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VUCA時代に求められるリーダーシップの役割とは。育成方法もご紹介

BizHint 編集部 2019年8月6日(火)掲載
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リーダーシップ(leadership)とは、「共通の目標の達成に向けて仲間を巻き込む力」です。変化の激しい時代の中で組織やチームが数多くの結果を出すためには、リーダーと呼ばれている人物だけではなく、全てのビジネスパーソンがリーダーシップを正しく理解し、意識的に身につける必要があります。今回は、グロービス経営大学院でリーダーシップ開発の教鞭をとる芹沢宗一郎さんに、リーダーシップの定義や2つの機能、発揮するために必要な3つの役割とスキル、人材の育成方法、今後求められるリーダーシップについて語っていただきました。

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【関連】リーダーシップとは?意味や定義、種類、必要なスキルなど徹底解説 / BizHint

リーダーシップの定義

リーダーシップ(leadership)を定義付けるとすれば、 共通の目標の達成に向けて仲間を巻き込む、他人に影響を与える力 だと考えています。ビジネスシーンでは日々の変化が激しく、すべての人にリーダーシップ(=他人に影響を与える力)が必要です。

時代と共に求められるリーダーシップは変化しています。

戦後からバブル期頃までは、現場に大きな質的な変化がなかったため、どちらかというとポジションパワーや強制力といったトップダウンのリーダーシップが有効でした。また、昔は、優れたリーダーに元々備わっている資質、特性といったパーソナリティに焦点を当てる「 特性理論 」が主流だったのです。

しかし、バブル崩壊後は質的な変化が激しくなり、今までと同じやり方が通用しなくなりました。VUCA時代といわれる不確実性の高い現代では、そのリーダーの特性が全ての状況下で通用するとは限りません。そのため、時代の変化とともに、リーダーシップの考え方も、リーダーとして果たすべき“ 機能 ”や“ 行動 ”を重要視する「 行動理論 」へ変化しています。

リーダーシップに役職やポジションの有無は関係ありません。 たとえば、現場の人たちが情報を上へと伝達し、役職者といったポジションについている人が考えた方向性や戦略の軌道修正を行う瞬間は、本質的に現場の人たちがリーダー、上司や管理職、経営者がフォロワーとなっています。特に現代のビジネスシーンでは日々の変化が激しく、このように上下の影響力が逆転する状況が頻繁に発生しているのです。

リーダーシップは意識的に身につけられます。そして、 変化の激しい時代だからこそ、全てのビジネスパーソンにリーダーシップが必要なのです。

リーダーシップの2つの機能

では、このリーダーシップに求められる機能というのは何なのでしょうか。リーダーシップの機能は大きくわけて以下の2つです。

  1. 結果を出すための「 目標達成機能
    リーダーは共通の目標を達成し、共通の結果を出すため、成果に対して関心を持たなければなりません。この機能はパフォーマンスを重視しているため、パフォーマンス軸とも呼ばれています。
  2. 個人の力を最大限に引き出し組織の力を最大化させる「 集団維持機能
    共通の目標をリーダーが一人で達成することはできません。そのため、動機付けや人材育成を通じて、チームメンバー一人ひとりの力を最大限に引き出してあげる必要があります。先述のパフォーマンス軸に対し、こちらは人間に対して関心を持つ軸です。

成果への関心人への関心 という2つの軸。 この2つが、リーダーが共通に持たなければいけない機能・軸です 。 今の時代は変化が激しく、なかなか簡単に結果が出ないため、つい「成果」への関心に注力してしまいがちです。しかし、そうなるとメンバーの育成、つまり人への関心の方が薄れてしまうため、そのバランスがとても重要なのです。

