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2018年1月7日(日)更新

職務給

高度経済成長期のような経済成長が見込めない日本において、従来の年功序列を前提とした職能給の維持が難しくなってきました。そのため、同一労働同一賃金の原則を持つ職務給に着目する企業が増えています。今回は職能給の対となる職務給の意味や職能給との違い、メリット・デメリットをご紹介いたします。

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職務給とは?

職務給とは、企業が必要とする職務(仕事)の内容・難易度・責任の度合いを分析・分類し、それぞれの職務の価値を評価し、賃金に反映させる賃金制度です。1930年代のアメリカで開発され、成果主義同一労働同一賃金を原則としています。職務内容は職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記された内容のみを遂行します。戦後、日本企業にも導入が検討されましたが、当時の技術革新や特需の存在、既に主流であった職能給との調和が考慮され、西欧の職務給とは異なる形で存在するようになりました。

近年では経済のグローバル化による国際競争が激しさを増し、少子高齢化による労働人口の減少、正規・非正規社員の格差是正と相まって、再び職務給の重要性が注目されるようになりました。しかし、長らく年功序列終身雇用を前提にした職能給を採用してきた日本企業にとって、職務給の導入は難しいとされてきました。

そのため、管理職を対象に役職と職務を掛け合わせた「役割」を定義し、役割の難易度や達成度で区分・序列化した役割等級制度を導入する企業が増えています。また、長時間労働による過労死や職場でのハラスメントが表面化するにあたり、職能給を前提とした雇用(メンバーシップ型雇用)や働き方の解決策としても職務給の導入は注目されています。

職務給と職能給の違いとは?

職務給は職能給の対の賃金制度であり、それぞれ明確な違いがあります。

日本企業への職務給導入の経緯とは?

日本にとって、職務給は決して新しいものではなく、1955年頃から大企業を中心に導入されていました。しかし、チームワークによる業務や、既に主流となっていた年功序列を前提にしていた職能給との入れ替えが難しく、アメリカ式の職務給とは異なった職能給の性質を持つ独自の賃金制度となりました。

その後、長らく職能給が採用され続けましたが、1995年から2004年にかけて、職能給や職務給に代わる成果主義に基づいた年俸制や業績連動型賞与制度の導入が管理職・非管理職問わずに拡大され、その拡大率は29~32%※という高い水準まで至りました。しかし、当時は日本経済全体が低迷しており、人件費抑制の一環だったとも批難・指摘されていました。そのため、企業・従業員双方が納得の行く賃金制度として、2004年~2007年に職務給の普及が拡大していくことになります。

しかし、中小企業を中心に一定の割合で職能給も維持されており、2007年の世界金融危機により、職務給の拡大率は再び減少に転じます。その後も日本経済の低迷は続き、2015年にソニー株式会社が発表したジョブグレード制度(役割等級制度)のような、役割(ポジション)を評価して給与を決定する職務給が再び導入されることになりました。

※従業員300人以上の管理職・非管理職への拡大率

【参考】厚生労働省 第 3節 勤労者生活の課題 賃金制度の見直しの内容
【参考】日本経済新聞 ソニー、管理職比率2割に半減 年功要素を完全撤廃  新人事賃金制度が始動

日本型同一労働同一賃金の考え方とは?

職務給は職務(仕事)を評価・分析し、賃金を決定する同一労働同一賃金を原則にしています。しかし、欧州の同一労働同一賃金と日本の同一労働同一賃金の考え方は異なります。

欧州の同一労働同一賃金は、勤続年数や労働の質、キャリアコースなど雇用形態(パート採用も含む)に関わらず、純粋に職務内容が同一のものに対して、同じ賃金を支払うという考え方です。日本は職能給、職務給、役割給など複数の賃金系体が存在し、欧米のように産業別横並びの制度ではなく、企業それぞれが独自の賃金制度を採用しています。

そのため、自社にとって、同一労働とみなされる場合は同一の賃金を支払うという考え方となっています。これは、同じ職務内容にも関わらず、雇用形態(正規社員と非正規社員)により、処遇(賞与や退職金制度の有無)に差が出ることを原則禁止する目的を成しています。日本の場合、職務給は厳密に同一労働同一賃金を前提にしているのではなく、賃金の一部を決定する要素や格差是正の一環として導入されています。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会 同一労働同一賃金の実現について

職能給とは?

職務給と対となる職能給は、企業が従業員に求める職務遂行能力を基準に賃金を決定する賃金制度です。判断基準となる能力とは、幅広い職務を経験させることにより向上すると考えられており、ジョブローテーション(定期人事異動)や勤続年数によって、賃金が決まる年功序列を前提にしています。

市場環境の変化に対応した組織改編も迅速に行なうことができ、従業員も安定した収入が得られるというメリットがあります。しかし、従業員の高齢化とともに人件費も高騰しやすく、実力ある若手社員の管理職登用がしにくいなどのデメリットも指摘されています。

近年では管理職を対象に年功序列を完全に廃止し、役割等級制度で区分・序列化した職務給を採用する動きが加速しつつあります。ただし、メンバーシップ型雇用のメリットを損なわないように、非管理職は職能給の比率を高く設定している企業も多く存在しています。

職能給と職務給の違いは?

