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終身雇用

2020年5月21日(木)更新

「終身雇用制度」とは、正社員として企業に就職した場合、定年まで雇用され続けるという日本特有の雇用形態です。企業にとっては社員を定着させる事ができ、社員は安定した生活を得られるため多くの企業が採用していましたが、近年の変化の激しい経済環境や、ダイバーシティの推進、人件費の増大などを背景に衰退していくと言われています。今回はこの「終身雇用制度」について、その意味や生まれた背景。「崩壊」と言われるが、実態はどのような状況なのか。衰退すると言われる要因。制度を維持するメリット・デメリット、そして制度が崩壊するにあたり企業はどうすべきかまで、詳しくご紹介します。

終身雇用制度とは

終身雇用制度は、雇用した正社員を定年退職まで雇用し続ける日本独特の制度で、日本型雇用システムの一つであるとされています。ただ、制度と言っても法律や規則で定められているわけではなく、雇用慣行であると言えます。

日本型雇用システム」では、基本的に新卒採用で学生を一括採用し、業務上および社会人として長期的に必要なスキルを身につけさせます。また、勤続年数によって賃金や評価が上がる「年功序列制度」や、手厚い福利厚生・手当などによって長期的な安定を目指し「終身雇用」を半ば保証するような仕組みとなっています。

【関連】日本型雇用システムの特徴とメリット・デメリット/BizHint

終身雇用制度が生まれた背景

終身雇用制度の始まりは、パナソニック(旧松下電器)の創業者である松下幸之助の政策にあると言われています。

1929年の世界大恐慌の影響を受け、稼働率の低下した同社の工場では「解雇されるのではないか」と社員が不安にさらされていました。しかし、松下幸之助は「生産は即日半減するが従業員は一人も減らさない」と、経営状態が苦しくても雇用を維持。これによって社員と世間からの信頼を獲得した松下電器は急成長することになります。

その後、第二次世界大戦後に三井三池争議を始めとする大規模な労働争議が日本全国に広がり、企業は労働者の信頼回復に躍起になります。そこで採用されたのが労働者の雇用を定年まで保証する「終身雇用制度」であり、高度経済成長と相まって全国的に広がりました。

終身雇用制度は崩壊したのか?

それでは、日本において終身雇用制度は本当に崩壊しているのでしょうか、実態を見てみましょう。

終身雇用制度 採用企業の減少

バブルが崩壊し、国際化の波の中で経営が苦しくなった企業の多くがリストラによって正社員を減らし、派遣社員を増やすようになりました。結果として、終身雇用制度を維持している企業は減少しています。

平成30年に厚生労働省が発表した資料によると、2016年時点における「生え抜き社員」、つまり若いうちに入社し、長年その企業に勤め続ける社員は、大卒者で5割程度、高卒者で3割程度と、長期的に見ると減少していることが分かります。

【出典】我が国の構造問題・雇用慣行等について(平成30年6月29日)/厚生労働省職業安定局

労働者意識の変化

一方、労働者側は「終身雇用」についてどう考えているのでしょうか。

2019年に実施された総合転職エージェント(株)ワークポートのアンケート(対象:転職希望者405名)では、「現在の会社に入社したとき定年まで働くことを想定していたか」という質問に対し、68.6%の人が「いいえ」と回答しました。

また「終身雇用制度は必要だと思うか」という質問には54.3%の人が「いいえ」と回答し、「能力よりも年功序列での評価になりやすい」「企業成長に新陳代謝が必要」などの理由が挙げられています。

【出典】転職希望者のホンネ調査「終身雇用」について/株式会社ワークポート

企業意識の変化

2019年5月、トヨタ自動車の豊田章男社長が、日本自動車工業会の会見において「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言し、注目を集めています。

また時期を同じくして、経団連の中西会長も「働き手の就労期間の延長が見込まれる中で、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」と発言しています。

変化の激しい時代、企業において同じ事業が永続するとは限らず、特定の人材を雇用し続けるのは困難になるだろう、という意味が込められています。

終身雇用制度の衰退の背景に何があるのかは、次章で詳しく見ていきます。

【出典】「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか(2019年5月13日)/日経ビジネス
【出典】定例記者会見における中西会長発言要旨(2019年5月7日)/日本経済団体連合会

終身雇用制度衰退の背景

それでは、終身雇用制度が衰退してゆく背景には何があるのか、詳しく見てみましょう。

VUCA時代の到来

VUCA」とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)のそれぞれの頭文字を取った言葉で、現代の経済環境が予測不可能な状態であることを表しています。