リーダーシップとマネジメントの違い

ちなみに、リーダーシップと混同されやすいスキルに「 マネジメント 」があります。 どちらも重要なスキルですが、この2つの違いを正しく理解しておくことが大切です。

リーダーシップとマネジメントの違いについて、ハーバード・ビジネス・スクールの名誉教授であるジョンP.コッター氏は次のようにまとめています。

マネジメントは目標ありきで始まりますが、リーダーシップはそれをまず決めなければいけない。そのため、変化の激しい時代にはリーダーシップが欠かせないのです。 マネージャーや経営陣、俗にマネジメントと呼ばれる方々は、今後リーダーシップ型のマネジメントが求められます。

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リーダーシップを発揮するために必要な3つの役割とスキル

先ほどご紹介した機能をはたすため、リーダーシップに必要な3つの役割があります。 そして、それぞれの役割を果たすために必要なスキルがあります。

それぞれ順を追って説明していきます。

1.ビジョンの設定

まず、「 どのような成果を出さなければならないのか 」ということをしっかり決める必要があります。

会社や組織であれば、自分達の会社は何のために世の中に存在しているのか、何を果たさなければいけないのかといったビジョンやミッション、個人であれば、自分の立ち位置での成果や目標を明確にすることが、最初にやるべきことです。

今の時代は変化があまりにも激しいため、どれだけ多くの情報をインプットしたとしても10年後の世の中の姿を完全に言い当てることは誰にもできません。そのため、成果や目標を決めるのは簡単なことではありません。しかし、だからといってリーダーがいつまでも目標や目的を決められなければ、部下や仲間たちは不安になってしまいます。

そのような状況に陥らないようにするため、 リーダーはたとえ先が見えなくても「こういう世の中にしていきたい」という強い意志を示さなければなりません。 つまり、変化が激しい時代では、 予測よりも自らの主観にもとづく意志 がより重要なのです。

では、このように強い意志をもってビジョンを語るためには、具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。それは、「 洞察力 」と「 構想力 」の2つです。

洞察力と構想力

洞察力 とは、世の中に無数に存在する変化の変数の中から自社や業界に大きなインパクトを与えるものを選別し、それらの因果関係を可視化することによって 今後起きるであろう周囲の変化を統合して考える力

そして 構想力 とは、その変化の中で新たに生まれる社会の課題やお客様のニーズに対して自分たちの強みをどのように繋げるのかを考え、 自分たちにしかできない形で提供価値を創り出す力 です。

この2つのスキルを磨くコツは、多種多様な知識をインプットすることです。これからの時代は業界内だけでなく、他業界やマクロ環境、世界情勢にまで視野を広げることが必要となります。 自発的に情報に触れ、積極的にインプットしていくと、少しずつ頭の中に様々なイメージが湧くようになり、それが洞察力や構想力の向上につながります。

2.動機付け・育成

リーダーは目標や方向性を決めるだけではなく、部下やチームメンバーが目標達成に向けて突き進めるような環境も構築しなければなりません。

一人ひとりに対して、主体性や当事者意識を持って行動してもらえるように働きかけを行う。それと同時に、様々な変化に対応できる能力を身につけさせる。このように、 部下やチームメンバーを育成し、当事者意識を持って働けるような環境作りをしていくというのが2つめの役割です。

この役割を果たすためには、「 コミュニケーション力 」と「 サポート力 」が重要になります。

コミュニケーション力

どのような働きかけをすることで、人の心に火をつけることができるのかというのは、一人ひとり違います。これは、当事者意識を持ってもらうということにも同じことが言えます。 当事者意識を持ってもらうためには、その人が働く上で大事にしているものや価値観、強み、能力、現在の状態など、その人のことを理解することが第一歩 です。

つまり、対話による「コミュニケーション」が非常に重要となります。コミュニケーションを通じて相手のことをより深く、より正確に知らなければならないのです。

ポイントは、相手のことをゼロベースで知ろうとし、相手に対して好奇心や関心を持つことです。

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サポート力

相手の関心事や能力、スキル、知識のレベルによって、活躍できる仕事や場所は変わってきます。対話やコミュニケーションによって得た情報により、適切な役割を付与しましょう。

部下やチームメンバーを育てるためには、本人の力量を少し上回るようなストレッチ目標を設定することがポイントです。相手の力量を超えた部分は、しっかりと結果を出さなければならないリーダーにとって大きなリスクですが、メンバーの成長のためには必要です。

