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月給制

2019年1月9日(水)更新

一般的に正社員などの給与形態としてよく使用される「月給制」には、「日給月給制」というものも存在します。雇用契約を結ぶ際、「月給」とするか「日給月給」どちらを採用すれば良いのか。人事担当者が労務管理を行う際に知っておきたい「月給制」についてご紹介していきます。

月給制とは

賃金制度には、月を単位に支払われる「月給制」という給与体系があります。しかし、ただ一言「月給制」と書いていても、実際には別の意味となる「日給月給制」である場合もあるため、注意が必要です。

これらの言葉は、労働法などの法律で明確に定められているわけではありません。しかし、一般論や慣習などによってそれぞれ全く異なる支給方式と認識されています。

月給制の特徴

「月給制」は、「完全月給制」とも呼ばれ、月を単位に基本給を定め、実際の出勤日数に関係なく毎月定額の給与が支給されます。欠勤・遅刻・早退があった場合であっても、毎月の給与が減額されることなく満額が支給されます。

「完全月給制」は管理職などの正社員に適用されていることが多いですが、人材募集の広告などでは「月給制」とだけ書いてあることも少なくありません。その言葉が「完全月給制」を指すのかどうかは会社によって異なります。先述したとおり、賃金の支払い形態に関しては法律に特別の定めがないため、会社によって「月給制」の定義が異なる場合があります。

日給月給制との違い

「日給月給制」は、月給として月を単位に基本給を定めますが、欠勤や遅刻・早退などがあった場合には、その分給与から賃金控除(天引き)を行います。また、給与計算期間の途中からの入社、中途退職の場合には、日割り計算も行います。

一般的な正社員の雇用形態として多くの企業で活用されていますが、欠勤した場合に控除する対象として、基本給だけではなく、役職手当や皆勤手当のように月を単位に支給する各種手当まで日割りして控除するものを「日給月給制」とよび、月を単位に支給する各種手当に対しては控除を行わない形式を「月給日給制」と呼んで区別する場合もあります。

その他給与体系の種類

月給制の他にも、日給制、時給制、年棒制など、様々な給与形態が存在します。

日給制

「日給制」は、1日の基本給を定め、実際に出勤した日数分だけ、「基本給×出勤日数」というシンプルな計算式で給与額を決定し、支給します。都度、その日払いや、週単位などの短い周期で支給されるケースも多く、日雇いなどに適用されています。

時給制

「時給制」は、さらに細かく、1時間単位の基本給を定め、実際に労働した時間分だけ、「基本給×出勤時間数」の計算式で給与額を決定し、支給します。労働時間の短いパートタイマーやアルバイトに適用されることが多いです。

年棒制

「年棒制」は、より長く、1年を単位に給与総額を定めます。ただし、労働基準法第24条では、最低毎月1回の給与支払いが義務付けられているため、年単位の給与を分割して毎月支給します。

年棒制の場合、ボーナス(賞与)を含めて年棒額を決定するため、毎月均等に給与額を定める必要はなく、ボーナス月に多く振り分けて支給することもあります。プロ野球選手の契約時にニュースでよく聞く言葉かと思いますが、特別高度な技術を持つ人を対象として適用されるケースが多いです。

【関連】年俸制とは?月給制との違いや残業代・賞与支給の有無、メリットをご紹介/BizHint HR

月給制のメリット・特徴

では、完全月給制の特徴をみていきましょう。

給与額が安定している

「(完全)月給制」の場合、時給制や日給制と違って、労働時間や労働日数によって基本給が変わりません。年末年始や夏期休業期間などといった会社の休みの期間に就業日数が少なくなったとしても毎月安定した収入を得ることができます。 また、転職の際に月の途中で入社した場合でも、月の途中で退職した場合にも、給与の日割り計算が行われません。

これらは従業員からするととてもメリットが大きく、毎月定額の給与がもらえることは安定した生活の実現につながります。

大幅アップは見込まれない

デメリットとしては、年棒制のように成果・能力主義による賃金決定方式ではないため、今年の成果が翌年の給与額に大きく反映されることがありません。大企業などのベースアップのニュースを見ていても、抱える従業員数が多い分、1人あたりは1,500円アップなど、微増の場合が多く、企業側として、一度上げてしまった給与額を下げることが難しく、小刻みに昇給させるしかないという事情も影響しています。

