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M&Aによる事業承継を行うためには?メリットやプラットフォームもご紹介

BizHint 編集部 2018年2月7日(水)掲載
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経営の不確実性が増す中で、M&Aによる事業承継を目指す日本企業が増えています。中小企業が大半を占める日本において、事業承継は重要な課題のひとつであり、今後の日本経済成長のために欠かせない戦略のひとつです。今回はM&Aによる事業承継に必要な知識やメリット、進め方や成功ポイント、活用プラットフォームをご紹介いたします。

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事業承継M&Aとは

事業承継M&Aとは、親族や親族外などの後継者に事業を引き継ぐ「事業承継」を、M&Aを活用して行なう経営戦略のひとつです。近年、M&Aを活用した事業承継が盛んになっているといわれています。事業承継M&Aをきちんと理解する上でも、その他の事業承継手段やM&Aを知ることが大切です。

【関連】「事業承継」とは?実施手順や事業承継税制、補助金についても解説/BizHint HR

その他の事業承継手段

事業承継の手段としては、主に「親族内承継」、「親族外承継」、「株式上場」の3つ、そして事業承継を行わない場合の「会社の廃業」が挙げられます。

親族内承継

親族内承継とは、一般的な事業承継手段のひとつで、親族に対して、事業を引き継ぐ際に行なわれる方法です。創業者や経営者の親族に対して、事業や技術を引き継ぎ、企業を存続させる手法として知られています。

オーナー一家としての地位を継続できるほか、従業員側が受け入れやすい、財産承継のメリットも多いといわれています。一方で、子供の有無や能力の問題、会社の経営状況が芳しくない、親族が大企業に勤めているなど後継者不足により、年々、親族内事承継は急減しています。

親族外承継

親族外承継とは、主に従業員などの親族以外の第三者に対して、事業を引き継ぐ際に行なわれる事業承継手段です。

事業承継の対象が従業員の場合、創業者や経営者との距離が近い、熟練した技術を持っている、業務に精通している、後継者としての教育期間が短いなどのメリットがあり、事業承継の対象としても相応しいといえます。一方で、事業承継に必要な十分な資金を持ち合わせていない、オーナー側の債務保証の切り離しや金融機関からの借り入れなどの制約があるなど、資金面での問題が多いとも指摘されています。

株式上場

株式上場による事業承継は、銀行借り入れの個人保障や担保提供など資金面でのハードルが下がる他、上場により優秀な人材の確保にも効果が期待できる、事業承継手段のひとつです。しかし一方で、上場企業として相応しい社内体制の構築や財務・事業の現状、事業そのものの将来性に対して、証券取引所による厳しい審査をクリアしなければいけません。

これらの厳しい審査をクリアすることで、執行役員など優秀な人材の育成にもつながり、スムーズに事業承継を行なうことができます。

会社の廃業

後継者不足問題が露呈している現代において、事業承継を断念し、会社の廃業を選択する経営者も増えています。

廃業の選択は従業員の雇用や仕入先・取引先企業への影響が大きく、資産売却に伴う税務上の不利益を被る可能性があります。モノづくり大国として、経済成長を遂げた日本においても計り知れない損失にもつながります。

M&Aとは

M&Aとは、Margers and Acquistionsの略称であり、2つ以上の企業が合併や買収を行う経営戦略のひとつです。広義の意味では事業提携の意味合いも含まれ、主に業界再編に向けた経営基盤の強化や事業領域の拡大に活用されています。

本来、事業譲渡の手段として活用されてきましたが、近年では中小企業を対象とした、後継者不足問題の解決手段としても注目されています。

M&Aの代表的な手法

M&Aの手法には大きく分けて、「株式譲渡」、「全部譲渡」、「一部譲渡」の3つが挙げられます。

株式譲渡

事業承継を行なう経営者の株式を、第三者に売却する形でM&Aを実施する手法です。株式の譲渡は、事業主が代わるだけで、従業員の雇用関係や金融機関・取引先企業との契約はそのまま引き継がれるため、迅速に事業承継を行なえます。

一方で株式譲渡を受ける側は事業承継とともに偶発債務(過去の取引が将来的に確定債務になる恐れがある債務)も承継されるため、M&A前にデューデリジェンスを徹底しなければいけません。

