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連載:第9回 組織作り その要諦

障がい者の活躍が事業を拡大し、健常者が社内マイノリティに。「助ける」ではなく「ビジネスとして成立させる」

Logo markBizHint 編集部 2019年8月15日(木)掲載
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2018年4月1日、障がい者の法定雇用率が2.2%に引き上げられ、その雇用義務を負う民間企業の従業員規模が50人以上から45.5人以上に変更されました。また今後、雇用率が2.3%へと引き上げられることも決定しています。 一方で、経営者はもちろん人事部門でも「障がい者雇用」に対して、採用や仕事の任せ方についてよくわかっていない……というのが現実ではないでしょうか。 今回お話を伺ったのは、2015年から新潟県柏崎市で、障がい者が一般企業への就職を目指す「就労継続支援A型事業所」をスタートした株式会社With Youの小林俊介社長。後述する「福祉バリア」に守られ社会から隔絶された障がい者と、法定雇用率の未達成と人手不足に頭を抱える企業の間に立ち、互いの課題解決のために日々奮闘されています。 「就労継続支援事業所」の運営をビジネスとして成立させながら、生きづらさを抱えた人と働くことが当たり前の社会にするために。血の通った企業運営のヒントを教わりました。

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【プロフィール】
株式会社 With You
代表取締役社長 小林俊介 さん

1984年生まれ新潟県出身。同居の親族に統合失調症の叔母がおり、父が30年以上に渡って障がい者雇用を進める会社を経営していたことから『障がい』と身近な環境で育つ。工業高校卒業後、料理人などを経て父の会社に就職。10年ほど中間管理職を務めた後に、任されていた工場を切り離し独立。2015年に株式会社With You を設立し、新潟県柏崎市で初となる就労継続支援A型事業をスタートさせる。

交通事故からの生還で「誰かの役に立てる人生を」。障がい者とともにあった原体験

――小林さんが就労支援施設を開こうと思われたきっかけを教えてください。

小林俊介社長(以下、小林): 転機は26才、2010年の元旦に起こした交通事故でした。頭が割れ、出血多量でいよいよ死ぬのかなと感じた時、学生時代から勉強もせず、父が興した会社(新潟アパタイト)に就職しても仕事に向き合わなかった人生への悔いばかりが湧いてきました。「もしも助かったなら、誰かの役に立てる人生を送りたい」。そう強く思ったことが、今に通じるきっかけだったと思います。

――助かった命を役立てる場として、福祉事業を選ばれたのはなぜですか?

(小林): 原体験に思い当たったことが理由だと思います。自分に何ができるか考えたとき、子どもの頃に身近にいた「ちょっと変わった人たち」のことを思い出しました。話し相手だった統合失調症の叔母、父の会社で働く障がい者の方、学校でいつも喧嘩していたダウン症の女の子。特に、あの女の子はどこにいったんだろう?とふと思ったんです。 少し勉強すると、障がい者の多くが特別支援学校に通い「就労支援施設」という、我々が普段生活していてもなかなか気付かないような場所で働くのだと知りました。いつの間にかできていた壁の向こうにいる障がい者の存在を知り、「彼らが社会に出る手助けをしたい」と強く思ったんです。まずは、父から任されていた新潟アパタイト柏崎工場で障がい者を雇用するという目標を立てました。事故から1年後、2011年には特別支援学校から知的障害を伴う発達障害者の方を迎えることができたのですが、何かモヤッとした気持ちが残りました。

誰も幸せにしない「福祉バリア」を破る。ビジネスとして成立させることが、障がい者と企業を幸せに。

――そのモヤモヤはどこから感じるものだったのでしょうか。

(小林):障がい者を『助けたい』という動機がそもそも不自然 だったからだと思います。父は創業当初から障がい者を雇用していましたが、その理由は彼らが製造現場で働く能力をもっていて、彼らにも働きたいという意志があったから。それだけです。かつての自分も、ダウン症の女の子は単なるクラスメートで「助ける対象」なんて全く思っていなかった。これは、福祉を考える時に 誰もが陥りがちな盲点「福祉バリア」だと実感 しました。 社会には 「障がい者は守られるべき存在で触れられない」という優しい差別 があるし、企業には 「うちには障がい者に任せられる仕事はない」という思い込み が根強くあります。だから、法定雇用率の達成に苦心しながらも、障がい者が企業や公的機関に雇われる機会は少なかった。 自分がすべきことは、この 「福祉バリア」を取り払って、障がい者が当たり前に働いてお金を稼いで自立できる社会を目指すこと、企業側にも、ほんの少しの心配りで障がい者が戦力になると知ってもらうこと だと思いました。

――その使命感が「就労継続支援A型事業所」の開設につながるんですね。ちなみに「A型事業所」とは、どのような場所ですか?