これらの環境の中において、企業において同じ「事業」が永く続くとは言えず、その事業に紐づいた特定のスキルを持った人材を雇用し続ける事は、企業成長の足かせになる可能性があると言えます。

【関連】VUCAの意味とは?VUCAな時代に求められるリーダーシップとは?/BizHint

2020年問題と働かない世代

「2020年問題」により、日本型雇用システムの改革について議論される機会が増えてきました。

これは、人口の多い「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が40〜50歳代に達し、年功序列制度の根強い日本において、その人件費が企業の財政を圧迫しているというもの。これにより、近年では「早期退職制度」などを取り入れる企業も増えてきています。

また「働かない50代」というワードも聞かれるようになりました。

実際に日経ビジネスのアンケート(対象:20〜60代の男女575名)によると、「あなたの職場で十分な働きをしていないと思うのはどの世代ですか」という質問に対し、「50代」と回答した人が最も多く25.3%となりました。終身雇用で守られており、定年も近い事から保守的である、などの声も挙がっています。

【出典】[議論]“働かない”50代は日本型雇用の最後の受益者か/日経ビジネス電子版

ダイバーシティの推進

これまでの日本型雇用システムにおいては、同じ属性、同じ背景を持つ人材が多く集まる傾向にありました。しかし近年では、性別、年齢、国籍やライフスタイルなど、多様性を持った人材採用を進める企業が増えてきています。

これらの多様性に伴い、それぞれの働き方に対する価値観の違い、また働く時間・期間の違い、キャリアに対する考え方の違いも大きくなっており、画一的なルールで運用されてきた「終身雇用制度」では対応できなくなっているのです。

【関連】ダイバーシティとは?意味や推進方法、企業の取組事例をご紹介/BizHint

終身雇用制度のメリット

終身雇用制度には、メリットと呼べる点もあります。詳しく見てみましょう。

信頼関係によるエンゲージメントの強化

メリットとして一番に挙げられるのは、雇用主と労働者の間に確かな信頼関係を構築できるということです。

終身雇用によって労働者は生活の安定を得ることができ、安心して働くことができるようになります。企業側が長期に亘り安定的に仕事を与えるという「約束」をする事で「帰属意識」や「忠誠心」が生まれ、経験豊富な人材を確保することができるようになるでしょう。

つまり、企業と従業員とのエンゲージメントの強化に繋がるのです。

【関連】従業員エンゲージメントとは?企業の取組事例や向上施策、メリットまで徹底解説/BizHint

社員の長期的な育成が可能

社員の教育には相応のコストがかかるものです。しかし、せっかく教育を施した社員がすぐに退職してしまっては意味がありません。仕事を覚えてスキルを得た社員に少しでも長く勤めてもらうことが会社にとっての利益に繋がります。

また、一人の社員が長期に亘り働く前提であれば、例えば教育に十年の時間とコストをかけたとしても、残りの三十年で取り返せます。

長期的な視点で社員のキャリアを見据え、人材育成に取り組めるという点も終身雇用制度のメリットでしょう。

【関連】人材育成とは?対象別の求められるスキルや育成方法、成功ポイントまでご紹介/BizHint

終身雇用制度のデメリット

次に、デメリットについても見てみましょう。

雇用の流動性が失われる

同じ社員が長期的に一つの会社に留まってしまうと、中途社員を頻繁に雇用する必要もなく、育成しやすい新卒の登用だけに落ち着きます。

また、労働者側としても新しいスキルが身につかないため、転職先が見つかりにくく、辞めにくい環境が生まれます。

すると雇用に流動性が生まれず、社員が才能を活かしきれない状態に陥るのです。こうなると業界全体の成長が阻害され、企業自身も変化を生みにくい環境ができてしまいます。

社員の向上心が低下する

終身雇用制度は、極論「真面目に働かなくてもクビにはならない」ということを意味しています。

こうした環境では社員のモチベーションは維持されにくく、やる気のない社員が増えてしまう可能性があります。リスクが少ないため、常に安心感があり、それにより成長努力も滞ってしまうのです。

すると必然的に生産性が下がり、企業の利益に繋がりません。

人件費のコントロールが難しい

先進国と比較しても、日本は「正規雇用の解雇が難しい国」と言われています。

先進諸国のように、自身が務めるポストが無くなれば仕事を失う、という事は無く、「終身雇用制度」を前提に入社し、ポストが無くなったとしても、例えば他の支社や他の部署に異動するケースが多くあります。