事業の全部譲渡

現金を対価として、事業の全てを譲渡する売却手法のひとつです。知的財産権、顧客、業務ノウハウなど事業を行なうのに必要な資産全てが譲渡対象となります。また、譲渡する側・譲り受け側ともには法人、個人事業主両方が対象となるため、幅広い範囲の事業主が事業承継を行なえます。

しかし、株式譲渡と同様に偶発債務が紛れている可能性があります。そのため、買収前には譲渡対象となる事業の精査を行ない、買収によるリスクを低減・回避することができます。

事業の一部譲渡

事業部の一部譲渡は、主に事業整理を行なう目的で行なわれ、譲渡側の裁量により、売却事業と残す事業を選別できる柔軟性を持つ、譲渡手法のひとつです。譲渡の対価には、現金が用いられるため、経営者の引退後の資金に充填しやすい他、自社の事業整理にも効果的です。

上記の3つ以外にも「株式交換」、「合併」、「会社分割」もM&Aの代表的な手法として知られています。

「M&Aエキスパート認定制度」について

事業承継M&Aを活用する場合、外部コンサルティング企業の協力を得ることもおすすめです。M&Aに特化したコンサルティング企業の中には、「M&Aエキスパート認定制度」を取得している企業もあり、コンサルティング企業の選定判断に役立てることができます。

M&Aエキスパート認定制度とは、中小・零細企業の適切な事業承継を目的としたM&Aに精通した人材の育成を目的としている認定制度です。受験者は事業承継、M&Aに関わる専門的な知識を問う厳しい試験を通過する必要があり、合格者にはM&Aのエキスパートの証明書として、プロフェッショナル、アドバンス、スタンダートの3つに分かれた資格の保持が認められます。

【参考】事業継承・M&Aエキスパート協会

M&Aによる事業承継が増加している理由

M&Aによる事業承継が増加している理由として、「深刻な後継者問題」、「M&Aに対するイメージの変化」の2つが挙げられます。

深刻な後継者問題

少子高齢化、労働人口の減少に直面する日本において大半を占める中小・零細企業の後継者問題は深刻な状況に陥っています。

中小企業庁が2016年11月に発表した「事業承継に関する現状と課題について」では、60歳以上の経営者のうち、50%以上が廃業を検討しており、その廃業の理由としては「後継者がいない」と選択している割合が28.6%も占めています。また、直近10年で法人経営者の親族内承継の割合は急減しており、親族外(従業員や第三者)への事業承継が6割を越えています。

これらの調査結果から「事業承継をしたい」という想いを持ちながらも、後継者不足に悩む高齢の経営者の実態とM&Aを活用した積極的な事業承継が選択されている現状が伺えます。

その他の廃業の理由の割合は以下の通りです。

  • 「当初から自分の代でやめようと思っていた」・・・38.2%
  • 「事業に将来性がない」・・・27.9%
  • 「地域に発展性がない」・・・3.1%
  • 「若い従業員の確保が困難・事業の継続が見込めない」・・・3.1%

【参考】経済産業省 中小企業庁 事業承継に関する現状と課題について

M&Aに対するイメージの変化

外資系企業が積極的に採用していたM&Aは、投資ファンドや経営資金が豊富な大企業・新興企業による「乗っ取り」や、経営に苦しむ企業の「身売り」といった負のイメージが先行していました。

しかし、M&Aには広義の意味で「事業提携」の意味合いも含まれ、業界再編に向けた経営基盤の強化や事業領域の拡大といった、双方の企業にWin-Winな関係をもたらし、ステークホルダー(投資家や従業員、消費者)にも良い影響を与えることから、肯定的なイメージへと変化していきました。

同時に、後継者問題で悩む中小・零細企業の解決策として現経営者の希望に沿った手法が豊富なため、法人・個人事業主問わず、事業承継の手段として用いられるようになったと考えられます。

事業承継M&Aのメリット

事業承継M&Aは、後継者問題に悩む零細・中小企業の経営者にさまざまなメリットがもたらしてくれます。今回はその中でも代表的なメリットをご紹介いたします。

後継者問題が解決し、事業の存続が可能

日本企業の約99.7%は中小企業で占めており、中小企業経営者の年齢分布の山も20年間(1995年~2015年)で47歳から66歳へと移行していることから、速やかな事業承継が急務とされている中、既にご紹介しているとおり、60歳以上の経営者のうち、28.6%が後継者問題で頭を悩ましている現状が指摘されています。

