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2018年11月18日(日)更新

過労死

時折ニュースでも取り上げられる「過労死」。もし、自社の社員が「過労死」や「過労自殺」で亡くなるといった事態が起これば、他の社員へのダメージも大きく、社会的な信用を失うことにもつながりかねません。そのような事態を防ぐにも、「過労死」の実態を把握し、企業あるいは人事としてできること、行う必要があることなどを考えていきましょう。

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過労死とは

過労死とは、長時間労働や休日出勤などを強いられたことにより、精神的・肉体的負担が原因となり死亡することです。また、同様の原因で自殺する「過労自殺」も広くいうと過労死に含まれます。 過労死か否かについては、厚生労働省が定めた「労災の認定基準」に則って、各労働基準監督署で判断されます。

「過労死」の労災保険法による定義

労働者災害補償保険法(労災保険法)では、業務上、あるいは通勤による負傷、疾病、障害もしくは死亡等に対して必要な保険給付を行うとしています。労働者の受けた災害が業務に起因していると認められれば業務災害となりますが、発病時期の特定や個々の基礎疾患などには個人差があるため労災として認められない場合も少なくありません。

厚生労働省が定める労災の認定基準

厚生労働省では認定の統一化・迅速化を図るために、「脳・心臓疾患の労災認定」と「精神障害の労災認定」に区分して認定基準を定めています。認定基準は労災認定の基本的な考え方をはじめ、対象となる疾病や精神障害、認定要件などを確認できるものです。なお、認定要件には過重負荷の定義や業務による心理的負荷の評価表 、長時間労働の評価方法などが細かく記載されています。

人事担当者が自社の労働環境を見直し、業務災害を防ぐ上で参考になるため、それぞれの認定基準を一度、確認するとよいでしょう。

*「脳・心臓疾患の労災認定」 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf

*「精神障害の労災認定」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427.pdf

過労死の防止が喫緊の課題になった経緯

「過労死110番」の開設

労災申請がほとんど認められていなかった1988年、弁護士グループが全国初の電話相談となる「過労死110番」を開設しました。このことが契機となって全国的に「過労死」という言葉が広がり、1990年代初頭には社会問題として認識され始め、やがて企業としても対策を講じる必要性がいわれるようになったのです。

「過労死を考える家族の会」の誕生

「過労死110番」の開設により、過労死で家族を失った遺族が次第に声を上げるようになり、1989年に「過労死を考える家族の会」が誕生。同会が毎年、勤労感謝の日を前に全国的な活動をしたり、手記などを出版したりしたことによって、過労死について一般の人も徐々に目を向けるようになりました。

「過労死等防止対策推進法」の成立

2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」、いわゆる「過労死防止法」は過労死を防止するための推進協議会の設置や組織に関して定めた法律です。この法律が成立した要因は悲惨な過労死が頻繁に起こり、社会問題化したことはもちろん、尊い命が失われたという現実と遺族の痛手、また、社会にとっても多大な損失 になると考えられるようになったからです。

過労死等防止法では、「過労死等」 を次のように定義しています。 過労死等とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患、若しくは心臓疾患を原因とする死亡、若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう」。

*引用元:過労死等防止対策推進法(定義)

 第2条 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000061009.pdf

この法律の成立により、政府は過労死等をなくすための実態調査を行い、さらに、防止対策を講じることになりました。その一つとして、2015年には東京と大阪の二つの労働局に「かとく」と呼ばれる過重労働撲滅特別対策班を新設。悪質な過重労働を強いる企業に対して、取り締まりの強化を図っています。

過労死の実態

厚生労働省は2016年10月に「平成28年版 過労死等防止対策白書」を発表しています。この白書から、過労死の実態を探ってみましょう。

【参考】平成28年版過労死等防止対策白書(本文) |厚生労働省

勤務問題を原因や動機とする自殺

勤務問題が自殺の原因や動機の1つとして推定された人は、2012年以降 わずかながら減少を続けています。2015年の原因・動機の具体的な内容は「仕事の疲れ」が31.3%を占め、「職場の人間関係」は20.7%、また、「仕事の失敗」が18.0%で「職場環境の変化」は12.7%でした。

また、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の多くは「被用者・勤め人」で83.4% を占め、次に多かったのは「自営業者・家族従事者」でした。

さらに、自殺者を年齢別にみるともっとも多いのは40歳代で、次いで30歳代、20歳代、50歳代と続きますが、 いずれの年齢層も全体に占める割合は20%~25%程度です。自殺は20歳代~50歳代の、どの年齢層にも起きていることがわかます。