職能給と職務給では賃金を決定する判断軸が異なります。職能給は勤務する会社が期待する職務遂行能力を重視し、「人」を判断軸にします。一方、職務給は職務内容を評価・分析し、その難易度・貢献度を重視し、「仕事」を判断基軸にします。さらに職能給年功序列を前提に勤続年数に応じて賃金が決定されますが、職務給は勤続年数やキャリアなどは一切考慮されずに賃金が決定されます。

職能給はメンバーシップ型雇用(総合職)で採用した従業員に適用しやすく、職務給は役職や職務(専門性の高い仕事)に発生する「役割」を持つ管理職やスペシャリスト(専門職)に適用されやすい傾向があります。しかし、独自の雇用慣習(年功序列終身雇用、企業別労働組合)がある日本企業においては、職能給・職務給ともに併用にされることが多く、それぞれのメリットを活かした独自の等級制度を構築し、運用されます。

職務給のメリットとは?

職務(仕事)や役割の重要度・期待度を基準に賃金が決定される職務給には職能給にはないメリットが存在します。

評価基準が明確

元々アメリカで開発された職務給は職務(仕事)を基準に賃金を決定できるため、使用者も評価がしやすく、公正・公平に賃金を決定することができます。評価基準書を基に業務への評価が可能なため、評価者の負担も軽減できます。「労働=賃金」となっているため、企業・従業員双方が納得の行く雇用関係を締結することができます。成果と賃金が比例するため、年功序列による不平等な賃金格差も発生しにくいメリットがあります。

不要職務の排除や人件費抑制に効果的

職務給を採用することによって、無駄な職務の増加を抑制でき、短期的な人件費の調整が可能となります。事業縮小による社員の配置転換の義務もなく、必要なポストに最適な人材の配置が可能となります。

管理職・スペシャリストの育成に最適

職務給は専門性の高い職務を担当するスペシャリスト(専門家)や、役割を求められる管理職の育成において最適です。日本企業では役割等級制度に職務給が適用されることが多く、企業は従業員の人事評価がしやすく、従業員はどのような役割や職務を全うすれば、昇給・昇格できるかわかりやすくなるメリットがあります。また、勤続年数や年齢に関わらず、実力のある若手社員の登用にもつながるため、企業・従業員の競争力やモチベーションの向上にもつながります。

職務給のデメリットとは?

そもそも同一労働同一賃金の考え方が異なる欧米と日本では、職務給の導入が必ずしもメリットを生み出すとは限りません。そのため、日本企業だからこそ生じるデメリットも存在します。

定期昇給がない

職務給では職務経験を積み、職務遂行能力を高めたとしても、職務が変わらない限り、昇給することはありません。日本企業では一つの役職(部長や課長)に対して、細かく区分・序列化された等級が存在しており、同じ役職でも賃金に差があります。職能給では勤続年数に応じて、昇給していくため、一度賃金が上がると賃金が下がることはありませんが、職務給では役割(職務)を果たしていないと会社に判断されれば、降格・降給などの賃金減額につながります。

柔軟な組織改編が難しい

欧米では、勤続年数や雇用形態に限られない同一労働同一賃金を前提にしているため、事業縮小や撤退の際には従業員の解雇や整理が迅速に行なえます。しかし、日本では労働者の権利が手厚く守られているため、解雇に至る客観的に正当な理由がなければ、企業側が罰せられます。しかし、職務給を採用している従業員は職務内容がはっきりしているため、配置転換が難しく、柔軟な組織改編がしにくい傾向にあります。その結果、組織が硬直化し、利益を生み出しにくい組織に陥りやすくなります。

人事の高度な労務管理・運用が必要になる

職務給は従業員一人ひとりの職務を明確にし、期末毎に最適な人事評価を行なわなければいけません。そのため、勤続年数に応じた自動昇給が可能な職能給よりも運用コストがかかりやすく、人事部の高い運用・労務管理が必要不可欠です。また、職務給を導入する際は既に実施されている職能給や役割給との調和を考え、会社・従業員ともにわかりやすい人事制度が必要となります。規模によっては、従業員の情報を整理・管理できる人事向け業務ソフトの導入も検討しなければなりません。

まとめ

  • かつての高度経済成長期のように、右肩上がりの経済成長が見込めない日本では、従来の職能給の見直しが急速に進んでいます。
  • しかし、西欧の同一労働同一賃金に対する考え方の違いや今までの日本企業の賃金制度を考えると、職務給を導入の際は慎重にならなければいけません。
  • 職能給との調和や新たな人事制度の確立はもちろん、官民一体となったガイドラインの策定や法制度の見直し、労働者が相談できる簡易的な救済制度の利活用が求められます。

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