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連載:第90回 経営危機からの復活

業績は上がったのにみんな離れていった。売上半減からV字回復したリーダー、主体性あふれる組織を作るまで

BizHint 編集部 2025年7月29日(火)掲載
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「売上が上がっても人が辞めていく」「社員はみんな暗い顔だった」。そう振り返るのは、大阪市中央卸売市場で水産仲卸業を営む株式会社三恒の3代目社長・三上正剛さんです。社長就任直後、10人いた社員は一斉退職により2人まで減少。売上高も10億円から半減する危機に直面しました。その後、一度は会社の立て直しに成功したものの、社員は離れていく状態だったそうです。それまで、会社を守るために売上至上主義を貫いていた三上さんですが、自分自身の大きな「間違い」に気づきます。そこから経営方針を転換した結果、社員の主体性が高まり、2024年度の売上高は36億円と飛躍的な成長を遂げました。三上さんが気づいた「間違い」とは何だったのか?詳しく伺います。

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社員が一斉退職、月間売上ゼロ。存続の危機だった企業はなぜ復活できたのか?

――社長就任当時の状況を教えてください。

三上正剛さん(以下、三上): 父親の病気がきっかけで25歳で家業に入ったのですが、父が亡くなったことで、急遽28歳のときに3代目社長に就任しました。入社以来、鮭の加工作業しか担当していなかったため、ほかの魚のことはわからず、経営についての知識もなかったので、はじめは商売がうまくいきませんでした。それが2001年のことです。

すると、「こんな頼りない若造に社長は務まらない」と判断されたのでしょう。当時のナンバー2を含む社員6名が一斉に退職したんです。そのときはすごくショックでした。当時在籍していた10人のうち営業部社員6人を含む社員たちが次々に退職し、最終的に残ったのは私と2名の社員だけとなりました。

——社員のクーデターによってどのような影響がありましたか?

三上: 営業部の社員たちは顧客を連れて独立していったため、売上がゼロになった月がありました。残った2名は事務と加工担当で、営業担当ではなかったため新規開拓ができない状況。社長に就任した直後の2002年、売上高は10億円から半減しました。

幸い人件費が大幅に削減されたため、何とか倒産は免れましたが、売上が月によってゼロになるなど事業の先行きがまったく見えない状況でした。周囲からも 「三恒はもう潰れる」 と言われ、事業継続に対する危機感を抱いていました。

「歴史のある店を、自分の代で潰したらあかん」。 あの頃はそれしか頭になく、毎晩悔し涙を流す日々でした。

しばらくして、これまで加工場で培った鮭を切る技術を活かし、鮮魚店向けに、鮭の切身加工代無償の販売サービスを始めたところ、取引先から好評を得ました。鮭は消費者に人気で売れる商品なのですが、鮮魚店にとっては切り身にするのに手間がかかるため、敬遠されがちな商材でした。そこで当社が鮭を切り身に加工して鮮魚店に納品するサービスを続けた結果、少しずつ売上が戻っていきました。取引先からは「アジもお願い!」「次は鯖も!」と、ほかの商品も注文いただけるようになり、徐々に取り扱いアイテムが広がっていったんです。

――社員2名の状態から、どのように人員を確保したのでしょうか?

三上: 知り合いや業界関係者からの紹介が中心でした。アルバイトで入ってきた人を正社員に登用したり、知り合いの息子さんを紹介してもらったりして社員6名、アルバイト5名まで増えました。

特に20代の若い元気な社員が多く、当時は本当に家族のような関係で、仕事だけでなく一緒に飲みに行ったり遊びに行ったりもしましたね。毎日魚を仕入れて売るという営業活動を繰り返すうちに、みんなの営業スキルもどんどん向上していきました。若いので機動力もあり、一生懸命な姿勢がお客様にも好評で、どんどん売上を伸ばしてくれるようになったんです。

私も「とにかく売上を上げるんだ」と社員を叱咤激励し、寝る間を惜しんでがむしゃらに働き続けた結果、2008年には売上高が元の10億円まで回復しました。また、鮭の加工サービスから始まった商売が、どんどん取り扱い品目が増えていったことで売上が上がり、利益率も大幅に改善したことで、社員の月収は2倍以上、賞与は5倍に増やすことができたんです。

ところが、喜ぶ私とは反対に、社員はなぜか暗い表情。 家族のようにかわいがっていた若い社員たちが3名ほどいたのですが、そのうち2人が辞めて、独立してしまいました。どこか裏切られたような気持ちがして、正直このときが一番悩みましたね。

しかし、振り返ってみると、当時の私は大きな間違いをしていたんです。この間違いのせいで、売上や賞与が上がっても社員たちが離れてしまっていたのだと気づきました。

――「大きな間違い」とは一体?

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