連載:第20回 中竹竜二さんが聞く【新しい組織・リーダー論】
自律型組織はタイヘン。自由闊達に動けるのは一生懸命話し合っているから【影山知明・クルミドコーヒー、胡桃堂喫茶店 店主(後編)】
外資系コンサルティング会社を経て投資ファンドを立ち上げたかと思えば、2008年からは東京・西国分寺でカフェを開店した影山知明さん。後半ではクルミドコーヒーの組織論について伺ってきます。個々人が自律して動く組織形態が話題になっていますが、その要件には「見えない部分」まで「話し合ってコミュニケーションをとること」と二人は指摘します。
クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店店主 影山知明さん
1973年東京都西国分寺生まれ。東京大学法学部に進学。卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立系ベンチャーキャピタルを共同創業。総額30億円のファンドを立ち上げる。2008年に西国分寺に多世代型シェアハウスをオープン。1階にカフェ『クルミドコーヒー』を開店。2017年には『胡桃堂喫茶店』の営業も開始。ほかミュージックセキュリティーズ(株)取締役。著書に『ゆっくり、いそげ 〜カフェからはじめる人を手段化しない経済〜』(大和書房刊)、『続・ゆっくり、いそげ』(クルミド出版刊)。
前編のまとめ
- 最初から場づくりをしようと思っていたわけではない。1人ひとりのやりたいこと、興味があることに向き合い、それを支援してきたことで、活動が自然と広がってきた
- 仕事に人をつけるより、人に仕事をつける──組織の継続を重視して個性を抑えるような経営はしない
- 機械をつくるようにではなく、植物を育てるような経営
- 「小さく信頼してあげること」でコミュニケーションが始まる。お互いの信頼があるからこそ、それぞれの自由に任せられる
- 自分がやりたいことをちゃんと言語化できている人は少ない。やりたいことは、他社との対話を通じてだんだん明確になっていくもの
ルールをつくれば破った時のルールも必要、ルールだらけになる
中竹竜二さん(以下、中竹): 前編で影山さんがおっしゃった「小さく信頼してあげる」の話は面白いと思いました。禁止事項ばかりの空間は誰も近寄りたくない。ゆったりすることが目的のカフェにはそぐわない。ギブアンドテイクで小さなギブから始めることで、相手も小さなギブを返してくれる。小さいギブ、軽いギブだから無理もせずに対応できる…小さな信頼がコミュニケーションの始まりだと思いました。
影山知明さん(以下、影山): そうですね。
中竹:私も「組織づくり」で、嫌いだったのが禁止事項をつくること です。組織を規制するルールがあれば、それをなくすこと。ルールをつくらないようにしてました。1つルールをつくると、仮に誰かがそのルールを破ったときどうするのか……。破った時のルールをさらに決めないといけなくなる。ルールだらけになり、ルールを管理することがマネジメントになる。中にいる人たちもルールを守ることが大事になっていく。一体何のために集まっているのか? 目的が見えなくなるんです。
じゃあルールを無視すればいいのか、リーダーは何もしなくてもいいのかといえば違います。みんなが集まる以上、例えば、約束の時間は守ってほしい。破った時のペナルティーを事細かに決めることはしませんが、「時間はみんなにとっても大事だから守ろう」というスローガンはリーダーとして唱え続けてます。あと、それを実践している人たちを讃えることです。別に私の理想に従ってもらうわけではなく、場の目的を忘れないようにするためです。
影山:マネジメントすべきはヒトではなく、そのカルチャーですよね。
中竹: ウィンニング・カルチャーをもつ組織というのは大胆で自由なんです。例えば、世界強豪のラグビーチームであるニュージーランド代表の『オールブラックス』。オールブラックスは規則・罰則が極端に少ない。実は、オールブラックスの選手に選別される過程までは、かなり厳しい教育的指導・罰則があるんですが、オールブラックスになったとたんに何もなくなる。これができるのも信頼・信用・リスペクトがあるから。信頼されているがゆえに、選手たちもオン・オフにかかわらず、信頼に応えるパフォーマンスをみせようとしているんですね。
経営者はどこまで社員を自由にさせられるか
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