職務給
高度経済成長期のような経済成長が見込めない日本において、従来の年功序列を前提とした職能給の維持が難しくなってきました。そのため、同一労働同一賃金の原則を持つ職務給に着目する企業が増えています。今回は職能給の対となる職務給の意味や職能給との違い、メリット・デメリットをご紹介いたします。
職務給とは?
職務給とは、企業が必要とする職務(仕事)の内容・難易度・責任の度合いを分析・分類し、それぞれの職務の価値を評価し、賃金に反映させる賃金制度です。1930年代のアメリカで開発され、成果主義・同一労働同一賃金を原則としています。職務内容は職務記述書(ジョブディスクリプション)に明記された内容のみを遂行します。戦後、日本企業にも導入が検討されましたが、当時の技術革新や特需の存在、既に主流であった職能給との調和が考慮され、西欧の職務給とは異なる形で存在するようになりました。
近年では経済のグローバル化による国際競争が激しさを増し、少子高齢化による労働人口の減少、正規・非正規社員の格差是正と相まって、再び職務給の重要性が注目されるようになりました。しかし、長らく年功序列・終身雇用を前提にした職能給を採用してきた日本企業にとって、職務給の導入は難しいとされてきました。
そのため、管理職を対象に役職と職務を掛け合わせた「役割」を定義し、役割の難易度や達成度で区分・序列化した役割等級制度を導入する企業が増えています。また、長時間労働による過労死や職場でのハラスメントが表面化するにあたり、職能給を前提とした雇用(メンバーシップ型雇用)や働き方の解決策としても職務給の導入は注目されています。
職務給と職能給の違いとは?
職務給は職能給の対の賃金制度であり、それぞれ明確な違いがあります。
日本企業への職務給導入の経緯とは?
日本にとって、職務給は決して新しいものではなく、1955年頃から大企業を中心に導入されていました。しかし、チームワークによる業務や、既に主流となっていた年功序列を前提にしていた職能給との入れ替えが難しく、アメリカ式の職務給とは異なった職能給の性質を持つ独自の賃金制度となりました。
その後、長らく職能給が採用され続けましたが、1995年から2004年にかけて、職能給や職務給に代わる成果主義に基づいた年俸制や業績連動型賞与制度の導入が管理職・非管理職問わずに拡大され、その拡大率は29~32%※という高い水準まで至りました。しかし、当時は日本経済全体が低迷しており、人件費抑制の一環だったとも批難・指摘されていました。そのため、企業・従業員双方が納得の行く賃金制度として、2004年~2007年に職務給の普及が拡大していくことになります。