そこで、注目されているのが事業継承M&Aです。M&Aは株域譲渡や現金を対価として、第三者への事業承継が可能です。また、譲渡方法も全部譲渡、株式譲渡、一部事業の譲渡など幅広い手法を選択でき、現経営者の希望に沿った事業承継ができます。

後継者や資金面などの諸問題を解決できるだけでなく、自社の事業や技術を次世代に引き継き、存続を図ることが可能です。

【参考】経済産業省 2017年版中小企業白書 概要
【参考】経済産業省 中小企業庁 事業承継に関する現状と課題について

従業員の雇用を確保できる可能性がある

会社の廃業は、従業員の失業に直結し、従業員の雇用確保という経営者の社会的責任を果たすことができない苦渋の決断といえます。しかし事業承継M&Aでは株式譲渡が可能であり、譲渡の際に従業員の雇用関係も引き継ぐことが可能です。顧客や取引先企業、金融機関との契約も維持され、その後の事業推進が滞りなく行なえることから、買収者にもメリットが生じます。

比較的短期間で会社を整理できる

日本は従業員の解雇に厳しい制限と保障が義務付けられており、整理解雇までに時間と莫大な経費がかかってしまいます。また、廃業の際には、税務面での制約や不利益が発生し、経営者の資産を逼迫する要因にもつながります。

事業承継M&Aでは雇用関係や残債務も引き継げ、現経営者の財務を逼迫することを回避でき、比較的短期間で会社の整理を行えます。また、一部の事業を切り離し、売却することも可能なため、経営者の意向に沿った会社整理ができる点でもメリットがあります。

しかし、短期間での事業承継M&Aは買収者に偶発債務の見逃しを誘発し、また売却者側に不利益なM&Aを実施される恐れもあります。そのため、自社の経営理念への共感や従業員の雇用確保など、さまざまな条件や希望と合致する事業承継M&Aのパートナーに相応しい企業を、時間をかけて見つけることが大切です。

会社売却による創業者利益を受けられる

創業者利益とは、株式会社制度を活用した、実際の投入資金と株式資本の総額の間に生じた利益を得る、創業者の利益または利権を指します。具体的には、IPO(新規公開株)による株の売却や業績による株価上昇で得られる売却益を指します。

事業承継M&Aには株式譲渡や現金を対価とした事業売却、証券取引場への上場が可能です。そのため、株式会社制度を活用した創業者利益を得ることができ、売却して得た資金を引退後の生活に当てることができます。

事業承継M&Aの進め方

事業承継M&Aの進め方は、経済産業省・中小企業庁が「事業引継ぎハンドブック ~M&A等を活用した事業承継の手続き~」を発刊しており、適切な進め方を紹介しています。本章ではこちらの内容を基に、事業承継M&Aの進め方をご紹介いたします。

【参考】事業引継ぎハンドブック - 中小企業庁

仲介機関の選定・契約

事業承継M&Aを進める上では、仲介機関を利用することがおすすめです。M&Aエキスパート認定制度を受けている、事業承継M&Aの経験が豊富な仲介機関(民間業者や士業専門家、一部金融機関など)を選定・契約することで、迅速かつ最適な事業承継先企業を探すことができます。

また、仲介機関には仲介者(仲介契約)とアドバイザー(アドバイザリー契約)の2種類があり、それぞれ特徴とメリットが異なります。

仲介者

仲介者とは、事業承継側と買収者側の間に立ち、事業承継を円滑に進める仲介機関を指します。事業承継M&Aの仲介者は譲渡側の状況把握に長けているため、事業承継を迅速に行なうことが可能です。また、セカンド・オピニオン(当事者以外の意見や意見を求める行為)の役割を担ってくれるため、安心して事業承継M&Aを進めることができます。

一方で、どちらかの利益に偏らないなど中立・公平を前提する仲介者の選定が必要となるため、仲介者の掲げる得意・専門分野を理解し、過去の実績(信頼性)や業務範囲、料金体系、着手金額、中立性・公平性など総合的に判断し、選定しなければいけません。

アドバイザー

アドバイザーとは、事業承継側と買収者側それぞれが個別に契約し、事業継承に必要な契約のみを引き受ける仲介機関を指します。契約者の意向を反映しやすいメリットがあり、事業承継に必要最低限の契約のみ委任が可能なため、費用の削減にもつながります。

