しい患者さんは受け入れることができず、一般病床はほとんど閉鎖状態になってしまいました。

――どのように切り抜けられたのでしょうか。

藤崎: まずは、 残ってくれた看護師の待遇改善 から始めました。看護師の仕事は精神的にも肉体的にも大変な仕事です。当時、午後6時の定時以降、午後9時頃まで残業するのが常態化していました。

そこで、看護師1人あたりに担当してもらう患者数を15人から10人に減らしました。つまり、当院で受け入れられる患者さんの最大数を減らしたのです。

こうして看護師の負担を大きく下げ、また労働時間管理も厳密に運用するようにしました。いわゆるワークライフバランスを重視した働き方ができるよう変えていきました。

実はこれは、病院の収入とも関係しています。看護師1人あたりの患者数が減ると、1診療当たりの診療報酬は上がります。

1床あたりの診療報酬を上げ、看護師の仕事量を抑え、その中で受け入れ患者数を最大化するような調整を進めるイメージです。こういった方向転換も「国の制度を把握し、その中でいかに効率化できるか」という考え方が基本になっています。

赤字でも看護学校を運営する。人材確保は地方病院の大きなテーマ


平成3年に成田病院が開設した二葉看護学院

――成田病院では看護学校も運営されています。それでも看護師の大量退職・看護師不足が起こるんですね。

藤崎: 成田病院では平成3年から看護師の育成を始めました。かれこれ30年近くになりますね。看護学校の運営は人材確保が大きな目的でしたが、6年前の危機を経験した結果、看護学校の奨学金制度の給付人数を大幅に増やしました。学校卒業後、4年間成田病院で働けば奨学金の返済を免除する返済免除制度があるのですが、その定員を5名から20名に増やし、人材確保を強化しました。また、地域医療の拡充という面から成田市にも掛け合い、成田市でも奨学金を設定してもらいました。成田病院の奨学金と成田市の奨学金は併用受給が可能です。

――奨学金を考えると、看護学校の経営は大変そうですね。

藤崎: 看護学校の運営は基本的に赤字 です。それでもやらないわけにはいきません。いまや、当院の人材確保の重要なルートですから。人材確保は、地方病院にとって常に大きな課題なのです。

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