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KPIの設定方法と具体例、効果を高める5つのポイントを解説

BizHint 編集部 2017年8月3日(木)掲載
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KPIとは重要業績評価指標を指し、ビジネス上の目標への達成度合いを管理する重要な数値項目です。KPIを事業で最大限活用するには、設定する目的を確認した上で、効果的な活用方法を知る必要があります。本記事では、KPIを設定する目的や、設定する方法、実践で役立つ具体例や効果を高めるコツをご紹介します。

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KPIを設定する目的とは

KPI(Key Performance Indicator)とは、ビジネスで目標の達成度合いを計測するための「 重要業績評価指標 」を指します。事業では売上目標や受注件数といった戦略的な業績目標を掲げますが、それを実現するには、さらに細かいレベルでリード数や成約率といった中間的な目標を管理しなければなりません。

KPIは、いわば理想と現実を橋渡しする目的のもとで設定された数ある中間的目標の中でも、特に優先順位が高い指標なのです。

【関連】KPIとは?言葉の意味と、KGI・OKRとの違いを解説 / BizHint

では、このKPIを設定する目的とは何なのでしょうか。

まず重点的に取り組むべき課題を明確にすることが挙げられます。課題を明確にすることで、重要な点に経営リソースを集中させることができるように。また、KPIを数値的な指標として設定すれば、事業の進捗度合いを定量的に分析することも可能です。

さらに、目標達成への動機付けを行うといった目的もあります。これには、チームワークや組織力を引き出すといったメリットも。

そのほかにもKPIの設定は、企業組織内で評価基準を共有するため、目標における改善点や達成可能性を検討するためなど、さまざまな目的があります。

KPIの設定方法

具体的なKPIの設定方法を、以下の流れにそってご紹介します。

  1. KGIの設定
  2. KSFの抽出
  3. KPIを設定する
  4. KPIツリーの作成
  5. KPIの計測、評価、見直し

KGIの設定

KPIを設定する前に、まずはKGIを設定します。

KGI(Key Goal Indicator)とは「 重要目標達成指標 」を指し、事業やプロジェクトで達成すべき売上高、利益率、販売数といった最終的な数値目標で、数ヶ月、半年、1年、数年などの短期間で設定されることが多いです。

KPIは何でもよいわけではなく、あくまでもKGIという大きなゴールを達成するための手段という位置付けのため、KGIを明確に定めておくことで、それを現実に達成する道筋が浮かび上がり、整合性のあるKPIを設定できるようになります。

【関連】KGIとは?KPIやKSFとの違いや設定方法、メリットなどご紹介/BizHint

KSFの抽出

KGIという目標が定まった後は、それを達成するための戦略策定を行います。

KSF(Key Factor for Success)とは、「 カギとなる成功因子 」と訳され、事業を成功させる上でカギとなる重要な要因のことです。戦略を決める際は、成功要因とそれ以外を区別して、重要な部分に経営資源を投入する必要があります。KSFを抽出しておくことは、限られたリソースを有効活用し、効率的に成果を生むために不可欠なのです。

KSFを洗い出す一例としては、フレームワークを活用する方法があります。例えば、3C分析PEST分析SWOT分析バリューチェーン分析といった手法は、内外環境を漏れなく理解することに役立つでしょう。

始めは思いつくままにいくつもアイデアを挙げていき、そのあとKGIを達成するために特に重要な部分を、ファクトベースかつ実現可能性も意識しながら絞り込んでいくことが大切です。

【関連】KSFとは?意味や分析手法、抽出ポイントなどご紹介/BizHint

KPIを設定する

KSFの絞り込みが終わったら、それをもとに 数値情報 としてKPIにまで落とし込みます。

KPIの条件は、あくまでもKGIを達成するためのものであり、現実的に実現可能でなければなりません。以下では、適切なKPIを設定するために役立つ方法を紹介します。

SMARTの法則を意識した設定を

KPIを設定する際によく使われる目標設定法として『SMARTの法則』があります。

  • Specific(明確性) … 設定した目標は明確なものか
  • Measurable(計量性) … 目標達成率や進捗度を測定可能か
  • Assignable(割当設定) … 役割や権限を割り当てているか
  • Realistic(実現可能性) … 現実的な目標を設定しているか
  • Time-related(期限設定) … 目標達成に期限を設けているか

KPIは、KGIを達成するために具体的な行動にまで落とし込んでいくための指標ですが、KPIを絞り込むプロセスは簡単ではありません。なぜなら、目標達成への道筋にはさまざまなパターンがあり選択肢が多くなりがちですし、その会社組織の特性に応じて最適なKPIを見極める必要もあるからです。

このSMARTの項目を活用すれば、目標設定する際に、現実的な視点を取り入れることができます。目標の達成可能性を高め、組織の事情に即したKPIが測定できるでしょう。

【関連】SMARTの法則とは?目標設定例や効果を高めるポイント、関連本をご紹介/BizHint

KPIツリーの作成

KPIを設定した後は、KPIツリーを作成します。KPIツリーとは、KGIやKPIを樹形図型に配置し、視覚的に表現した図です。一般的にKPIは複数の項目を設定するもので、他にもKGIやKSFといった要素も洗い出すことになります。それらを有効活用するには、それぞれの関係性を明らかにし、組織メンバー間で共有しやすくする工夫が必要です。

