連載:第93回 経営危機からの復活
「社員の意識は変えられない」と悟ったリーダーが気づいた、たった一つのやるべきこと。V字回復への軌跡


コロナ禍の影響で年間2000万円の赤字、社員の危機感ゼロ、深刻な属人化——。創業57年のユニフォームメーカー・株式会社三光白衣は、かつて複数の課題を抱えていました。そんな中、2022年に臂(ひじ)幸宏さんが社長に就任。当時の組織は「コロナ禍だから仕方がない」「取引先の業績が回復すれば自然と売上も戻る」と受け身の状態で、自分たちにできる改善策が見えない状況だったと言います。臂さんは社員の意識改革に取り組みましたが、それだけで組織は変わりませんでした。そこで、ある「やるべきこと」に気づいた結果、わずか2年で黒字転換、前年比123%の売上高を達成してV字回復を果たしたのです。臂さんが仕掛けた、組織改革の秘策とは。詳しく伺います。

社員の意識を変えるために必要な「やるべきこと」
――まず、組織改革を通じて、どのような成果が得られたのかお聞かせください。
臂 幸宏さん(以下、臂): 社長に就任した2022年はコロナの影響を受け、約1500〜2000万円の赤字を出していました。売上高もコロナ以降、停滞していたんです。当時の組織は、一言で表すなら「危機感がまったくない組織」。赤字を出していることに対し、社員のほとんどが自分たちの営業手法や業務プロセスのどこに改善点があるのかわからず、「顧客の業績が悪いから注文が来ないだけ。コロナ禍が明ければ自然と売上も戻る」という受け身の発想から抜け出せない状況だったのです。
しかし、それから2年後の2024年には3900万円の利益を出すことに成功しました。そして、16年ぶりに売上高が10億円に達し、対前年比で見ても123%の成長を成し遂げることができたんです。
――その成功要因は何だったのでしょうか?
臂: 最初は、利益を出すためには社員の意識を変える必要があると考えました。
まず、前職で商社に勤務していた頃に上司から教わった「予算は会社との約束」という概念を浸透させようと決めました。
どういうことかというと、会社は予算を達成することで初めて成長投資ができ、社員の給与アップや職場環境の改善が可能となります。つまり、予算達成は自分たちの未来を守る約束だと位置付けたのです。
そこで社員たちに「営業活動は時間、納期、品質、価格を守るなど、すべてお客様との約束で成り立っています。そこで、会社との約束として予算を守ろう」と伝えていったのです。
ただ、これは失敗でした。それまで社員たちは明確な売上目標を持たず、前年実績を基準に「去年と同じくらいできればいい」という発想で営業活動をしていたので、「売上を毎年伸ばす」「成長するために予算を上げる」という概念そのものが「初めて言われた」ことだったのです。
そのため、 いくら熱心に概念を繰り返し伝えたところで、長年染み付いた社員の意識を変えることはできませんでした。
ここでの失敗を経て、気づいたことがあったんです。それは、 人の意識を変えたいのであれば、まずやるべきことが一つある、ということです。
――それは何でしょうか?
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バックナンバー (93)
経営危機からの復活
- 第93回 「社員の意識は変えられない」と悟ったリーダーが気づいた、たった一つのやるべきこと。V字回復への軌跡
- 第92回 倒産寸前の会社を蘇らせた唯一の指針。「絶対に諦めない」リーダーの覚悟と信念
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