連載:第52回 リーダーが紡ぐ組織力
“良い人”では会社を守れないと気づいた社長。「言ったもん勝ち」が横行する組織を変えた、たったひとつの要諦


「社員の声に耳を傾ける」社長の姿勢が、組織の混乱を招くこともある――。株式会社スパーテルの橋本昌子社長は、創業3年目・社員数が20名を超えた頃に組織課題に直面。薬剤師として大切にしてきた「傾聴」の姿勢が、皮肉にも"言ったもん勝ち"の組織風土を生み出してしまったことに気づきます。「良い人」からの転換を決意し、組織改革に着手。社員と共にさまざまな改革を重ねた結果、340名を超える企業グループへと成長し、社員が自ら考え行動する自律型組織を実現しています。同社の組織改革の根底にある「要諦」とは?改革の道のりとともに、詳しく伺いました。

創業3年目の危機で気づいた「良い人経営」の限界
――橋本社長が起業されてから18年。現在は石川県内に17店舗の薬局を展開、住宅型有料老人ホームや小規模多機能ホームなどの福祉施設も運営する企業グループへと成長されています。
橋本 昌子さん(以下、橋本): もともと私は薬剤師として病院、製薬会社、薬局で勤務してきましたが、「もっと地域に貢献したい」という思いから、2007年に創業しました。現在、スパーテルを中心とした「てまりグループ」全体の従業員数は341名になっています。(2025年2月現在)
ただずっと順調だったわけではありません。組織づくりにおいて大きなターニングポイントになったのは、店舗数が5~6店舗まで増え、社員数が20人を超えた創業3年目の2010年頃です。
――一体何があったのでしょうか?
橋本: 気がつけば、それぞれの人が「やりたいことだけをやる」組織になっていました。
会社として必要な取り組みだと思って指示をしても、「やりたくないです」「忙しいのになんで新しい取り組みを始めるのですか」など、不満が出てくる。店舗間の異動やヘルプも「行きたくない」と言えば行かなくて良い風土ができてしまっている。社員間のトラブルも多く、「あの人と一緒に働くのは嫌だ」といった声も聞かれるようになって…。
私は意見を聞いて受け止めるのが良いことだと思っていたので、いろいろな意見を「そうだよね」と受け止めつつ、改善しようと努力しました。しかしその結果、一部の声の大きい人の意見ばかりが採用される、我慢している人が損をしてしまう。いわば「言ったもん勝ち」の組織が出来上がってしまっていたのです…。
人のマネジメントに悩む中で、ひとつの答えにたどり着きました。それが、 「良い人では経営者は務まらない」 ということ。
私は医療従事者として、患者さんの話をしっかり聞き、共感することの大切さを学んできました。カウンセリングの経験もあり、会社の運営も同じように考えてしまった。でもそれは間違っていて、 むしろ人の話をなんでも聞く姿勢や、「良い人」であろうとすることが、組織の混乱を招いていた のだと。
そして同時に、私の圧倒的に足りないものに気づかされました。それこそが、組織を運営していくうえで最も重要な「要諦」だったのです。
――それは何でしょうか?
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リーダーが紡ぐ組織力
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