一方で、相手側の状況を把握しにくく、交渉の長期化につながる可能性が考えられます。

事業評価

事業評価とは、経営者との面談を通して、仲介業者が事業を評価する作業を指します。事業評価は、事業承継の対象となる事業の競争力、地域に必要な産業であるか、健全な財務状況であるか、偶発債務に発展する係争の有無、事業の売却価格などを対象に、事業の評価を算出します。

買収者側は事業に関わる全ての権利を取得するため、知的財産権の有無や従業員の雇用関係、顧客・金融機関の契約だけでなく、債務も承継対象となります。そのため、事業承継M&Aを行なう際は包み隠さず、ありのままの経営状況を仲介者に開示しなければいけません。

このように透明性の高い事業評価は、買収者である優良企業とのマッチングが可能とする重要な作業のひとつといえます。

譲り受け企業の選定(マッチング)

事業評価が完了すれば、いよいよ譲り受け企業の選定(マッチング)が開始されます。企業の選定は複数の候補先を用意し、候補先の会社規模や業績、事業展開エリアを基準に交渉順番を決めていきます。

また、譲り受け企業から企業概要書以外の資料(書類)の開示を求められる可能性があります。その際は仲介者とともに迅速に対応していきます。

トップ会談の実施

トップ会談は主に事業承継を行なう企業の経営者と、譲り受け企業の経営者との顔合わせを行なう機会です。ここでは具体的な事業内容の説明よりもお互いの経営理念や経営者の人間性などを判断する機会と位置付けられています。承継する事業の維持・成長を任せられる人物かどうかも事業承継を行なう経営者にとっては、重要な判断軸です。

トップ会談ではお互いの自己紹介、経営に関する考え方、M&A後の希望(雇用の確保や債務整理など)などお互いの想いや考えを共有する場と考えます。

交渉

事業承継M&Aでは、譲渡価格、今後の事業展開、経営方針、従業員の待遇、社名変更の有無などが主な交渉内容となります。お互いの要望の擦り合わせ、着地点の決定を目指す交渉は、事業承継M&Aの重要なプロセスのひとつです。そのため、仲介者やアドバイザーと密接に連携して、交渉に臨まなければいけません。

基本合意書の締結

交渉において、お互いの隔たりや認識の差を埋めることができれば、基本合意書の締結を行ないます。

基本合意書は、最終契約前にお互いの合意内容を確認するために締結する文書です。お互いの要望に漏れや認識のずれがないかを確認するプロセスのため、経営者自身がしっかりと確認しなければいけません。

特に譲渡価格や従業員(経営者・役員を含む)への処遇など事業承継に欠かせない重要な項目が基本合意書の項目対象となります。

デューデリジェンス(dd)の実施

デューデリジェンスとは、M&Aのターゲット企業(事業承継を行なう企業)の資産価値を評価する作業を指す経営用語です。主に企業と提携している公認会計士や顧問税理士によって行なわれ、事業承継を行なう企業側が用意した事業・財務・法務などと基本合意書内容の間に差異がないかを確認します。

この際、不良在庫や債務の有無なども調査対象となります。M&Aの最終契約締結前の重要な作業のため、買収者側は時間をかけて精査しなければいけません。

最終契約の締結

デューデリジェンス(dd)が滞りなく完了した後は、いよいよ事業承継M&Aに向けた最終契約の締結を行ないます。

最終契約のプロセスでは基本合意書の締結段階で保留となっていた事項やデューデリジェンス(dd)で判明した懸念点について再交渉を行い、取りまとめを行ないます。最終契約では譲渡価格や決済方法、譲渡対象事業、その他の重要事項(従業員の処遇など)を含め、締結に至ります。

また場合によっては一定期間、事業承継を行なう前経営者が顧問として残る、顧問契約が盛り込まれることがあります。

事業承継M&Aを成功させるポイント

事業承継M&Aを成功に導くためには、いくつかのポイントを押さえなければいけません。今回、ご紹介するポイントは事業承継M&Aを成功させる上でも重要な基礎知識ばかりですので、ぜひ参考にしてください。

会社を磨き上げ企業価値を高める

企業価値とは、金融関係の視点から見た「会社の魅力」の総評で、株価の算定やM&Aの事業評価の基準となる企業全体の価値を指します。企業価値の向上は交渉優位性や倒産防止などのメリットがあるため、ほとんどの企業が企業価値評価を重要な指標と定めます。