結果責任と育成責任の両方を果たすため、リーダーは 相手の力量を正しく評価し、あえて力量を超える仕事を任せ、仲間が最高の仕事ができる環境を作った上で、適切に支援するサポート力が求められます。

また、現場の変化に対して一人ひとりが自分起点で対応するために、メンバー自身の考える力を伸ばすことも重要です。リーダーは、尋ねられたことに対して正解をそのまま教えるのではなく、 相手の意志や考えを引き出し、正解へと導くための傾聴・質問を行っていきましょう。

これらのスキルは意識して努力すれば習得可能です。実践と改善を繰り返し学んでいく力も重要なスキルのひとつです。

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3.決断すること

今の時代のリーダーは、世の中が今後どのように変化していくのか検討もつかない中で、進むべき方向性や一人ひとりに対する役割付与を決めなければなりません。そして、戦略や計画を実行へと移し、決めた内容が正しかったかどうかを振り返り、何度でも軌道修正を図る必要もあるでしょう。

時代の変化が激しくなればなるほど、物事を決める回数は増加し、難易度を増していきます。 そのため、現代のリーダーには 強い決断力 が求められるのです。

人間は物事を決める時、必ず自分の中にある基準に従って決断を下しています。そのため、 自分の判断軸を理解することが重要です。

自分の判断軸を理解するには、過去に下してきた難しい判断や大きい判断、嬉しかった/辛かった原体験を振り返ることが有効でしょう。 ポジティブな感情を生み出す源泉は大きな判断軸になりますし、辛くても逃げずに頑張ることができた理由も大きな判断軸となりえます。

このように過去の振り返りを行い、その中から共通項を見つけ出すことで、自分の現時点での判断軸を明確にすることができるのです。

リーダーシップを持った人材を育成するには

ここからは、リーダーシップを持った人材を育成するポイントについて解説します。押さえて頂きたいポイントは大きく分けて2つです。

情報のシャワーを浴びてもらう

1つめのポイントは、育成対象者に 自分の知らない世界や価値観に触れてもらい、情報のシャワーを浴びてもらう ということです。

全く知らない情報のシャワーを浴びた時、自分がどのように感じるのか試してもらう。あるいは、そう感じた理由やその感じ方で良いのかということについて考えてもらう。

組織の上に行けば行くほど決断の頻度や難易度は高まりますが、このような経験を通じて自己認識を行うことで、難しい状況に置かれてもびくともしない丈夫な判断軸に鍛え上げることができます。

多様なものに触れたり、異質なものに触れるという経験はとても大切 です。同質なものにばかり触れていては、いつまでたっても自分の判断軸を鍛えることはできません。 違和感を感じるということは、自分を客観視できているということでもあります から、異質な世界に飛び込んだり、自分とは異なる価値観を持つ仲間と議論するといった経験がとても大切なのです。

修羅場経験を与える

2つめのポイントは修羅場経験を与えるということです。

インプットにより知識を増やすことは大切ですが、ただ頭で理解しただけではできるようにはなりません。学んだ内容を実際に試してみると、十分に理解しているのになぜか上手くいかないというケースが何度も発生します。

そこで、 上手くいかない理由をしっかりと考え、改善策を検討し、行動に落としていく 。これを繰り返すことで、少しずつ自分のものしていくことができます。

簡単には結果を出すことができない複雑性の高い状況や、多様性の大きい環境で働いてもらう修羅場体験も実践の場に適しています。

例えば、海外への赴任。海外では、多様な人材に対して動機付けを行ったり、部下として外国人の上司から指示を受けながら結果を出さなければなりません。

他の手段として、新規事業を始めるなども有効です。既存の事業だと大体やり方が決まっていますが、新規事業はゼロベースで考えることが求められます。 あるいは、あえて厳しい業績にある事業に放り込むなど……。

