連載:第17回 IT・SaaSとの付き合い方
歴史のある企業同士の合併を経て10年弱、組織風土を変えたある施策
日本発の「グローバルアルミニウムメジャーグループ」を目指し、2013年、旧古河スカイ株式会社と旧住友軽金属工業株式会社が合併して発足した株式会社UACJ。2つの伝統ある企業同士が統合し、現在、構造改革の一環として理念を再定義し、新たな企業文化づくりに取り組んでいます。経営戦略本部 新しい風土をつくる部の斎藤和敬さんと、太田万里さんに聞きました。
大企業同士が合併を経て……始まった構造改革
斎藤和敬さん(以下、斎藤): UACJは2013年10月、国内アルミ業界のトップ2社が合併して発足しました。一番のねらいは国際的競争力の強化です。欧米には、アルミニウムメジャーがおりますし、最近では中国メーカーも台頭してきており、競争が激しくなっています。日本のアルミニウム業界を牽引し、世界市場で戦うため経営統合に至りました。
UACJの母体となった古河スカイでアルミニウム電線の研究が開始したのは1910年、住友軽金属工業では1898年に国内初のアルミニウム圧延事業を開始し、いずれも100年超の歴史があります。それぞれ長い伝統の中で培われた企業風土があったため、社内の一体感づくりをどのように構築していくかに課題があったように思います。
経営統合直後は、規模の拡大にともない営業利益率も向上しました。しかし、2017〜18年ごろから米中貿易摩擦や中国経済の減速によって、市場環境が一変します。
我々も構造改革の必要性が生じ、事業再編や生産設備の改革ほか組織体制のスリム化に取り組んできました。このときに始まったのが目には見えない改革である「グループ理念の再定義」と、「新しい企業風土文化をつくる」ことです。
──改革の取り組みについて教えてください。
斎藤: 近年、企業経営において「パーパス(存在意義)」の重要性が注目されていますが、私たちもパーパスを再認識し、全社員の思いを一つにすることが「UACJらしさ」を醸成し、構造改革推進の原動力になると考えました。
社員に「UACJらしさとは何か?」をヒアリングすると、以前の経営理念では「UACJらしさ」が表現されておらず、社員の考えが十分反映しきれていませんでした。そこで、まずは若手・中堅社員から経営陣まで意見を聞き、経営専門家などの意見を踏まえ、最後に社長の石原の思いをこめて制定したのが現在の企業理念、目指す姿、価値観です。
企業理念
素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。
目指す姿
アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界へ。
価値観
- 相互の理解と尊重
- 誠実さと未来志向
- 好奇心と挑戦心
この新しい価値観に基づいた風土作りを進めるため、「新しい風土をつくる部」を作りました。このユニークなネーミングは社長のアイデアです。風土改革と聞くと堅苦しい雰囲気があるので、歴史や伝統を尊重しつつ、よりよい組織にしていこうという想いが込められています。
──風土作りにあたって二社間のハレーションや認識の食い違いはなかったのでしょうか。
斎藤: 各社歴史と伝統があり、仕事のやり方もそれぞれ違いますが、ものづくりに対する真摯な姿勢や誠実さのような“根っこ”の部分は一致していました。ですから創業の原点である価値観は残そうと考えました。
あえて挙げるとすると、社員は真面目すぎる性格だったかもしれません。幹部から若手までのヒアリングでは、新しいことに挑戦しようとする意欲が低いという意見がでてきました。私たちが扱っているアルミは一定の需要があるからかもしれません。新しい風土をつくるのならば、新しい理念体系にも盛り込もうと、価値観の一つに「好奇心と挑戦心」を入れています。
合併から7年が経ち、事業再編や採用も積極的に進めてきました。結果、UACJのプロパー社員や中途社員も増え、旧体制にとらわれない多様性が生まれてきたように感じます。2020年からは理念を浸透させるため4月に「風土改革推進部」が設置され、8月に「新しい風土をつくる部」と改称し現在に至ります。
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