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2018年4月24日(火)更新

職能給

日本企業で長らく採用されてきた職能給。年功序列を前提にしてきただけに、現在では職能給のあり方が議論されています。今回は職能給の意味や特徴、職務給との違い、職能給のメリット・デメリットを中心にご紹介いたします。

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職能給とは?

職能給とは、従業員の職務遂行能力を基準に賃金を支払う賃金制度です。職務遂行能力とは、知識や経験、技能や資格などの職務に必要な能力や、リーダーシップ・協調性・ストレス耐性などの潜在能力を指します。これらの能力は仕事を通じて、向上していくと定義されているため、勤続年数に応じて、区分・序列化されます。

この職能給は1960~70年代の高度経済成長期から安定成長期へ移行する際に、今までの集団主義的な労働関係の見直し策として導入されました。1990年初頭のバブル景気崩壊まで日本の雇用慣行は維持しつつ、職能給が実施されましたが、本質的には 年功序列終身雇用を前提にした制度となっています。

しかし、バブル景気が終わると同時に職能給の維持が困難になりました。人件費の高騰、若手社員の登用ができない、賃金の引き下げが難しいなどのさまざまな弊害が生まれ、新たな制度の確立が求められました。

その結果、「仕事」を基準に賃金を支払う職務給や、役職や職務に求められる「役割」を基準にした役割等級制度(ランク型賃金表に応じた賃金)を導入する企業が増えており、職能給の廃止が徐々に浸透してきています。

※日本の雇用慣行は年功序列終身雇用の他に企業毎の労働組合が挙げられます。

職能給と職務給の違いとは?

「人」を基準に賃金を確定する職能給と、「仕事」を基準に賃金を確定する職務給には導入背景や性質が異なります。

根強く残る職能給の実態

経済のグローバル化により国際競争力が激しさを増したため、日本企業の中にも成果主義同一労働同一賃金を前提にした等級制度や仕事(職務)を基準にした職務給の導入が推奨されています。

従業員300人以上の企業の管理職に対して、職能給を適用している割合は1999年以降減少傾向にあり、2007年以降は急激に職能給の見直しが実施されています。しかし、従業員300人未満の中小企業では2004年から職務給の見直し率が再び増加に転じ、1990年と2010年はほぼ同水準になっています。

中小企業・大企業に関係なく、非管理職の従業員に対する職能給の拡大率は、2007年までは維持もしくは上昇傾向にあります。このことから、非管理職を中心に職能給が色濃く残っている実態が見てとれます。

【参考】厚生労働省 第 3節 勤労者生活の課題

職能給の導入背景

職能給は戦後~高度経済成長期から安定経済に移行する段階で導入された賃金制度です。今までは右肩上がりの経済成長によって、年功序列終身雇用を前提にした賃金・処遇は可能でしたが、経済成長の安定期には、勤続年数や年齢に応じた賃金・処遇の維持が難しくなってしまいました。

そのため、勤続年数や年齢だけでなく、職務遂行能力を基準とした職能給の導入が始まり、従来の年功序列終身雇用を引き継ぎながら、職務遂行能力を基準に賃金・処遇を決められることになりました。その後、バブル景気崩壊と同時に経営の不確実性が増す中、高騰する人件費の抑制が必要となったことから、職務給をはじめ業績・成果主義を基にした賃金制度や等級制度の導入が始まりました。

しかし、長期雇用を前提としていた日本企業では、運用が難しく、管理コストも増大してしまい、再び職務遂行能力を前提とした職能給の意義が再認識されることになります。現在では海外企業による買収や業績赤字により、抜本的な構造改革が最優先とされ、年功序列を完全に廃止した職務給役割等級制度を導入する大企業が増えています。

職務給とは

職務給とは、企業や組織に必要な職務内容を分析・分類し、各職務の相対的価値を評価、その評価に応じた給与を指します。アメリカで開発・運用され、欧米諸国では現在も主流とされている制度でもあります。成果主義同一労働同一賃金が原則であり、雇用体系に関係なく、適用されます。

チームワークでの業務遂行やジョブローテーションによるジェネラリストの育成を得意とする日本企業には馴染みにくい傾向があります。現在では管理職への適用や役割等級制度とともに採用されることが多く、段階的に海外グループ会社や非管理職の社員まで拡充する動きがあります。

職務給との違いとは

職能給と職務給には「賃金形態」、「賃金配分」、「処遇」に違いが見てとれます。

賃金形態の違い

職能給と職務給は賃金形態(算出方式)が異なります。職能給は労働者が保有する職務遂行能力を基準に序列化し、賃金を決定する属人型の賃金決定方式(同一能力同一賃金)を採用しています。一方、職務給は職務の難易度や重要度を基に序列化し、仕事(職務)の価値に対して賃金を決める賃金決定方式(同一労働同一賃金)を採用しています。

賃金配分に対する違い

職能給は職務遂行能力の向上に応じて、賃金が高くなります。この職務遂行能力は勤続年数に応じて向上すると考えられており、直属の上司や人事部の主観的な判断で決定されがちです。職務給同一労働同一賃金の原則に従っているため、担当する職務の達成度に応じた賃金が配分されます。情緒的な判断は一切入らず、数値を基準にした客観的な判断に応じて、賃金が決定されます。

処遇の違い

職能給の判断基準となる職務遂行能力は抽象的な性質が強く、評価基準も曖昧になりがちです。そのため、職務や役職に関わらず、勤続年数を重ねることで、高い処遇や手当を受けることができます。職務給は仕事の達成度や実績に基づき、昇格や昇給が決定されます。そのため、職務遂行能力が向上したとしても会社が指定した上位等級や役職に就かない限り、処遇が高くなることはありません。しかし、雇用保険や通勤手当、資格手当てなどの福利厚生での処遇は職能給や職務給で差が出ることは一般的にありません。

職能給のメリットとは?