欠勤控除が含まれない

「(完全)月給制」では欠勤控除は行われず、給与計算期間の1カ月中に出勤日数が大幅に少なくなった場合であっても、毎月定額が支払われます。

欠勤控除とは

欠勤控除とは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に従って、従業員が働かなかった分は給与を支払わないというルールです。つまり、月額の給与から欠勤分の一定額を控除(天引き)するというしくみをいいます。「完全月給制」の場合はこのノーワーク・ノーペイの原則の概念はなく、欠勤排除は行われません。

【関連】ノーワーク・ノーペイの原則とは?遅刻時などの賃金控除計算法もご紹介/BizHint HR

欠勤控除が発生するケース

「完全月給制」以外、「日給月給制」などの場合は欠勤排除が行われます。体調不良や、私的な用事などによる欠勤・遅刻・早退をした場合には、労働することができなかった時間分、給与額を控除されることになります。

このため、月給日給制で働く労働者の場合、年次有給休暇を活用し、欠勤控除が行われないように対処することもあります。

月給制における残業代

月給制では、管理職などの一部の労働者を除き、残業や休日労働を行った場合には、労働基準法に定められている割増賃金の規定が適用されます。

残業代の支給は必要?

労働基準法では、給与形態にかかわらず、1日8時間以上、1週間に40時間以上労働した場合には、残業代(時間外労働手当)の支払いが必要とされています。

【出典】しっかりマスター労働基準法-割増賃金編-/東京労働局

残業を行った際には時間外労働手当、休日に労働を行った場合には休日出勤手当、22:00~5:00の深夜時間帯に労働した場合には深夜勤務手当などの割増賃金を支払う必要があります。

残業代の計算方法

残業などには、法律で定められている割増賃金率が適用されます。

残業(時間外労働)を行った場合には2割5分以上、休日労働を行った場合には3割5分以上、深夜労働を行った場合には2割5分以上の割増賃金が必要です。

※中小企業以外の企業で時間外労働が1ヵ月60時間を超える場合には5割以上の割増賃金率が必要です。

割増賃金の額は、次のように計算します。

割増賃金額 = 時給単価 × 所定労働時間外の時間数×割増賃金率

時給単価の算出

1時間当たりの単価となる時給は以下の方法で算出します。

1時間あたりの賃金額 = 月給  ÷  1ヵ月の平均所定労働時間数

この時算出される時給の額が、最低賃金法に基づき国が定める都道府県別の「地域別最低賃金」、特定の産業について設定されている「特定最低賃金」の額を下回ってしまうと、最低賃金法違反となってしまいます。注意しましょう。

【関連】最低賃金とは?制度や種類、東京都の推移例、罰則までご紹介/BizHint HR

計算に含まれる手当

時給単価の計算に使用される「月給」の中には、役職手当や業務手当など、各種手当も含めて計算します。ただし、法律で除外してもよいと決められている手当もあります。

計算から除外する手当

労働と直接的な関係が薄く、個人的事情によって支給される以下の限定列挙された手当については、法律で除外してよいと定められています。

  • 家族手当、扶養手当、子女教育手当
  • 通勤手当
  • 別居手当、単身赴任手当
  • 住宅手当
  • 臨時の手当(結婚手当・出産手当・大入り手当など)

ただし、この中でも従業員全員に対して一律に支給される手当は除外することができません。

実際の計算例

実際に月給制の残業代を計算してみましょう。

1日8時間勤務、月22日程度勤務の会社で働く労働者Aさんが月給制で、以下の内容て支給されているとします。

  • 基本給:20万円、職能給:5万円、資格手当:2万円、食事手当:1万円、家族手当:2万円、通勤手当:2万円

そして、この月の残業時間を20時間だったと仮定します。

1時間当たりの賃金額の計算に含めるものを分ける

毎月32万円が月給として支払われますが、ここから残業を行った場合に単価となる時給を導き出す際には、割増賃金の基礎になるものとならないものに分ける必要があります。

図のように、計算から除外しても良いと限定列挙された「家族手当」「通勤手当」以外はすべて割増賃金の基礎賃金に含めることになります。

1時間当たりの賃金額を計算する

次に、Aさんの時給単価の計算を行います。計算式は以下のようになります。

こうして、残業の基礎となる1時間当たりの基礎単価1,591円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げ)という金額が導き出されます。