そのため、業績がどうなろうとも、あるいは高齢化率の高まりで人件費が財政を圧迫しようとも、既存で雇用している正規社員を企業主導で減らす事は容易ではないと言えます。

終身雇用制度の崩壊を前に企業はどうするべきか

それでは、企業側は今後どのような対策を行うべきなのでしょうか。

自社にマッチした雇用プランの見直し

まず「終身雇用制度」にとらわれず、自社の事業や社風に合わせた雇用プランの見直しを実施する事が必要です。人材の多様化に合わせて、複数の雇用プランの設定も視野に入れる必要があるでしょう。

例えば、諸外国で多く採用されている「ジョブ型雇用」は、個人の専門的なスキルを活かして働く雇用形態で、仕事や就業場所を決められる「限定正社員」「有期契約労働者」などが該当します。

必要な期間に優秀な人材の専門的なスキルをビジネスに活かす事ができ、社員側もノンコア業務などに従事する必要が無いなどのメリットがあります。近年、注目されている雇用形態です。

【関連】ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いとは?/BizHint

優秀な人材確保のための施策強化

人材不足が叫ばれて久しい昨今。終身雇用制度が崩壊すると、優秀な人材の獲得競争が激化する事が予想されます。そのためには、優秀な人材を確保しておくための施策を強化しておく事も重要です。

例えば、ソニー株式会社が2015年度から、実質これまでの年功序列制度を廃止し、役割や働きに対する報酬をより明確化した「ジョブグレード制度」を導入しました。

年齢や学歴などに左右されず、事業に貢献した優秀な人材が評価される仕組みです。この制度の効果もあってか、大手転職サイトdodaの「転職人気企業ランキング2019」の調査(対象:ビジネスパーソン約5,000名)において同社は4位と上位に位置しています。

【参考】転職人気企業ランキング2019<総合>-社会人が選ぶ“働きたい企業” 第1位は?/転職ならdoda(デューダ)
【参考】ソニー、10年ぶり人事・賃金改革 高コスト是正/日本経済新聞

人材育成手法の変革

これまでのように、長期的な視点で一人の人材を育てていくのではなく、時代の変化に合わせて短期的にスキルを発揮できるような育成方法を検討する必要があります。

「この会社でどう成長したいか」ではなく、自分自身が将来どのような人生を送りたいか、など広い視点でのキャリアデザインが必要になるでしょう。社員の次のステップも見据えた上での、人材育成プランが求められます。

【関連】「キャリアデザイン」とは?その重要性とデザイン方法をご紹介/BizHint

副業の推進(スキルアップ支援)

先ほども挙げたように、終身雇用制度が衰退すると、社員個人のスキルが重視されるようになります。在職中にそのスキルアップのサポートをするためには、近年厚生労働省が積極的に推進している「副業」も視野に入れる必要があります。

「副業」を推進する事によって、社員は離職することなく、本業以外の知識や経験を得ることができ、視野も広がります。また、その新たなスキルや、副業に取り組むことによる自主性やモチベーションが、社内で新たなイノベーションを起こす原動力にもなります。

【関連】【事例あり】副業を解禁した場合のメリットとデメリットとは/BizHint

新たなビジネスへの挑戦

2019年5月の経団連の定例会見で、中西会長は以下のように発言しています。

終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている。外部環境の変化に伴い、就職した時点と同じ事業がずっと継続するとは考えにくい。働き手がこれまで従事していた仕事がなくなるという現実に直面している。そこで、経営層も従業員も、職種転換に取り組み、社内外での活躍の場を模索して就労の継続に努めている。利益が上がらない事業で無理に雇用維持することは、従業員にとっても不幸であり、早く踏ん切りをつけて、今とは違うビジネスに挑戦することが重要である。
【出典】定例記者会見における中西会長発言要旨(2019年5月7日)/日本経済団体連合会

このように、変化の激しい時代において、これまでの事業を守り続けるのではなく、利益を見込めない事業は無理に維持せず、新たなビジネスを模索する事が、企業の存続にも社員の生活を守るためにも得策であると考えられます。

まとめ

  • 終身雇用制度は崩壊すると言われて久しく、2016年時点で大卒者の5割程度にとどまり、労働者側・企業側の意識も変化している
  • 終身雇用制度を維持し続ける事により、人材の流動性が損なわれるだけでなく、社員のモチベーションの維持も難しく、企業の業績などに伴うコントロールも難しい
  • 終身雇用制度の崩壊を前に、企業側には雇用プランの見直しや、優秀な人材を確保するための施策、人材育成など取り組むべき課題が多くある

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