事業承継M&Aにおける譲渡価格の重要参考値にもなるため、収益性や投資効率性の向上、財務の最適化、従業員エンゲージメントの向上、バリュードライバーを対象とした施策の実施などが、企業価値を高める方法とされています。

企業価値の評価方法

事業承継M&Aにおける企業価値評価方法は、主に時価純資産、収益性、市場相場に着目し、評価することが一般的です。また、中小企業や小規模事業者を対象とする場合は、時価純資産に「のれん代」を加えた算出方法が採用されます。

企業価値評価のアプローチとしては、コストアプローチ(貸借対照表上の純資産額の算出)やインカムアプローチ(将来のフリーキャッシュフローを現在の価値合計として算出)、マーケットアプローチ(企業の取引金額を算出)などが挙げられます。

【関連】「企業価値」とは?企業価値の意味や評価方法、メリット、向上施策までご紹介/BizHint HR

タイミングや計画性が重要

事業承継M&Aはタイミングが重要な要因とされています。交渉機会の喪失は、市場環境の変化や対象企業(事業)の経営環境の悪化によって、マッチング企業が現れない、不利な条件での最終契約に至るケースも珍しくありません。

そのため、事業承継M&Aを実施する際は早めの検討が重要です。早めの検討は市場環境の動向(変化)や自社の業績を考慮した上で、事業承継M&Aを実行できるため、交渉や最終契約を有利に運びやすくなります。

さらに事業承継には、譲り受け企業の選定やトップ会談、交渉、基本合意書の締結、デューデリジェンスの実施など、最終合意に至るまでさまざまなプロセスを経る必要があります。また、交渉段階はもちろん、デューデリジェンスの段階で新たな問題点や懸念点など双方にトラブルを招く要因も浮き彫りになるかもしれません。

これらの想定外の諸問題にきちんと対応する上でも時間に余裕を持ち、計画的に準備を行なわなければいけません。

仲介機関の選択は慎重に

仲介者やアドバイザーなくしては、納得のいく事業承継M&Aは難しいといえます。そのため、仲介機関の選択は事業承継M&Aでは必須といえますが、仲介機関の選択にも慎重にならなければいけません。

事業承継M&Aにかかる着手金や業務範囲も重要な選択判断となりますが、第一に中立・公平な立場を担保できることが大前提となります。そのため、仲介機関の過去の業績や利用者の評価を参考に選択することがおすすめです。

また、中小企業や小規模事業者を対象に、事業承継M&Aを実施する事業引継ぎ支援センターという機関も存在します。事業引継ぎセンターは、国の支援する事業承継M&Aの公的窓口であり、信用力の高い仲介機関とともに、事業承継M&Aを後押ししてくれます。

セカンド・オピニオンも有効

セカンド・オピニオンは、事業承継M&Aを実施する際の第三者の助言を指す、経営関連用語です。基本的に事業承継M&Aは、経営トップを中心に会談・交渉を進めていきますが、仲介機関のサポートによって、円滑に進めることができます。

また、仲介機関は高度な専門知識によって導き出された意見や進言を当事者に行なうことも重要な役割としています。そのため、経営者本人が判断に迷う、良い決断を下したい際は仲介機関にセカンド・オピニオンを求めることも有効です。

情報管理の徹底

通常、M&Aでは社内・社外に対して、秘密保持義務を徹底し、情報漏洩を阻止することが前提です。基本的には当事者である経営者本人と事業承継M&Aに関わる特別プロジェクトの担当者のみで、事を進めなければいけません。

事業承継M&Aに関わる情報の漏洩は、株式市場をはじめ、市場経済そのものの公平・公正性を毀損する可能性があります。そのため、情報漏洩や秘密保持義務の不徹底は会社の信用そのものを揺るがす事態であり、最悪の場合、事業承継M&Aの話が破綻してしまうケースも考えられます。

役員や親族を含め、事業承継M&Aの告知時期や内容は慎重に検討しなければいけません。

PMIの推進

PMIとは、Post Merger Integrationの略称であり、M&Aによる買収や合併の後に行なう新しい組織体制の構築を目指した統合プロセスを指します。

事業承継M&Aには、従業員の雇用関係の維持や顧客・取引先との契約維持も含まれます。そのため、事業承継後、速やかに事業活動に移行するためにも事業承継M&Aに関わった企業とともにPMIの推進を行わなければいけません。

