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連載:第89回 経営危機からの復活

ボトルネックは社長自身とわかっていたのに。社員の離職を止めたリーダーが貫いたこと

BizHint 編集部 2025年7月16日(水)掲載
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「社員一人ひとりとの対話こそが成長の鍵」と信じ、毎日10時間を社員との対話に費やしていた株式会社フリースタイルの青野豪淑社長。しかし組織拡大とともに離職率は悪化し、過去最高の24%を記録。そのとき青野社長が思い至ったのは「ボトルネックは自分自身」という現実でした。青野さんはこの危機をどのように乗り越え、現在の離職率7%を実現できたのか。そこには松下幸之助の教えから着想を得た、独自の解決法がありました。

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株式会社フリースタイル
代表取締役社長 青野豪淑(あおの たけよし)さん

1977年10月、大阪生まれ。高校卒業後、大手食肉店に就職。その後営業職を経て経営コンサルタントに転身。名古屋に拠点を移し、会社員として働きながら、私生活では繁華街で出会った若者たちに就職先を紹介するボランティア活動を開始。2006年に株式会社フリースタイルを設立。IT未経験者をプログラマーに育成する独自の人材育成手法を19年間実践。


ボトルネックは社長である自分自身。わかっていたのに、放置していた。

――貴社の離職率は、業界内ではとても低い水準とのこと。

青野豪淑さん(以下、青野): 当社はSES(システムエンジニアリングサービス)事業を手掛けているのですが、業界の平均離職率は20〜30%ともいわれています。

SESは他社に出向してプログラマーとして業務を請け負うので、自社への帰属意識がどうしても低くなりがちなのですが、ありがたいことに昨年度の当社の離職率は7%でした。

しかし5年前の2020年、コロナ禍では離職率が過去最高の24%を記録。当時の従業員数は150人ほどで、そのうち36人が辞めてしまう状況でした。

――コロナ禍で離職率が悪化したということでしょうか?

青野: それも要素としてはあったと思いますが、 根っこの原因は私自身の問題だったと考えています。

それまでの私は「社員一人ひとりとの対話こそが成長の鍵」と考え、とにかく対話を重視していました。「1日10時間ルール」を自身に課し、とにかく10時間、社員と対話することを徹底していたんです。

1日のうち、自由に使える時間の大半を「人と向き合うこと」に使う、という強い意思で「10時間」と決めました。数字自体に特別な根拠があったというよりも、「自分の時間を“ほぼ全部”社員のために使う」ことを可視化するために課した数字で、10人と1時間ずつでもいいですし、極論1人と10時間でもOK。

傍から見ると、休みなく社員とコミュニケーションを取っている感じで、業務中の面談はもちろん、日報や週報へのコメント、個別の1on1、チャットでの雑談、業務外だと仕事終わりに「ラーメン食べに行こう!」と誘って食事にも行っていました。そうやって対話の機会を作ると、自然と社員から相談を受けることも増え、「仕事を辞めたい」という悩みまで正直に打ち明けてくれる社員も中にはいました。

こうした対話は、社員が70人規模くらいまでは十分機能していました。しかし、80人、90人と組織が拡大するにつれて限界に近づいていき、150人になった時には明らかに限界を超えていました。

社員からすれば、それまで社長とは月1回は必ず対話していたものが、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回となっていきます。 私自身、明らかにうまく回っていないと感じるようになっていましたし、退職者も徐々に増えていっていました。

「自分の何がいけなかったのか?」

出した答えは 「自分一人で社員の士気を上げようとしていた」 ことでした。ある意味「ワンマン」に通じる意識・行動が根底にあると気づきました。

社員数が増えるにつれ「一人一人と対話するリソース」はどんどん減少していく。少し考えればわかることですし、それこそ10年15年前からいつかそんな日がくることは想像していました。それでも、その備えを怠っていた。

ボトルネックは社長である自分自身。頭ではわかっていながら、放置していたわけです。

そこで、そのボトルネックを解消する取り組みを始めます。それが 「もう一人の私をつくる」 というもの。 これにより、当社の離職率は低下していくことになりました。

――ボトルネック解消のために「もう一人の私をつくる」。どういうことでしょうか?

青野: これは松下幸之助さんが引退される際に、残された役員の方々が取り組んだという逸話に倣ったものです。

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