連載:第93回 組織作り その要諦
「自社のメリットを第一に考える採用は間違っていた」と気づいたリーダー。稲盛和夫氏から学んだ、たった一つの指針


バスケットボール選手から人材業界に転身し、2010年に株式会社エンリージョンを創業した代表取締役 江口勝彦さん。経営の素人だった江口さんは創業当初、右も左もわからない状態。そんな中、京セラ創業者・稲盛和夫氏の「人柄をよく見なさい」という言葉が、その後の経営方針を大きく変えることになります。14期連続の黒字経営という成長を遂げた組織の裏側には、江口社長の反省と新たな気づきから生まれた一つの指針がありました。組織変革の道のりについて詳しく伺います。

株式会社エンリージョン
代表取締役 江口 勝彦 さん
1978年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、日産の実業団でバスケットボール選手として活動した後、新潟アルビレックスBBに所属。リクルート新潟支社を経て、2010年にエンリージョンを創業。創業後すぐに稲盛和夫氏が主宰していた盛和塾に入塾。盛和塾新潟の代表も務めた。
自身の過ちに気づいたリーダー。組織を変えた一つの指針
――御社は創業以来黒字経営を継続し、大きな成長を遂げられていますね。
江口勝彦さん(以下、江口): 当社は地方のU・Iターン転職に特化した人材紹介サービスを提供する会社として2010年に創業し、15期目を迎えました。都心部で働く人材と地方の中小企業をマッチングし、地方企業の採用難という課題解決に取り組んでいます。 創業時の売上は2,500万円ほどでしたが、現在は24倍の6億円に増収し、好調に推移しています。
社員数も創業時は数名でしたが、現在は30名を超え、拠点も9カ所に拡大しました。コロナ禍でも2年間で10名以上を採用するなど、逆境の中でも攻めの経営を貫き、 離職率も3.3%と業界平均を大きく下回っています。
この成果は、 京セラの創業者である稲盛和夫さんから直接言われた「人柄をよく見なさい」という言葉があったからなんです。 この言葉が私の経営観を変え、そして経営の核心となっていきました。
――稲盛和夫さんと実際に会われたのは、どのような状況だったのですか?
江口: 2011年1月、前職の元上司の勧めで創業からわずか3ヶ月で稲盛和夫さんが主宰していた経営塾「盛和塾」に入塾しました。ただ、最初は正直なところ、盛和塾の雰囲気に抵抗感がありました。「なんか昭和っぽいな」と思ってしまっていたんです。
それでも、横浜での全国大会に参加してみたところ、稲盛さんの講話を間近で聞いて「これは本物だ」と衝撃を受けました。バスケットボール選手時代、アメリカに行って一流選手と対戦したときに感じた「段違いのレベル」に触れたような感覚というか…。それから、稲盛さんの話をもっと聞きたいと強く感じるようになりました。
そして2015年、上海での盛和塾世界大会で奇跡的に稲盛さんと同じテーブルに座ることができました。当時の私はというと、自社の採用がうまくいかず、悩んでいた頃でした。 そこで私は「採用をするとき、どこを見ればよいでしょうか」と質問したんです。
すると稲盛さんはしばらく考えた後に一言、 「人柄をよく見なさい」 と。シンプルな言葉でしたが、ハッと目が覚めるような気持ちでした。
実は私はそれまで、自社の採用面接においては、候補者の学歴や前職のポジションばかりを優先し、「この人を採用すれば、自社にどんなメリットがあるだろうか?」といった損得勘定ばかりが先行して採用していました。 これが間違いだと気づかされたのです。
――なぜ間違いだと気づいたのでしょうか?
江口: 稲盛さんの言葉から、自分なりに考えて実践していった結果、 ある一つの指針にたどり着いたからです。
――その指針とは?
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バックナンバー (93)
組織作り その要諦
- 第93回 「自社のメリットを第一に考える採用は間違っていた」と気づいたリーダー。稲盛和夫氏から学んだ、たった一つの指針
- 第92回 「若手を理解していないのは自分だった」と目覚めた社長。社員の主体性あふれる組織に必要なリーダーの絶対条件
- 第91回 「お金の亡者」と言われたリーダーが大量退職で気づいた組織の本質。老舗企業に学ぶ自律型組織の勘所
- 第90回 社員の主体性を奪っていたのは自分だった。「はだかの王様」だと気づいた社長が見つけた会社作りの本質
- 第89回 社員の自主性が育つ組織の要諦。リーダーが“失敗”から学んだ改革の要