職能給は日本型雇用に合致した賃金制度であり、さまざまなメリットがあります。

勤続年数に応じて、高い処遇を受けられる

職能給は職務遂行能力に基づき、賃金の処遇を決定します。この職務遂行能力は知識や経験、保有資格、協調性やストレス耐性など労働者の潜在能力を指し、勤続年数に応じて向上すると定義しています。そのため、同じ会社に勤め続けることで昇給を望むことができます。

離職の抑制や組織改編がしやすい

年功序列の性質が強い職能給を採用しておけば、従業員の離職を抑制することができます。長期的かつ安定的な雇用につながるため、従業員は幅広い職務の遂行やジョブローテーション(定期人事異動)にも応じやすく、労働の確保という点でも企業側にメリットがあります。市場環境の変化に対応した組織改編も迅速に行なうことができます。

労務・人事管理の負担が少ない

職務給では担当する職務を分析・評価を行なう職務分析が欠かせないため、人事の労務・人事管理の負担が大きく、副次的なコストも増えてしまいます。一方で、職能給は勤続年数に応じた判断が主軸となるため、人事の労務・人事管理の負担が少なくなるメリットがあります。

ジェネラリストの育成に最適

日本企業の多くはメンバーシップ雇用を採用しており、どんな仕事にも対応できるジェネラリスト(総合職)が多い傾向にあります。また、ジェネラリストジョブローテーションを繰り返し、勤務する企業が必要とする職務遂行能力を身につけていきます。そのため、勤続年数に応じた賃金制度である職能給と相性が良いとされています。

職能給のデメリットとは?

職能給は日本独自の雇用制度に合わせた賃金制度のため、高度経済成長期など経済が安定する期間では有効ですが、景気の後退や従業員の高齢化につれて、デメリットが増す傾向にあります。

人件費の高騰

職能給は勤続年数や職務遂行能力に応じて、処遇や手当を決定する賃金制度です。そのため、年功序列の色合いが強く、労働者の年齢が高くなるにつれて、人件費が高騰します。また、制度の特性上、役職やポストに関わらず、高い賃金が決定されるため、従業員の生産性の低下も招きやすい傾向にあります。さらに一度上げてしまった賃金の引き下げが容易でなく、人件費の削減が困難となってしまいます。

若手社員のモチベーションの低下

職能給は年功序列の性質が強いため、成果の有無に関わらず、給与が一定に上がっていきます。その結果、業務量が多く課せられる若手社員よりも年配の管理職に賃金が多く支払われる傾向があります。そのため、若手社員を中心に不満が生じやすく、モチベーションの低下につながってしまいます。また、職能給は判断基準が曖昧なため、優秀な若手社員の管理職への登用も難しくなってしまいます。

スペシャリストの育成が困難

専門性の高い職務を担当するスペシャリスト(専門職や専門家)は、職務内容がはっきりしているため、職能給よりも職務給の方が合致しやすい傾向があります。今後、IT技術やAI(人口知能)、ロボット産業が発展する中で、エンジニアなど専門性の高い労働者の確保が急務となり、従来の職能給では適切な人事管理ができない可能性があります。そのため、職能給はスペシャリストの育成と相性が悪いといえます。

従業員の長期的なデメリットにつながる

経済のグローバル化や経営の不確実性により、企業は英語など高い語学力、多様な価値観を持つ人材とビジネスを共にできるグローバル人材の獲得と育成が急務となっています。そのため、職能給を採用してきた大手企業も管理職を対象に、年功序列を完全に廃止し、職務や役割を基準に賃金を決定する役割等級制度の導入を進めています。

この制度の導入により、従来、職能給で決定されていた賃金の引き下げが可能となり、従業員が不利益を被る可能性があります。また、職能給の判断軸となっていた職務遂行能力は勤務する企業が求める能力であるため、競合企業や異業界で活かすことが難しい傾向にあります。そのため、従業員には年収の大幅な低下やリストラというリスクが伴います。また、職能給の廃止により、基本給が引き下げられた場合、休業手当や解雇予告手当ての算定基準となる平均賃金も下がってしまいます。

まとめ

  • 日本の企業が長年採用し続けてきた職能給は、時代の流れとともに維持が難しくなり、見直しの必要が出てきました。
  • しかし、日本の企業では非管理職を中心に職能給を採用し、管理職以上は職務給役割等級制度を導入する動きがあります。
  • 今後もこの動きは加速する傾向があるため、人事担当者は職能給や職務給をしっかりと理解しておき、人財育成に活かさなければいけません。

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