KPIツリーの作成方法には2つのポイントがあります。

  1. KGIを頂点にし、その下にKPIを置くピラミッド階層にすること
    (KPIをKGIという大きなゴールを達成するための中間指標として位置付けるため)
  2. 論点や粒度を揃えること
    例:KGIが「売上高」であればその直下に置くKPIは「販売数」と「販売単価」が妥当で、「原価」は論点として関係ない/「総販売数」と「セグメント別販売数」を同列に並べるのは粒度が不自然 など

いくつか意識すべき点はありますが、ロジカルな構造が完成すれば、KPIツリーは目標達成に向けた指標を整理する際に大きな効果を発揮するでしょう。

KPIの計測、評価、見直し

KPIを設定した後は、定期的に目標の進捗率を計測したり、KPIの妥当性や目標への取り組みを評価することが大切です。

はじめに策定した目標に不都合が発生せずそのまま完結するのが理想的ですが、現実的にはKPIの数値が高すぎたり低すぎたり、前期の進捗率が悪く後期のKPIを修正しなければならないなどといったケースもあるでしょう。

KPIの精度を高めるには、『Plan(計画)』『Do(実行)』『Check(評価)』『Act(改善)』の4プロセスで構成されるPDCAの繰り返しが必要です。計測や評価の施策を導入し、後で見直す仕組みも構築すれば自然と最適化されていきます。


●KPIの管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
KPI管理が重要な理由と管理方法、おすすめツールまでご紹介/BizHint


【業種別】KPIの設定例

設定するべきKPIは掲げる目標によって大きく異なるため、『この業種(職種)においてはこのKPIを使うべき』と断定的に言うことはできません。しかし、業種ごとに多く扱われているKPIというものは存在するため、自社目標の達成に必要なKPIの洗い出しを行う際に参考にすることはできます。

ここでは、業種別のKPI指標例をまとめましたので、KPIの洗い出しや精度向上にご活用ください。

営業に関連するKPI設定例

営業に関連するKPIには以下のようなものがあります。

  • 平均受注単価(顧客単価)
  • 個人営業売上高
  • 顧客満足度
  • 取扱商品、サービスの市場認知度
  • 問い合わせ件数
  • コンタクト件数
  • 訪問件数
  • 新規顧客獲得件数
  • 商談件数
  • 受注件数
  • 成約までの平均日数
  • 受注率(営業成約率)
  • リピート率
  • リピーター率
  • 売上達成率
  • 取扱商品、サービスの市場占有率(市場シェア率)

飲食業、店舗販売業に関連するKPI設定例

飲食業、店舗販売業に関連するKPIには以下のようなものがあります。

  • 平均接客時間
  • 平均購入単価(顧客単価)
  • 顧客満足度
  • 店舗や取扱商品、サービスの認知度
  • 来店者数(来客者数)
  • 店舗別売上高
  • 広告種類別来客数
  • 問い合わせ件数
  • 商品原価率
  • 利益率
  • 回転率
  • リピート率
  • リピーター率(常連比率)
  • 売上達成率

製造業に関連するKPI設定例

製造業に関連するKPIには以下のようなものがあります。

  • 製造コスト(製造原価)
  • 在庫保有期間
  • 改善提案件数
  • 改善件数
  • 生産数
  • 在庫数
  • 注文数
  • 不良数(欠陥品数)
  • 欠品件数
  • 事故発生件数(トラブル発生件数)
  • クレーム件数
  • 不良率
  • 時間稼働率
  • 原価率
  • 欠品率
  • 生産効率
  • 事故発生率
  • 製造原価率
  • 多能工比率
  • OEE(総合設備効率)

カスタマーサポートに関連するKPI設定例

カスタマーサポート(お客様窓口)に関連するKPIには以下のようなものがあります。

  • 平均対応時間(平均処理時間、平均通話時間)
  • サポート満足度
  • 取扱商品、サービスの市場認知度
  • 入電数(着信数)
  • 問い合わせ件数
  • クレーム件数
  • 解約件数
  • 稼働率
  • 応答率
  • 呼損率
  • クレーム率
  • 解約率(離脱率)

オンラインビジネスに関連するKPI設定例

オンラインビジネスに関連するKPIには以下のようなものがあります。

  • CPA(顧客獲得単価、顧客獲得コスト)
  • ROAS(費用対売上高)
  • ユーザー満足度
  • Webサイトの認知度
  • ホームページへのアクセス数(訪問数)
  • 平均ページビュー数(PV数)
  • 直帰率
  • Webサイト滞在時間
  • 広告種類別訪問客数
  • 平均購入単価(顧客単価)
  • 検索エンジン流入件数
  • コンタクト件数
  • コンバージョン件数(新規問い合わせ件数)
  • リード獲得件数(新規見込み顧客獲得件数)
  • 商談件数
  • 販売件数
  • サービス利用者数
  • 継続者数
  • 顧客転換率
  • コンバージョン率
  • 商談率(セットアップ率)
  • 販売率(営業成約率)
  • リピート率
  • リピーター率
  • 売上達成率