このように、仕事の中で修羅場経験を与えるというのが2つめのポイントです。

今後どのようなリーダーシップが求められるのか

近年、注目を集めたサーバント・リーダーシップオーセンティック・リーダーシップは、いずれも環境の変化が激しい時代におけるリーダーシップの派生型です。

VUCA時代のリーダーは、自分よりも相手を大切にしなければなりません。相手の力や可能性を最大限に引き出し、相手が主役になるように努める必要があるのです。

これからのリーダーに必要な2つの要素

これからのリーダーは、相手を重視するリーダーシップに加え、更に2つの要素が必要となります。

1つめは、 第四次産業革命と言われるAIなど情報技術の劇的変化が経営にいかに大きな影響をもたらしているかについての理解

デジタル革命は、従来までの産業構造や経済性原理、さらには顧客との関係性に抜本的変化をもたらしています。 そのため、今後の方向性を示さなければならないリーダーたちは、情報技術が業界や社会に与えるインパクトを正しく理解するために、相当な知識をインプットしていく必要があるのです。

2つめは 組織を超えたリーダーシップ です。

先述したデジタル革命により、近年、プラットフォームビジネスが多くの注目を集めています。 自社で構築した魅力的なプラットフォームに多くのお客さんやパートナー企業、ステークホルダーが次々と参加することで、企業の価値がどんどん高まっていく。このような時代になってきています。

すなわち、 デジタル革命は組織運営のあり方にも変化もたらしているのです 。組織のメンバーや仲間に向き合うリーダーシップはこれからも大切ですが、 社会課題に対して や、 社会全体に向けて発信していく力 が重要になってくると考えられます。

たとえば、トヨタ自動車株式会社の豊田章男社長。昨年、これまでの「自動車をつくる会社」から、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすることを宣言しました。彼はスピーチで「そういう社会作りを自分たちトヨタだけではできないから一緒にやりましょうよ」という呼び掛けをしています。

今後は、 社会課題を解決するために、自社だけではなく自社以外とも積極的に協力しあえるリーダーシップが求められるのではないでしょうか。

若い人を組織運営の主役に

AIをはじめとした情報技術の劇的変化に関するインプットを行いたくても、年を取るとなかなか難しいものです。なので、今以上に若い人たちが組織の意思決定や組織運営の主役となる時代がくると思います。

若い人たちはある意味デジタル革命期のヘビーユーザーでもあるので、そのような領域についてよく知っています。日本企業でも新たなテクノロジーの取り込みや社内活用についてよく議論をしていますが、経営者レベルで議論をしてもなかなかアイディアが出てこないのに、若い人がいると新しいアイディアが次々に出てくるのです。

経営者たちは若い人たちにもっと多くのことを任せて、ポテンシャルを十分に発揮できるような組織運営を行う必要があります 。絶対に足を引っ張るようなことをしてはいけません。

そして若い人たちは、 一人ひとりが主体性や当事者意識を持って行動するように心掛ける

どちらか片方だけが頑張っても決して上手くはいきません。 トップが強い意志を持って方向性を示し、一人ひとりが主体性や当事者意識を持って取り組むことで、時代の波に呑まれることなく数多くの結果を出し続けることが可能となるでしょう。

グロービス シニア・ファカルティ・ディレクター 芹沢 宗一郎

一橋大学商学部経営学科卒業
米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修士課程修了
学位:MBA

外資系石油会社にて、研究所の研究効率向上プロジェクト等の組織開発に携わった後、コントローラー部門で、全社予算方針策定、設備投資評価、株主レポーティング、リエンジニアリングプロジェクト等に従事。
グロービスでは、法人クライアントの経営者育成を手掛けるコーポレート・エデュケーション部門代表、経営管理本部長(人事、経理財務、システム)、グロービス・エグゼクティブ・スクールの責任者を歴任。
現在は、エグゼクティブスクール、企業研修、グロービス経営大学院で人/組織系領域の講師や研究活動、クライアント企業の理念策定/浸透などのプロセスコンサルティングに従事。
https://hodai.globis.co.jp/corporation/

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