(小林): シンプルに言うと、障がい者が事業主(当社の場合は株式会社With You)と雇用契約を結んで最低賃金以上の給料をもらって働き、将来的な一般企業等への就職を目指して訓練する福祉施設です。当社では、障がい者が部品の検査や組立、梱包など多様な仕事をしています。 もうひとつ「B型事業所」という施設もあって、こちらは一般企業等への就職を目指していないので、障がいの度合いや体調に合わせて自分のペースで働けます。ただ、工賃は最低賃金額を下回り、時給換算で150円にも満たないことがほとんどです。

――なぜ、B型ではなくA型の運営に取り組もうと思われたんですか?

(小林):お金にならない紙細工をつくる支援施設のすぐそばに、人手不足で困っている企業がある。そんな柏崎の現状をなんとかしたかったんです。福祉施設の運営というと稼ぐ必要性がないように思われがちですが、ビジネスとして成立させることでみんなをハッピーにしたかった。 障がい者と一緒に働く中でその能力に驚かされることも多かったので、障がい者が一般企業への就職を目指せるA型に決めました。 ただ、障がい者と働いたことのある人は少ない。「福祉バリア」を取り去るためにも、福祉業界の聖域的なイメージを壊したいと思いました。 一般企業からビジネスパートナーとして見てもらうために、With Youは株式会社にしましたし、スタッフは9割が主婦で福祉業界未経験の方ばかり。福祉という枠を超えて、ビジネス的に成功できると証明したかった んです。 2015年7月の設立以来仕事も順調に増え、3年で会社の人数は3倍になりました。今は、36名のうち20名が障がい者スタッフ。 健常者と言われる自分たちが、当社ではマイノリティになっています。

スタイリッシュなWith Youの外観。「福祉施設」というイメージは覆る。

――A型施設を維持し、ビジネスとして成立させるために必要な要件は何でしょうか。

バックナンバー (18)

組織作り その要諦

  1. 第18回 個人の働き方改革をしながら……企業が強い組織を作るには【法政大・田中研之輔教授】
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  3. 第16回 ゴールを決めた瞬間、控えの選手たちは本気で喜んでいるか?【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  4. 第15回 史上最強チーム・バルサにはなれないけど、学ぶことはできます【入山教授と語るFCバルセロナ、早稲田、ソニー「勝つ組織風土」】
  5. 第14回 顧客3万社、営業12名。売上を追わない営業部門と社長が重視する、最も大切な指標とは
  6. 第13回 視察多数の運送×健康経営。企業送迎No.1バス会社では管理栄養士が運転士を健康にしていた
  7. 第12回 ベイスターズの躍進を支え続けたマーケティングチームの心得。「それしかなかった」ものとは
  8. 第11回 「日本でいちばん大切にしたい会社」特別賞。企業理念を徹底する業界2位の老舗ランドセルメーカーは、社員に株を無償配付していた
  9. 第10回 全国一の自動車教習所は究極のボトムアップ組織だった。人的余裕が施策を生みだす好循環。
  10. 第9回 障がい者の活躍が事業を拡大し、健常者が社内マイノリティに。「助ける」ではなく「ビジネスとして成立させる」
  11. 第8回 「超属人的組織」だからこそ仕事が面白い。一人の職人のみが持つ技術も「継がなくて良い」
  12. 第7回 デイサービスを「男性向け」で差別化。従業員の定着率を高める「公平感ある」職場づくり
  13. 第6回 数字必達主義から「対話型の組織」へ、福島トヨペットの社内変革【福島トヨペット・佐藤修朗社長/佐藤藍子副社長】
  14. 第5回 「ブラックサンダー」で46億円から100億円企業に伸びた有楽製菓の秘密
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