KPIの効果を高める5つのコツ

自社に最適なKPIは、PDCAサイクルをしっかりと回しマネジメントしていくことで、作り上げていくことができます。

最終目標の達成を確実なものにするためにも、KPI設定の効果を高めるコツを学び、早期段階においてKPIの最適化を図りましょう。

1.フレームワークの活用

KPIを策定する際、フレームワークを活用することで、より効果の高いKPIを設定できます。ここでは2つの手法を紹介します。

ロジックツリー

ロジックツリーはツリー状に論理展開を行うことによって最上位に設定された目標や命題の実現を目指す、KPI設定初心者でも扱いやすいシンプルなフレームワークです。

ロジックツリーはそのアプローチ方法から「WHYツリー(原因追究ツリー)」、「HOWツリー(問題解決ツリー)」、「WHATツリー(要素分解ツリー)」の3つに大別することができますが、KPIの設定では主に「WHYツリー」と「HOWツリー」の2つが用いられます。

また、ロジックツリーは元々ツリー状のフレームワークであるため、作成したWHYツリーやHOWツリーの段階要素をKPIに置き換えることで、このあとご紹介するKPIツリーへ容易に変換することができます。

ビジネスプロセスマップ

ビジネスプロセスマップとは、その名の通りビジネスプロセスをビジュアル化(可視化)したものです。

KGIに関連する要素をアクティビティ毎にまとめてマップ上に示すことにより、目標達成に有効なKPIの洗い出しと全体像の把握を行うことができます。

2.結果指標ではなく先行指標に目を向ける

先行指標とは特定の事象変動に先行して変動する指標であり、意識的に働きかけを行うことで特定の事象変動の操作が可能です。それに対し、結果指標は外部要因による影響を受けて変動する指標であるため戦略的に扱うことが難しく、改善策や組織利益を生み出すにはあまり効果的ではありません。

そのため、KPIを設定する際には結果指標ではなく先行指標に目を向ける必要があります。

アリステア・クロール氏とベンジャミン・ヨスコビッツ氏は共著である『Lean Analytics』内でKPIに設定してはいけない8つの指標として以下のものを紹介しています。

  • ヒット数
  • PV数
  • Webサイト訪問者数
  • ユニークビジター数
  • フォロワー数、フレンド数、いいね!数
  • 滞在時間
  • ダウンロード数

これらの指標をKPIとして使用する際には、単なる結果指標として観測するだけではなく新たな戦略や施策を生み出すための先行指標として扱わなければなりません。

その数字に変動を与えることで上の要素にどのような変動が起きるのか容易に想像できるレベルまで深めることによって、このような指標であってもKPIとして活用することが可能となるでしょう。

【書籍情報】 Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法/著者:アリステア・クロール、ベンジャミン・ヨスコビッツ

3.不必要に多く設定しない

適切に設定されたKPIであったとしても、実施する施策数の増加によりKPIツリー全体の現実性を低下させる危険性があるため、際限なくKPIツリーに盛り込むことは好ましくありません。KPIは施策を実施し、設定した目標数値を達成してこそ意味があります。

担当部門や業務担当者のキャパシティを正確に把握し、現実性とのバランスを意識しながらKPIを設定するように心掛けることによって、KPIの効果を最大化させることができるでしょう。

4.情報入手までのタイムラグに注意する

KPIは評価分析の繰り返しによってその精度を高めることができますが、評価分析に必要な情報を入手するまでのタイムラグが大きくなるほど施策と成果の因果関係を見極めることが困難になります。

PDCAサイクルをKPIの精度向上に活かすためにも、評価タイミングに合わせて情報が得られる環境を組織内に予め構築しておく必要があるでしょう。

5.組織メンバーの納得を得る

KPIは組織に属するメンバー全員が共有する指標です。しかし、中には業務内容によって、不要なKPIとなってしまう従業員も出てきてしまいます。その際は、従業員の担当業務や部門を考慮した上で、役割や業務内容の中から適切なKPIを再選定・再設定しなければいけません。

定めたKPIが所属する組織メンバー全員が納得いくものにするためにも、綿密なコミュニケーションとさらに細分化されたKPIの設定が必要です。組織メンバーの納得を得る作業は、経営層と現場の従業員の信頼関係の前提となり、経営者は組織が一丸となって、目標に邁進するための必要不可欠な作業と認識しなければいけません。

まとめ

  • KPIを設定する目的は、戦略的な目標(KGI)を達成する際に中間指標として活用するためです。
  • KPIの設定方法は、KGIやKSFを設定・抽出したのちに、それらをもとに最適なKPIを組み立てます。
  • KPIは「SMARTの法則」やKPIツリー、見直しの仕組みを意識して設定すると有効です。
  • KPIの効果を高めるには先行指標への意識や過不足ない設定、タイムラグへの注意、メンバーの理解が必要です。

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