具体的には、間接部門の統廃合や新たな業務システムの導入・改善、さらに人事制度改革や経営戦略の策定、経営理念の共有も必要です。双方の従業員が高いモチベーションを維持したまま、働ける環境を構築することが、事業承継M&Aの最終ゴールといえます。

【関連】「PMI」の意味とは?メリットや成功のポイント、具体策から失敗事例までご紹介/BizHint HR

事業承継M&Aプラットフォームのご紹介

事業承継M&Aにおいて、自社の事業を次世代に引き継ぐ上で、譲り受け企業の選定は重要課題といえます。そのため、事業承継M&Aを行なう際は優良企業とのマッチングが可能な事業承継M&Aプラットフォームの利用がおすすめです。今回は代表的な事業承継M&Aプラットフォームをご紹介いたします。

事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターは、中小企業のM&A全般を担う公的相談窓口(経済産業省の事業)です。事業承継M&Aの進め方をはじめ、後継者不足で悩む経営者向けのM&Aサポート、将来の事業承継に対する理解促進(基礎知識の提供)など幅広い事業承継M&Aのサポートを実施しています。専門家による個別相談は全て無料であり、秘密厳守を徹底した公的機関でもあるため、安心して事業承継M&Aを進められます。

安全性や費用に関して、懸念を持つ経営者向けの事業承継M&Aプラットフォームといえます。

【参考】事業引継ぎ支援センター

日本経営承継支援

株式会社日本経営承継支援は、全国に1000を超える独自のネットワークを通して、最適な譲り受け企業をマッチングさせることに長けた仲介機関です。年商5,000万円~数十億単位の譲渡希望案件を対象とした事業承継M&Aにおいて、高い実績を誇る企業でもあります。

事業承継・M&A無料診断サービスは無料で実施しており、M&Aの仲介手数料は着手金、月額報酬はなく、基本合意書を締結時と最終契約締結時のみの完全成功報酬制を採用しています。

【参考】日本経営承継支援

ビズリーチ・サクシード

ビズリーチ・サクシードは、即戦力人材・ハイクラス人材に特化した転職サイト大手「ビズリーチ」を運営する株式会社ビズリーチ(以下、ビズリーチ)が提供する事業承継M&Aプラットフォームです。ビズリーチが約8年間に渡り培った、累計7,200社以上の取引と信頼を生かした、事業承継M&Aに特化している信頼性の高いプラットフォームといえます。

国内最大級の承継案件数を誇り、ビズリーチ・サクシード独自の審査を通過した譲り受け企業のみを閲覧できるため、事業承継成功率を望めるプラットフォームです。

【参考】ビズリーチ・サクシード

TRANBI

一般のオーナー経営者を対象とした、事業承継を含むM&A全般を提供するプラットフォームです。登録者自身によるM&A案件の登録や、譲渡希望案件との直接交渉(全て無料)が可能であり、当事者の要望に沿ったM&Aに精通した専門家の紹介も行っています。

また、定められた条件(登録日から1ヶ月以内での成約など)でM&Aの成約に至った場合、手数料が一切かからないなど独自の料金体系を設定していることでも知られています。

【参考】TRANBI

日本M&Aセンター

日本M&Aセンターは中堅・中小企業を対象に、M&Aを通して、後継者問題、個人保証・担保の解消、人材の採用・育成、事業の選択と集中などの経営課題の解決を目指す、M&Aプラットフォームです。

事業承継を含むさまざまなM&Aに伴う全てのプロセスにおいて、公認会計士や弁護士といった高度な専門知識を持つ専門家を配置させる手厚いサービスが特徴的です。M&A成約実績も高く、迅速かつ最適なM&Aを実施したい企業にとっては最適な仲介機関といえます。

【参考】日本M&Aセンター

まとめ

  • 少子高齢化や労働人口の減少により、零細・中小企業の多くが経営者不足や事業承継について、不安や悩みを抱えています。
  • 負のイメージが強かったM&Aは、中小企業の経営課題を解決してくれる有効な経営戦略として、認知が広がりつつあります。
  • 事業承継側、譲り受け企業ともにさまざまなメリットをもたらす事業承継M&Aは今後も普及していくと予想されます。事業承継でお悩みの経営者の方は、事業承継M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

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