割増賃金を計算する

時給単価が導き出されたら、1時間当たりの賃金にそれぞれの割増対象となる割増率を乗じて、実際の残業時間や、割増対象となる時間数をかけます。

このケースでは、20時間の残業であるため、

  • 1,591円×時間外労働1.25倍×残業20時間=39,775円

こちらがこの月の残業代として、月給32万円にプラスして支給されることになります。

月給制における有給休暇

「(完全)月給制」の場合、どんなに休んでも欠勤控除が行われず、毎月定額の給与が支払われるのであれば、年次有給休暇を使用する必要がないのではないか?と考える方もいるかと思います。

有給休暇の付与義務

年次有給休暇は、労働基準法第39条において、有給が付与される日の直前1年間(入社後最初の付与の際は直前6ヵ月間)の出勤率が8割以上であれば、賃金形態にかかわらず、すべての労働者に付与することが定められています。(労働災害による休業期間、育児休業・介護休業の期間、産前産後の休業期間、有給休暇を取得した期間は出勤したものとみなされます。)

【参考】労働基準法第39条(年次有給休暇)/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

出勤率が査定に影響する場合

「(完全)月給制」の場合、欠勤した場合でも、給与の額には影響がありません。しかし、年次有給休暇の出勤率の判定の際や、就業規則に昇給や賞与の査定の手段が明記されており、出勤日数がその対象とされている場合には、欠勤日数が重要査定要素とされ、欠勤することで評価が下がる恐れがあります。

そんな場合には欠勤するよりも年次有給休暇を使用して出勤とみなしてもらう方が良いでしょう。

休暇付与時の賃金額

年次有給休暇を取得した日の賃金は、次のいずれかの方法によって計算されます。

  1. 労働基準法第12条に定める平均賃金
  2. 通常の賃金(所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金)
  3. 健康保険法で定める標準報酬日額

どの方法を適用するかは、会社によって異なり、就業規則または労使協定によって定めます。

【参考】労働基準法第12条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説 / BizHint HR

月給制における退職

退職に関しては労働基準法に定める解雇以外の手段については、労働契約法や民法において規定されています。

退職時のルール

一般的に期間の定めのない雇用契約の場合、希望日の2週間前に退職の申し入れをすることで退職することができますが、完全月給制の場合には、少し事情が異なり、民法627条第2項が適用されます。

≪民法627条第2項≫
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

【引用】電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕民法627条第2項

このように完全月給制の場合には、解約(退職)の申し入れをする際、月の前半に解約を申し込む場合にはその月の末日付で退職できますが、月の後半に申し出た場合には翌月末日付で退職が成立することになるため、注意が必要です。

退職金の支払いについて

退職金については、制度を導入するかどうかが会社の裁量に委ねられ、支給しなくても法律的には問題ありません。時給制であっても、月給制であっても会社の定めによって支給することも支給しないこともできます。

支給をする際には、就業規則などに、退職金の対象となる労働者の範囲、支給する際の条件、退職金の支給額、支給の方法などを明記しておくことが望ましいです。曖昧に運用していると後々トラブルに発展することも多いため、就業規則の作成などが自社で難しい場合には、社会保険労務士などの専門家に依頼して行いましょう。

まとめ

  • 月給制にも、日給月給制など実は支給形式の異なる賃金形態があります。
  • 完全月給制の場合は欠勤・退職時のルールを事前に確認しておきましょう。
  • 用語自体は労働法に定められていないため、会社の就業規則を整備しましょう。

<執筆者>
高橋永里 社会保険労務士(和泉中央社会保険労務士事務所 代表)

大学卒業後、ホテルのウエディングプランナーの仕事に従事。数百件の結婚式をプロデュースする中で、結婚式という期間限定のサポートではなく、より長く人のサポートを行う仕事に就きたいと思い、社労士業界に転職。顧問件数6,000社を超える大手税理士法人で法人設立、労務管理の仕事の経験を経たのち、2015年に「和泉中央社会保険労務士事務所」を開業。現在は、年金アドバイザー、簿記、ファイナンシャルプランニングの資格を活かし、中小企業の設立、労務管理、就業規則作成、助成金申請など幅広い業務を行う。


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