労災保険の請求と認定に関する推移

精神障害の労災認定は、平成23年12月に従来の「判断指針」から現在の「認定基準」に変更になったことで基準がわかりやすくなり、決定までの時間短縮にもつながっています。また、精神障害事案における労災の請求件数 は平成11年から増加が続いていましたが、認定基準の導入により一層、増加しました。

平成22年度に1,181件だった請求件数は、平成27年度には1,500件を上回っています。認定(支給決定)件数は平成24年度に400件を超して以来、400~500件で推移し、平成27年度は472件(うち、未遂を含め自殺は93件)でした。

一方、脳・心臓疾患 の事案については平成18年度の請求件数938件をピークに、その後は700件台~800件台に低下しています。平成27年度の請求件数は795件で、前年度の763件より若干、増えました。しかし、認定件数は251件(うち、死亡は96件)で、前年度の277件(うち、死亡121件)より減少しており、ここ数年は減少傾向です。

過労死が社会問題となったことで労災の請求に対するハードルが下がり、請求しやすくなったという意見もありますが、業務災害と認定されるのは必ずしも容易ではありません。

メンタルヘルスに取り組む企業は増加

平成25年労働安全衛生調査(実態調査)によると、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は全体の60.7%。前年の47.2% と比較するとかなりの増加です。取り組みの内容は「社員に対する 教育研修・情報提供」が46.0%でもっとも多く、次いで「事業所内での相談体制の整備」41.8%、「管理監督者に対する教育研修・情報提供」37.9%と続きます。

「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は増加

職場のパワーハラスメントが社会問題としてより顕著になり、「いじめ・嫌がらせ」で相談する人の数も増加しています。これは、今後の過労死や過労自殺につながる火種といえるかもしれません。

過労死を少なくするためには

従業員の労働時間を把握する

従業員の時間外労働の時間管理は直属の上司となりますが、人事も関与して労働時間を適正に把握するための勤怠管理に必要な書類の管理を厳密に行いましょう。なぜなら、これらの書類は過労死の問題が発生すれば労働基準監督署や裁判所に提出することになり、労災認定や裁判における判断材料になる重要な資料だからです。

また、人事が労働時間を管理することによって過重労働の状況にいち早く気づくことができ、迅速に対応することによって健康障害が重くなるのを防ぐこともできるでしょう。企業全体で時間外労働の削減や過重労働の撲滅に取り組む体制をつくり、過労死を予防できる職場にしましょう。

なお、労働時間は、厚生労働省の示す「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」によって適切に把握することが大切です。

*引用元:「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/070614-2_0003.pdf

時間外労働が100時間を超える場合は医師の面接指導を

過労死の労災認定に際して、時間外労働が月80時間になると過労死と業務との間には強い因果関係があるとされています。これが、いわゆる「過労死ライン」です。労働安全衛生法では、過労死ラインを上回る月100時間超の時間外労働をした従業員に疲労の蓄積 が認められ、本人が医師による面接指導を申し出た場合、企業は面接指導を行う義務があります。また、面接後は医師の意見を聴き 、必要があれば配置転換や労働時間の短縮などの措置をとらなければなりません。

その他にできること、必要なこと

職場におけるメンタルヘルスケア対策の強化、メンタルヘルス不調を招きやすいパワハラやセクハラなどのハラスメントの予防や解決への取り組みなども企業に求められることです。ストレスチェックの実施、また、男女雇用機会均等法などの改正に伴いセクハラやマタハラなどのハラスメント対策を講じることは使用者の義務になりました。

以前より、使用者には労働契約法に基づき社員に対する安全配慮義務(健康配慮義務)がありますが、過労死などの問題が深刻になる中、防止策への積極的な取り組みは急務です。長時間残業が常態化している職場では、業務量の偏りや働き方について早速、見直しをしましょう。

使用者の義務が増える中で何から取り組めばよいのか迷うときは、まずは社内の現状把握から始め、問題点を見極めた上でプライオリティの高いものから一つひとつ取り組むとよいでしょう。

まとめ

自社から「過労死」を出さないために企業として、あるいは人事としてできること、必要なことを考察してみました。

  • 人事の担当者は時間外労働をはじめ、労働時間の管理に積極的に関わり、適正に把握する
  • 「過労死ライン」の超過に注意する。時間外労働が月100時間超の労働者から申し出があった場合、使用者は医師の面接指導を行わなければならない
  • 現状を把握し、必要があればメンタルヘルスケア対策の強化、パワーハラスメントなどのハラスメントの予防・解決などに取り組む

人事にとって、それぞれの社員の労働状況は直接、見えにくい場合も多いでしょう。しかし、社員に積極的に関わっていくことが過労死を防止する上で極めて重要です。

(監修 : BizHint HR認定 社会保険労務士)

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